2015年12月24日木曜日

やけどの応急処置


ゲスト/宮の森スキンケア診療室 上林 淑人 院長

やけどについて教えてください。
 寒い季節はやけどが増える時季でもあります。熱い飲み物や鍋が食卓をにぎわせることも多いでしょう。子どもに多いのは、テーブルクロスの裾を引っ張って熱いものをひっくり返したやけどや、炊飯器・加湿器の水蒸気によるものです。主婦は「熱くなったフライパンに触れた」「アイロンがもう冷めたと思い触れた」など、多くが家事作業中の事例です。また冬は、湯たんぽや使い捨てカイロによる低温やけども増えます。日常生活における身近な状況で、誰もがやけどを負う危険性があるといえます。
 やけどの症状は赤くなる、腫れる、水膨れになる、痛みなどです。やけどの重症度は、主に熱により損傷された深さとその面積によって判定されます。重症例では赤く盛り上がった瘢痕やケロイドが生じ、また拘縮(瘢痕が硬くなりひきつれること)を残し、手術による治療を要するケースもあります。軽いやけどではほとんど瘢痕を残しませんが、色素沈着や、皮膚が白くなる色素脱出を残すことがあります。

やけどの応急処置について教えてください。
 やけどは、直後の処置が最も重要です。水道の流水で直接冷やすのが最適です。水道が使えない場合は冷却枕や保冷剤などで冷やしましょう。ただこれらを長時間、直接患部に当てると、冷えすぎて凍傷を起こすことがあるので注意が必要です。また、熱冷まし用の冷却シートは、かぶれたり水膨れを破いたりすることがあるのでお勧めできません。
 皮膚が少し赤くなった程度であれば、水で冷やすなど家庭で対処可能ですが、水膨れができるほどのやけどの場合、形成外科や皮膚科などで適切な処置を受けることが大切です。軽いやけどでも、処置を誤ったり細菌感染症を合併したりすると、より深いやけどに移行する可能性があるからです。
 市販の薬にも注意してください。やけどを負ってからの時間や深さなどで、薬は異なるからです。どんなやけどにも効く万能の薬というものはありません。やけどの状態に合わない市販の軟こうをつけて、かえって傷の治りを妨げている例も少なくないです。
 低温やけどは、程度が軽そうに見えても思ったより損傷が深く、ひどい場合は皮膚が壊死を起こしているケースもあり、治るまでに相当の期間を要する場合もあります。楽観することなく病院での治療をお勧めします。

2015年12月16日水曜日

急性期における認知症入院治療


ゲスト/医療法人五風会 さっぽろ香雪病院 森 一也 理事長・院長

急性期における認知症の入院治療の現状について教えてください。
 高齢化が進行し、認知症は、誰もが当事者あるいは介護者となり得る身近な病気になってきました。2015年1月、認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)が策定され、認知症の人の意思が尊重され、できる限り住み慣れた地域のよい環境で、自分らしく暮らし続けることができる社会の実現を目標としました。このため、早期診断・早期対応を軸とし、認知症に伴う行動・心理症状(BPSD)や身体合併症などが見られる場合にも、医療機関と介護施設が連携し、「発症予防→発症初期→急性増悪(ぞうあく)時→発症中期→人生の最終段階」という認知症の容態の変化に応じた、切れ目のない、その時の容態にふさわしい場所での支援、医療・介護サービスの提供が求められています。
 認知症患者が入院に至るケースではBPSDを伴う場合がほとんどであり、興奮、幻覚、妄想、身体攻撃などが高い頻度で見られます。入院期間が3カ月を越える長期入院に至ったケースでは、身体疾患などの合併症や症状の改善しないBPSDの他に、受入施設がないなどの環境的要因や、家族が関わりを拒否する例もあります。このため、入院時から退院に向けた調整を図り、退院後の受け入れ先の確保や地域で利用できる社会資源の有効活用、家族との積極的な連携が行われることが必要です。
 社会から孤立している高齢者が認知症を発症し、地域での生活が破綻した状態で入院してくるケースも増えています。このような場合、病院側で認知症の治療のみならず、生活基盤の再構築や退院後の受け入れ先の確保まで担うこともあり、結果として退院までに時間がかかってしまうこともあります。行政からの依頼で、精神疾患を持っている未治療の高齢者が入院してくるケースもあり、退院後に必要なサービスや受け入れ先の調整、確保に苦慮することも少なくありません。また、要介護認定に時間がかかり、退院に向けた調整が進まないケースもあります。これらのように、BPSDの治療がうまくいかず入院が長期化するというよりも、それ以外の要因で早期退院ができないケースが多いのが実情です。
 これからの精神科病院は、自らの専門性を究めつつ、適切な役割分担を進め、積極的に地域資源と連携し、認知症の人にやさしい地域づくりに関わっていくことが求められています。

2015年12月9日水曜日

ジェネリック医薬品


ゲスト/ふじた眼科クリニック 藤田 南都也 院長

ジェネリック医薬品などについて教えてください。 
 今年も慌ただしい年の瀬が近づいてきましたが、健康保険に加入しているご家庭には、保険者から「処方薬をジェネリック医薬品に換えると、あなたの医療費の支払いが◯◯◯円安くなります」といったジェネリック医薬品の使用促進の案内が届いている方もいらっしゃるでしょう。
 ジェネリック医薬品は先発医薬品より低価格であるため、患者さんの医療費負担の軽減や医療保険財政の改善が期待されており、国策としてその普及が促進されています。しかしながら日本では、欧米に比べて先発医薬品からジェネリック医薬品への変更が進んでいないのが現状です。
 先発医薬品を処方されると高い薬を押し売りされていると誤解される方もいると思いますが、先発医薬品の処方が医療機関の利益の増大につながるとは必ずしも限りません。経営的には、保険診療においてはジェネリック医薬品を使ってもらった方が有利になるような仕組みもあります。
 では、ジェネリック医薬品があるのに、医師から先発医薬品を勧められることが多いのはどうしてでしょうか。日本では、その薬の効き目の元となる「主剤」が先発医薬品と同じであればジェネリック医薬品と認められます。例えば、米国のジェネリック医薬品では主剤はもちろんのこと、保存料や乳化剤などそのほかの成分や濃度も先発医薬品と同等でなければ承認されません。日本の場合、添加物が違うため薬効や副作用に差が出ることが経験上少なくありません。具体的に点眼薬でいえば、主剤以外の成分が異なるため目の内部への浸透が悪く、薬としての効き目が落ちてしまうケースや、防腐剤の副作用のために角膜が傷ついてしまったケースなどを経験しました。もちろんジェネリック医薬品にも優秀な製品はあり、先発医薬品と効能・効果、用法・用量がまったく同一で価格が安いものもありますので、正しい知識で総合的に良い薬を使うことが大切です。
 ところで、最近は医療の規制緩和が進み、従来はさまざまな規制のあった医療機関内部における眼鏡やコンタクトレンズの販売、各種サプリメントの販売が一定の条件の中で認められるようになりました。医師と相談しながら、保険診療以外のメリットも享受できますので、上手な活用をお勧めします。

2015年12月2日水曜日

AGA(男性型脱毛症、Androgenetic Alopecia)


ゲスト/つちだ消化器循環器内科 土田 敏之 院長

AGA(男性型脱毛症、Androgenetic Alopecia)について教えてください。
 AGAは、遺伝や生活環境などさまざまな要因で発症すると考えられている男性特有の脱毛症のことです。
 髪の毛には1本ずつヘアサイクル(毛周期)があり、通常5〜6年で抜け、新たな毛に生え替わります。健康な髪の毛の人でも1日100〜150本が自然と抜け落ちていきます。ところが、AGAは、髪の毛が十分に育つ前、細く柔らかく短いうちに抜け落ちてしまいます。
 AGAの原因は完全には解明されていません。しかし、一般的な男性ホルモン「テストステロン」が、髪の毛の根元にある「5αリダクターゼ」という酵素と結び付いてできる男性ホルモン「ジヒドロテストステロン(DHT)」が影響していることは分かっています。DHTがヘアサイクルを乱し、細く短い髪の毛が増えるために、全体的に薄毛が目立つようになるのです。AGAは頭部全体ではなく、前頭部や頭頂部から起こるという特徴があり、治療を行わなければ徐々に進行していきます。

AGAの治療について教えてください。
 AGAの治療は従来、毛細血管を広げて血行を良くする塗り薬が使われていましたが、現在はDHTの生成を阻害し、毛根の再生を促す投薬治療が中心になります。代表的な薬として知られるのが「フィナステリド」です。フィナステリドは、即効性はありませんが、1年服用した後は約80%の方に医学的な効果が証明されています。ただし、フィナステリドはAGAの進行を抑制するための治療薬であるため、男性ホルモンの血中濃度が低い女性には効果がありません。また、男性ホルモンが原因ではない円形脱毛症や抗がん剤の副作用による脱毛にも無効とされています。20歳以上の男性のみに臨床試験を行っているため、未成年者への使用は安全性や有効性が確立されていません。
 今秋、より強力にDHTの生成を抑制する薬が登場しました。臨床試験においても毛髪の太さ、長さ、頭皮単位面積当たりの本数の増加などAGAに対する効果が確認されています。基本的には6カ月服用を継続して発毛効果を判定し、その後について検討することになります。
 AGAの治療は、科学的根拠に基づく治療、自分に合った治療を医師と共に見つけていくことが何よりも大切です。

