2009年12月9日水曜日

「三叉(さんさ)神経痛」について

ゲスト/西さっぽろ脳神経外科クリニック 笹森 孝道 医師

三叉神経痛について教えてください。
 顔の感覚を自分の脳に伝える神経が三叉神経です。この神経に異常が起こり、顔が急に痛くなる病気を三叉神経痛といいます。顔の神経痛なので、顔面神経痛と呼ばれることもありますが、顔面神経という顔を動かす別な神経があるので、正しくは三叉神経痛と呼びます。
特徴は、突発的に起こる非常に激しい痛みです。これは神経が刺激され、興奮して痛みが生じているためです。痛みは一瞬から数秒で治まります。顔を洗う、ヒゲをそる、化粧をする、物を食べるなど顔を刺激することで誘発されることも多いです。このような日常の動作で突然痛みに襲われ、ひどくなると痛みのために食事も十分に取れない状態になります。
 原因は、三叉神経の脳に近い場所が主に血管により圧迫されるために起こります。まれに脳腫瘍(しゅよう)が原因であることもあります。問診を行うことで診断は可能で、さらに原因を調べるために磁気共鳴画像装置(MRI)の検査を行います。MRIの撮り方を工夫することで、圧迫している血管まで詳細に見ることができます。

治療について教えてください。
 カルバマゼピンという薬がよく効きます。しかし、飲み続けていると、徐々に効きが悪くなって、眠気やふらつきなどの副作用が出やすいという欠点があります。薬で症状が治まりきらず、再び強い痛みに襲われるようなら別の治療手段を考える必要があります。神経血管減圧術という脳外科手術により、原因となっている血管を移動させて、圧迫を解除することで治るケースがほとんどです。有効性はもっとも高いのですが、全身麻酔による手術が必要なので慎重な判断を求められます。
 高齢者の場合は、飲み薬も使いにくく、また全身麻酔の手術にも耐えられないなど治療が困難なことも多かったのですが、ガンマナイフという放射線治療も有効な手段です。
 顔を動かす顔面神経にも同じように血管の圧迫が加わる場合があり、顔の筋肉が発作的にピクピクと痙攣(けいれん)する顔面痙攣という疾患になります。これもカルバマゼピンが有効で、圧迫を解除する外科手術が有効です。

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