2009年11月4日水曜日

「乳児嚥下(えんげ)と成人嚥下」について

ゲスト/医療法人社団アスクトース 石丸歯科診療所 石丸 俊春 歯科医師

嚥下について、教えてください。
 出生後から離乳食開始時期までの乳汁摂取時を乳児嚥下といいます。生後6カ月ごろから口唇(こうしん)や前歯を使った捕食、歯ぐきを使った咀嚼(そしゃく)を伴った固形食の嚥下が始まります。12歳ごろまでに臼歯部分でしっかりかみ、口唇を閉じ、舌を口蓋(こうがい)に押し当てて嚥下するようになり、これを成人嚥下といいます。
 最近はきちんと嚥下ができない子ども、若者が増えています。これは幼児期の食生活や鼻呼吸に問題があります。成人嚥下がスムーズにできないことを異常嚥下といいます。異常嚥下の食事中の状態は次の通りで、飲み込む時に舌が出る、口元が異常に緊張する、食べこぼしが多い、口元に食べ物が付着する、水がないと飲み込めない、固いものがかめない、食べている間に頭や体が不安定に動くなど。
異常嚥下がもたらす問題点としては、歯並びや咬(か)み合わせが悪い、口唇が厚い、口呼吸をする、言葉(発音)が不明瞭、風邪をひきやすい、集中力・持続力が弱いなどがあります。

嚥下異常を改善するにはどうしたらいいですか。
 正常な成人嚥下を身に付けるには、離乳期から学童期までが重要です。
 離乳期は、スプーンによるペースト、軟固形食、固形食へのスムーズな移行によって、口唇と前歯で取り込み、歯ぐきでかむ行動が始まります。ペースト状の離乳食に頼ると、食物が本来持つ適切な堅さのものを食べずに離乳期を終えてしまうことがあります。適切な量を口に入れて、咀嚼しながら、「かんで飲み下す」ということを学ぶ、大切な時期です。
 学童期は、口唇と前歯を使って食物を取り込み、左右の臼歯を使って「もぐもぐかみ」でどろどろの食塊(しょっかい)を形成することを学ぶ時期です。これができずにそのまま成長してしまうことが最近は多くなっています。レトルト食品や冷凍食品などかまなくても飲み下せるものが食卓に上がることが多いせいだと思われます。リンゴやせんべいといった、固い食べ物などをバランスよく食べて、正しい嚥下を身に付けましょう。食事中の正しい姿勢、水や飲み物など汁物以外の水分を取らないことも大切です。

人気の投稿

このブログを検索