2009年12月24日木曜日

「前立腺肥大症の手術」について

ゲスト/ベテル泌尿器科クリニック 三熊 直人 医師

前立腺肥大症の手術について教えてください。
 今日はクリスマス・イブですね。イエス・キリストの生誕の時に、ベツレヘムの郊外で羊飼いたちに御使いたちが現れ、「見よ、すべての民に与えられる大きな喜びをあなた方に伝える」と前置きした後に救い主の生誕を告げました(出典ルカの福音書2章10節)。
 ところで、救い主の生誕と比較できるものではありませんが、新しい前立腺肥大症手術ホルミウム・レーザーを用いたHoLEP(ホーレップ:経尿道的前立腺核出術)の手術は、手術が必要な患者さんにとって、まさに福音(良い知らせ)です。
 HoLEP(ホーレップ)は、尿道内から前立腺の肥大した部分のみをくりぬくように切除するので、従来の前立腺肥大症手術に比べ、1)出血が極めて少ない、2)TURP症候群などの重篤な合併症は起こりにくい、3)術後の痛みが非常に軽い、4)入院期間が短くて済む、などといった特徴があります。

HoLEPは従来の手術よりリスクが低いのですか。
 例として当院での実績を挙げると、2005年1月から2009年11月までにHoLEPの手術件数が1100件で、そのうち輸血を必要としたのがわずか一例のみでした。術後の痛み止めも基本的に必要ありません。手術当日の夜には普通に夕食を食べることができ、翌朝には尿道留置カテーテルこそ入っていますが、通常どおり歩行できる場合がほとんどです。尿道カテーテルの留置期間はだいたい1~3日で、入院期間は患者さんの年齢、前立腺肥大の重症度によって異なりますが、だいたい5~10日間です。
 日進月歩の医学の発展によって、前立腺肥大症の治療薬も長足の進歩を遂げ、多くの患者さんが手術を回避できる時代になりました。しかし、その一方で10~20年前にはほとんど見ることのなかった、前立腺の推定重量が100~200gにも及ぶケースが増えてきています。また、軽い前立腺肥大でも、前立腺の形状によっては手術以外に治療の手立てがない場合も多く見受けられます。
 HoLEPは1990年代後半から欧米を中心に広がり、現在日本でも確実に広まりつつあります。身体への負担、再発のリスクが少なく、入院期間の短縮で実生活への影響も最小限で済みます。患者さんにとっては、まさに福音と言える手術です。

2009年12月16日水曜日

「顎(がく)関節症」について

ゲスト/つちだ矯正歯科クリニック 土田 康人 歯科医師

顎関節症について教えてください。
 顎関節やこめかみなどが口の開け閉め、食べ物を噛(か)む時に痛む。あごを動かした時に「カクカク」「シャリシャリ」「ミシミシ」といった音がする。開閉時に下顎が左右にズレてガクガクする、口がスムーズに開かない。このような症状を顎関節症といいます。20〜30代の女性に多く、小・中学生ではほとんど見られません。原因は一つではなく、いくつかの要因が重なって発症するものと考えられます。食い縛りや歯ぎしり、偏った咀嚼(そしゃく)などが原因として挙げられます。ストレスによって発症することもあり、受験期に発症し、受験が終わると治ることもあります。 原因として一番多いのは、やはりかみ合わせです。治療した歯が、1本高い低いという程度でもかみ合わせに異常が生じ顎関節症を誘発することがあります。反対咬(こう)合、上顎前突、開咬、顎偏位症(下顎が左右どちらかに曲がっている)など、顎関節に負担がかかる人は、注意が必要です。

治療、予防について教えてください。
 治療は症状によりますが、スプリントと呼ばれるマウスピース状のものを使うのが一般的です。歯の一部または全体を覆うもの、上顎用、下顎用などがあります。スプリントによって、顎関節や筋肉への負担を軽くして、歯ぎしりや食い縛りを緩和します。痛みのないかみ合わせを見つけ、その位置で安定させ、きれいなかみ合わせを作ります。 このような処置で改善できないほど重症のあごの異常の場合は、外科矯正が必要になることもあります。いずれにしても症状が軽い方が治療も早くできますので、顎関節に異常を感じたら、矯正歯科や口腔(こうくう)外科など専門医を受診してください。 
 日常生活の中では、片側でかむ癖や、ほおづえも顎関節症を誘発します。うつぶせ寝や、寝る向きの左右の偏りも、顎関節に悪影響を与えます。また、子どものかみ合わせや歯並びの異常は、将来顎関節症の原因となる可能性があります。早めの矯正治療で正しいかみ合わせ、歯列にすることによって、潜在的な要因を取り除くことができます。

2009年12月9日水曜日

「三叉(さんさ)神経痛」について

ゲスト/西さっぽろ脳神経外科クリニック 笹森 孝道 医師

三叉神経痛について教えてください。
 顔の感覚を自分の脳に伝える神経が三叉神経です。この神経に異常が起こり、顔が急に痛くなる病気を三叉神経痛といいます。顔の神経痛なので、顔面神経痛と呼ばれることもありますが、顔面神経という顔を動かす別な神経があるので、正しくは三叉神経痛と呼びます。
特徴は、突発的に起こる非常に激しい痛みです。これは神経が刺激され、興奮して痛みが生じているためです。痛みは一瞬から数秒で治まります。顔を洗う、ヒゲをそる、化粧をする、物を食べるなど顔を刺激することで誘発されることも多いです。このような日常の動作で突然痛みに襲われ、ひどくなると痛みのために食事も十分に取れない状態になります。
 原因は、三叉神経の脳に近い場所が主に血管により圧迫されるために起こります。まれに脳腫瘍(しゅよう)が原因であることもあります。問診を行うことで診断は可能で、さらに原因を調べるために磁気共鳴画像装置(MRI)の検査を行います。MRIの撮り方を工夫することで、圧迫している血管まで詳細に見ることができます。

治療について教えてください。
 カルバマゼピンという薬がよく効きます。しかし、飲み続けていると、徐々に効きが悪くなって、眠気やふらつきなどの副作用が出やすいという欠点があります。薬で症状が治まりきらず、再び強い痛みに襲われるようなら別の治療手段を考える必要があります。神経血管減圧術という脳外科手術により、原因となっている血管を移動させて、圧迫を解除することで治るケースがほとんどです。有効性はもっとも高いのですが、全身麻酔による手術が必要なので慎重な判断を求められます。
 高齢者の場合は、飲み薬も使いにくく、また全身麻酔の手術にも耐えられないなど治療が困難なことも多かったのですが、ガンマナイフという放射線治療も有効な手段です。
 顔を動かす顔面神経にも同じように血管の圧迫が加わる場合があり、顔の筋肉が発作的にピクピクと痙攣(けいれん)する顔面痙攣という疾患になります。これもカルバマゼピンが有効で、圧迫を解除する外科手術が有効です。

2009年12月2日水曜日

「日本人における前立腺の病気」について

ゲスト/芸術の森泌尿器科 斉藤 誠一 医師

日本人の前立腺の病気について教えてください。
 日本人男性の平均寿命は79.1歳で、加齢に伴う前立腺肥大症と前立腺がんは増加の一途をたどっています。また、年齢に関係なく発症する前立腺炎は、高熱を伴う急性前立腺炎から、必ずしも細菌感染を伴わない慢性前立腺炎まであり、後者は排尿障害、陰嚢(いんのう)から肛門にかけての不快感、鼠径(そけい)部の痛み、下腹部の張りなどの症状が持続し、難治性の場合があります。
 前立腺肥大症は夜間の頻尿や排尿困難といった症状によって、患者の活動性と生活の質を著しく低下させるため、積極的な治療をお勧めします。早期であれば投薬で改善しますが、内視鏡的手術が必要な場合もあります。
 前立腺がんは、患者数が急上昇しており、2003年には天皇陛下が手術を受けられ、それをきっかけに一般の人々においても非常に関心の高いがんとなりました。

前立腺がんはどのようながんですか。
 米国では、男性のがん罹患率第1位で、日本でも患者数が増加、現在65歳以上でもっとも多いがんであり、総患者数が2020年には肺がんに次いで第2位まで上昇することが予想されています。診断が早期であれば、手術や放射線療法でほぼ100%の5年生存率が得られますが、進行するとホルモン療法という治療法はあるものの、根治は難しく、転移がある場合の5年生存率は30%程度です。このように壮年期男性の代表的ながんであり、早期診断・治療可能にすることが急務です。
 診断には直腸診、超音波検査、PSA検査が行われますが、中でも血液検査のPSA検査が有用です。米国では65歳以上の75%以上が検査を受けています。50歳を過ぎたら年に1回はPSA検査を受けることをお勧めします。特に身内に前立腺がんになったことがある人は、ぜひ受けてくだい。
 このがんは脂肪の多い食事など食生活を中心とした生活習慣、人種差が現時点で危険因子として挙げられています。中年以降の男性は大豆製品やトマト、ブロッコリーなどの緑黄色野菜、緑茶をたくさん摂取し、日光浴や散歩などの有酸素運動を充分に行いましょう。

2009年11月25日水曜日

「ストレスによる肌のトラブル」について

ゲスト/宮の森スキンケア診療所 上林 淑人 医師

ストレスと肌のトラブルについて教えてください
 ストレスには大きく分けて、疲労や睡眠不足、けが、細菌やウイルス感染など外界から受ける「外的ストレス」と、会社や学校、家庭内などにおける人間関係、試験や受験、仕事上の悩みなど心的な「内的ストレス」の二つがあります。これらストレスは、肌のトラブルの大きな原因になります。
 ストレスを受けている状況では、鉄分・亜鉛・カルシウムといったミネラル類の胃腸からの吸収が悪くなるといわれています。特に亜鉛が不足すると新陳代謝が悪くなり、肌荒れを起こします。
 また、ストレスを受けているとビタミンが多く消費されます。健康な肌を保つのに必要なビタミンA、B群、Cなどが不足し、肌が荒れたりニキビが増えたりします。頬(ほお)が赤くかさかさする、頭がかゆくフケが目立つといった脂漏性皮膚炎が起こることもあります。さらに、乾燥を防ぎさまざまな刺激から肌を守るバリアー機能が低下し、汗・細菌・ハウスダストなどの刺激を多く受け、さまざまな湿疹、皮膚炎が悪化しやすくなります。
 ストレスの影響で皮膚の色素細胞が活性化し、メラニン色素が増えてシミが増えやすくなるといわれています。またストレスは免疫力の低下をまねき、口唇ヘルペス・帯状疱疹(ほうしん)・吹き出物などの原因になります。さらにアトピー性皮膚炎や蕁麻疹(じんましん)などアレルギー症状を悪化させるといわれています。
 「おやじ臭さ」とよく表現される加齢臭も、加齢だけでなくストレスも大きな原因の一つです。男女ともに40歳を過ぎると皮脂の組成が変化し今まではなかった臭いがするようになります。ストレスの多い状況では皮脂が過剰になり加齢臭も強くなります。

これらに対処するにはどうした良いのでしょうか
 まず十分な睡眠と休息が一番大切です。バランスの取れた食事と規則正しい生活も重要です。「自分はストレスと無縁だ」などと思い込まずに自身のストレスを自覚しましょう。肌のトラブル自体がさらにストレスになる場合もあるので、症状があれば受診して、治療することもストレス軽減に役立ちます

2009年11月18日水曜日

「視力検査でわかること」について

ゲスト/ふじた眼科クリニック 藤田 南都也 医師

視力検査について教えてください
 眼科では、さまざまな治療の折に、視力検査を勧めます。視力に不安がないと断る人もいますが、視力検査からはさまざまなことがわかります。単に「視力」といっても眼科で測定する場合は裸眼視力だけではなく、近視や遠視、乱視などの屈折異常、さらに矯正レンズを当てた状態で1.0以上の良好な視力が得られるかどうかの検査まで行います。
 小学生のお子さんがたとえば視力が0.8だったら「授業に支障がないからいいだろう」と考えますが、強い遠視の場合は矯正レンズを当てても良好な視力を得られない場合があります。これは「弱視」という病気です。小学生のうちに治療しないと中学生以降に治療しても効果は期待できず、成人しても、日常生活や運転免許の取得に支障を来たすことにもなります。「見えづらい」原因が遠視なのか近視なのか区別することは難しいので、学校の視力検査で不良を指摘されたら眼科での詳しい検査が必要です。

視力検査で目の病気が見付かるということですね
 成人の場合は高血圧の方に多く発生する網膜静脈閉塞(へいそく)症や、糖尿病網膜症では、部位によっては視力障害が出ます。普段両目で見ていると片目に異常があってもなかなか気付かないものです。眼科で片目ずつ視力を測定して初めて見つかることがあります。
 強度近視の場合は網膜が平均より薄く、網膜剥離(はくり)などの重大な病気を引き起こす可能性がより高くなります。一定以上の近視と判明したら眼底の精密検査をお勧めします。
 また、中年以降で急に手元が見やすくなってきた場合には、白内障が始まり、水晶体の中心部分が固くなって近視化を起こしている場合があります。さらに白内障が進行すれば矯正視力も低下してきますが、裸眼視力の検査だけでは視力低下の原因が老視なのか違うのか判断できません。また、初老以降の年齢では網膜の大切な部分に変性が起こり視力が少しずつ落ちてくる場合もあり、これも視力を測れば眼底の精密検査が必要か判断できます。
 普段から視力や屈折の検査をしておくことは、病気の早期発見につながることが少なくないのです。

