2009年8月19日水曜日

「潰瘍性大腸炎」について

ゲスト/琴似駅前内科クリニック 高柳典弘 医師

潰瘍(かいよう)性大腸炎とは、どんな病気ですか。
 大腸の粘膜に炎症が起こり、びらんや潰瘍ができる病気であり、特定疾患(難病)に指定されています。なぜ炎症が起こるかについては、まだ解明されていませんが、最近の研究から遺伝、環境、免疫学的異常が複雑に絡みあって発症するのではないかと考えられています。日本では、1980年代から急速に増加し、現在9万人を超える患者がいます。発症率は男女ほぼ同数で、発症年齢は20代をピークに高齢になるほど減少しますが、60代前半に軽度の増加があります。
 大腸は内側から粘膜層、粘膜下層、筋層、漿(しょう)膜から成り立っていますが、潰瘍性大腸炎はこのうち粘膜層、粘膜下層を中心に炎症が生じ、重篤になると潰瘍が筋層に達することもあります。また、直腸から結腸までの炎症の広がり方によって直腸炎型(直腸のみに炎症)、左側大腸炎型(直腸から横行結腸の左半分までの炎症)、全大腸炎型(大腸全体の炎症)の主に3タイプに分類されます。いつも同じタイプであるというわけではなく、炎症の状況によって変化します。

具体的な症状と治療法について教えてください。
 症状としては下痢や腹痛、粘血便などの大腸の局所症状に加え、発熱、吐き気、頻脈、貧血などの全身症状が起こる場合もあります。さらに合併症として大腸からの出血、穿孔(せんこう)、中毒性巨大結腸症などの腸管に起こるものと、結節性紅斑(こうはん)、壊疽(えそ)性膿皮症などの皮膚症状、結膜炎、虹彩炎などの眼球状、関節痛、関節炎、膵(すい)炎、胆管炎などの腸管以外に出る合併症もあります。
 多くの場合、症状が悪化している時期(活動期)と炎症が落ち着いている時期(緩解期)を繰り返しながら長期間の経過をたどります。原因が解明されていないため、根治は難しく、大腸の炎症を抑えて症状を緩和し、炎症のない状態である緩解(かんかい)期をいかに長く維持していくかが治療目的となります。食事や日常生活の指導、薬物投与、重症例では外科手術を行う場合もあります。10年以上の長期経過例では大腸ガンの発生リスクが高くなるので、定期的な内視鏡による検査が必要です。

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