2015年11月25日水曜日

薬物乱用・依存


ゲスト/特定医療法人北仁会  いしばし病院 白坂 知信 院長

薬物乱用・依存について教えてください。
 使用した人が交通事故や突然死するなどのトラブルを起こし、全国で社会問題化した危険ドラッグ。規制強化に伴い再び大麻事件の摘発者が急増しています。また、吸い込むと陶酔感が得られる医療用ガスが危険ドラッグの代用品として広まる兆しもあります。薬物乱用は、覚せい剤やシンナー、大麻、危険ドラッグなどの違法薬物だけではありません。家庭にあるような薬、例えば、風邪薬、鎮痛剤、せき止めなどの市販薬、精神科で処方される抗うつ剤、抗不安剤などの処方薬も乱用され、特に若い世代を中心に、薬物問題が深刻化しています。
 薬物乱用・依存者には、自己肯定感に乏しく自信がない、周囲に受け入れてもらえないという孤独感がある、などの特徴がよく見られます。心がこうした状態にあると、その辛さ、苦しさから逃れるために、自分がのめり込める対象である薬物に傾倒していきます。そして、いつしか薬物がなければ、平静でいられなくなってしまうのです。
 気持ちを落ち着かせるため、不安を鎮めるため、集中力を高めるため、ハイになるため…。薬物の幸福感、満足感は一過性なため、繰り返し求めたくなります。脳の中枢に心地よさの記憶が刷り込まれ、忘れられなくなるからです。そして、禁断(離脱)症状の不快感を消し去るため薬物を使い続け、意志の力ではどうすることもできない、精神的・肉体的な悪循環、薬物依存に陥るのです。薬物乱用・依存は、心身をむしばみ、人間関係を破壊します。やがて脳や神経、内臓などを侵され、時にはショックや窒息などで急死することもあります。

薬物依存の治療について教えてください。
 薬物依存は習慣ではなく、脳の病気です。強い依存の状態であれば、自分の力だけで克服するのは困難であり、医療機関での治療が必要です。治療の中心となるのは、認知行動療法です。薬物依存に陥る心理や背景を読み解き、考え方の癖や行動パターンを修正し、依存に歯止めをかけるというものです。
 薬物依存症の克服には、薬物の乱用をやめるだけではなく、薬物の使用をやめ続ける必要があります。そのためには、本人の治療だけでなく、家族への指導や助言も重要です。さらに、民間のリハビリ施設や、当事者らが集まる自助グループでの回復支援も欠かせません。

2015年11月18日水曜日

舌側矯正


ゲスト/宇治矯正歯科クリニック 宇治 正光 院長

矯正に対する最近の傾向について教えてください。
全身の健康やQOL(生活の質)にとって、咬(か)み合わせが重要な役割を果たしていることが一般の方々にも認知されるようになりました。それによって歯列のでこぼこや、上顎(がく)前突、下顎前突、さらに顎の左右のズレを気にする方が増えてきました。
 先日、30代の女性から「長年、でごぼこの歯並びがコンプレックスです。矯正治療を考えていますが、装置を裏からにするか、表からにするか迷っています」と相談を受けました。この女性に限らず、同様の悩みを持つ人は多く、よくこのような相談を受けます。
 咬合(こうごう)の大切さを認識し、矯正治療を受けようとする前向きな姿勢を隠す必要はありませんが、人知れずに治療したいという気持ちも分かります。特に社会人で、接客業など日常的に多くの人に接する職業の人はそう考えるでしょう。また、思春期のお子さんが矯正装置を気にする心情も理解できます。そういう場合は、舌側矯正をお勧めしています。

舌側矯正について教えてください。
 舌側矯正は、歯の裏側に矯正装置を入れます。表からは装置が目に付かないので、見た目にはまったく違和感がありません。ただし、内側にあることから、表側からの矯正(唇側矯正)と比較すると装着の違和感などで劣る部分もありました。しかし、近年これらの問題点を改善した舌側矯正装置「STb」が普及してきました。
 「STb」は、「ST」が大文字、「b」が小文字で表記されるのが正しく、「ST」は考案者2人の頭文字、「b」はブラケット(歯に付ける器具)の略です。「STb」は、従来の裏側に用いていたブラケットと比べると装置が非常に薄く、そして小さくなりました。それにより「話しにくい」「食事がしづらい」「舌が痛い」「歯が磨きにくい」といった今までの舌側矯正の不快感が飛躍的に改善されました。また、歯の痛みもほとんどなく、歯が早く動くともいわれており、より進化した次世代ブラケットといえます。
 「STb」の登場により、話すことが多い職業の人や舌の違和感に対する不安などの理由で、舌側矯正に踏み切れなかった人も気軽に、そして快適に矯正治療が受けられるようになったと思います。ぜひ一度、専門医に相談してみてください。

2015年11月11日水曜日

白内障手術の合併症


ゲスト/大橋眼科 大橋 勉 院長

白内障の手術について教えてください。
 白内障は、瞳の後ろにある水晶体が濁るために起きる視力障害です。治療には点眼薬が投与されますが、最終的には手術が必要です。一般的な手術法は、水晶体を包んでいる袋を残し、袋の中の濁りを超音波で細かくして取り除き、その袋の中に人工の眼内レンズを挿入するものです。従来、眼内レンズは1つの距離に焦点を合わせた単焦点眼内レンズが使われていましたが、最近では遠・近距離の複数に焦点が合う多焦点眼内レンズや、乱視矯正と多焦点が一体となったトーリック多焦点眼内レンズなど、眼内レンズの選択の幅も増えています。

白内障の手術で合併症など注意すべき点はありますか。
 最も合併症が起きやすいのは、進行して褐色になった白内障です。濁りが固くなっているため取り除くのが難しく、また、水晶体の袋を支えるチン小帯が弱くなっているため、濁りが目の中に落下することもあります。
 眼内レンズを支える膜が何らかの原因で手術中に破れることもあります。これを破嚢(はのう)といいます。大きな破嚢は、眼内レンズを挿入できないケースもあり、この場合には後日眼内レンズを目の中に縫い付ける方法で挿入します。
 重度の合併症としては、約4000人に1人というごくまれな状態ですが、術後に眼内で細菌が繁殖し、網膜の障害で失明に至るケースがあります。直ちに硝子体手術を行えば、視力を維持できる可能性が高まります。
 術後、数カ月から数年してまた物が見えにくくなってくることがあります。多くの場合、後発白内障によるものです。眼内レンズの入った、水晶体の袋が濁ってくるのが原因です。後発白内障は再手術の必要はなく、特殊なレーザーを使って簡単に濁りを除くことができます。外来でできる治療で、視力も翌日には回復します。
 白内障手術では、術前にレンズの度数を計算し、移植するレンズの度数を決定しますが、時に誤差が大きく、不満を感じることがあり、その時にはレンズの入れ替えを行うことが可能です。また、多焦点眼内レンズ、トーリック多焦点眼内レンズは、遠方及び近方が見える分、ややくっきり感が落ち、まれにその見え方に慣れない場合は、単焦点眼内レンズに替えることがあります。

2015年11月4日水曜日

最新の糖尿病治療


ゲスト/医療法人社団 青木内科クリニック 青木 伸 院長

最新の糖尿病治療薬について教えてください。
 糖尿病治療薬の最近の進歩は目覚ましいものがあります。飲み薬では、高血糖の時にだけすい臓からインスリンを分泌させ、正常血糖へ下げる「DPP-4阻害薬」があります。この薬は理論的には低血糖を起こさず治療できる新薬で、糖尿病の平均血糖の指標であるHbA1c値を1.0%前後下げます。この薬と同じ系統の注射薬も登場し、「GLP−1受容体作動薬」と呼ばれています。この注射薬はHbA1c値を1.6%前後下げます。1日1回の注射が必要ですが、現在は1週間に1回で済む注射薬も出ました。この系統の注射薬は、すい臓のインスリンを出す細胞を保護し、インスリンの分泌を弱らせない作用も持ち合わせているといわれています。従来まで体重を減少させる糖尿病薬がありませんでしたが、SGLT-2阻害薬が登場し、この薬剤は血糖を下げると同時に体重を減らします。
 一方、インスリン注射薬に目を向けると、「持効型インスリン(1回の注射で24時間効果を持続する長時間作用型インスリン)」があります。飲み薬の治療が効かなくなる症例でも、飲み薬をそのまま服用しながら、1日1回の持効型インスリンの注射を加えると血糖が改善する症例もあります。「混合型インスリン」は、持続型インスリンと超速攻型インスリンの合剤ですが、超速攻型インスリンの含有率が50〜70%の製剤が最近使用できるようになりました。食後血糖の高い症例を治療するのに便利なインスリンです。

糖尿病の治療について教えてください。
 糖尿病の治療が良好といえる目安はHbA1cが7.0%以下になっている場合です。糖尿病の患者さんの約半数が高血圧と脂質異常症(高脂血症)を合併しているといわれています。糖尿病を合併した高血圧の治療はとても重要で、血圧の治療目標値は125/75mmHg以下です。自宅測定の血圧を治療に役立てる方法もあります。この場合使用する測定器は、指先や手首に巻くタイプのものではなく、上腕に巻くタイプのものをお勧めします。脂質異常症の治療目標値は、LDL-コレステロール(悪玉コレステロール)が120mg/dl以下です。以上のようなさまざまな基準値を長期間保てば、眼底出血(失明)、腎臓の悪化(透析)、足の潰瘍・壊疽(えそ)による足の切断など糖尿病に由来する重症の合併症にならなくて済みます。それ以外にも脳梗塞、心筋梗塞などの予防にもつながります。

2015年10月28日水曜日

C型肝炎


ゲスト/福住内科クリニック 佐藤 康裕 副院長

C型肝炎とはどのような病気ですか。
 C型肝炎ウイルスの感染によって肝臓が障害される病気です。血液を介して感染しますが、自覚症状は少なく、気が付かないうちに持続感染し病気が進行します。70%が慢性肝炎となり、20〜30年後に肝硬変へ進展し、肝がんを発症する人もいます。肝がんは日本のがん死亡数第4位で毎年約3万人が亡くなりますが、その70%はC型肝炎が原因となっています。
 C型肝炎ウイルスが発見され、献血の際に感染対策が取られたのは1990年代の初めからでした。このため、これ以前に輸血や血液製剤の投与を受けた人は感染の可能性があります。また、消毒が不十分な器具を用いた入れ墨や薬物乱用にも感染の危険があります。日本における感染者数は約200万人と推測されていますが、症状がなく、感染の機会がないと思っているために検査を受けていない感染者もたくさんいます。札幌市では肝炎ウイルス検査を実施しており、当院を含めた指定医療機関において無料で検査を受けることができます。