2009年11月11日水曜日

「新型・季節性インフルエンザと肺炎」について

ゲスト/大道内科呼吸器科クリニック 大道 光秀 医師

新型と季節性インフルエンザについて教えてください
 インフルエンザの症状は、インフルエンザウイルスの感染後、1~3日間の潜伏期間を経て38~40度の高熱が突然出て、咳(せき)、咽頭(いんとう)痛、倦怠(けんたい)感に加えて、鼻汁・鼻閉、頭痛等が出現します。新型も季節性も症状からは区別できません。ただし、季節性インフルエンザに比べて、新型では下痢などの胃腸の症状が多いようです。新型インフルエンザは、免疫を持っていない人がほとんどで、感染力が強く爆発的に患者数が増えています。治療は季節性のインフルエンザと同様、タミフル、リレンザの効果が認められています。新型ということで、話題になることも多いのですが、季節性インフルエンザと同様の対処で良く、必要以上に恐れることはありません。季節性でも新型でも持病がある方々のなかには、重症化する場合があります。

合併症としてはどのようなものがありますか
 大人でも子どもでも頻度の高い合併症が肺炎です。インフルエンザ肺炎はインフルエンザウイルス自身による肺炎と、インフルエンザ罹患(りかん)後、二次的に、肺炎球菌、ぶどう球菌などの細菌により起こる細菌性肺炎があります。タミフル、リレンザは細菌性肺炎には効果がありません。細菌性肺炎は抗生物質がよく効くので、インフルエンザ後に熱が続く、セキ、きたない痰(たん)が出るなどの症状があれば、細菌性肺炎の可能性があります。小児では呼吸が速い、息苦しそうにしている、顔色が悪い、大人では呼吸困難または息切れがある、胸の痛みが続いている場合は速やかに受診してください。
インフルエンザの合併症で恐ろしいのは季節性でも新型でもごくまれに起こる小児の脳症です。1~2日以内の短期間で昏睡(こんすい)状態になるなどあっという間に症状が悪化します。反応が鈍い、呼び掛けに答えない、意味不明の言動がみられる場合はすぐ医療機関を受診してください。ただ脳症はきわめてまれであり、大人では心配ありません。
 これから季節性のインフルエンザの流行が始まる時であり、呼吸器疾患や糖尿病などの持病がある方々は、持病の治療をきちんと続け、良好な状態にしておくことが大事です。また季節性のインフルエンザワクチンの接種、手洗い、うがい、人ごみを避けるなどが、予防策として効果的です。

2009年11月4日水曜日

「乳児嚥下(えんげ)と成人嚥下」について

ゲスト/医療法人社団アスクトース 石丸歯科診療所 石丸 俊春 歯科医師

嚥下について、教えてください。
 出生後から離乳食開始時期までの乳汁摂取時を乳児嚥下といいます。生後6カ月ごろから口唇(こうしん)や前歯を使った捕食、歯ぐきを使った咀嚼(そしゃく)を伴った固形食の嚥下が始まります。12歳ごろまでに臼歯部分でしっかりかみ、口唇を閉じ、舌を口蓋(こうがい)に押し当てて嚥下するようになり、これを成人嚥下といいます。
 最近はきちんと嚥下ができない子ども、若者が増えています。これは幼児期の食生活や鼻呼吸に問題があります。成人嚥下がスムーズにできないことを異常嚥下といいます。異常嚥下の食事中の状態は次の通りで、飲み込む時に舌が出る、口元が異常に緊張する、食べこぼしが多い、口元に食べ物が付着する、水がないと飲み込めない、固いものがかめない、食べている間に頭や体が不安定に動くなど。
異常嚥下がもたらす問題点としては、歯並びや咬(か)み合わせが悪い、口唇が厚い、口呼吸をする、言葉(発音)が不明瞭、風邪をひきやすい、集中力・持続力が弱いなどがあります。

嚥下異常を改善するにはどうしたらいいですか。
 正常な成人嚥下を身に付けるには、離乳期から学童期までが重要です。
 離乳期は、スプーンによるペースト、軟固形食、固形食へのスムーズな移行によって、口唇と前歯で取り込み、歯ぐきでかむ行動が始まります。ペースト状の離乳食に頼ると、食物が本来持つ適切な堅さのものを食べずに離乳期を終えてしまうことがあります。適切な量を口に入れて、咀嚼しながら、「かんで飲み下す」ということを学ぶ、大切な時期です。
 学童期は、口唇と前歯を使って食物を取り込み、左右の臼歯を使って「もぐもぐかみ」でどろどろの食塊(しょっかい)を形成することを学ぶ時期です。これができずにそのまま成長してしまうことが最近は多くなっています。レトルト食品や冷凍食品などかまなくても飲み下せるものが食卓に上がることが多いせいだと思われます。リンゴやせんべいといった、固い食べ物などをバランスよく食べて、正しい嚥下を身に付けましょう。食事中の正しい姿勢、水や飲み物など汁物以外の水分を取らないことも大切です。

2009年10月28日水曜日

「肛門癌(がん)」について

ゲスト/札幌いしやま病院 樽見 研 医師

肛門癌について教えてください。
 肛門癌は、癌の中でも比較的まれな癌です。肛門の皮膚と消化管のつなぎ目の部分に発生しますので、癌の組織の型が多種多様なのが特徴です。発症率に男女の大きな差はなく、40歳代から増え始め、60歳以上に多く発生します。
 排便時の出血やお尻の腫れ、痛みなどが主な症状で、痔(じ)の症状とほぼ同様です。そのため、「痔になった」と自己診断して市販薬を塗ったり、内科で治療薬を出してもらうなどして、専門医を受診するのが遅くなり、発見が遅れることが多くあります。痔の薬を塗り続けていても、症状が改善されない場合は、肛門癌である疑いがあります。
 専門医にとっては、肉眼で確認しやすい位置にある癌なので、比較的容易に発見することができます。早期発見であれば、肛門癌は完治する可能性が高いので、「痔かもしれない」と思った時点で専門医を受診してほしいと思います。

肛門癌の診断と治療について教えてください。
 肛門癌の診断は、まず肛門周囲の皮膚を視診します。次に触診で肛門と直腸下部を調べます。異常があれば組織サンプルを採取して検査し、癌細胞であるか判断します。
 肛門癌であった場合、早期であれば局所切除、放射線治療、化学療法のいずれか、あるいは組み合わせで治癒が見込めます。進行してしまった場合は、手術によって人工肛門となる場合もあります。特に直腸癌に多い腺癌であれば手術が必要になる確率が高いです。皮膚に発生しやすい扁平(へんぺい)上皮癌であれば、放射線による治療で済む場合もあります。肛門癌は初期症状で痔と勘違いされ、治療が遅れる例が多く、進行してからの治療では再発を繰り返したり、肝臓や肺に転移することもあります。
 まれに痔ろうが慢性化して肛門癌になることがあります。炎症を繰り返して患部が癌化するもので、痔ろうも「たかが痔」と軽く考えないで、きちんと治療しましょう。見た目がいぼ痔や切れ痔のようで、実は肛門癌だったという例もあります。いずれにしても肛門部分の不調は自己診断せず、早めに受診することが、治療の上でも、不安を取り除く上でも一番良い選択です。

2009年10月21日水曜日

「動脈硬化症と糖尿病」について

ゲスト/医療法人社団 青木内科クリニック 青木 伸 医師 

動脈硬化症について教えてください。
 本来の動脈は弾力性がありますが、動脈壁に脂肪などが沈着したり、動脈壁の筋肉に弾力の無い繊維が増えたりすると硬くなります。さらに、血管の内側に粥(じゅく)状のかたまりができ、血管が狭くなり本来の働きが悪くなります。また、かたまりを覆う繊維性皮膜が破れると、中の粥状のものが血管内に流れ出て、その後血栓となって血液の流れを止めてしまいます。心臓の血管が詰まると心筋梗塞(こうそく)、脳では脳梗塞、足では壊疽(えそ)になります。動脈硬化症は生命にかかわる重大な病気ですから、早期に診断、治療を行う必要があります。動脈硬化症による重篤な症状を避けるには、粥状の内容物を減らすことと、内容物を覆っている繊維性皮膜を丈夫にすることが大切ですが、最近では薬物療法が可能になりました。

原因と予防方法を教えてください。
 動脈硬化症は、主にメタボリック症候群の合併症として現れます。危険因子である糖尿病、高脂血症、高血圧症を治療し、管理していくことが大切です。日本には非常に多くの糖尿病患者と予備軍がいます。軽度のうちは自覚症状が無いため、「血糖値が高い」といわれても放置している人が多いのですが、糖尿病があると2~3倍も動脈硬化になりやすいといわれています。動脈硬化症から脳梗塞、心筋梗塞に至ることがあり、高血糖が原因で十数年後に腎不全、失明など重篤な症状に進行する場合もあります。
 治療は主に投薬と日常生活の中での数値管理です。過去1~2カ月間の平均血糖値を表すHbA1cの正常値は5.8%以下ですが、糖尿病患者の場合、この値を6.5%以下にしておくと血管の余病はほとんど出ません。また、糖尿病患者の約半数は高脂血症や高血圧症を合併しています。LDLコレステロール値や中性脂肪値などにも注意が必要です。適切な投薬と数値管理を行えば、日常生活に支障ありません。メタボリック症候群は遺伝的要素も強く、家族に糖尿病や高脂血症の人がいる場合は、若年層でも発症します。食事を野菜中心の和食にする、運動を心掛けるなど、日常生活の見直しも必要です。

2009年10月14日水曜日

「40歳からの眼病予防」について

ゲスト/阿部眼科 阿部法夫 医師 

40歳以降注意すべき目の病気について教えてください。 
 40歳は人生の折り返し点です。健康に恵まれ、体力に自信のある方も、遅かれ早かれ、ふと体力の衰えを感ずることはあるものです。目にも中高年になったら気を付けなければならない病気があります。まず、40歳を過ぎると20人に1人は何らかの緑内障の病態にあるといわれています。緑内障は進行すると視神経の機能を回復する治療が確立されていないため、視野欠損が軽いうちに眼圧下降のための治療が必要です。また糖尿病、高血圧症、メタボリックシンドロームなども放置すると眼底出血の原因となります。
 軽いものは点状、糸状、墨状のものが見える、飛蚊(ひぶん)症の症状が突然現れます。さらに 2〜3個以上の飛蚊症は、網膜剥離(はくり)裂孔の前兆の場合もあり、早期レーザー治療が功を奏します。50歳前後になると加齢黄班変性があります。以前は不治の疾患とされ、経過を見るしかなかったのですが、蛍光・ ICG眼底撮影やOCTなどの新しい検査法ができたこと、光線力学療法、新しい薬物療法などがあり、この分野のスペシャリストによって治療が可能になりました。いずれも最近は増加傾向にあり、予後については楽観はできません。60歳近くなると、水晶体が濁る白内障があります。手術の進歩により予後は良好です。
 そのほか遠視・老視、涙の減少によるドライアイ、逆に増える流涙症、眼瞼(がんけん)下垂なども眼性疲労の原因となります。 

早期発見、早期治療にはどのような注意が必要ですか。
 眼科学の進歩により早期発見・早期治療で進行を遅らせ、失明を防ぐことができます。職場の健康診断で眼底検査、眼圧検査を受けていればいずれも早期発見が可能な疾患です。たとえ眼検診の機会に恵まれない方でも、何らかの目の不調があるとき、眼鏡・コンタクトレンズ作成時などに眼科の検査も同時に受けると早期発見の可能性があります。
 また、不安のある方は、積極的に健診を受けましょう。物がゆがんで見える、夜、車のライトがまぶしい、夕方、以前より暗く感じる、日差しがまぶしい、目が疲れやすい、飛蚊症、閃光(せんこう)が走ることが増えたなどの症状があるときは、年齢のせいと考えず、早めの眼科受診をお薦めします。

2009年10月7日水曜日

「鼻から入れる内視鏡」について

ゲスト/やまうち内科クリニック 山内雅夫 医師

鼻から入れる内視鏡について教えてください
 今まで、胃内視鏡検査をする場合、口から入れる経口内視鏡を用いるのが一般的でしたが、最近は、鼻を経由する経鼻内視鏡の使用が増えてきました。経鼻内視鏡はかなり以前からあったのですが、近年性能が格段に良くなったため、導入する医療機関が急増しています。
 弾力性のあるしなやかなチューブで、直径は5㎜台と、一般的な経口内視鏡の9㎜に比べても極めて細く、スムーズに挿入することができます。画像もクリアな高画質で、視野が広く、ごく小さな病変も発見することが可能です。
 経口内視鏡は挿入時、舌の付け根部分に触れるため、吐き気がしたり、苦しかったりで、患者側の負担が大きかったのですが、鼻から入れると吐き気をもよおすこともなく、痛みもほとんど感じません。診察中に医師と会話ができることも、医師と患者双方にとって大きなメリットになっています。
 また、鎮静剤の使用は不必要ですので、検査後ただちに車の運転なども可能です。

実際にはどのように行いますか。
 上腹部症状のある場合はもちろん、たとえ無症状でも中年期以降の方には定期的な胃カメラによる検査が望まれます。
 まず、鼻づまりがあるか、鼻血が出やすいかなど鼻の状態を確かめます。鼻の状態によっては、経鼻内視鏡ができないこともあります。前処置として、鼻腔(びくう)に局所血管収縮剤をスプレーし、鼻の通りを良くして出血をしにくくします。鼻腔に麻酔薬を注入してから、麻酔薬を塗った内視鏡と同じ太さの柔らかなチューブを挿入し、鼻腔の局所麻酔を行います。これによって、内視鏡が通過するときの痛みが抑えられます。局所麻酔なので、眠くなったりすることはありません。この後、内視鏡が鼻から挿入され、鼻腔、のど、食道、胃、十二指腸と順次観察がなされ、通常数分以内に終了します。
 がんや潰瘍(かいよう)など、食道や胃、十二指腸などの疾患は、早期発見、早期治療が完治への近道です。経口内視鏡を嫌うあまり受診が遅れて症状が進行していることもあります。鼻からの内視鏡は患者側の負担が少ないので、内視鏡検査が苦手でちゅうちょしている人は、一日も早く医師に相談してほしいと思います。

