2002年5月1日水曜日

「痔(じ)ろう」について

ゲスト/札幌いしやま病院  樽見研 医師

痔ろうについて教えてください。

 痔ろうは、直腸と肛門の境界部分にある肛門陰窩(か)というすき間に細菌が入って感染することによって、肛門周囲膿瘍(のうよう)になることから始まります。肛門周辺に膿(うみ)がたまり、炎症を起こして激しい痛みや発熱に襲われます。しかし、膿瘍が破れたり、病院で切開して膿が出きってしまうと、痛みも治まり、完治したかのように感じます。実際には、肛門周囲膿瘍によって肛門内と皮膚との間にできた細菌の通り道が、トンネル状にじわじわと広がっていきます。この状態を痔ろうといいます。痔ろう初期の自覚症状としては、いったん痔ろうが完成されてしまうと、違和感や鈍痛、痔ろうによって出来た穴から膿が出て下着を汚す程度です。しかし、排便のたびに細菌に侵されるため、痔ろうは枝分かれして複雑に広がり、肛門周囲にできる出口の穴が複数になる場合もあります。痔ろうになる原因ははっきりしていません。30~40代の人に多く、圧倒的に男性の罹患(りかん)率が高いようです。遺伝的なものではなく、特に発病のきっかけとなる要因も特定できませんから、予防法もありません。あえていうなら、下痢や体の抵抗力の低下を招く不摂生などを避けましょう。

痔ろうの治療はどのように行われますか。

 肛門周囲膿瘍の時点では膿を出す応急処置をすると、症状が消えます。しかし、痔ろうの根本的な治療にはなりません。痔ろうになってしまった場合、手術によって病巣を摘出することが唯一の治療法です。手術で問題となるのが括約筋をいかに傷つけないかということです。括約筋を切れば術後肛門のしまりが悪くなります。複雑な痔ろうの手術は技術的に難しいので、経験の多い病院を選ぶことが肝心です。病巣が深い場合は括約筋温存手術が不可能になってしまうこともあり、早めの受診が必要です。手術に伴う入院期間は軽いものなら2、3日、重症の場合は3週間程度です。まれに痔ろうがガンに移行することもあります。また、難病に指定されているクローン病の合併症として現れる場合もあります。下着に膿が付着したら、痔ろうを疑い専門医に相談してください。

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