治療法について教えて下さい。
 昨年以降C型肝炎に対する新たな治療薬が次々と発売され、治療戦略が大きく変わろうとしています。C型肝炎ウイルスを排除するための治療は、これまでインターフェロンが中心でした。インターフェロンは体内の免疫力を高めてウイルスの活動を鎮静化させる注射剤です。しかし、発熱や倦怠感などの副作用が多く、途中で治療を断念する患者さんもいました。
 これに対して新薬はインターフェロンを使わず飲み薬のみで治療が可能であり、副作用は大きく軽減されます。これらの新薬は、ウイルスを増殖させる酵素の働きを抑える薬で、すでに数種類発売されており、さらに今後も発売が予定されています。治療効果についても、臨床試験では極めて高い治療成績が示され、日本の患者さんの7割を占める1型に対する第一選択薬では、12週間の治療で100%近いウイルス消失が期待できます。短い治療期間で効果が高く副作用も軽微ですが、極めて高価なことが欠点です。しかし申請により医療助成が受けられ、患者さんの負担は軽減されます。
 このようなC型肝炎治療の飛躍的な進歩は、肝がん撲滅に向けた大きな一歩になると期待されています。

2015年10月21日水曜日

認知症


ゲスト/医療法人五風会 さっぽろ香雪病院 本谷 宣彦 診療部長

認知症について教えてください。
 認知症とは「生後いったん正常に発達したさまざまの精神機能が慢性的に減退・消失することで日常生活・社会生活を営めない状態」をいいます。ついさっきした行動を覚えていない、時間や場所が分からなくなる、簡単な計算ができなくなるといった認知機能の低下は認知症の<中核症状>と呼ばれ、ほとんどの人に初期からみられます。そして、中核症状によって生活が不自由になったり、不安感が募ったりするために、妄想や徘徊(はいかい)、暴力・暴言などの<行動・心理症状(BPSD)>が現れるようになります。
 認知症は原因別にいくつかの種類に分類され、日本では「アルツハイマー型認知症」「血管性認知症」「レビー小体型認知症」が三大認知症といわれています。脳出血や脳梗塞による脳血管性のものなど、ごく一部ですが<治る認知症>もありますが、大部分を占めるアルツハイマー型とレビー小体型は、根本的な治療法が見つかっていません。しかし、認知症は早期に発見・診断されることで、適切な治療が受けられる病気です。治療可能な認知症であれば、症状の改善につながり、アルツハイマー型認知症であれば、症状の進行を遅らせることができます。また、早い段階から適切なアドバイスを受け、介護・福祉サービスなどを活用することで、介護負担を減らすことも可能です。今までとは違う症状や行動に気づいたら、本人のプライドを傷つけない配慮をしつつ、できるだけ早めに医療機関の受診を促すことをお勧めします。

認知症の治療について教えてください。
 認知症の治療薬には、主に中核症状の進行を遅らせる薬と、BPSDを抑える薬があります。薬物治療は、決められた量、治療に有効な量をきちんと飲み続けることが大切です。高齢者は腎・肝機能の低下により、薬物の血中濃度が上がって副作用などが起こりやすいので、必要最小限の量から始めることも重要です。また、胃薬や抗潰瘍薬など、比較的広く処方されている薬、いつも使っている薬の中にも認知症を招くものがあるので注意が必要です。患者さんが若い頃から長期間にわたり同じ処方を続けている薬を減量や中止するだけで、症状が改善したケースも少なくありません。
 薬を使わない非薬物治療には、元気だった若い頃の記憶を思い出し、気分を安定させ、脳を活性化させる「回想療法」、懐かしい歌を歌ったり、クラシック音楽などを聴いたりすることで脳を刺激する「音楽療法」などがあります。
 認知症の治療は長期にわたり、家族内だけで問題を解決していくのは難しいです。介護する家族に心のゆとりがあり、笑顔で生活できることが、患者さんの安心にもつながります。一人で抱え込まず、介護サービスや、医療・福祉機関などの専門家、家族会など、認知症についての相談窓口を利用しましょう。

2015年10月14日水曜日

くも膜下出血


ゲスト/札幌宮の沢脳神経外科病院 古明地 孝宏 脳神経外科部長

くも膜下出血とはどのような病気ですか。
 くも膜下出血は、脳を保護するくも膜の下にある血管から出血する脳卒中の一つです。症状はさまざまですが、突然起こる激しい頭痛が特徴で「今まで経験したことのないほどの痛み」などと表現されます。40〜50代の働き盛りの年齢層に発症することが多く、いったん出血を起こすと、約3割が死に至り、治療で一命を取り留めても、言語障害などの深刻な後遺症が残ることも多い恐ろしい病気です。
 原因のほとんどは、脳動脈の壁の一部がこぶのように膨らむ脳動脈瘤(りゅう)の破裂によるものです。高血圧や動脈硬化などによって血管壁が弱くなるとできやすいといわれます。脳動脈瘤は破裂しなければ、無症状であることも珍しくありませんが、破裂の大部分は前触れもなく起きるので、早期発見が鍵を握ります。

くも膜下出血の治療と予防について教えてください。
 くも膜下出血が起こってしまった場合、最も注意することは再出血です。再出血を防ぐ治療として、開頭手術と血管内治療があります。開頭手術は、頭蓋骨を開き、脳動脈瘤の根元をクリップで留めて止血したり、破裂を防いだりする頸(けい)部クリッピング術を行います。一方、血管内治療は、脚の付け根の血管からカテーテルを入れて脳の病変部まで通し、脳動脈瘤の内部に金属製のコイルを詰めるコイル塞栓(そくせん)術を行います。それぞれの治療法にはメリットとデメリットがありますから、どちらが良い治療法ということではなく、患者さんの状態を総合的に判断し、適切な治療を決定します。
 予防は、まず生活習慣の改善から。特に、脳卒中を誘発する大きな要因となるのは高血圧です。普段の生活の中で血圧を自分でチェックし、血圧のコントロールに気を配りましょう。そのほか、喫煙、大量飲酒など血管に悪影響を与える因子は取り除いていくことが大切です。
 くも膜下出血の多くは脳動脈瘤が原因となるため、脳ドックなどの検査で、脳動脈瘤の有無を確認することも重要です。現在ではMRIを用いて頭の血管を撮影(MRA)さえすれば、脳動脈瘤を破裂前に発見することが可能になっています。くも膜下出血は遺伝との関わりも深いので、家系にくも膜下出血を起こした方がいる場合、40歳を過ぎたら健康診断のつもりで一度検査を受けることをお勧めします。

2015年10月7日水曜日

埋伏歯(まいふくし)


ゲスト/E-line矯正歯科 上野 拓郎 院長

埋伏歯とはどのような状態をいうのでしょうか。
 生えずに埋まったままの歯を埋伏歯といいます。一般的に、12歳ごろまでには乳歯から永久歯に生え替わります。ただ、歯並びが悪かったり、顎が小さかったりすると、永久歯が生えてこない場合があります。乳歯がいつまでも抜けない、永久歯がなかなか生えてこないときは、埋伏歯である可能性が大きいです。
 埋伏歯は、歯が骨の中に完全に埋まった状態のものや、歯の一部が見えているものがあります。放置しておくと、その歯が生えてこないという問題だけでなく、埋伏している歯がほかの健康な歯の根を吸収し、正常な歯の成長を妨げてしまったり、歯が生えてこない場所に両隣の歯が倒れ込むことや上下の歯の数が異なることで、将来の歯並びやかみ合わせを悪くする原因にもなります。
 後になって生えてくる永久歯ほど生えるスペースが不足しがちになるため、埋伏歯は上下の親知らず(第三大臼歯)によくみられます。また、八重歯は遅くに生えてきた犬歯が、スペースがないため外側に飛び出してしまったものですが、そのスペースさえなくなり、犬歯が生えてこないケースも目立ちます。糸切り歯とも呼ばれる犬歯はもっとも長く丈夫で、かみ合わせのキーとなる重要な歯です。また、よく見える位置にあるため、埋伏していると審美的にも問題があります。

埋伏歯の治療について教えてください。
 スペースが足りなくて歯が生えてこない場合は、乳歯を削ったり、矯正装置でスペースを広げたりすることで、歯が自然と生えてくるように誘導します。歯の生える位置や方向に問題がある場合は、埋伏歯に装置を付けて牽(けん)引するなどして、正常な位置・方向へ動かしていきます。すでに別の歯の根を吸収している場合など重症例は、抜歯が必要になるケースもあります。
 歯並びやかみ合わせの良しあしは、本人の自覚もあり見た目で判断しやすいですが、埋伏歯は骨の中に“もぐっている”状態なので、顔全体のレントゲン写真を撮らないと発見・診断できません。子どもは成長過程にあるため矯正治療を始める適切な時期がありますが、永久歯が生える小学校入学時、大人の顔つきに変わる中学校入学時など、節目ごとに矯正専門医の診察を受け、歯並びやかみ合わせ、埋伏歯の点検をしてもらいたいと思います。

2015年9月24日木曜日

裂肛(れっこう)