2009年9月24日木曜日

「ピルについて」について

ゲスト/札幌駅前アップルレディースクリニック 工藤正史 医師

ピルについて教えてください。
 ピルには、エストロゲンとプロゲステロンというホルモンが低用量含まれています。このホルモンは通常、女性の卵巣から分泌されているホルモンで、ピルを服用することによって、体のホルモンバランスを妊娠しているときのような状態にさせて排卵を抑制します。ピルは1日1 錠を毎日飲みます。ピルと聞くと「副作用がある」と不安になる人がいますが、多くは何も症状がないか、飲み始めに軽い吐き気、頭痛、不正出血などが見られる程度です。また「ピルを飲むと太りますか?」と聞かれますが、飲んで太るのはホルモン量が多い中用量ピルのことで、低用量ピルで太ることはほとんどありません。
 ピルは避妊の作用以外にもさまざまなメリットがあります。まず、生理周期が規則正しくなり、生理量が減り貧血を軽減します。生理痛も軽くなり、生理前の落ち込みやいらいらなどの精神症状が緩和されます。また、子宮内膜症の進行にブレーキをかけ、ニキビや多毛症の改善にも役立ちます。特に注目されるのは、卵巣ガン、子宮体ガンの予防効果で、 50%もリスクが低くなるといわれています。さらに、良性の乳房疾患と大腸ガンの発生を抑制することは、あまり一般には知られていません。加えて、生理日をコントロールすることが可能です。赤ちゃんが欲しくなったら、ピルの服用を止めれば、3ヵ月以内に90%以上の確率で自然な排卵を回復します。
 ピル服用による効果は、避妊のみならず女性の生活の質を向上させる可能性が高いのです。また札幌市の人工妊娠中絶率はどの年代でも全国平均を大きく上回っているという統計があります。

避妊に失敗した時に飲むピルもあると聞きましたが?
 この方法は、望まない妊娠を避けるために、性交が行われてから72時間以内に中用量ピルを2錠服用し、その12時間後にさらに2錠追加し、服用するというものです。最初の服用が早い方が、避妊効果は高くなります。妊娠を回避できない確率は、10~数%程度といわれています。仮に回避できない場合でも、胎児に悪影響はありません。
 副作用は、悪心嘔吐や頭痛、乳房緊満感などです。ただし、長期に続くものではありません。しかし、これはあくまで緊急避難的な方法であって、常用するものではありません。

2009年9月16日水曜日

「歯科矯正への関心と最新治療」について

ゲスト/E-line矯正歯科 上野拓郎 歯科医師

矯正治療への関心が高まっています。
 「歯並び」に関して、一般の関心は以前と比較して格段に高まっています。特に、親御さんはわが子の歯の健康、歯並びに大変注意を払っておられます。美しく健康的な歯並び、咬(か)み合わせは一生の財産になります。学校の歯科検診でも歯並び、咬み合わせを診ますが、時間も短く環境も整っていない状況下なので、詳細に診察することは難しいです。気になる点があっても、無くても、一度は専門医を受診することをお薦めします。
 歯列矯正は、今では年齢にかかわらず健康な歯がある限りは治療できますが、6〜7歳の永久歯が生え始める時期に治療を開始すると、抜歯をせずに済む可能性も出てきます。受け口、出っ歯などの顎(あご)に問題のあるケースでも、この時期から骨格のコントロールをすることによりスムーズに運ぶ場合があります。
 いずれにしても、6〜7歳くらいに一度矯正専門医に相談し、治療が必要か否か、必要な場合はいつから始めるべきかアドバイスを受けると良いでしょう。
 札幌矯正歯科医会では毎年夏休み前に「みんなの歯ならび教室」を実施しています。無料矯正相談を行っていますので、このような機会を利用して気軽に診てもらうのもいいでしょう。

いざ矯正となると器具が気になります。
 歯の矯正を考えた場合、最も気になる点は「矯正器具が見える」ことだと思います。成人女性や思春期の中高生はもちろん、最近では小学生も見た目を気にします。このような場合は、歯の裏側からの舌側矯正をお薦めします。
 舌側矯正は、正面から見た限りでは、矯正器具が目に付かず、人に知られずに矯正することが可能です。また近年、メーカーの努力で超小型化され、治療法ではストレートワイヤー法が開発され、舌側矯正は飛躍的に進歩しました。これにより、患者さんの痛みや違和感も軽減され、より快適に治療を受けられるようになったわけです。矯正治療を考えていても躊躇(ちゅうちょ)していた方は、ぜひ一度専門医に相談してください。また矯正治療は長期にわたるので、理想の治療を受けられるよう、納得いくまで話し合える専門医を見付けることが大切です。

2009年9月9日水曜日

「尿酸値と痛風」について

ゲスト/北海道大野病院附属駅前クリニック 古口健一 医師

尿酸値と痛風について教えてください。
 尿酸値とは、血液中の尿酸という物質の量を示す数値で、異常に多い状態を高尿酸血症といいます。企業などで行う健康診断で、「尿酸値が高いので痛風に気を付けて」といわれたことがある人も多いと思います。高尿酸血症は痛風の原因で、男女ともにこの値が7.0mg/dL以上で、高尿酸血症と呼ばれます。
 痛風はほぼ男性のみに発病する疾病で、かつて美食とアルコールが原因の「贅沢(ぜいたく)病」などといわれていましたが、最近は珍しくなくなりました。中高年に多かったものが次第に若年化し、現在では30代で発病する人が最も多くなっています。
 痛風といえば、足の指が腫れてひどく痛むといったイメージがありますが、これは「痛風発作」といい、関節にたまった尿酸の結晶が起こす炎症で、足の親指の関節に最も多く、ほかに足首、アキレス腱の付け根、足の甲などにも起こります。通常は一週間程度で治まりますが、放っておくと必ず再発し、次第に複数個所に発作が出たり、ヒザや手首の関節に出たり重症化します。発作を放置し続けると、腎臓に尿酸がたまって腎不全などの原因となります。

予防や治療法を教えてください。
 高尿酸血症は、肥満、アルコールの飲み過ぎ、食べ過ぎ、運動不足、ストレスなどの要因が重なって起こります。日常生活では、肥満の解消やアルコール、特に尿酸値を上げるプリン体を多く含むビールを控え水を充分に飲むこと、また日常的に適度の運動を心掛け、ストレスを発散させることが痛風予防に効果的です。発症してしまった場合は、痛風発作を抑える対症療法として、消炎鎮痛剤を処方します。痛風発作が治った段階で、今度は尿酸値を下げる原因療法として、体の中で尿酸をできにくくする薬、尿の中へ尿酸を出しやすくする薬などを処方します。これらの薬は長期的な服用が必要となります。痛風発作が治まっても、痛風は生涯治療が必要な病気です。
 痛風、高尿酸血症の人は、食事の総カロリーを抑えるとともに、牛焼肉やレバー、ステーキ、カツオ、クルマエビなどプリン体の多い食物を取りすぎないことが大切です。

2009年9月2日水曜日

「アトピー性皮膚炎」について

ゲスト/たけだ皮膚科スキンケアクリニック 武田修 医師

アトピー性皮膚炎について教えてください。
 アトピー性皮膚炎は、大人にも子どもにもよく見られる疾患です。子どもの場合、小児科を受診する場合と皮膚科を受診する場合がありますが、今回は皮膚科の立場からお話しします。
 アトピー性皮膚炎は、かゆみを伴う慢性皮膚炎で、第一の特徴は、乾燥肌であることです。乾燥肌のすべての人がアトピー性皮膚炎ではありませんが、アトピー性皮膚炎の人はほぼ乾燥気味の肌です。乾燥肌に加えて、アレルギー症状があることで、アトピー性皮膚炎となります。アレルギーは、もととなるアレルゲンに過剰に反応することによって起こります。乾燥肌によって肌の免疫機能が劣り、アレルゲンや雑菌の侵入が容易になり、炎症が起こります。さらに、ストレスや不規則な生活など日常生活の中で、アレルギー反応を起こしやすい状況となることも多く、発症の要因は、複合的で単純ではありません。

診断、治療方法について教えてください。
 治りづらい皮膚炎のすべてがアトピー性皮膚炎ではありません。慢性的に繰り返す湿疹(しっしん)がある、皮膚以外のアレルギー性の既往歴がある、家族にアレルギーのある人がいる、などの要素があれば、アトピーを疑い、必要ならば血液検査をしてアレルゲンを特定します。しかし、すべてのアレルゲンが特定できるわけではありません。また、特定できても日常生活から完全に除去するのは困難なのが実状で、多くの皮膚科では除去よりも、治療に力を入れます。
 以前は、アトピーの治療といえば、ステロイド外用薬一辺倒でしたが、副作用などの観点から、最近はステロイドを含まない薬もあります。皮脂膜を厚く丈夫にするスキンケア用保湿剤、治療経過中の色素沈着を薄くするステロイドが入らないアトピー専用の塗り薬などが処方されます。しかし、必要であればステロイドを含む外用薬も処方されます。医師の指示に従って正しく使えば、効果が期待できます。
 いずれにしても、アトピー性皮膚炎の治療は時間が掛かるので、色々な情報に振り回されずに、信頼できる皮膚科医に相談することが大切です。

2009年8月26日水曜日

「矯正治療の理想的な開始時期」について

ゲスト/宇治矯正歯科クリニック 宇治正光 歯科医師

矯正治療を始めるのに年齢は関係ありますか。
 矯正治療の技術は躍進的に進歩しており、歯やその周りの歯周組織が健康であれば、年齢にかかわりなく、多くの症例に対して治療可能であるといえます。骨格的偏位(ずれ)が前後左右に大きい場合には、外科矯正やインプラント(人工歯根)矯正を併用することによって、きれいなかみ合わせにすることが可能です。大人になってから矯正治療を始め、コンプレックスがチャームポイントに変わったという人も少なくありません。

より理想的な矯正開始時期はありますか。
 上顎(がく)前突(出っ歯)を例にすると、一般的に上あごが出ているように思われがちですが、下あごの小ささが原因であることが多いです。このまま放置して成人(あごの成長の望めない年齢)になると、抜歯や外科矯正になる可能性が高くなります。9~11歳で矯正を始めれば、バイオネーターなどの機能的顎矯正装置と呼ばれるものを夜間に寝るときだけ使用し、下顎骨の前方成長を促し、バランスの取れた横顔にすることができます。横にも拡大することができるので、抜歯をする確率も下がることになります。
 すなわち、矯正治療はいくつでも始められますが、適正な時期に開始することで、骨格のコントロールを行い、上下顎をバランスの良い状態にして、抜歯率や外科矯正率を下げることができるのです。決して歯を抜く治療がいけない治療といっているのではなく、適正な時期に始めることによって選択肢が広がるということです。
 また、下顎前突(受け口)の場合、一般的に下あごがより前方に成長するのを抑制したり、小さめの上あごが前方に成長するのを促進したりします。この場合、最適正時期は6~9歳です。乳歯列の時期に、就寝時の装置で治療することもできます。
 お子さんの歯並びが気になる、親御さんの歯並びが悪く、将来が心配という場合は、いずれも、前歯だけを見ていたのでは判断が難しいので、左右のずれも含めて、小学校低学年のうちに一度、専門医に相談することをお薦めします。

2009年8月19日水曜日

「潰瘍性大腸炎」について

ゲスト/琴似駅前内科クリニック 高柳典弘 医師

潰瘍(かいよう)性大腸炎とは、どんな病気ですか。
 大腸の粘膜に炎症が起こり、びらんや潰瘍ができる病気であり、特定疾患(難病)に指定されています。なぜ炎症が起こるかについては、まだ解明されていませんが、最近の研究から遺伝、環境、免疫学的異常が複雑に絡みあって発症するのではないかと考えられています。日本では、1980年代から急速に増加し、現在9万人を超える患者がいます。発症率は男女ほぼ同数で、発症年齢は20代をピークに高齢になるほど減少しますが、60代前半に軽度の増加があります。
 大腸は内側から粘膜層、粘膜下層、筋層、漿(しょう)膜から成り立っていますが、潰瘍性大腸炎はこのうち粘膜層、粘膜下層を中心に炎症が生じ、重篤になると潰瘍が筋層に達することもあります。また、直腸から結腸までの炎症の広がり方によって直腸炎型(直腸のみに炎症)、左側大腸炎型(直腸から横行結腸の左半分までの炎症)、全大腸炎型(大腸全体の炎症)の主に3タイプに分類されます。いつも同じタイプであるというわけではなく、炎症の状況によって変化します。

