2002年12月25日水曜日

「ピロリ菌と胃・十二指腸潰瘍(かいよう)」について

ゲスト/やまうち内科クリニック 山内雅夫 医師

ピロリ菌について教えてください。

 正式にはヘリコバクター・ピロリといい、胃粘膜に住むラセン系の細菌です。胃の中は、胃酸のため強い酸性を呈し、細菌が生き延びる環境ではないという先入観から発見が遅れ、存在が認められたのは今からほんの20年ほど前です。ピロリ菌にはアンモニアを産生する能力があり、胃酸を中和して胃の中でも生存することができるのです。感染経路は経口感染とされていますが、感染の予防方法はまだ明らかになっていません。衛生状態の悪い地域や国で、感染率が高いことはわかっています。日本では若い人の感染率は低いのですが、40歳以上では約80%の人が感染しています。これまで多くの研究で、ピロリ菌が胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍の原因になっていることが解明されてきました。ピロリ菌感染イコール胃潰瘍になるという訳ではありませんが、ストレス、喫煙、アルコールやカフェインの過剰摂取、鎮痛剤の服用などさまざまな要因が重なると胃・十二指腸潰瘍が発症します。またさらに、ピロリ菌によって引き起こされた慢性胃炎から胃ガンが発生することも推測されます。

胃・十二指腸潰瘍の治療方法をご紹介ください。

 以前の胃・十二指腸潰瘍の治療は、胃酸の分泌を抑制するH2ブロッカー投与が一般的でしたが、いったん治癒しても非常に再発しやすく、そのたびに再治療が必要でした。しかし潰瘍の主要な原因がピロリ菌であることが判明してからは大きく治療法が変わりました。除菌療法といいますが、胃の中のピロリ菌を駆除するために2種類の抗生剤を1週間内服し、さらにH2ブロッカーよりも強力に胃酸の分泌を抑制するプロトンポンプ・インヒビターを併用する方法です。この治療法によって、大部分の潰瘍の再発を防ぐことができるようになりました。もっとも、胃・十二指腸潰瘍の中にはピロリ菌に関与していないものもあり、このような場合は、除菌療法の対象外になります。ピロリ菌感染の有無を検索するには、内視鏡検査で胃粘膜を採取して調べる方法のほか、尿素呼気試験、血清抗体測定などがあり比較的簡単に分かります。なお、胃・十二指腸潰瘍を有しないピロリ菌感染者(慢性胃炎などの患者)に対しても、胃ガン予防の見地から除菌療法をした方が良いとする意見もありますが、まだ明確な結論は出ておらず、保険診療も認められていません。

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