ゲスト/札幌いしやま病院 西尾 昭彦 院長

裂肛とはどのような病気ですか。
 痔とは、肛門およびその周辺に起こる病気の総称です。肛門疾患で多いのは、痔核(じかく)、裂肛、痔瘻(じろう)の3つで、外来の約8割を占めます。痔核はイボ痔、裂肛は切れ痔、痔瘻はあな痔とも呼ばれます。
 便秘気味の若い女性に多くみられるのが、肛門内側の皮膚(肛門上皮)が切れる裂肛です。痔の中でも痛い病気の代表です。症状は排便時の痛みが主で、出血はないか、あっても少量です。一度裂けた傷は排便の度に延ばされるため治りにくく、痛みが続くようになります。痛みが嫌で排便を避けるようになると、便がますます硬くなり、症状を悪化させるという悪循環が生じます。
 繰り返し切れて慢性化すると、傷が深くえぐれて潰瘍化していきます。炎症性の肛門ポリープと呼ばれる突起物ができたり、傷の縁の皮膚が盛り上がって肛門が狭くなったりして、排便時の苦痛が増します。トイレの中で気が遠くなるという患者さんもいるほどです。

裂肛の治療について教えてください。
 裂肛の治療は、便を軟らかくして排便を楽にする内服薬や、排便時の痛みを抑えるための塗り薬、肛門に注入する座剤、軟こうなどの外用薬が中心です。
 傷の治療を行いながら、生活習慣を改善して便通を整えることも裂肛治療では大切です。朝食をきちんと取る、水分や食物繊維を十分に取る、便意を我慢しない、適度な運動をするなど、便秘を防ぎ、硬過ぎず軟らか過ぎない“質の良い便”を出す生活を心掛けてください。
 傷が深い、肛門が狭いなどの慢性化した裂肛になると、薬などの保存治療では治らず、外科治療が必要になります。肛門周囲の痛みだけが取れる硬膜外麻酔をして、硬く狭くなった肛門の括約筋を正常な状態になるまでマッサージをして引き延ばす治療です。マッサージの時間は10秒程度で、入院の必要もなく、翌日の排便から痛みがなくなるケースがほとんどです。
 さらに重症例になると、2~3日入院してマッサージに加えて潰瘍やポリープの切除が必要な場合もあります。
 恥ずかしさから受診をためらわれている方も多いようですが、切らずにすむ治療により、痛みのない快適な生活を取り戻せることが多いことを知ってほしいと思います。

2015年9月16日水曜日

アルコール依存症


ゲスト/医療法人 耕仁会 札幌太田病院  太田 健介 院長

アルコール依存症について教えてください。
 飲酒のコントロールが効かなくなる病気です。健康を損ね、家庭生活や仕事に支障を来しても、お酒をやめることができません。国内にはアルコール依存症の疑いのある人が約440万人いると推計されています。
 アルコール依存症は薬物依存症の一種です。個人の人格や意志の弱さが原因ではありません。繰り返し飲酒することで、お酒に含まれるエチルアルコールという依存性の薬物に対して、脳の神経細胞に耐性が生じ、飲酒量をコントロールできなくなるのです。つまり、お酒を飲む人であれば誰でもかかる可能性のある病気です。
 依存症になると、飲酒を原因とする多種の合併症が生じます。例えば、高血圧、高脂血症、アルコール性肝障害、肝硬変、認知症などが挙げられます。アルコール依存症とうつ病の合併も頻度が高く、お酒に頼る生活が自殺のリスクを高めることも明らかになっています。
 依存症は中高年の男性に多い印象がありますが、若年層や女性の患者も増加しています。特に、未成年の飲酒は発達途上の脳への障害が大きく、ほんの数年で依存症になってしまう危険性があります。飲酒に対し規制が緩やかな日本社会では、中高生からの酒害教育を行っていく必要があるでしょう。

依存症の診断と治療、予防について教えてください。
 依存症の判断基準はいろいろありますが、代表的なものとして「価値観の逆転」があります。大切にしていた家族や仕事、自分の健康より飲酒を優先させる状態のことです。依存症になってしまったら、自分一人の力で抜け出すのは非常に困難で、適切な治療を受けない限り、徐々に悪化していくケースがほとんどです。
 治療には、断酒が必要です。節酒では駄目で、きっぱりやめるしかありません。薬物療法や認知行動療法、断酒会への参加により、断酒につなげていきます。ほかの病気と同じように、軽いうちに治療を始めれば、早期の回復が可能です。重要なのは、病気だと自覚し、正しい知識を得て、有効なやめ方を知ることです。
 依存症の一番の予防は、お酒と病気について正しく知ること。依存症は人生が破綻し、周囲を傷つける進行性の深刻な病気であると理解することが大切です。また、お酒の持つ負の側面を十分に認識し、お酒と安全に付き合っていくことが大切です。

2015年9月9日水曜日

緊張型頭痛


ゲスト/西さっぽろ脳神経外科クリニック 笹森 孝道 院長

緊張型頭痛とはどのような病気ですか。
 「なぜ頭が痛くなるのか?」「何か悪い病気ではないのか?」と頭痛に悩んで受診される方が増えています。不安は痛みを増強させますので、頭痛に対する正しい理解を得ることが重要です。
 頭痛にはさまざまな種類がありますが、脳や体の異常を知らせるサインとしての痛みを「症候性頭痛」といいます。例えば、くも膜下出血、脳腫瘍(しゅよう)など恐ろしい病気の症状として現れます。われわれ医師は、頭痛を訴える患者さんを診るときは、まず他の重篤な病気が隠れていないかを調べるのに時間をかけます。
 頭痛持ちと呼ばれる方の多くは、脳に病気がないのに繰り返し症状が起こる「慢性頭痛」と考えられます。症候性頭痛と異なり、CTやMRIなどの画像検査でも異常は出ません。国内では4人に1人が慢性頭痛を患っているとされ、その数は約3000万人にも上ります。痛みの程度は人それぞれですが、寝込んでしまうほどの痛みなど、日常生活に支障を来す場合もあります。日本では、慢性頭痛が病気であるという認識が薄いため、周囲の理解が得られず、患者さんの苦しみがより大きくなることもあります。
 慢性頭痛の7〜8割を占めるのが「緊張型頭痛」です。首や肩の凝りを伴い、よく「鉢巻きを締められているような痛み」と表現されます。後頭部に圧迫感や頭重感があり、鈍い痛みが続きます。長時間同じ姿勢でいることや運動不足、精神的なストレスが背中から肩、首にかけての筋肉の緊張を引き起こし、頭を締め上げます。終日座りっぱなしのパソコン作業などは、緊張型頭痛の大きな原因で、まさに現代病の一つといえるでしょう。

緊張型頭痛の治療について教えてください。
 治療は、痛みの程度に応じて各種鎮静剤や筋肉を和らげる薬を使います。緊張型頭痛や頑固な筋肉のこわばりには、過度のストレスが関わっていることが多く、リラックスを心掛けることが治療の重要なポイントです。薬の治療に加えて、ストレッチ体操やヨガ、ゆっくりとお風呂に入って筋肉を温めるなどの方法も有効です。
 長時間同じ姿勢でいることを避ける、適度にストレスを発散させる、仕事の合間に外の空気を吸って気分転換をする、軽いストレッチをするなど、心と体のリフレッシュが治療効果を高めます。

2015年9月2日水曜日

認知症に伴う行動障害と精神症状(BPSD)


ゲスト/医療法人社団 正心会 岡本病院 山中 啓義  副院長

BPSDとはどのような病気ですか。
 超高齢化社会の中で、誰しもが避けて通ることのできない重要な問題として、認知症に対する関心が高まっています。正常に発達した認知機能が持続的に低下、日常生活に支障を来すようになった状態を認知症といいます。認知症を引き起こす病気で、最も多いのはアルツハイマー型認知症に代表される神経変性疾患です。ほかに、前頭側頭葉型認知症、レビー小体型認知症などもこの神経変性疾患にあたります。続いて多いのが脳梗塞や脳出血、脳動脈硬化で脳の機能が損なわれる脳血管性認知症です。
 認知症の症状は、脳の神経細胞が壊れることで起こる「中核症状」と、そこに不安や混乱、環境因子などが加わって起こる「周辺症状」とに分けられます。周辺症状のことを「認知症に伴う行動障害と精神症状」と呼びますが、BPSD(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)とは周辺症状の英語略称です。
 認知症の中核症状とは、脳の萎縮や血管病変などによる、①記憶障害(新しいことを覚えられない、以前のことを思い出せない)②実行機能障害(段取りができない、計画が立てられない)③換語障害(物の名前が出てこない)④失行(服の着方や道具の使い方が分からない)⑤失認(品物を見ても何だか分からない)といった症状を指します。現在、日本には少なく見積もって250万人の認知症患者が存在すると推定されますが、そのほとんどが中核症状のみの患者です。
 報告により差はありますが、認知症患者の10〜30%にBPSDが存在するといわれています。BPSDの主な症状としては、物盗られ妄想(財布や通帳がないという)、夜間せん妄(夜中に急に落ち着きがなくなる)、心気症状(実際には何でもないのに過度に身体の具合を気にする)、不眠、抑うつ、徘徊(はいかい)、攻撃的言動、介護への抵抗などが挙げられます。

BPSDの治療法について教えてください。
 BPSDが存在すると患者のQOL(生活の質)の低下のみならず、介護する家族や医療スタッフがとても疲弊するケースが見受けられます。まずは、患者の夜間睡眠を確保し、日中は活動するという睡眠覚醒リズムの確立に努めましょう。患者自身が楽しいと感じられる運動や趣味などでの社会活動を定期的に行い、脳の活性化を図ることも大切です。また、患者の不安を受け止め、不適切な行動や言動にも頭ごなしで怒らないなど、接し方を工夫すると軽減できるケースもあります。
 これらを行っても症状の改善が得られない場合、薬物療法が有効なことがあります。残念ながら現代の医学水準では認知症の中核症状を元に戻すことは困難ですが、BPSDは適切な向精神薬を用いることで改善を認めることがあります。思い当たる症状があれば、まずは精神科、心療内科を受診して相談してみてください。

