2009年7月15日水曜日

「白内障治療における多焦点眼内レンズ」について

ゲスト/大橋眼科 大橋 勉 医師

白内障治療の眼内レンズについて教えてください。
 瞳の後方にある水晶体が濁って起きる視力障害が白内障で、なかでも加齢に伴う老人性白内障が最も多いとされています。治療には点眼薬が有効ですが、最終的には手術が必要になります。現在、日本で多く行われている手術法は、水晶体を包んでいる袋の中の濁りを取り除き、その袋の中に人工レンズを挿入する方法です。
 日本で使われている眼内レンズは、現在のところほとんどが「単焦点眼内レンズ」です。遠く、あるいは近くの一カ所に焦点を合わせたレンズで、濁りがなくなるため見やすく視界が明るくなりますが、裸眼でどこでもよく見えるというわけではありません。焦点が遠くにある場合は、読書や縫い物など手元の作業時には視界がぼやけ、老眼鏡が必要になります。逆に近くに焦点を合わせた場合、外を歩いたり車を運転する時に眼鏡が必要になります。

多焦点眼内レンズについて教えてください。
 多焦点眼内レンズは、遠距離、近距離と2つの距離に焦点が合うように設計されています。今までの単焦点眼内レンズに比べると、遠くにも、近くにも眼鏡なしで焦点が合いやすくなります。
 多焦点眼内レンズでの見え方に慣れるには、個人差はありますが、一般に数カ月程度かかります。場合によっては眼鏡が必要になることもありますが、頻繁に掛け外しする煩わしさからは解放される場合がほとんどです。
 単焦点レンズよりはやや見え方が劣ったり、暗い場所では光が散乱して見えるグレアや、光の周辺に輪が掛かって見えるハローを感じる場合もあります。夜間に車の運転が多い場合などには向いていません。ライフスタイルを考慮して、どちらのレンズを選択するか決めましょう。
 また最近は、片眼に単焦点、他眼に多焦点眼内レンズを入れる方法、片眼に遠方が良く見える多焦点、他眼に近方が良く見える多焦点を入れる方法など検討されております。当院では現在のところ、11人の白内障患者に対して16の多焦点眼内レンズの移植術を行いました。この白内障にかかわる「多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術」は先進医療で保険適用ではありませんが、2008年から基準を満たし認可された医療機関では治療や検査の一部が保険適用で実施されています。
 厚生労働省のホームページ(http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/sensiniryo/kikan.html)で実施医療機関を調べることができます。

人気の投稿

このブログを検索