具体的な症状と治療法について教えてください。
 症状としては下痢や腹痛、粘血便などの大腸の局所症状に加え、発熱、吐き気、頻脈、貧血などの全身症状が起こる場合もあります。さらに合併症として大腸からの出血、穿孔(せんこう)、中毒性巨大結腸症などの腸管に起こるものと、結節性紅斑(こうはん)、壊疽(えそ)性膿皮症などの皮膚症状、結膜炎、虹彩炎などの眼球状、関節痛、関節炎、膵(すい)炎、胆管炎などの腸管以外に出る合併症もあります。
 多くの場合、症状が悪化している時期(活動期)と炎症が落ち着いている時期(緩解期)を繰り返しながら長期間の経過をたどります。原因が解明されていないため、根治は難しく、大腸の炎症を抑えて症状を緩和し、炎症のない状態である緩解(かんかい)期をいかに長く維持していくかが治療目的となります。食事や日常生活の指導、薬物投与、重症例では外科手術を行う場合もあります。10年以上の長期経過例では大腸ガンの発生リスクが高くなるので、定期的な内視鏡による検査が必要です。

2009年8月12日水曜日

「胃食道逆流症」について

ゲスト/佐野内科医院 佐野 公昭 医師

胃食道逆流症について教えてください。
 胃液が食道に逆流することによって起こります。食道粘膜の炎症(ただれ)を伴うものを逆流性食道炎、伴わないものを非びらん性胃食道逆流症と分けています。胸やけ、口の中に酸っぱい液が込み上げてくる、げっぷが出る、のどの違和感、しわがれ声、咳(せき)、心臓・胸部の痛みなどが主な症状です。以前は日本では少ない病気でしたが、食生活の欧米化や高齢化によって患者数が増えました。また、ヘリコバクター・ピロリに感染していない人のほうが、胃酸の分泌が活発なため発症しやすいともいわれています。
 胃食道逆流症が起こる原因として次のことが考えられます。胃の入り口部分を噴門(ふんもん)といいますが、通常はぎゅっと締まっていて胃の中に入った食物などが食道に逆流しないようになっています。加齢などによって、噴門がゆるんだ状態になると、胃液の逆流がおきます。このほかに、食道や胃の蠕動(ぜんどう)運動の低下、肥満やガードルなどの締め付けによる腹圧の上昇、胃液の分泌増加、骨粗鬆(しょう)症などで背中の骨が曲がってくることなども関係していると考えられています。不快感や胸やけによる不眠などのため、日常生活に対する影響が大きいのがこの病気の特徴です。ごくまれにですが、逆流を繰り返しているうちにガンが発生することもあります。

診察、治療について教えてください。
 まずは問診を行い、胃食道逆流症の可能性が高ければ内視鏡検査を勧めています。「胃カメラは苦手」という人も多いでしょうが、鼻から入れる経鼻内視鏡なら不快感も減りぐっと楽になります。検査では胃液の逆流による食道の炎症(ただれ)の有無のほか、潰瘍(かいよう)やガンなどの異常がないかを調べます。胃食道逆流症と診断した場合には胃酸の分泌を抑える内服薬により治療を開始します。
 ほとんどの場合内服薬で症状が改善しますが、食生活や生活習慣の見直しなども大切です。脂肪分の多い食事や炭酸飲料、アルコールなど胸やけを起こしやすいものを控え、腹八分目を心掛けます。就眠前の飲食を避けることも大切です。少なくても2時間前、できれば3時間前からは飲食を控えるようにしてください。就寝時に体の左側を下にすると症状が軽減することがあります。

2009年8月5日水曜日

「リウマチとその治療」について

ゲスト/佐川昭リウマチクリニック 佐川 昭 医師

リウマチについて教えてください。
 関節リウマチは、40歳以上の女性に特に多く発症する疾患で、自己免疫疾患である膠原(こうげん)病の一つです。ほかの全身性エリテマトーデスなどの膠原病に比べ患者数が多いのが特徴です。
 初期症状としては、手のこわばり、関節痛などが代表的です。起床時の痛み、こわばりが何日も続くようなら、関節リウマチの可能性があります。リウマチ専門医を受診した場合は、まず問診で症状の経過と今の状態を確認します。続いて、関節の痛みや腫れ、熱感、屈曲など患部診察を行い、さらに採血やレントゲン写真などで総合的に診断します。レントゲン写真での診断が難しい場合は、超音波診断(関節エコー)やMRI(磁気共鳴画像装置)で詳細に検査します。リウマチもほかの疾病と同様に、早期に発見し、治療を開始することが、その後の症状改善に役立ちます。

リウマチの治療について教えてください
 関節リウマチの場合は、患者さん本人によく理解していただけるよう、病状を説明します。治療の中心は薬物投与ですが、日常生活での注意点を勉強し、リハビリの重要性を実感することもリウマチ治療では重要です。初期治療としては、関節破壊を予防するために、抗リウマチ薬の処方をスタートします。さらに、消炎鎮痛剤、局所または少量のステロイドも考慮します。同時に理学療法、作業療法を用いたリハビリテーションを進めます。このような治療を3カ月以上行っても、痛みや腫れが持続し、炎症反応が見られる場合は、初期治療の効果が不十分であったと考えられます。
 次の段階として、抗リウマチ薬のメトトレキサート製剤による治療を行います。それでも十分に効果が得られないようであれば、点滴薬や皮下注射薬などの生物学的製剤による治療を行います。生物学的製剤は、近年導入された新薬で、現在4社で製造しており、リウマチ治療に効果をあげています。ただし、感染症にかかりやすくなる、高価であるなどの問題点もあります。リウマチは完治の難しい病気ですが、あきらめずに上手に付き合っていくという心構えを持つことが肝心です。

2009年7月22日水曜日

「禁煙治療」について

ゲスト/白石内科クリニック 干野 英明 医師

治療による禁煙について教えてください。
 タバコが健康に悪いのは理解しているし、周囲からも勧められているのに禁煙できないという人は多いでしょう。自分の意思だけで禁煙を成功させるのは、難しいことです。禁煙できない人の大半がニコチン依存症になっていると考えられます。現在では、ひとつの病気として見なされ、禁煙治療は3年前から健康保険適用になっています。実際に健康保険を使って禁煙治療を希望される場合は、禁煙治療を実施している医療機関を受診してください。
 病院では、まずニコチン依存症になっているかどうかを調べます。1日に吸う本数に喫煙年数を掛けて200以上であることと、依存症かどうかの質問票に答えて10点満点のうち5点以上であれば依存症と判断され、保険診療の適用となります。そのほか、禁煙の意思と、治療に同意していることが必要です。

具体的な治療法について教えてください。
 12週間にわたって計5回の診察があります。その都度、禁煙が順調か呼気CO濃度を測定します。使用する薬には、張るタイプと飲むタイプがあります。張るタイプは、ニコチンを含んでいるパッチを8週間にわたって毎日使用します。ニコチンを体に補充するため、理論上はタバコを吸いたくなくなります。パッチを張ったまま喫煙するとニコチン中毒になるので注意が必要です。
 飲むタイプは1日2回錠剤を内服します。飲み薬の場合は、脳の中でニコチン受容体との結合をブロックするため、タバコを吸っても満足感がなくなり、自然と吸いたくなくなります。保険診療の場合、標準として3割負担の方で、計5回の診察と薬代を合わせて、張り薬で1万3000円、飲み薬だと1万7000円ほどです。禁煙の成功率はニコチン依存症の程度にもよりますが、次の受診予定日から1か月以上間隔が空くと脱落とみなされ、1年間たたないと再び保険診療を受けることができません。喫煙により、COPD(慢性閉塞(へいそく)性肺疾患)になったり、ガンや動脈硬化の危険性、皮膚の衰えなど、多くの不利益が生じます。禁煙のメリットを医師からよく聞いて、強い意思をもって、治療してほしいと思います。

2009年7月15日水曜日

「白内障治療における多焦点眼内レンズ」について

ゲスト/大橋眼科 大橋 勉 医師

白内障治療の眼内レンズについて教えてください。
 瞳の後方にある水晶体が濁って起きる視力障害が白内障で、なかでも加齢に伴う老人性白内障が最も多いとされています。治療には点眼薬が有効ですが、最終的には手術が必要になります。現在、日本で多く行われている手術法は、水晶体を包んでいる袋の中の濁りを取り除き、その袋の中に人工レンズを挿入する方法です。
 日本で使われている眼内レンズは、現在のところほとんどが「単焦点眼内レンズ」です。遠く、あるいは近くの一カ所に焦点を合わせたレンズで、濁りがなくなるため見やすく視界が明るくなりますが、裸眼でどこでもよく見えるというわけではありません。焦点が遠くにある場合は、読書や縫い物など手元の作業時には視界がぼやけ、老眼鏡が必要になります。逆に近くに焦点を合わせた場合、外を歩いたり車を運転する時に眼鏡が必要になります。

多焦点眼内レンズについて教えてください。
 多焦点眼内レンズは、遠距離、近距離と2つの距離に焦点が合うように設計されています。今までの単焦点眼内レンズに比べると、遠くにも、近くにも眼鏡なしで焦点が合いやすくなります。
 多焦点眼内レンズでの見え方に慣れるには、個人差はありますが、一般に数カ月程度かかります。場合によっては眼鏡が必要になることもありますが、頻繁に掛け外しする煩わしさからは解放される場合がほとんどです。
 単焦点レンズよりはやや見え方が劣ったり、暗い場所では光が散乱して見えるグレアや、光の周辺に輪が掛かって見えるハローを感じる場合もあります。夜間に車の運転が多い場合などには向いていません。ライフスタイルを考慮して、どちらのレンズを選択するか決めましょう。
 また最近は、片眼に単焦点、他眼に多焦点眼内レンズを入れる方法、片眼に遠方が良く見える多焦点、他眼に近方が良く見える多焦点を入れる方法など検討されております。当院では現在のところ、11人の白内障患者に対して16の多焦点眼内レンズの移植術を行いました。この白内障にかかわる「多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術」は先進医療で保険適用ではありませんが、2008年から基準を満たし認可された医療機関では治療や検査の一部が保険適用で実施されています。
 厚生労働省のホームページ(http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/sensiniryo/kikan.html)で実施医療機関を調べることができます。

2009年7月9日木曜日

「経鼻内視鏡」について

ゲスト/かわばた内科クリニック 川端幹夫 医師

―経鼻内視鏡について教えてください。
 口から入れる胃カメラは、吐き気を伴い、苦しくて「内視鏡検査は二度と受けたくない」という人も少なくありません。これは舌の付け根部分に内視鏡が触れ刺激することで、咽頭(いんとう)反射が起こることが原因です。異物を吐き出そうという防御反応ですが、検査中吐き気を耐えなくてはならない患者さんにとっては大変苦痛です。
 経鼻内視鏡は、その名のとおり、鼻から挿入する内視鏡です。鼻から鼻腔(びくう)を通って食道に入ることで、舌の根に触れることがなく咽頭反射はほぼありませんので、吐き気を耐えながら検査を受ける苦痛から解放されます。検査中に医師との会話が可能でコミュニケーションをとりながら検査を進めることができます。患者さんの負担が少ないので、医師も落ち着いて丁寧に胃内を観察することができます。

―経鼻内視鏡とはどのようなものですか。
 経鼻内視鏡は、5年ほど前から使用されてきましたが、最近、患者さんの評判が良いため、導入する医療機関も増えてきています。
 経鼻内視鏡の直径は5.9㎜程度で、従来の口から入れる胃カメラに比べて半分程度の太さです。鼻を経由しやすいようにしなやかな作りになっており、鼻の通り道が狭い方、鼻血の出やすい方以外のほとんどの患者さんに検査が可能です。
 経鼻内視鏡の挿入前に、鼻の粘膜に局所麻酔をかけますが、従来の口からの内視鏡のように鎮静剤などの注射の必要がないため、検査後すぐに帰宅できるのも利点です。
 死角が少ないため、細い頚部(けいぶ)の食道の観察にも優れています。
 経鼻内視鏡は口から入れる胃カメラより画像が落ちること、ポリープ切除などの処置ができないなどの欠点はありますが、一度経鼻内視鏡を体験した患者さんのほとんどが次回も鼻からの検査を望まれます。初めて検査を受ける方や、以前の検査で苦しい思いをした方には、お薦めの検査方法と思います。
 鼻からの胃カメラを希望される方は、導入している医療機関に相談してください。

2009年7月1日水曜日

「歯の健康と手入れ」について

ゲスト/庄内歯科医院 庄内淳能 歯科医師


歯の健康に対する考え方が今と昔では変わりましたか

 昔は、1日1回歯を磨けば十分、歯医者へは虫歯が痛くなって我慢できなくなってから行く、というのが一般的でした。最近「健康な歯を大切にする」という認識が広まってから、食後は必ず歯磨きをする、異常がなくても歯科医で検診をまめに受ける、というデンタルケアが常識になりつつあります。

 しかし、一定の年齢以上、特に歯科医が少ない地域に住んでいる年配者の中には、歯の日常的なケアをおろそかにし、歯を失う人が少なくありません。いくつになっても手遅れではありませんので、ぜひ歯科医を受診してほしいと思います。多く見られるのが、歯みがき不足による虫歯、歯肉炎です。また、以前入れた歯の詰め物や義歯がまったく合っていないのに、そのまま放置し、歯肉炎やかめない状態になっている場合も多く見られます。ぴったりの詰め物、義歯にするだけで、驚くほど快適になります。


日常の歯の手入れについて教えてください。

 まず、歯科医を受診し、虫歯や歯肉炎などを治療します。一度すべてを治療した状態で、歯の健康を維持するために、正しいブラッシングを歯科医に指導してもらいましょう。やみくもに力を入れず、正しい角度で的確に汚れを落とします。特に歯と歯ぐきの間、歯周ポケットに汚れを残さないようにします。歯の状態に合わせて歯間ブラシ、糸ようじ、デンタルフロスなどを使用することも必要です。ただし、使い方を間違うと歯ぐきを傷めることがあるので、効果的な使い方を歯科医で教えてもらいましょう。