2015年8月26日水曜日

夜間視力の低下


ゲスト/札幌エルプラザ 阿部眼科 阿部 法夫 院長

夜間視力の低下について教えてください。
 視力は一般に明るいところで(明順応下)測定します。しかし、明るいところではよく見えるのに、暗いところではものが見えにくくなると訴える患者さんがいらっしゃいます。このような夜間視力の低下の原因は、夜盲症、明暗順応の低下(回復時間の遅延)、何らかの眼疾患に伴う(続発性)ものなどが考えられます。
 網膜の視細胞には、日中に働く“赤”から“緑”に感度が高い細胞と、夜間に働く“青”から“紫”に感度が高い細胞の2種類があります。何らかの原因で後者の視細胞が異常を起こしたものが夜盲症です。夜盲症の原因疾患で代表的なのが網膜色素変性症。いわゆる「鳥目」と呼ばれる病気です。網膜に異常が起きて、20歳ぐらいから視野が狭まり夜盲を自覚するようになります。
 夜盲症には先天性と後天性のものがあり、さらに先天性のものは、加齢とともに悪化する進行性と、幼児期から夜盲の症状があっても進行せず、明るいところでの視力や視野は正常である非進行性に分けられます。先天性のものは、はっきりした原因は不明ですが、遺伝が関係すると考えられています。
 栄養状態がよくなかった昔は、栄養失調に伴うビタミンAの欠乏による夜盲もよくみられました。近年は、肺がんと夜盲症の関連を示唆する報告も出ています。

明暗順応の低下と、他の病気の結果として起こる「続発性」の場合について教えてください。
 明るいところから暗いところに行くとものが見えづらくなりますが、しばらくすると暗さに網膜が順応し、少しずつ見えるようになってきます。またドライバーの方であれば、夜間に対向車のライトを直接目に受けた際、視力を一瞬失ってしまった経験があるでしょう。特に高齢者は、急に暗くなったり明るくなったりした時に、目が慣れる度合い、つまり明暗順応力が低下しているので注意が必要です。
 眼疾患に伴う続発性のものとして、白内障や緑内障では青色光の感度の低下が報告されています。昼間は十分な視力を確保できていても、夕暮れや夜間の視力は自分が思っている以上に低下している場合もあります。
 いずれにしてもどのタイプの夜間視力の低下であるのかを判定するため、専門医を受診し、暗順応検査や視野検査、眼底検査などを受けていただくことをお勧めします。

2015年8月19日水曜日

赤ちゃんの口腔ケア


ゲスト/医療法人社団アスクトース 石丸歯科診療所 近藤 誉一郎院長

赤ちゃんの口腔(こうくう)ケアについて教えてください。
 乳歯は生後6〜8カ月頃に下の前歯から生えてくることが多いようです。個人差はありますが、3歳までに乳歯20本が生えそろいます。赤ちゃんの口腔ケアは、歯を磨くという行為に慣れてもらうことが一番の目的なので、スキンシップの一環として、乳歯が生える前から始めましょう。
 歯が生えていないうちは、清潔な指で赤ちゃんの歯茎を触ってあげることで、口の中に触れられることに慣らしていきます。できるだけ目を見つめて赤ちゃんを安心させてあげましょう。
 下の前歯のケアは、唾液の自浄作用で汚れが付きにくいので、水で湿らせたガーゼなどで拭いてあげる程度で十分です。慣れてきたらブラシ部分の小さい乳児専用のものでやさしく磨きましょう。上の前歯の間や歯茎との境、スプーンのようにくぼんだ歯の裏側は、虫歯になりやすい部位なので注意して磨いてください。唇と歯茎をつなぐ筋(上唇小帯)に歯ブラシがあたると、赤ちゃんは嫌がることが多いので、筋を指でよけて歯ブラシを歯と歯の間にあてるようにしましょう。複雑で細かい溝がある奥歯も、汚れのたまりやすい部位です。溝にそって手前にかき出すようにして、汚れをしっかり取り除いてください。

赤ちゃんの歯磨きのコツを教えてください。
 赤ちゃんの歯を磨くのに強い力はいりません。また、歯磨き剤を使う必要もありません。歯ブラシの毛先で軽く、細かく磨くようにしてください。微振動でプルプルと磨くイメージが大切です。歯と歯がくっついている場合にはフロスを使った方が虫歯予防により効果的です。赤ちゃんにフロスを使うときは、片手で使えるホルダー付きのものが便利です。
 歯を磨いてくれるお母さんやお父さんの表情など、赤ちゃんはとても敏感です。一日のうち機嫌のよいときに始め、赤ちゃんのお気に入りの音楽をかけるなど、歯磨きが楽しい時間であると演出することも大切です。また、歯磨きの後はたくさん褒めてあげることも忘れないでください。
 赤ちゃんの歯が生えてきたら、かかりつけの歯科医院を持ち、虫歯ができやすい部位や効率的な歯磨き方法を教えてもらいましょう。フッ素塗布など虫歯になりにくくするための予防処置をしてもらうこともお勧めします。

2015年8月12日水曜日

うつ病のリハビリテーション


ゲスト/医療法人社団五稜会病院 佐々木 竜二 診療部長

うつ病予防や復職支援など職場のメンタルヘルス対策について教えてください。
 職場のストレスや過労でうつ病などを発症する人が増える中、精神科医が中心となり企業や官公庁などのメンタルヘルスを支援する取り組みが注目されています。ここでは、うつ病のリハビリテーションのうち、産業医学でキーワードとなる①職場リハビリ ②EAP ③リワークについて説明します。
 「職場リハビリ」は、長期療養した職員が復帰する際、短時間勤務から始める“試し出勤”を制度化したもので、勤務時間や職務の負担の掛け方など、一人一人に応じたプログラムを作り、復帰を支えるものです。ただ、休職中の出勤であったり、企業内のリハビリ実施部門に専門家がいない場合、症状悪化の危険性もはらんでいることなどから、制度自体をアウトソーシング化する動きもみられます。
 「EAP」は従業員援助プログラムと呼ばれ、米国で生まれた職場のメンタルヘルスサービスです。企業など事業場を対象とし、職員のストレス診断やカウンセリング、休職中の職員向けの復職リハビリなど、メンタルヘルス対策をEAP会社が代行するものです。そのほか、医療機関の紹介や管理職研修などを通じ、働きやすい職場づくりへの助言も行います。
 「リワーク」は、個人を対象とする職場復帰に特化したリハビリや集団心理療法、精神科デイケアの一種です。病院や診療所などで会社での仕事やコミュニケーションの訓練などを通し、心と体を徐々に仕事に慣らしていきます。グループで行われるプログラムが多く、同じ体験をした同士が話し合うことで共感や連帯が生まれ、自分を見つめ直すきっかけにもなります。

メンタルヘルス対策の今後の課題について教えてください。
 働く人たちの心理的な負担の程度を確かめる「ストレスチェック制度」が、従業員50人以上の事業所を対象に、2015年12月から義務付けられます。これは、定期的な検査でストレスの高い人に面接指導を受けるように勧奨したり、事業者に全体のストレス結果を提供することを目的にしています。検査の方法や面接後の対応のあり方など、検討すべき課題もたくさんありますが、画期的な制度といえます。全てを社内の人員体制で行うのか、外部の人材や組織との連携で行うのか、可能な部分全てを外部の支援機関に委託して行うのかという判断など、導入準備や体制づくりを計画的・組織的に進めていく必要があるでしょう。ストレスチェック制度の導入を、ぜひ職場のメンタルヘルスを見直す機会として捉え、働きがいのある職場づくりに活用してもらいたいと思います。
 道内でもEAP会社の設立や、リワークへの取り組みが広がり、一定の成果を挙げていますが、まだ始まったばかりで本格的な普及はこれからです。働く人の休職、再休職を防ぐことや職場復帰を支援すること、心の健康を守ることは、企業活動にとって重要だということを、より多くの企業や人に意識してほしいです。

2015年8月5日水曜日

甲状腺の病気


ゲスト/やまうち内科クリニック 山内 雅夫 院長

甲状腺の病気について教えてください。
 甲状腺は、首の前面、喉仏の下にあるチョウのような形の臓器です。甲状腺の最も重要な働きは、海藻などの食べ物に含まれるヨードを原料に、甲状腺ホルモンをつくることです。甲状腺ホルモンは、人間の身体の基礎代謝の維持に必要なだけでなく、体の発育にも関係する大切なホルモンの一つで、子どもの成長促進にも欠かせません。
 甲状腺の病気は、大きくは3つのタイプに分けられます。一つは甲状腺の機能が異常に高くなり、ホルモンの分泌が過剰になる甲状腺機能亢進(こうしん)症で、よく知られたバセドー病が大半です。これとは逆に、炎症が起きて機能が低下する病気もあり、代表的なものが橋本病(慢性甲状腺炎)です。三つめは甲状腺の腫瘍で、良性と悪性(がん)のものがあります。
 甲状腺の病気の多くは自己免疫疾患で、本来はウイルスなどの異物を撃退するための免疫系に何らかの異常が生じ、自分の体の組織の一部を抗原として認識してしまうために起きます。基本的には誰にでも起こりえる病気ですが、女性に多く、また、遺伝的な要因が大きく関係するとされています。

甲状腺の病気の検査、治療について教えてください。
 甲状腺ホルモンの分泌が多ければバセドー病の疑いが強まり、逆に少なければ、橋本病による甲状腺機能低下の可能性が高まります。甲状腺ホルモンやある種の抗体などを調べる血液検査、超音波検査やエックス線検査などを組み合わせて、正確な診断が可能になります。一方、腫瘍の診断は、触診、超音波検査、細胞診が三本柱です。
 バセドー病の治療は、抗甲状腺薬の服用が中心となりますが、手術や放射性ヨードの投与による方法もあります。橋下病には、甲状腺ホルモンの補充療法を行います。甲状腺腫瘍は、悪性の場合は進行度に応じた手術を選択します。良性の場合、基本的には経過観察を行いますが、腫瘍が大きい、圧迫などの症状がある、がんが否定しきれないなどのケースでは手術を行うこともあります。
 自覚症状がないことも多く、また症状が出てもほかの病気と間違われやすい甲状腺の病気ですが、早期に診断を確定して適切な治療を受ければ、健康な人と変わらない生活が送れます。家族に甲状腺の病気の方がいる場合は、症状がなくても定期検診をお勧めします。

