2009年5月27日水曜日

「結核」について

ゲスト/大道内科・呼吸器科クリニック 大道 光秀 医師

結核について教えてください。

 結核は決して過去の病気ではなく、最近急にはやりだしたものでもなく、昔から常にある怖い感染症です。今でも開発途上国を中心に世界中で毎年800万人の患者と300万人の死者を出しています。日本では1951(昭和26)年当時、患者数60万人、死亡者数10万人の「死の病」として恐れられていました。医学の進歩と生活環境の改善により、患者数は減り、結核は過去の病気と思われるまでになりました。ところが、1997(平成9)年から新規患者数が増え始め、以降増減しています。現在、毎年4万人余りの新規患者が発生し、約3000人が結核で亡くなっています。
 肺結核の原因は結核菌です。菌は感染者のクシャミやせきによって飛散し、空気感染する性質を持っています。感染し、すぐ発症する場合と、感染後、発症せずに体内に潜伏し、長い年月の後、突然発症する場合があります。そのため、自覚症状のないまま保菌者になっているということも珍しくありません。

症状と治療について教えてください。

結核の症状は風邪と似ています。せきやたんがでる、体がだるい、微熱が続くなどで、せきが1カ月以上続く場合は、受診してください。ただ、最近日本では慢性のせきの原因として、気管支ぜんそくや咳ぜんそくなどのアレルギー疾患が多いため、検査をせずに診断されると結核の発見が遅れます。一度は胸部写真を撮ってもらう事が大切です。
結核は早く発見しきちんと治療を受ければ必ず治る病気です。3~4種類の薬を6~9カ月服用することで治り、排菌がなければ通院で治すこともできます。治療に一定の時間が必要なので、非常に進行した状態では薬の効果が出る前に死亡することもあります。
一番の問題は、肺結核の治療には時間が必要なことと、内服後は症状が速やかに改善することから、完治していないのに勝手に服薬を中止することです。服薬を中断すると、体に残っている結核菌が抗結核薬への耐性を獲得してしまいます。薬剤耐性を獲得した結核菌による肺結核を「多剤耐性肺結核」といいます。抗生物質への耐性を獲得した結核菌に対しては、有効な治療法が無いため再び「不治の病」となってしまいます。

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