 歯磨きは、食後の習慣にしましょう。口腔(こうくう)内を清潔に保つことで、虫歯や口臭予防以外にもインフルエンザなど感染症予防につながります。

 年に1、2度は歯科医で検診を受けましょう。誕生日などを目安にすると忘れません。進行した虫歯は治療に時間が掛かり、患者側の痛みや金銭負担も重くなりますが、小さな虫歯であれば、ごく短い治療期間で治すことができます。歯石や歯垢(しこう)を落とし、口の中をすっかりクリーニングして、気持ちよく日常生活を送りましょう。


2009年6月24日水曜日

「シェーグレン症候群」について

ゲスト/青空たけうち内科クリニック 竹内 薫 医師 

シェーグレン症候群について教えてください
 シェーグレン症候群は、関節リウマチと同じ自己免疫疾患です。主に40~60歳代の女性に多く発症します。この疾患は、関節リウマチ、全身性エリテマトーデスなどの膠原(こうげん)病に合併する続発性シェーグレン症候群と、合併のない原発性シェーグレン症候群の二種類に大別されます。
 代表的な症状としては、口の渇き、唾液(だえき)が出ない、口が渇いて会話や食事がうまくできない、虫歯が増える、口腔(こうくう)内が痛むなど、口腔乾燥症(ドライマウス)によるもの。涙が出ない、目が乾く、目がゴロゴロする、目が疲れる、目の痛み、目やに、物がゆがんで見えるなど、眼乾燥症(ドライアイ)によるもの。このほかに、鼻が乾く、関節が痛む、皮膚の異常、疲れやすいなどがあります。
 2002(平成14)年度の厚生労働省の調査によると、患者数は7万8千人ほどですが、潜在的な患者数は数十万人で、病気だと気が付いていない人が多いと考えられています。原因は不明ですが、本来体を守るべき免疫システムが、唾液腺や涙腺などの分泌腺まで攻撃してくるため、全身が乾いた状態になります。

診断、治療法を教えてください。
 口唇小唾液腺の生検組織でリンパ球浸潤がある。唾液分泌量の低下が、ガムテスト、サクソンテスト、唾液腺造影、シンチグラフィーなどで証明される。涙の分泌低下がシャーマーテスト、ローズベンガル試験などで証明される。抗SS‐A抗体か抗SS‐B抗体が陽性である。この中の2項目が当てはまれば、シェーグレン症候群と診断されます。
 今のところ完全に治す方法はありませんが、症状を軽くすることはできます。口の渇きには唾液腺を刺激して、唾液の分泌を促す人工唾液などの投薬治療が可能です。また、目の乾きには人工涙液の目薬があります。日常生活では、目薬や飲み物の持参、部屋の乾燥を防ぐ、バランスのとれた食生活などが症状の軽減につながります。
 ドライマウスやドライアイに悩まされているのであれば、一度診察を受けることをお勧めします。診断が確定したら、定期的な受診、検査を怠らず、処方薬をきちんと飲むことも大切です。

2009年6月17日水曜日

「メンタルクリニックの受診」について

ゲスト/優メンタルクリニック 久保 隆一 医師

メンタルクリニックはどういうときに受診するのですか
 メンタルクリニックには、さまざまな方が来院します。具体的な適応症状としては、不眠、不安、うつ、パニック、神経過敏、強迫症状、不登校、過呼吸、動悸(どうき)、体の違和感、下痢、頻尿、過食、嘔吐(おうと)、リストカットなどです。
 よく患者さんから「私は病気なのでしょうか?」と尋ねられますが、自ら病気では、と疑えるということは、少なくとも正常な判断力のある根拠の一つとなります。原因不明の痛みなど、身体的な検査では分からないつらい症状や、薬では治まらない症状も、心から安心することで取り除ける場合が多々あります。薬に頼った治療から、何とか減らしたいという方もいます。精神症状に対する最も大切な薬は化学薬品ではありません。服薬量の大幅な削減に成功した方も数多くいます。
 「性格を変えたい」と言って来る方も多いのですが、その意志と努力だけでも十分に尊敬に値します。治療で大切なのは、症状を強引に押さえ込むことではなく、症状が消退する環境をつくることだと考えます。

どのような治療を行うのですか。
 治療の一つは、身体、個人、自我等の養生など、本人による過去の治療を行います。認知療法、原因療法、行動療法、STT(生活技能訓練)、薬物療法などです。
 もう一つは、精神、心、家庭、病院等のマザーリングなど母性による現在に対する治療。洞察療法、対症療法、嫌忌療法、交流分析療法、伴侶的精神療法、配偶者療法などです。
 さらに、関係、社会、環境、職場等の社会修正など父性による未来の治療があります。父母カウンセリング、対人療法、家庭内システムのゆがみの修正である家族集団療法などです。
 スイスの精神医学者であり分析心理学の創始者であるユングは、「自分を理解してくれると感じる人に会った場合、精神障害者ではなくなる」と言っています。周囲の理解や共感、肯定が、人間にとって大変重要なのです。メンタルクリニックの精神療法とは、本人も含め、家族全員が安心できる状態を作ることです。

2009年6月10日水曜日

「過活動膀胱(ぼうこう)」について

ゲスト/ベテル泌尿器科クリニック 三熊 直人 医師

トイレが近くて困るという悩みをよく聞きますが。

 我慢できないほどの尿意を突然感じる。家事や仕事、電話中に突然トイレに行きたくなる。夜何度もトイレに起きて睡眠が十分でない。トイレが気になって長時間の外出や旅行へ行けないなど、「トイレが近い」「我慢できないほどの切迫感がある」ことで日常生活に支障が出る。このような症状を過活動膀胱といいます。
 日本人では、40代以上の男女8人に1人の割合で過活動膀胱が見られるといわれています。加齢に伴って増加する傾向にあり、「年のせいだから」とあきらめがちですが、治療は可能です。
 原因として多いのは、脳卒中の後遺症などで、脳と膀胱の筋肉を結ぶ神経回路に障害が起きた場合。そして、出産や加齢によって子宮や膀胱、尿道などを支えている骨盤底筋が弱くなった場合です。男性では前立腺肥大に伴う過活動膀胱が多く見られます。

治療方法について教えてください。

 過活動膀胱の一番大きな問題は、切迫した尿意が起こりやすく、尿意をコントロールできなくなることです。治療としては、抗コリン剤の投与が有効です。投薬以外では、尿意を感じても少しの間我慢をして膀胱を訓練する行動療法、尿道を締める力を鍛える骨盤底筋体操などを併用します。
 前立腺肥大症による男性の過活動膀胱では、薬でもある程度は抑えられますが、外科的治療が必要となることも少なくありません。手術は痛みや出血、入院期間が心配でなかなか決心できないという人も多いでしょう。しかし、最新の前立腺肥大症手術であるHoLEP(ホーレップ)では、ホルミウムレーザーを用いることで出血が少なく、術後の痛みも軽く、尿道内カテーテルの留置時間も1〜2日と短く済みます。入院期間は1週間程度です。
 いずれにしても、トイレが近い悩みは日常生活に支障を来たすものです。過活動膀胱は治療できる病気ですから、ぜひ泌尿器科を受診して相談することをお勧めします。

2009年6月3日水曜日

「紫外線と皮膚のトラブル」について

ゲスト/宮の森スキンケア診療室 上林 淑人 医師

紫外線と皮膚の関係について教えてください。

 紫外線が最も強くなるのが5月、6月です。北海道では初夏のさわやかな気候の下、アウトドアやスポーツ、運動会など屋外で過ごす時間が増える時期です。しっかりと紫外線対策をしないと、思わぬ皮膚のトラブルに悩まされます。紫外線には、UVAとUVBがあります。UVAは皮膚を黒くし、皮膚の深くまで入り込んでダメージを与え、シワやたるみの原因となります。UVBは皮膚の表面に作用し赤く炎症を起こすほか、シミやそばかすの原因になります。
 これら紫外線による皮膚のトラブルで代表的なものは日焼けです。また紫外線が原因となり、何らかのアレルギー反応を介して、腕や顔・首など日光露出部に一致して生じる日光過敏性皮膚炎が、この時期増える傾向にあります。本人の体質による場合もありますが、イチジクやセロリなど日光に反応しやすくなる食べ物、普段服用している内服薬、湿布などの外用剤が日光過敏の原因となっている場合もあり注意が必要です。

日光によるトラブルを予防する方法はありますか。

 できるだけ直射日光に当たらないことが重要です。日差しを避け、出掛けるときはつば広の帽子や日傘などを利用しましょう。さらに日焼け止めクリームなどサンスクリーン剤の使用が効果的です。サンスクリーン剤の容器には、SPFとPAが表示されています。SPFはUVBの防御レベルを、PAはUVAの防御レベルを示したものです。SPFは1から50までの数値で表示されます。数値が大きいほどUVBの防御能が高いことになりますが、数値にこだわらず、小まめに塗り直すことが大切です。3~4時間ごとに塗り直すのが効果的です。
 顔や腕には比較的忘れずにサンスクリーン剤を塗りますが、うっかり忘れてしまうのが、うなじから首にかけて、特に耳です。白い服は紫外線を反射しますが、ある程度通してしまうので、長袖を着ていてもその下にも塗りましょう。
 サンスクリーン剤をつけたままにしておくと皮膚が乾燥しやすくなります。クレンジング剤を使ってしっかり落とし、保湿剤などによる肌のお手入れをお忘れなく。

2009年5月27日水曜日

「結核」について

ゲスト/大道内科・呼吸器科クリニック 大道 光秀 医師

結核について教えてください。

 結核は決して過去の病気ではなく、最近急にはやりだしたものでもなく、昔から常にある怖い感染症です。今でも開発途上国を中心に世界中で毎年800万人の患者と300万人の死者を出しています。日本では1951(昭和26)年当時、患者数60万人、死亡者数10万人の「死の病」として恐れられていました。医学の進歩と生活環境の改善により、患者数は減り、結核は過去の病気と思われるまでになりました。ところが、1997(平成9)年から新規患者数が増え始め、以降増減しています。現在、毎年4万人余りの新規患者が発生し、約3000人が結核で亡くなっています。
 肺結核の原因は結核菌です。菌は感染者のクシャミやせきによって飛散し、空気感染する性質を持っています。感染し、すぐ発症する場合と、感染後、発症せずに体内に潜伏し、長い年月の後、突然発症する場合があります。そのため、自覚症状のないまま保菌者になっているということも珍しくありません。

症状と治療について教えてください。

結核の症状は風邪と似ています。せきやたんがでる、体がだるい、微熱が続くなどで、せきが1カ月以上続く場合は、受診してください。ただ、最近日本では慢性のせきの原因として、気管支ぜんそくや咳ぜんそくなどのアレルギー疾患が多いため、検査をせずに診断されると結核の発見が遅れます。一度は胸部写真を撮ってもらう事が大切です。
結核は早く発見しきちんと治療を受ければ必ず治る病気です。3~4種類の薬を6~9カ月服用することで治り、排菌がなければ通院で治すこともできます。治療に一定の時間が必要なので、非常に進行した状態では薬の効果が出る前に死亡することもあります。
一番の問題は、肺結核の治療には時間が必要なことと、内服後は症状が速やかに改善することから、完治していないのに勝手に服薬を中止することです。服薬を中断すると、体に残っている結核菌が抗結核薬への耐性を獲得してしまいます。薬剤耐性を獲得した結核菌による肺結核を「多剤耐性肺結核」といいます。抗生物質への耐性を獲得した結核菌に対しては、有効な治療法が無いため再び「不治の病」となってしまいます。

2009年5月20日水曜日

「外科矯正」について

ゲスト/つちだ矯正歯科クリニック 土田 康人 歯科医師

外科手術による矯正治療について教えてください。

 反対咬(こう)合、上顎(がく)前突、上下の歯が咬(か)み合っていない開咬、顔や顎(あご)が曲がった状態の顎偏位など、顎変形症の症状がひどく、矯正治療のみでは治しきれない場合、外科手術によって治療する方法があります。顎を手術しただけではきれいに咬み合わないので、手術前後に矯正治療を行います。
 矯正専門医と口腔(こうくう)外科が協力し、手術前の治療に約1年、手術後約1年、固定に約1年、合わせて3年ほどの治療期間が必要です。年齢的には、高校生以降の骨が成長し終わった状態で行います。成人してからの治療も可能なので、年齢にかかわらず、まずは専門医の診察を受けてください。見た目を第一に考える美容整形と、咬み合わせを根本的に治療する外科矯正とは異なるため、機能面での配慮が二の次になってしまう場合も見受けられます。

入院期間や費用などが心配ですが。

手術は口の中から行うので、傷あとが顔に残ることはありません。入院期間はだいたい2週間程度です。かつて、このような治療は高度先進医療機関に指定されている大学病院などでのみ許可されていました。しかし、現在は都道府県指定の更生医療機関などの矯正専門医なら、口腔外科と協力して行えるようになりました。
一般の矯正治療は保険診療の対象外ですが、外科治療を伴う場合はすべて保険診療対象となります。著しく咬み合わせがずれているまま放っておくと、発音や咀嚼(そしゃく)、顎関節症など機能面で問題が生じます。また、審美的な面からも悩まれることが多いのも実状です。外科矯正の目的は、あくまで咬み合わせを正常にすることですが、付随して横顔や表情にも健康的な変化が現れることがあります。また、外科治療せずに顎の変形を治したい場合は、永久歯が生えてくる小学校1、2年生のうちに、矯正治療を始めることをお勧めします。ただし、状態によっては成長後の外科手術が必要になることもあります。