2015年7月22日水曜日

肥満の原因〜腸内細菌


ゲスト/琴似駅前内科クリニック 高柳 典弘 院長

―腸内細菌について教えてください。
 近年、肥満やメタボリックシンドロームの形成における消化管環境の役割に関心が持たれています。消化管からの栄養の吸収過程の変化が、肥満の発症に関与している可能性が示唆されており、特に腸管環境を規定する重要な因子として腸内細菌が注目されています。
 成人の大腸内には、数百種類の細菌が100兆個以上住んでいます。おなかの健康を保つ腸内細菌の代表格であるビフィズス菌、乳酸菌などの「善玉菌」と、ウェルシュ菌、ブドウ球菌などの「悪玉菌」が日々、勢力争いを繰り広げ、さらに戦局次第で善にも悪にも転ぶ「日和見菌」が加わり、ある種の生態系である腸内細菌叢(そう)を形成しています。これまでも、腸内細菌叢の勢力図(バランス)が偏食で崩れたり、加齢で変化したりすることや、免疫系や代謝機能に影響することは知られていましたが、個々の培養が難しく詳細な研究は遅れていました。しかし現在、一度に数千から数億単位でDNA断片を解読することができるようになり、腸内細菌叢とさまざまな疾患との関わりが徐々に明らかになってきています。

―腸内細菌と肥満、糖尿病との関わりについて教えてください。
 肥満者では痩せている者と腸内細菌叢が異なること、また日本人全体が欧米人とは腸内細菌が異なることが報告されています。さらに肥満者では、腸内細菌叢の多様性が少なく、特定の菌種に偏っていることが判明しています。
 普通体格の無菌ラットに肥満ラットの腸内細菌を移植すると、急激に食欲が増し、体重が増えることなどから、先天的か後天的かは不明ですが、どうやら肥満患者は「太りやすい」腸内細菌叢を持っているのかもしれません。
 一方、2型糖尿病患者は、腸内細菌のバランスが乱れており、ある種の細菌が増えすぎると、その断片が腸管の粘膜バリアを突破して体内に侵入し、免疫系が発動して慢性的な炎症を引き起こし、肥満を助長し血糖値を下げるインスリンの効き目を悪くすると考えられています。
 今後は、非肥満健常者の腸内細菌を移植したり、オリゴ糖や食物繊維、あるいはビフィズス菌、乳酸菌などのプレ・プロバイオティクスを用いたりするなど、腸内細菌叢を変化させることで消化管環境を改善し、肥満や糖尿病発症の予防に効果的な治療法の開発が期待されます。

2015年7月15日水曜日

関節エコー検査とレイノー現象


ゲスト/佐川昭リウマチクリニック 佐川 昭 院長

関節リウマチ診療において、関節エコー検査の有用性が注目されているのはどうしてですか。
 関節エコー検査の最大の利点は、レントゲンでは判断できない炎症や血流の状態をリアルタイムに、そして時系列的に診断可能なことです。そのため、①リウマチの診断②経過観察③寛解の判断などの場面で大きな力を発揮します。
 検査では、怪しいと思われる関節に、聴診器のように関節エコーを当てると、炎症を起こしている箇所が、まるでメラメラと燃えているかのように画面に赤く映し出されます。診断時には、腫れているかどうか迷うケースや、腫れていないのに痛みがあるケースなど、診察だけでは分からない炎症を拾い上げることができます。経過観察時には、治療薬が効いているかどうか、その効果の判定と、効果がないなら別の方法を考える参考にもなります。寛解とは病気が治ってきている状態をいいますが、関節エコーを用いれば、画像的にも確実に炎症が消えていることを確認できるので、より正確に薬剤の減量や中止を判断することができます。
 患者さん自身の目で炎症の状態や病状の推移を確認できるので、病気や治療に対する理解に役立ち、リウマチを鎮めていこうという強い気持ちである「治療心」を高められるというメリットも大きいです。

レイノー現象という言葉を耳にすることがありますが、どのようなものですか。
 寒い所に行ったり精神的に緊張したりした時に、手指の先が急に真っ白になるのがレイノー現象です。寒さや緊張などの刺激に対して、血管が過敏になっているのが原因と考えられています。最初は白くなり、その後、酸素不足のために暗い紫色に変わります。この現象は一時的なもので、温めたり時間がたったりすると、赤を経て、次第に元の色に戻ってきます。
 レイノー現象は、いわゆる膠原(こうげん)病に伴ってみられる場合が多いので、背景に膠原病が潜んでいないか検査が必要となります。レイノー現象を伴う膠原病は多く、全身性エリテマトーデス、強皮症、シェーグレン症候群などがあります。
 膠原病かどうかを診断するには、レイノー現象のほかにいくつかの症状の有無を調べ、血液検査やレントゲン検査などをすることも必要です。自分で気を付けることは、体や手足を冷やさないよう寒冷を避け、心身の安静を保つことです。今までにない症状が表れた時には、早めに専門医にご相談ください。

2015年7月8日水曜日

消化性潰瘍


ゲスト/佐野内科医院 佐野 公昭 院長

消化性潰瘍とはどのような病気ですか。
 消化性潰瘍とは、主に胃や十二指腸の粘膜に深い傷ができた状態を指します(胃潰瘍、十二指腸潰瘍)。かつては死亡する人も多かった厄介な病気で、かの文豪・夏目漱石も胃潰瘍に終生悩まされました。現在はヘリコバクター・ピロリ菌が潰瘍の発症と関係していることが明らかになり、また2013年からピロリ菌感染による慢性胃炎にも保険が適用され、除菌治療をする人が増えたため、患者数は大幅に減少しています。
 その一方で、ピロリ菌感染が原因でない消化性潰瘍が増えてきています。その一つが薬物性潰瘍と呼ばれるもので、代表的なのは主に鎮痛薬として広く処方される非ステロイド性抗炎症薬NSAIDs(エヌセイズ)により潰瘍になるケースです。脳梗塞や心疾患で使われる低用量のアスピリンによる潰瘍もこの中に含まれます。これらの薬は、体内で炎症や痛みを引き起こす働きを抑える半面、胃や十二指腸の粘膜を守る物質の働きも抑制してしまうため、長期間にわたって服用していると、粘膜の荒れや潰瘍をつくりやすくなります。薬物性の潰瘍は胃痛などの自覚症状があまりなく、時に消化管出血を起こす場合もあるなど、重症化することが多いため注意が必要です。潰瘍治療中はNSAIDsやアスピリン薬の減量や中止を考慮しますが、元の病気の状態を悪化させないよう、慎重な対処が求められます。薬を飲んで胃などの不調を感じたら、早めにかかりつけ医に相談してください。

処方薬の服用の際、気を付けることはありますか。
 特に高齢者は内科や整形外科など複数の病院にかかることが多く、それぞれの病院から同じような薬を処方されるケースも出てきます。中でも、胃の病気以外でも胃薬はよく重複して処方されます。例えば、腰痛がひどくて整形外科から鎮痛薬を処方される場合、胃を荒らさないために胃薬も出されます。脳梗塞後遺症のため内科からは低用量アスピリンと胃薬を処方されます。一見胃薬が重複して処方されているように思えますが、こうした時は、自己判断でこれらの胃薬を加減したりどちらか、あるいは両方の薬を休んだりはしないでください。同じような薬にみえても、違う成分・効能の薬はたくさんあります。効果がないばかりか健康被害にもつながります。複数の薬を併用している時は必ず医師や薬剤師に報告、相談し、指示された用法や用量を守って正しく服用しましょう。くすり手帳を利用するのも役に立ちます。

2015年7月1日水曜日

発達障害


ゲスト/医療法人五風会 さっぽろ香雪病院 江川 浩司 副院長

発達障害とはどのような病気ですか。
 発達障害とは、相手の感情を考慮することができなかったり、集団の中で他人と違う反応をしたりするなど、社会性や想像力、コミュニケーションに障害があるとされる「自閉症、アスペルガー症候群などの広範性発達障害」、落ち着きがない「注意欠陥多動性障害」、読み書きや計算など特定分野が苦手な「学習障害」などの総称です。生まれつきの脳機能の障害が原因とされますが、詳しい仕組みは分かっていません。子どもの頃に症状が現れることが多いですが、思春期や青年期以降、その特性が目立つようになることもあります。また、複数の障害を併せ持つ人もいれば、一つだけの人もいます。
 発達障害は主に他人とのコミュニケーションが取りづらかったり、特定の物事に強くこだわったりするのが特徴ですが、外見では分かりづらい障害のため本人や周囲が原因に気付かないことも多いです。発達障害と認識しないまま、職場や日常生活で困難に直面している人も少なくありません。その結果、自覚がないまま相手を怒らせたり、職場で孤立したり、また「周りの人たちには普通にできることが、自分にはできない」と過度に自分を責めてうつ病など二次障害に至るケースもあります。

治療について教えてください。
 正しい診断を受けることが出発点になります。診断は、専門医が面談や検査を行いながら、時間をかけて総合的に判断します。現在のところ発達障害を根本的に治す治療法はありません。治療の目指すところは、症状を緩和させたり、環境を変えたり、周囲の人にサポートを求めたり、どうすれば日常生活の困難を減らせるかをさまざまなアプローチで探っていくことになります。その人の特性に合ったライフスタイルを一緒になって探していくのです。
 発達障害は次第に認知されてきましたが、「生きづらさ」に対する社会の理解は十分に深まっていません。何より大切なのは、周囲が発達障害についてよく理解することです。障害を特別なものととらえずに、正しい知識や対応の仕方を知ってください。発達障害の人たちは不得手がある一方、得意の分野において他人との違いを生かしたスペシャリストとして活躍する例も少なくありません。周囲の支援やちょっとした配慮で、その能力を生かすこともできるのです。

