2002年7月10日水曜日

「疾患による咬合異常」について

ゲスト/北大前矯正歯科クリニック 工藤章修 医師

咬合(こうごう)異常が生じる疾患として、どのようなものがありますか。

 生まれつき唇や顎(あご)が2つまたは3つに分かれている唇顎口蓋裂(しんがくこうがいれつ)、生まれつきの顔面非対称を示し、片側の下顎の低形成が見られる第一第二鰓弓(さいきゅう)症候群、ピエールロバン症候群、トリーチャーコリンズ症候群など下顎(かがく)の低形成を示す疾患、鎖骨頭蓋(がい)異骨症、ダウン症候群などは、咬合異常を伴う先天的な疾患で、矯正治療を含め、顔面、頭部、顎と広い範囲での総合的な治療が必要になります。形成外科や口腔(こうくう)外科と、更正医療機関の矯正専門医などが協力し、幼いうちから長い時間をかけて矯正します。これらの疾患の矯正治療は、唇顎口蓋裂で1982年4月から、そのほかの疾患で2002年4月から健康保険の適用になりました。

成長の過程で生じる咬(か)み合わせの異常について教えてください。

 成長時期の発育異常によって生じる咬合異常の中でも、顎変形症には外科手術が必要な場合があります。顎が左右どちらかにずれる、前に突き出すなど、顎に異常が生じるだけではなく、顔全体が変形してしまう例もあり、食べ物の咀嚼(そしゃく)がうまくいかない、発音が不明りょうになってしまうなど機能面での不都合、また審美的な面での悩みを持つ人も多いのが実情です。一般的な矯正治療のみで改善が難しい場合は、外科手術によって上顎と下顎の骨を移動して正常な咬み合わせにします。手術前に矯正治療で歯並びを整え、手術しますが、ほとんどの場合口の中から行うので、手術痕が顔に残ることはまずありません。その後、矯正治療で咬み合わせの微調整を行います。骨格が完成する高校生以上での手術が基本となります。このような外科手術を伴う歯科矯正の場合は、健康保険の適用対象になります。また、交通事故などによって顔面に外傷を負い、顎や歯を損傷した場合、救命治療が優先されるため、咬み合わせをあまり考慮せずに外科手術を実行する場合があります。術後、咬み合わせに不都合が生じていると感じたら、矯正歯科専門医を訪ねてください。

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