2009年5月13日水曜日

「めまい」について

ゲスト/西さっぽろ脳神経外科クリニック 笹森 孝道 医師

めまいについて教えてください。

 脳神経外科の外来では、めまいを訴えて受診される患者さんが多くいらっしゃいます。初めて経験するめまいは、本人にとって非常に恐ろしいものですが、多くは何の後遺症もなく治ってしまう心配のないめまいです。頻度が高いものは内耳障害によるめまいですが、脳の障害で起こる怖いめまいとの鑑別が重要です。症状の強さだけでは、判断できません。言葉のもつれや、手足の脱力、しびれなどが同時に出現しているようなら、脳の障害が疑われますが、中には非常に鑑別の難しいめまいもあります。脳の障害によるめまいには極力早く診断し、治療に入る必要がありますが、その際にはMRIによる診断が有用です。

めまいの診察について教えてください。

内耳という部分は耳の奥の方にあり、音を聞く働きのほかに、体のバランスをとる働きがあります。このため、内耳に障害があるとめまいが起こります。障害といっても多くは一過性のものですが、繰り返すめまいや耳鳴り、聞こえにくさを感じるような場合には、耳鼻科での検査が必要となることもあります。
内耳は脳幹や小脳と呼ばれる脳の部分とつながっており、脳側の障害でもめまい症状が起こります。脳梗塞(こうそく)や脳出血などの脳卒中や、脳腫瘍(しゅよう)などが原因になる場合もあります。椎骨(ついこつ)脳底動脈循環不全症は、脳幹や小脳に血液を送る血管の流れが悪くなってめまい症状を起こすものです。この場合には回転性のめまいがもっとも多く、浮動性のめまいや目の前が暗くなるようなめまいがそれに続きます。血管の流れが悪くなって起こる病気ですから、高齢者や動脈硬化が進んだ方のめまいの場合にあてはまることがあります。椎骨動脈は頚椎(けいつい)という首の骨の中を通っていて、頚椎の老化による骨棘(こつきょく)などによる圧迫でめまいが起こったりもします。
この場合には首を回したりすることによって症状がでます。このようなめまいは脳梗塞などの前触れとなることもあり、MRIやMRA(MRIをつかって血管をみる検査)などで詳しく調べて、脳梗塞などに準じた治療を行ったりもします。

2009年5月7日木曜日

「麻疹(はしか)」について

ゲスト/つちだ消化器循環器内科 土田 敏之 医師

麻疹ついて教えてください。

 麻疹の原因は、感染力が強い麻疹ウィルスで、潜伏期が2週間弱あります。最初は38度程度の発熱があり、咳(せき)や鼻水も出て、風邪にそっくりの症状です。乳幼児では、ほかに下痢(げり)を伴うこともあります。3日程度で一度解熱しますが、今度は1日で39度の高熱になり、赤い発疹(はっしん)が出始め、やがて全身に広がります。
 麻疹は現代の日本でも千人に一人は死亡する疾病です。免疫力が低下するため、中耳炎などを合併することがあり、その中でも大きなものは、脳炎と肺炎です。脳炎にかかると、40%の人に後遺症が残ります。合併症がなければ、主な症状は7~10日程度で回復します。しばらくは免疫力が低下しているので、ほかの感染症にかからないよう十分に注意し、また、1週間は外出を禁止し、感染防止に努める必要があります。
 麻疹が治っても、10年ほどして亜急性硬化性全脳炎が発症する場合があります。突然、学校の成績や仕事の能率が落ち、だんだん体が動かなくなり、意識がなくなって死亡するということがまれにあります。麻疹のウィルスが10年間ひそかに脳に生き続けていることが原因と言われています。

感染予防、予防接種などについて教えてください。

麻疹ウィルスは空気感染なので、同じ部屋にいるだけで感染する可能性があります。マスクをしていても、予防は完全ではありません。感染してしまうと、麻疹にはインフルエンザのような特効薬がありません。唯一、身を守る手段がワクチン接種なのです。
1歳児と小学校入学前年度の1年間は定期接種として麻しん風しん混合(MR)ワクチンの接種が可能です。また、2008年4月から5年間の期限付きで、中学1年生相当、高校3年生相当の方に対象が拡大されました。診察した中・高生の2割は抗体価が下がっていました。1歳で1期目を接種しても、この時点で100人の赤ちゃんのうち2人に免疫が出来ません。2期目の接種も、ぜひ積極的に行ってください。
予防接種の副反応として、発熱、発疹、脳炎が挙げられます。また、感染して3日以内ならワクチン接種で発症を防げる可能性があります。

2009年4月22日水曜日

「ストレスの対処方法」について

ゲスト/五稜会病院 千丈 雅徳 医師

ストレスについて教えてください

 精神的に負荷がかかることを「ストレス」といいます。ストレスの原因は環境や人間関係、経済的、物理的なものまでいろいろあります。ストレスが蓄積すると、イライラや無気力、食欲不振、不眠、うつなどの精神的な症状や、高血圧、胃潰瘍(かいよう)など身体的な症状が現れます。
 しかし、ストレスがまったく無く、平穏で退屈な生活は、挑戦する意欲や困難を乗り越える喜びを感じることができません。人間は適度なストレスと向き合うことによって刺激や緊張が生じ、張合いや生きがいを持って毎日を過ごすことができるのです。大切なのはストレスといかに上手に付き合うかということです。


ストレスの対処方法を教えてください。

 ストレス発散に効果的なのは、「Rest(休養)」「Recreation(気分転換)」「Relax(くつろぎ)」の3つのRです。心身に症状が出る前に3つのRを実践して心と体の健康を守りましょう。
しかし、自身では対処できないと感じたら、すぐに専門機関を訪ねてください。ストレスによる心身の不調で受診した場合、安定剤などの投薬治療のほかに、悩みを分かち合うカウンセリング、対人交流のスキルアップを目指しての認知行動療法などを行います。認知行動療法では、どういうときにどういった心理状態になるかを自身で認識するため、日記をつけるなどして、感情のコントロールを身に付けます。
 また、全国的な傾向として30~50代の男性で、ストレスからうつになる患者が多くなっています。その背景には失業、リストラなど仕事や経済的な不安、将来への不安があります。失職あるいは休職している場合は、パソコン操作などスキルアップをサポートしつつ、同じ悩みを抱える者同士で話し合うなどの復職プログラムを行っています。エアロビクスやウオーキングなどの運動療法も心身の健康を取り戻すのに効果的です。このようなプログラムを実践している病院は、全国的に増加傾向にあります。回復のためには、医師や専門スタッフなどのアドバイスやサポートを上手に利用し、ストレスに対処する能力を身に付けることが大切です。
 政治も経済も人間関係も不安定で長いトンネルの中にいるような私どもです。しかし、WBCで侍ジャパンが優勝して喜んだ方は多いことでしょう。それほどの大きな喜びではなくても、ふと出合ったささやかなうれしいことを心に温めて大切にしてまいりましょう。

2009年4月15日水曜日

「口腔乾燥症」について

ゲスト/石丸歯科 石丸俊春 歯科医師

口腔(こうくう)乾燥症について教えてください。

 口腔乾燥症は、何らかの原因で唾液(だえき)の分泌が抑制され、口腔内が乾燥することによって引き起こされるさまざまな症状のことをいいます。口腔内が乾燥すると、摂食や嚥下(えんげ)に問題が生じたり、発音が不明瞭(めいりょう)になりスムーズな会話ができなくなるなど、口腔機能障害が心配されます。また、唾液の分泌低下により、口腔内の洗浄作用や抗菌作用、pH緩衝作用が低下し、虫歯の多発、歯周病の増加などが心配されます。実際に口が渇いたという感覚はほとんどないため、自覚症状に乏しく、口臭や虫歯になって初めて気が付く場合が多いです。また、唾液にはインフルエンザなど空気による感染症の予防、義歯の安定、口内炎防止などの働きもあり、口腔乾燥症によってさまざまな症状に悩まされる恐れがあります。
 口腔乾燥症は、高齢者ばかりではなく若年層にもみられますが、主な原因としては水分の不足、唾液腺の機能低下、自律神経の不調、薬の副作用、シェーグレン症候群などが考えられます。

予防や改善にはどのようにすればいいですか。

朝食を食べないなど乱れた食生活、会話や動きの少ない長時間のデスクワーク、ストレスの増加などが、唾液の正常な分泌に悪影響を与えます。
唾液の分泌を促すには、以下のような点に気を付けるといいでしょう。
食事や運動などメリハリのある生活、会話機会を持つなど、バランスの良い暮らしを送る。
規則正しく、よくかんで、楽しく食事をする。
こまめに水分を補給する。
唾液腺のマッサージ。
特に高齢者の場合は、食事中の水分補給が大切です。逆に子どもの場合は、食事中に水やお茶で飲み下すと、唾液の分泌が悪くなる可能性があります。食事中の水分は控えめにしましょう。
唾液の分泌不全のほかに、口が閉じにくい、いびきなども口腔乾燥症の原因となります。口が閉じづらいのは、咬(か)み合わせが原因のこともありますから、専門医に相談するといいでしょう。いびきについては、睡眠時無呼吸症候群の可能性があれば内科を受診しましょう。

2009年4月8日水曜日

「内痔核(じかく)の注射療法」について

ゲスト/札幌いしやま病院 樽見 研 医師

内痔核について教えてください。

 痔核は痔の中でも最も多いタイプで、一般に「イボ痔」と呼ばれます。できる部位により、内痔核と外痔核があります。内痔核は、肛門奥の粘膜にある、クッションの働きをするやわらかい盛り上がりの部分が腫れて大きくなってしまう痔です。排便時のいきみ、肛門への負荷や高齢化により、外に出てしまうと脱肛といいます。
 初期には、出血はあっても排便時に肛門外に脱出しません。次に排便時に脱出し自然に元に戻るようになります。さらに進行すると指で押し込まないと戻らなくなり、最終的には常に肛門外に脱出するようになります。
 初期の段階では出血はしますが痛みはあまりなく、進行して痔核全体が肛門外に脱出して戻らなくなったり、頻繁に脱出すると、痔核の根元が裂けるなどして痛みを伴います。当初痛みがないために、受診をためらっているうちに重症化することも多い疾患です。

注射療法について教えてください。

 内痔核は初期では、外用薬や内服薬によって改善しますが、ある程度症状が進むと薬物療法では効果がなくなり、外科手術を行うしか治療法がなくなります。
しかし、最新の治療法として、痔核に直接薬液を注入するALTA注射療法が開発され、2005年に保険適応となりました。これは、注射薬を内痔核に直接注射することによって痔核を縮小させる方法で、メスを入れないため治療後の痛み、出血が少なく、ほとんどが1~2日程度の短期の入院でも治療できます。注射も麻酔をかけてから行うので苦痛はありません。正しく治療すれば副作用の心配もありません。治療後は3週間ほどで、痔核が徐々に縮小します。ただし、あまり進行した痔核では治療できないこともあり、この場合は従来通りの外科手術になります。
 ALTA注射療法は、患者側の負担が軽く合併症の危険もほとんどないのですが、技術的には高度で、講習を受けた専門医のみに施行が許されています。希望する人は、肛門科のある医院に直接尋ねてみるといいでしょう。
 痔もほかの病気と同様に早期治療が肝心です。恥ずかしいなどとは考えずに、気になったらすぐに受診してください。

2009年4月1日水曜日

「白内障」について

ゲスト/ふじた眼科クリニック 藤田 南都也 医師

白内障について教えてください。

 白内障は、目の中のレンズである水晶体が濁る病気です。水晶体が濁ると、視界がかすんだり、物が二重に見えたり、まぶしく見えたりします。進行とともに視力も低下します。一番多い原因は加齢による目の老化で、60歳代で70%、70歳代で90%、80歳以上となるとほぼ100%の人に白内障による視力低下が認められ、老人性白内障と呼ばれます。寿命が現在よりかなり短かった時代についた病名なので、老人と呼ぶのにふさわしくない年齢でも起こります。
 加齢以外の原因では、糖尿病、アトピー体質による発症、外傷などがあります。糖尿病の場合、高血糖が続くことで目の中の硝子体と呼ばれる成分に変化が起こり、早い人では30~40歳代で発症することもあります。アトピーから白内障になるのは、かゆみによる眼部への刺激、および体質が関係していると考えられます。外傷による白内障は、ボールが目にぶつかるなど強い物理的刺激によって発症します。この場合もほかの白内障と同様に自然に治癒することはありません。

白内障の治療について教えてください。

 初期には点眼薬で進行を遅らせることができる場合もありますが、一度起こった白内障を改善させることはできません。かつては、症状が進み、かなり見づらくなるまで待ってから手術をしていた時代があります。当時は現在より、手術のリスクが大きいとされていためです。しかし、最近では技術が大きく進歩し、精密な手術が行われるようになりました。その結果、白内障が進行するとかえって手術が難しくなるため、日常生活に不自由があれば、早めの手術が望ましい場合も増えて来ました。
 白内障手術の麻酔は基本的に局所麻酔で、麻酔時や手術中、手術後も強い痛みを感じることはほとんどありません。濁った水晶体を手術で取り除き、眼内レンズを埋め込む方法が一般的です。
 手術後早ければ翌朝にも視力回復を体感できますが、眼の状態が安定するまではしばらくかかります。強い近視だった人は、術後埋め込んだレンズによって屈折異常が改善し、普段の生活で眼鏡を必要としない時間が長くなることも多いです。
 一度手術した白内障が再発することはありません。ただし、眼内レンズを支えている嚢(ふくろのこと)の後ろが手術後数カ月~数年で濁る「後発白内障」になる可能性はあります。これも、レーザーを用いて外来で日帰り手術も可能です。