2015年6月24日水曜日

子どもの歯科矯正治療


ゲスト/宇治矯正歯科クリニック 宇治 正光 院長

子どもの矯正治療について教えてください。
 お子さんの歯並びに矯正が必要かどうか迷う人も多いのではないでしょうか。歯並びを確かめる方法の一つとして、お子さんの口元を顔の正面から観察してみてください。上下の前歯の真ん中の位置が一致していれば安心ですが、ずれている場合は、矯正の必要があると考えられます。出っ歯や受け口など、上下の顎が前後に大き過ぎたり小さ過ぎたりという骨格的な問題は、一般の方でも気付きやすいですが、左右のずれは発見しにくいものです。
 前後あるいは左右にずれが認められる場合は、顎骨(がっこつ)の成長コントロールが可能な9〜11歳までに矯正治療を行うのが理想的です。就寝時にバイオネーターと呼ばれる機能的顎(がく)矯正装置を装着し、寝ている間にずれた顎の骨を中央に移動させます。子どもの成長の力を利用して、無理なく自然にバランスのよい骨格をつくれます。痛みはほとんどなく、日中は装着の必要がありません。ずれの程度にもよりますが、装着期間は半年〜1年が平均で、経過観察のための通院は、1〜3カ月に一度が目安となります。
 ずれの原因はさまざまですが、歯そのものがずれているケースもあり、永久歯がはえそろってからでも治療は可能です。その場合、抜歯する可能性は高くなりますが、きれいに治療できるケースがほとんどです。矯正治療をいつ始めるべきかという判断は非常に難しいので、一度専門医にご相談ください。

家庭でチェックするための別の方法はありますか。
 頬づえやかみ癖、就寝時の姿勢が左右どちらかに大幅に偏っている場合などは、左右のずれを引き起こす原因になることがあります。上下の前歯の位置を確認したら、次は鼻の先端を基準に、鼻の中央に前歯の中心が沿っているかを見てください。ずれの原因は一見して分かるものではなく、万が一、骨格のずれを歯のずれと勘違いして放っておくと、矯正に最適な成長時期を逃してしまうので注意が必要です。
 子どものうちの悪い歯並びやかみ合わせを放置していると、成長に伴い虫歯や歯周病の原因となったり、顎関節にも悪影響を及ぼす恐れがあります。また、大人になってから心理的なストレスの原因となる場合もあります。少しでもおかしいと感じたら、早めに専門医に相談することをお勧めします。

2015年6月17日水曜日

アレルギー性鼻炎・慢性副鼻腔炎による咳(せき)


ゲスト/医療法人社団 大道内科・呼吸器科クリニック 大道 光秀 院長

―花粉症の季節の頑固な咳について教えてください。
 北海道の花粉症は4月下旬から5月下旬までがピークです。道内の花粉症の原因として、シラカバ、ハンノキによるものが多く、花をつける4月下旬から始まります。さらに、カモガヤなどのイネ科の牧草やヨモギによる花粉症が9月頃まで続きます。花粉症では鼻や眼の症状が良くなった後でも,気管支の粘膜が過敏な状態になっているので、感冒をきっかけとしてひどい咳になることがあります。シラカバ花粉症の時期に咳がひどい場合、花粉症による咳か、鼻水が喉(のど)に落ちてきたための咳かを区別して治療しなければなりません。もちろんこの時期でも肺炎やぜんそく,肺結核の場合もありますので、その区別も必要で、胸部写真や肺機能検査を受けて適した治療を受けることが大切です。
 鼻水が鼻の後を通って喉に流れ落ちる状態を、後鼻漏(こうびろう)といいます。落ちた鼻水が喉を刺激することで、痰(たん)のからんだひどい咳や喉のイガイガ感を引き起こします。後鼻漏の原因としては、アレルギー性鼻炎や慢性副鼻腔(びくう)炎(蓄膿症)が挙げられます。副鼻腔炎は鼻の周辺の骨の中にある副鼻腔と呼ばれる空洞に炎症が起きる病気で、炎症の原因はアレルギーによる場合と、細菌やウイルスの感染によるものがあります。

―具体的な治療について教えてください。
 副鼻腔炎は急性と慢性とに分けられますが、急性副鼻腔炎の多くは感染性で抗生物質の使用で速やかに治ります。慢性副鼻腔炎はアレルギー性鼻炎に伴う場合と感染によるものがあり、アレルギー性の場合は、抗ヒスタミン薬や抗ロイコトリエン拮抗薬であるモンテルカスト、プランルカスト、ステロイドの点鼻などが使用されます。慢性副鼻腔炎に伴う症状の中でも、後鼻漏が引き起こす咳や痰は非常に厄介なもので、鼻炎の症状(鼻みず、鼻づまり)がなく、喉のイガイガ感や咳,痰だけのこともあり診断が難しく、治療も数回の外来で治すことは困難です。感染による場合はマクロライド系の抗生物質を少量、長期間投与する治療法(マクロライド少量長期療法)が選択されます。抗生物質は長くても2週間以内の投与というのが一般的ですが、この場合通常の内服量の半分の量を最低4カ月間以上、毎日服用します。少量のマクロライドは本来の抗菌作用を期待するのではなく、抗炎症作用や免疫系への作用などを期待して投与されます。この治療法で約7割は改善しますが、約3割の患者さんには効かず、治療に難渋する場合も多いです。

2015年6月9日火曜日

社交不安症


ゲスト/医療法人北仁会  いしばし病院 内田 啓仁 医師

社交不安症とはどのような病気ですか
 近年、ストレス性のうつ病をはじめ、パニック症や広場恐怖症などのストレス関連疾患が急増していますが、社交不安症(社交不安障害・SAD)もその一つです。
 SADは、人前で話をするなど注目を浴びる行動に不安を感じ、顔が赤くほてる、脈が速くなる、息苦しくなるなどの症状が現れる病気です。ちょっと恥ずかしいと思う場面でも、多くの人は徐々に慣れてきて平常心で振る舞えるようになりますが、SADの人は常に「悪い評価をされるのではないか」「笑い者にされるのではないか」という不安感を覚え、そうした場面に遭遇することへの恐怖心を抱えています。SADのため、他人との関わりがつらくなり、不登校や出社拒否、自宅に引きこもるなど、社会生活に支障を来すケースも多いです。
 SADは、比較的若いうち(10〜20歳代)から発症することが多く、症状が慢性化してくると、うつ病など別の精神疾患の合併が問題となります。気持ちの問題か、心の病気か、一見しただけでは見分けがつかないのもSADの特徴的な一面で、「内気な性格」「引っ込み思案」などと思い込み、診療の機会を失ったまま過ごしている人が多い病気でもあります。

治療について教えてください。
 SADの治療法には大きく二つ、薬物療法と精神療法があります。薬物療法では、不安や恐怖を感じる原因とされる脳内物質のバランスを保つ薬・SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害剤)を第一選択で用いるケースが多いです。そのほか、ベンゾジアゼピン系抗不安薬やβ遮断薬などを併用し、不安時の身体症状の緩和を図ります。精神療法では、物事の受け止め方のゆがみや偏りを気付かせ、修正していく「認知療法」や、不安が生まれる状況にあえて飛び込んで、段階的な目標に沿って徐々に身を慣らしていく「暴露療法」などが有効です。同時に適度な有酸素運動などの生活指導、呼吸法やリラックス法など不安状況への対処法の指導も行われます。
 SADは次第に認知されてきましたが、まだ十分に知られていない病気です。何より重要なのは、SADは治療すれば治る可能性が高い病気だと理解することです。「SADかな」と思い当たることがあれば、思い切って専門医を受診して適切な治療を受けることをお勧めします。

2015年6月3日水曜日

顎関節症


ゲスト/つちだ矯正歯科クリニック 土田 康人 院長

顎(がく)関節症とはどのような病気ですか。
 顎の関節は、耳のすぐ前に人さし指と中指を当てて、口を開閉した時に動く部分です。顎関節症とは、顎の関節や周囲の組織に現れる痛みや障害の総称を言います。主な症状は、口が開かない、口が開きにくい、口を開閉する時にカクカク(シャリシャリ)と音がする、下顎が左右にずれてガクガクする─などがあります。食事が困難になり、日常生活に影響が出るほどの症状に苦しむ患者さんもいます。顎を動かした時の症状が大半ですが、頭痛や耳鳴り、肩凝りなどの諸症状を伴う場合もあります。
 原因としては、歯並びやかみ合わせの異常、歯ぎしりや食いしばり、かみ癖などが考えられます。かみ合わせの異常は歯の詰め物や義歯のせいでも起こり、かみ方が左右どちらかに偏っているケースも少なくありません。また、精神的なストレスが原因となり、症状が現れることもあります。気が付かないうちに歯を食いしばり、顎関節に負担を掛けている場合や、多忙による疲労、不規則な食事・睡眠時間も大きく関係しています。学生が受験を終えたら治った、仕事上の問題など悩み事を解決したら治ったという例もあります。

顎関節症の治療について教えてください。
 症状の程度によって異なりますが、スプリントと呼ばれるマウスピースのようなものを歯にかぶせる治療が一般的です。スプリントを使い、下顎を適切な位置(やや下顎を前方に出した位置)で安定させ、きれいなかみ合わせをつくります。比較的早くに症状は軽減されますが、あくまでも対症療法でしかないため、スプリントを外した時に再発する可能性もあります。スプリントを使いながら、しっかりと根本的な原因を解明し、それを解決することが重要です。例えば、歯並びを矯正したり、かみ合わせや顎のずれを修復したり、場合によっては、口腔内の金属冠を作り替えたりし、かみ合わせが安定するようにします。
 顎関節症は中・高校生から成人にみられることが多く、小学生以下の子どもに発症するケースは少ないです。しかし、子どものうちの悪いかみ合わせや歯並びを放置してしまうと、大人になってから顎関節への悪影響が出る危険性があります。顎関節の診断や治療は専門医の受診が必要です。少しでも不安を感じたら、矯正の専門医にご相談ください。