2009年3月25日水曜日

「前立腺がん」について

ゲスト/芸術の森泌尿器科 斉藤 誠一 医師

前立腺がんについて教えてください

前立腺がんは欧米に多い病気とされてきましたが、最近では食生活が欧米化したことと高齢化社会になったことから、日本でも急激に増加しています。アメリカでは男性のかかるがんで一番多く、6人に1人が前立腺がんになっているといわれています。この病気を撲滅するために、国をあげて取り組んだ結果、アメリカでの前立腺がんによる死亡は3分の1減少しました。このようにアメリカで前立腺がんの死亡率が大きく減少した理由のひとつに、PSA(前立腺特異抗原)という血液検査により早期がんを発見し、早期治療が行われたことが挙げられます。同様にオーストリアのチロル地方では住民検診にPSA検査を取り入れ、死亡率が大きく減少しました。
特に最近はPSA検査での正常値を従来の4.0から2.5に下げて、より早期にがんを発見し、早期治療を行おうという報告があります。今まで正常とされてきた2.5から4.0の間でも25%の人にがんが検出されます。その中で従来の正常値とされていた4.0の人に、かなりがんの進行が見られる例が30%以上存在しました。

治療法について教えてください。

治療は手術、放射線、薬、経過観察と多岐にわたっています。診断と治療が確立して死亡率が下がることは朗報ですが、日ごろから前立腺がんにならないように予防することも大切な要素です。前立腺がんを予防するためには、脂肪を控え、大豆、トマト、ブロッコリーなどの緑黄色野菜や緑茶を多く取ることがよいとされています。このような食生活を送っている地域では、実際に前立腺がんの発生は少ないのです。
しかし現在の日本の食生活では、今後前立腺がんの増加は明らかです。40歳を過ぎたら、1年に1度はPSA検査を受けましょう。特に身内で前立腺がんになった人がいる方は要注意です。早期発見、早期治療を行えば、前立腺がんは恐い病気ではありません。専門医を受診し、積極的に検査を受けることをお勧めします。

2009年3月18日水曜日

「しわの治療方法」について

ゲスト/緑の森皮フ科クリニック  森 尚隆 医師

しわについて教えてください。

寒い季節は、外気の湿度低下や新陳代謝能力の低下などにより、肌が乾燥しやすくなります。特に目元・口元は皮脂の分泌量が少ないため、かさつきやすく、しわの心配をされる方も多いのではないでしょうか。
 しわ予防の対策の基本は、第一に水分補給です。乾燥から肌を守るということがとても大切なので、化粧水や美容液などを使って十分に保湿して下さい。部屋の暖房は控えめに、加湿することを心掛けてください。
 肌の新陳代謝は睡眠中やリラックスした状態で活発になるので、ストレスをためず、睡眠を十分に取り、食事はバランスよく、特にビタミンCを取るように心掛けて下さい。ビタミンC摂取は、風邪予防とともに、しわの防止にもつながります。

できてしまったしわの治療法はありますか。

顔全体のしわやたるみが気になるのであれば、赤外線領域の波長の光を照射し、コラーゲンの生成を促し、皮膚を引き締める「ソレラタイタン」という治療法があります。同じ光治療で、しみや赤ら顔の改善に効果が高い「フォトセラピー」も、肌の再生力を高めるのに有効です。最近注目されている治療法として、肌のリセットを目的とした「マイクロニードルセラピー」があります。極細針で皮膚に無数の穴を開け、薬剤を皮膚に直接吸収させることでコラーゲンが増え、肌を入れ替えるというものです。
部分的なしわの治療法としては、自分自身の血液を精製し血小板や白血球を濃縮して、気になる部分に注入する「白血球含有多血小板血漿(けっしょう)」注入療法があります。この血小板の中には、グロスファクターと呼ばれる多機能な成長因子が含まれており、組織の修復、コラーゲン産生、ヒアルロン酸産生、血管内皮細胞の増殖や新生などを促進して、肌の細胞を再生します。
できてしまったしわやくぼみに対しては、直接ヒアルロン酸やコラーゲンなどを注入する補充療法が行われています。このように、さまざまな方法がありますので、しわの悩みは専門医やかかりつけの美容皮膚科医へ相談されることをお勧めいたします。

2009年3月11日水曜日

「動脈硬化症と糖尿病」について

ゲスト/青木内科クリニック 青木 伸 医師

動脈硬化症について教えてください。

動脈は本来弾力性があるものですが、動脈壁に脂肪などが沈着したり、動脈壁の筋肉に弾力のない繊維が増えたりすると硬くなります。血管の内側に粥(じゅく)状の塊(かたまり)ができ、血管が狭くなり本来の働きが悪くなります。また、塊を覆う繊維性皮膜が破れると、中の粥状のものが血管に流れ出て、血栓となって血液の流れを止めてしまいます。心臓の血管が詰まると心筋梗塞(こうそく)、脳では脳梗塞、足では壊疽(えそ)になります。動脈硬化症は生命にかかわる重大な病気ですから、早期に診断、治療を行う必要があります。動脈硬化症による重篤(じゅうとく)な症状を避けるには、粥状の内容物を減らすことと、内容物を覆っている繊維性皮膜を丈夫にすることが大切です。

予防方法を教えてください。

動脈硬化症は、主に生活習慣病の合併症として現れます。危険因子である糖尿病、高脂血症、高血圧症をきちんと治療し、管理していくことが大切です。日本には非常に多くの糖尿病患者、そして予備軍がいます。軽度のうちは自覚症状が無いため、「血糖値が高い」といわれても放置している人が多いのですが、糖尿病のかたは2~3倍も動脈硬化になりやすいといわれています。動脈硬化症から、脳梗塞、心筋梗塞に至ることがあり、高血糖が原因で十数年後に腎不全(透析)、失明など重篤な症状に発展する場合もあります。治療は主に投薬と日常生活の中での数値管理です。過去1~2カ月間の平均血糖値を表すHbA1cの正常値は5.8%以下ですが、糖尿病患者の場合、この値を6.5%以下にしておくと血管の余病は出ません。また、糖尿病患者の約半数は高脂血症や高血圧症を合併しています。コレステロール値や中性脂肪値などにも注意を払うことが必要です。定期的な通院を続け、適切な投薬と数値管理を行えば、それまで通りの生活を送ることができます。
生活習慣病は遺伝的要素も強く、家族に糖尿病や高脂血症の人がいる場合は、若者でも注意が必要です。また、食事を野菜中心の和食にするなど、日常生活を見直してみてください。

2009年3月4日水曜日

「女性の薄毛」について

ゲスト/たけだ皮膚科スキンケアクリニック 武田 修 医師

女性の薄毛について教えてください。

薄毛というと男性の悩みというイメージがありますが、最近は女性で悩んでいる方も増えています。髪の毛は、健康な人でも1日100本程度は抜けています。それ以上の脱毛の場合、びまん性、分娩(ぶんべん)後、牽引(けんいん)性、批糠(ひこう)性、脂漏性(しろうせい)などが考えられます。
 中でも女性の薄毛で一番多いのは、びまん性脱毛症で、頭部全体の髪が均等に脱毛して、毛髪が薄くなります。原因としては老化、ストレス、過剰なダイエット、ピルの服用、過度のヘアケアなどが挙げられます。分娩後脱毛症は、女性ホルモンのバランスによるもので、通常は産後1年以内に戻ります。牽引性脱毛症は、ポニーテールなど頭髪が継続して過度に引っ張られることが原因です。髪型を頭髪に負担の掛からないスタイルにすれば、自然に回復します。批糠性脱毛症は乾燥したフケを伴う脱毛症で、過度の洗髪や洗浄力の強いシャンプーによる皮脂の取りすぎが原因です。脂漏性脱毛症は、皮脂の過剰分泌によって頭皮が炎症を起こした状態で、食生活の向上やシャンプーを正しく使うことで改善します。

治療法、予防法について教えてください。

それぞれの脱毛の原因を取り除くことが大切です。服用する男性用育毛剤が病院で処方されるようになって、「自分にも」と受診する女性が増えていますが、女性には効果が期待できません。育毛用サプリメントや育毛剤で、実績のあるものを試してみてもいいでしょう。ただし、効果は人それぞれなので、自分に合ったものを見つけて継続することが肝心です。薄毛の正しい診断とその治療を行っている皮膚科で相談することをお勧めしますが、診察は保険適用となりますが、原因が病気に起因するものの治療以外には保険は適用されません。
規則正しい生活、バランスの良い食生活、ストレスの発散など、髪に良い習慣を心掛けるのも重要です。特に、肌や髪が作られる午後10時~午前2時までの睡眠は大切です。
髪に良い栄養としては、タンパク質、鉄分、亜鉛、ビタミンB群、ビタミンA、C、Eなどがあります。シャンプーも1日1回、就寝前が適切です。

2009年2月25日水曜日

「鼻から入れる内視鏡」について

ゲスト/やまうち内科クリニック 山内 雅夫 医師

鼻から入れる内視鏡について教えてください。

今まで、胃内視鏡検査をする場合、口から入れる経口内視鏡を用いるのが一般的でしたが、最近は、鼻を経由する経鼻内視鏡の使用が増えてきました。経鼻内視鏡はかなり以前からあったのですが、近年性能が格段に良くなったため、導入する医療機関が急増しています。
 弾力性のあるしなやかなチューブで、直径は5㎜台と、一般的な経口内視鏡の9㎜に比べても極めて細く、スムーズに挿入することができます。画像もクリアな高画質で、視野が広く、ごく小さな病変も発見することが可能です。
 経口内視鏡は挿入時、舌の付け根部分に触れるため、吐き気がしたり、苦しかったりで、患者側の負担が大きかったのですが、鼻から入れると吐き気をもよおすこともなく、痛みもほとんど感じません。診察中に医師と会話ができることも、医師と患者双方にとって大きなメリットになっています。
 また、鎮静剤の使用は不必要ですので、検査後ただちに車の運転なども可能です。

実際にはどのように行いますか。

上腹部症状のある場合はもちろん、たとえ無症状でも中年期以降の方には定期的な胃カメラによる検査が望まれます。
まず、鼻づまりがあるか、鼻血が出やすいかなど鼻の状態を確かめます。鼻の状態によっては、経鼻内視鏡ができないこともあります。前処置として、鼻腔(びくう)に局所血管収縮剤をスプレーし、鼻の通りを良くして出血をしにくくします。鼻腔に麻酔薬を注入してから、麻酔薬を塗った内視鏡と同じ太さの柔らかなチューブを挿入し、鼻腔の局所麻酔を行います。これによって、内視鏡が通過するときの痛みが抑えられます。局所麻酔なので、眠くなったりすることはありません。この後、内視鏡が鼻から挿入され、鼻腔、のど、食道、胃、十二指腸と順次観察がなされ、通常数分以内に終了します。
がんや潰瘍(かいよう)など、食道や胃、十二指腸などの疾患は、早期発見、早期治療が完治への近道です。経口内視鏡を嫌うあまり受診が遅れて症状が進行していることもあります。鼻からの内視鏡は患者側の負担が少ないので、内視鏡検査が苦手でちゅうちょしている人は、一日も早く医師に相談してほしいと思います。

2009年2月18日水曜日

「不妊治療」について

ゲスト/札幌駅前アップルレディースクリニック 工藤 正史 医師

不妊について教えてください。

生殖機能が正常なカップルの場合、3カ月以内に約50%、6カ月以内に約70%、1年以内に90%近くが妊娠に至るとされています。不妊治療をいつ開始するかは、夫婦の年齢と妊娠を希望する程度によります。わが国では、2年以上経過しても妊娠が成立しない場合を不妊症と見なし、検査治療を開始することが一般的ですが、欧米では1年という見解が有力です。生殖医療が急速に進歩した現在においても依然として、多くの施設における最終的累積妊娠率(すべての初診患者で最終的に妊娠に至る率)は、50%程度です。残りの50%は、治療が中断されたことになります。不妊症は、ほかの疾患と異なり、治療しなくても本人への影響はありません。その意味では、不妊は病気とはいえないかもしれません。

不妊治療する場合の注意点を教えてください。

 不妊で悩むカップルは10組に1組と多く、2006年は、出生児の55.5人に1人(年間1万9587名)が体外受精・顕微授精などの高度不妊治療によって誕生しているのが現実です。
いつ不妊治療を開始するかは、個人差はありますが、35歳を過ぎると妊娠する能力は低下するので、なるべく早く始めた方が妊娠の確率が高くなるといえます。
治療後2年以内に妊娠する割合は、初診時の年齢が35歳未満で75%なのに対し、35歳以上では50%に低下するとされています。また、38歳を超えている場合は、体外受精胚移植における妊娠率も低下することから、できるだけ早期に治療を開始することが望ましいです。不妊治療を始めると、当然妊娠への期待が高まり、月経が来ると挫折感を感じるなど、心理的消耗を強く感じる場合があります。
人によっては治療期間が数年にわたる場合も少なくありません。さらに、治療の開始と同様に、いつまで治療をするかも難しい問題です。治療を開始する前に、いつまで、どこまでの治療を求めるかを考えておくことも大切です。
不妊治療は、努力をしても報われないかもしれないゴールの見えないマラソンに例えられます。しかし、このマラソンは決して競争ではありません。時には、コースを変更したり、少し休むことが必要です。大切なのは、自身とパートナーの気持ちだと思います。

2009年2月12日木曜日

「歯周病と矯正治療」についてお話を伺いました。

ゲスト/E-line矯正歯科 上野 拓郎 歯科医師

歯周病について教えてください。

 35歳以上の8割を超える人がかかっているといわれる歯周病。歯や歯ぐきの周りに付くネバネバとしたプラーク(歯こう)が原因となる、歯の周辺組織の病気です。初期は歯ぐきが赤く腫れている状態で、歯を磨いた時や堅いものをかむと出血し、歯と歯ぐきの間に浅い歯周ポケットができ、歯肉炎と呼ばれます。
 さらに炎症が進むと、歯周ポケットが深くなり、歯槽骨と呼ばれる歯を支えている骨を溶かし始めます。この状態を歯周炎と言いますが、虫歯のような痛みがないため、なかなか自分では気が付かず、進行すると歯槽骨がやせ、歯がグラグラするようになり、放っておくと最終的には抜けてしまいます。
 歯周病は細菌による感染症であり、同時に生活習慣病という側面もあります。ストレスや喫煙、間食などが症状を悪化させます。

歯周病と矯正治療について教えてください。

 かみ合わせ、歯並びが悪いと、どうしても磨き残しができやすくなり、歯周病になる確率が高くなります。特に上顎(がく)前突や開咬(かいこう)は、口が閉じづらく歯ぐきが乾きやすいため、歯周病のきっかけになります。かみ合わせると、一部分だけ強く当たる場合も注意が必要です。
きれいな歯並びであれば、正しくブラッシングができ、歯周病の予防になります。
最近では、大人になってから矯正治療を始める人も珍しくありませんが、歯周病を持った患者さんも少なくありません。このような場合は、歯科医と矯正歯科医が連携し、まず歯周病の症状を改善した後に、矯正治療を始めるというのが一般的です。
また、矯正治療中の器具によってブラッシングがうまくできないと、歯周病の原因となるプラークが残りやすくなるので、注意が必要です。
矯正治療も歯周病予防も、長く自分の歯で食事を楽しむために重要です。歯の手入れを完璧に、と思っても素人の手では限界があります。定期的にプロによる歯のクリーニングPMTC(Professional Mechanical Tooth Cleaning)を受け、プラークコントロールをした上で、自分自身の手によるセルフケアを行いましょう。

2009年2月4日水曜日

「マイコプラズマ感染症」について

ゲスト/琴似駅前内科クリニック 高柳 典弘 医師

マイコプラズマ感染症について教えてください。

 マイコプラズマは、正式には「Mycoplasma pneumoniae」という名前で、細胞壁を持たないため細菌とウイルスの中間に位置する病原体といわれています。以前は4年に一度オリンピックのある年に流行し、好発年齢は乳幼児から若年成人に多いといわれていましたが、近年その傾向は失われ、毎年、地域的に小流行がみられ、秋季から冬季にかけてやや多くなる傾向にあり、高齢者の感染も増加しています。感染の頻度は小児で6割以上、成人では実に9割以上の人が一度は感染しているとされており、日常よくみられる感染症です。
 マイコプラズマによる肺炎は、肺炎全体の30~40%を占めているとされていますが、実際に感染して肺炎までに至る頻度は3%前後で、その発生率はかなり低いと思われます。感染様式は感染患者からの飛沫(ひまつ)感染により、病原体は進入後、粘膜表面の細胞外で増殖を開始し、気管、気管支などの粘膜上皮を破壊します。気道粘液への病原体の排出は初発症状出現後、2~8日とみられ、潜伏期は4日~3週間。最初の吸入菌量によって変わります。

症状、治療について教えてください。

 主な症状は発熱と咳(せき)です。最初は全身けん怠感、発熱と頭痛で始まることが多く、咳は初発症状出現後3~5日くらいから始まり、経過に従い徐々に強くなり、解熱後も3~4週間と長期間続きます。症状は罹患(りかん)年齢によってかなり差があり、また中耳炎、発疹(はっしん)、無菌性髄膜炎、脳炎、肝炎、溶血性貧血、心筋炎、関節炎など、さまざまな疾患を引き起こすことも特徴の一つです。
最近ではマイコプラズマ感染が喘息(ぜんそく)の発症や悪化に関連することが指摘されており、抗生剤を投与して治療したことにより喘息が改善したという報告も多く見られます。治療としては、ペニシリン系やセフェム系の抗生剤は効かないため、マクロライド系やテトラサイクリン系あるいはニューキノロン系の抗生剤を一定期間投与することで改善します。
予防に関しては、流行時の手洗い、うがいの励行などの一般的な予防法と、感染者との濃厚な接触を避けることです。

2009年1月28日水曜日

「急性冠症候群」について

ゲスト/北海道大野病院附属駅前クリニック 古口 健一 医師

急性冠症候群について教えてください

心臓は、全身の筋肉や臓器に血液を送るポンプの役割を果たしていますが、心臓自体も血液を必要としています。心臓の筋肉(心筋)への流入血液が減少し、ポンプ機能を担うために必要な酸素消費量をまかなえなくなって、引き起こされる病気を総称して虚血性心疾患と呼びます。
心臓を取り巻いている冠動脈が動脈硬化や痙攣(けいれん)のために狭くなり、酸素の需要・供給バランスがくずれた状態が狭心症で、血栓などで完全にふさがり心筋が壊死(えし)してしまった状態を心筋梗塞(こうそく)症といいます。
 最近では、心筋梗塞に移行しやすいと考えられる狭心症を「不安定狭心症」といい、進行して急性心筋梗塞へ、さらに心臓突然死に至る一連の病態を「急性冠症候群」と呼んでいます。

予防や治療方法について教えてください。

動脈硬化とは、血管が硬くなり内側に脂肪などがたまって血管が細くなってしまうものをいいます。原因は老化、体質、食生活などです。血管の内腔が狭くなるため、血液が流れにくくなり、硬化がさらに進み血栓ができてしまうと血管が詰まって一時的に流れが止まります。この現象が冠動脈で起きると虚血性心疾患、脳動脈で起きると脳卒中になります。
冠動脈疾患の危険因子としては、喫煙、高血圧症、高脂血症、糖尿病、肥満、ストレス、過労などが挙げられます。メタボリックシンドロームの予防、健康的な食生活、ストレスの軽減など、日常生活での取り組みが予防につながります。
急性冠症候群は一刻を争う事態なので、救急車などで直ちに救急病院へ入院し、治療を開始する必要があります。薬物療法としては、抗凝血薬、抗血小板薬、血管拡張薬の投与を行います。急性心筋梗塞の場合や、薬物投与の効果がない不安定狭心症の場合は、冠動脈造影を行い、冠動脈に高度の狭窄(きょうさく)を発見した場合は、カテーテルによる冠動脈形成術を行います。カテーテル治療には、経皮的冠動脈形成術(PTCA)や、ステント術(PCI)を行いますが、場合によっては、外科手術の冠動脈バイパス術を行います。

2009年1月21日水曜日

「リウマチの診断と治療」についてお話を伺いました。

ゲスト/佐川昭リウマチクリニック 佐川 昭 医師

リウマチの診断について教えてください。

リウマチクリニックを初めて訪れる患者さんは、関節のこわばり、痛み、腫れなどの自覚症状があり、不安に思っている方がほとんどです。医師としては、初期のリウマチを見逃さないよう慎重に診断する必要があります。初期リウマチの発見は難しいものです。初診時の流れとしては、まず、患者さんの話をよく聞いて、「リウマチ」を疑う症状を見つけます。症状が持続的でしつこければ、より疑いが強くなります。本人持参の資料、メモ、検診表などを見て、丁寧に診察します。診察では特に「腫れ」に注目します。握力も大事な診断基準です。診断基準表に記入し、診断の目安をつけます。腫れの具合が分かるよう写真撮影や、その時点で異常がなくてものちに比較が可能なレントゲン撮影も欠かせません。
 MRIやエコーも可能な限り積極的に行います。血清検査はとても有用です。基準値以下でも症状が持続する場合は注意深く観察します。また、不明、未確定で重要と思われるケースについては、多方面から意見を聞き、検討を重ねます。

リウマチの治療について教えてください。

リウマチの完治は難しいですが、良い薬が出ているので、進行させずに上手に付き合っていくことができる場合が多いです。そのためには、早期発見・治療が肝心です。
具体的には、関節破壊を予防するためにできるだけ早くから抗リウマチ薬を使用します。炎症や痛みがある場合は、ステロイド薬や非ステロイド性抗炎症薬を使用する場合もあります。
最近では、インフリキシマブやエタネルセプトなどの生物製剤が出て、リウマチ治療に効果をあげています。症状を和らげるだけでなく、関節の破壊を食い止める効果があり、発症以前と変わらずに生活できる場合もあります。ただし、肺炎など感染症にかかりやすくなる、高価であるなどの問題点もあります。納得できるまで医師に相談するとよいでしょう。
平行して、リハビリや湿布、関節注射、病気を正しく理解するための教育なども必要に応じて行います。関節の変形や脱臼などが起こった場合は、外科手術を行うこともあります。

2009年1月14日水曜日

「ぜんそくや慢性の咳(せき)の吸入薬」について

ゲスト/白石内科クリニック 干野 英明 医師

ぜんそく、慢性の咳の吸入薬について教えてください。

ぜんそくはさまざまな原因による気道局所の炎症や気管支内腔の狭さくによって起こります。治療薬としては、より少量で効果が得られ、全身への副作用がより少ないという点から、気道へ直接薬剤を吸入することが中心となります。吸入薬の種類としては、ステロイド薬、β2(ベータ ツー)刺激薬、抗コリン薬、クロモグリク酸ナトリウムなどがあります。中でもステロイド薬は、ぜんそく治療における最も効果的な抗炎症薬で、早期に開始するほど効果があるといわれています。吸入ステロイド薬は、ぜんそく発作が起きた時に使うのではなく、毎日使用することによって発作が起こりにくくなります。また、吸入ステロイド薬の中には妊娠中も安全に使えるものがあります。

吸入ステロイド薬に副作用はありますか。

主な副作用は、声がかれる、口腔・咽頭カンジダ症が発生することです。声がかれる場合は一度薬剤を中止するか、起きにくいタイプのものに変えます。吸入後は、必ずうがいをすることが大切です。吸入ステロイド薬にβ2刺激薬を追加することもあります。β2刺激薬は気管支拡張作用があり、吸入ステロイド薬と併用すると効果が増します。β2刺激薬には、短時間作用型と長時間作用型があり、短時間作用型は発作が出た時に使用します。しかし、これに頼って使用回数が多くなると、ふるえが現れる振戦、動悸(どうき)、頻(ひん)脈などが出現します。吸入ステロイド薬と併用するのは長時間作用型です。現在使われている吸入薬は、大別するとドライパウダー吸入と定量噴霧吸入があります。ドライパウダー吸入は自分の吸う力で薬剤が気管に入ります。定量噴霧吸入は噴霧と吸気のタイミングをうまく同調させないと効率良く薬剤が入りません。吸入薬治療を開始してから症状が落ち着いてきた場合、いつまで続けるかは個人差もあり、一概にいえませんが、中止後に再発することも珍しくありません。
慢性的な咳の中に、ぜんそくの前段階ともいわれる咳ぜんそくがあり、女性に多い傾向があります。3割ほどの人がぜんそくに移行しますが、吸入ステロイド薬によって予防することができます。
吸入薬にはそれぞれ特徴があり、使用する場合には医師に相談の上、自分に合ったものを処方してもらいましょう。吸入薬治療を開始したら自己判断で中止しないことが大切です。

2009年1月7日水曜日

「多焦点眼内レンズによる白内障治療」について

ゲスト/大橋眼科 大橋 勉 医師

白内障の眼内レンズについて教えてください。

白内障は瞳の後方にある水晶体が濁って起きる視力障害です。なかでも加齢に伴う老人性白内障が最も多いとされています。治療には点眼薬が投与されますが、最終的には手術が必要になります。現在、日本で多く行われている手術法は、水晶体を包んでいる袋の中の濁りを取り除き、その袋の中に人工レンズを挿入する方法です。
 現在、日本で使われている眼内レンズは、ほとんどが「単焦点眼内レンズ」です。遠く、あるいは近くの一カ所に焦点を合わせたレンズで、濁りがなくなるため、見やすく視界が明るくなりますが、裸眼でどこでもよく見えるというわけではありません。焦点が遠くにある場合は、読書や縫い物など手元の作業時には視界がぼやけ、老眼鏡が必要になります。逆に近くに焦点を合わせた場合は、外を歩いたり、運転する時に眼鏡が必要になります。

多焦点眼内レンズについて教えてください。 

多焦点眼内レンズは、遠距離、中距離、近距離など複数に焦点が合うように設計されています。今までの単焦点眼内レンズに比べると、遠くにも、近くにも眼鏡なしで焦点が合いやすくなります。日本では認可されたばかりで、まだ症例数は少ないですが欧米では増加傾向にあります。
多焦点眼内レンズでの見え方に脳が慣れるには、年齢や個人間の差はありますが、一般に数カ月程度かかるといわれています。また、単焦点眼内レンズに比べ、遠くも近くも焦点が合いやすいですが、自由にピントを変えることができる見え方とは異なります。場合によっては眼鏡が必要になることもありますが、ひん繁にかけ外しする煩わしさからは解放されます。
単焦点レンズよりは見え方が劣ったり、暗い場所では光が散乱して見えるハローや、光の周辺に輪が掛かって見えるグレアを感じる場合もあります。夜間に車の運転が多い場合などには向いていません。どちらのレンズにするかは、医師と話し合い、ライフスタイルを考慮して選択することをお勧めします。当院では昨年8人の白内障患者に対して多焦点眼内レンズの移植術を行いました。