2015年5月27日水曜日

恐怖症性不安障害


ゲスト/時計台メンタルクリニック 木津 明彦  院長

恐怖症性不安障害とはどのような病気ですか。
 恐怖症性不安障害は、通常は危険ではないさまざまな対象や状況に対して強い恐怖や不安を感じる病気です。恐怖・不安感とともに「気がおかしくなってしまうのではないか」「体が壊れてしまうのではないか」と考えたり、そのような対象や状況をなんとか避けようとするなどの回避反応がみられます。また、心拍数や血圧の上昇、発汗などの身体反応も伴います。
 恐怖を感じる対象はさまざまで、対人恐怖、動物恐怖、乗り物恐怖、雷恐怖など数多くの種類があります。例えば、対人恐怖は他者と接することや人から注目を集めるような状況に置かれることに恐怖を感じ、学校や会社に行けなくなったり、うつ状態を併発して社会的機能が著しく低下したりするケースもあります。
 ヒトを含めた動物は、危険な体験をした際に恐怖を感じ、その時の状況を脳内に記憶します。恐怖の記憶は、一度の恐怖体験で形成され、それが長期間にわたって保持されます。そして、再び同じような状況が訪れた際に、危険を防御・回避するための行動を取ります。これには、側頭葉内の扁桃体(へんとうたい)という部位が大きく関係しています。扁桃体は、簡単にいえば恐怖や嫌悪感を感じるための器官です。突然、強烈な恐怖に襲われ、自分をコントロールできなくなるのは、扁桃体にそのような恐怖の回路ができてしまったわけです。

恐怖性不安障害の治療について教えてください。
 治療では、薬物療法として抗不安薬や抗うつ薬を用いると同時に、精神療法の一つである認知行動療法を行う方法などがあります。
 例として、恐怖を引き起こす場所や場面に段階的に直面することで、恐怖感や不安感に徐々に慣れていきます。まず、不安を感じる場面をリストアップし、それらの場面を不安度が小さいものから大きいものへと順番に並び替えて整理します。これを不安階層表と呼びます。不安度が小さい場面から練習し、徐々に不安度が高い場面へチャレンジしていきます。最初は不安を感じた場面も、慣れにより次回からは恐怖感や不安感が軽減し、少しずつ自信が付いてきます。
 ただし、一人一人が抱えている背景によって治療や生活指導は異なります。精神科・心療内科による専門的な治療の中で、時間をかけて向き合っていく必要があります。

2015年5月20日水曜日

水虫と爪水虫


ゲスト/つちだ消化器循環器内科 土田 敏之 院長

水虫について教えてください。
 暖かい日々が続き、これから水虫の患者さんが増えてくる季節です。水虫は白癬(はくせん)菌というカビの一種の感染によって起こります。
 水虫の予防法は、足の清潔を保つことが一番。足は毎日きれいに洗い、しっかり乾燥させましょう。靴や靴下はできるだけ通気性の良いものを選び、靴が湿ったらよく乾かすことも大事です。切った爪やはがれ落ちた足の皮膚の中でも白癬菌は生き続けます。床などに落ちた白癬菌は約2週間生存するといわれています。家族に水虫の感染者がいる場合、同居している家族も高確率で水虫に感染する恐れがあります。家族にうつさないためにも、室内は清潔に保ち、お風呂の足拭きマットやスリッパ、サンダルなどの共用物は、よく乾燥させる、自分専用のものを使うなど気を付けるようにしてください。
 水虫は自分だけ治療をしても、家族の中に水虫の方がいれば、白癬菌に再感染する可能性が残ってしまいます。家族に同じような症状のある人は一緒に水虫治療を始める必要があります。

爪水虫について教えてください。
 白癬菌が爪の表面や爪と皮膚の間から感染することで起きる水虫の一種で、爪が厚くなる、色が濁るなどの症状があらわれます。
 普通の水虫の塗り薬は爪の中に浸透しないため、内服薬による治療が基本でした。内服薬の治療効果は高いのですが、肝障害を悪化させる恐れがあり、服用中は定期的な血液検査を行い、副作用を未然に防ぐ必要があります。また、内服薬はうつ、高血圧、脂質異常、不整脈、頭痛、胃痛、EDなどの治療薬、睡眠薬、抗生物質など併用が禁忌の薬が多く、使えない患者さんもたくさんいます。そうした場合、これまでほかの選択肢がなかったのですが、昨年9月に初の塗り薬が登場し、内服薬が使えない人でも治療が期待できるようになりました。この薬は、1日1回、爪全体に広く塗ることで、爪と皮膚の境目まで浸透して白癬菌を殺します。副作用も少なく、比較的安全性の高い薬といえます。
 白癬菌に感染した爪が健康な爪に生え替わるまで、一般的に手の爪で半年〜1年半、足の爪で1年〜1年半程度の治療期間が必要となります。途中でやめてしまうと元も子もありません。医師の指導のもと、最後まで根気よく治療しましょう。

2015年5月13日水曜日

子どもの視力検査の重要性


ゲスト/ふじた眼科クリニック 藤田 南都也 院長

眼科での視力検査について教えてください。
眼科に行くと、視力検査をはじめ、検査機器を使っていろいろな検査が行われます。毎回同じような検査をするので面倒だと思われる人も多いかもしれませんが、眼科での検査は視力の低下を調べるだけのものではありません。単に「視力」といっても裸眼の視力だけではなく、近視・遠視・乱視などの屈折異常や、矯正レンズを当てた状態で良好な視力を得られるかどうかの検査まで行います。目の状態を正しく判断し、隠れた病気の早期発見にもつながります。
 例えば、小学生のお子さんの視力が0.8程度である場合、「授業に支障がなければ問題ない」と考える親御さんも多いでしょう。しかし、強い遠視があるケースでは矯正レンズを当てても良好な視力を得られないこともあります。これは「弱視」という病気です。放置すると、細かいものを見るための脳や神経の働きが十分に成長せず、視機能の発達が途中で止まってしまいます。早期に弱視を発見し、適切な治療を受ければ視力の改善が期待できますが、中学生以降になるとその後の治療は難しくなります。
 弱視の原因を調べるには、視力や視機能についての詳しい検査が必要です。この際、子どもの目は調節力(目のピントをあわせる力)が強いので、正確な度数を測るための特別な点眼薬を使います。これは医療機関でしかできない検査です。学校健診などで視力の不良を指摘されたり、日常生活でお子さんが少しでも「見えづらさ」を訴えたりした場合は、すぐに眼科を受診し相談されることをお勧めします。

子どもの場合、ほかにどんな病気が見つかりますか。
 ストレスが原因で視力低下を招く心因性の視力障害が見つかることも珍しくありません。心理的な要因が絡んでいますが、親御さんはそれに気付かず、単なる近視と思い込んでしまうケースがあり注意が必要です。
 検査で網膜や角膜などに異常は見当たりませんが、本人がうそをついているわけではありません。学校や家庭環境によるストレスが視力の低下につながっているのですが、本人もストレスと症状の関係に気が付いていないことも少なくありません。要因を解消すれば症状は治まりますが、予防策として親御さんがお子さんの心理状況や目の健康に普段から関心を寄せることが何よりも大切です。

2015年5月7日木曜日

ニキビと漢方治療


ゲスト/宮の森スキンケア診療室 上林 淑人 院長

ニキビについて教えてください。
 ニキビは毛穴に皮脂が詰まり、そこにアクネ菌という細菌が感染して起こります。皮脂の分泌が盛んな部分に発症しますが、その原因は体質や肌質、職場や家庭でのストレス、偏った食生活などいろいろです。男性に比べ、化粧をする女性のほうが悪化したり長引いたりしやすい傾向にあります。
 ニキビには「こうすれば必ず良くなる」という治療法はなく、その人に合った方法を見つけ、それを継続することが大切です。思春期のニキビは比較的治療効果が出やすく、塗り薬だけで改善されることが多いです。一方、20〜30代のニキビは、治療が困難な場合が多く、塗り薬以外にビタミン剤や抗生物質の服用が必要になることもあります。いずれの場合も頑固なニキビには、ニキビの出やすい体質の改善を図る目的で、漢方治療が非常に有効です。

ニキビの漢方治療について教えてください。
 問診で患者さんの体質を把握し、顔色の観察や舌診、脈診などを基に、漢方医学独特の病態診断基準である「証(しょう)」を定めます。証は病気の状態と体質を反映したもので、これに応じて治療の方向が決まり、それぞれに合った漢方薬が選択されます。
 漢方医学では、人間の体を構成する基本的な要素「気・血・水」のバランスが健康状態を左右すると考えます。例えば、「気」では元気がなくなり消化吸収が低下する「気虚」が、「血」では血液の循環不全から来る「血虚」、血が局所的に滞る「お血」が問題になることが多いです。
 患者さんの体のどの部分のバランスが崩れ、ニキビの原因となっているのかを見極め、全身の状態を改善しながらニキビを治していきます。例えばニキビの原因が気虚にあるなら六君子湯(りっくんしとう)、お血にあるなら桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)といった漢方薬が処方されます。また具体的な症状でいうと、赤いニキビができるときは清上防風湯(せいじょうぼうふうとう)、ニキビが化膿(かのう)しやすい人には荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)などが効果的です。漢方薬は患者さんの状態を示す証に合わせて処方されるため、同じ症状でも使う薬が違ったり、同じ薬を異なる症状に使ったりすることもあります。

2015年4月22日水曜日

肺炎球菌ワクチンについて


ゲスト/白石内科クリニック 干野 英明 医師

肺炎球菌ワクチンを接種すると、どのような効果があるのですか。
 肺炎球菌ワクチンは、肺炎球菌という細菌によって引き起こされる病気を予防するためのワクチンです。肺炎球菌によって起こる主な病気には、肺炎、気管支炎などの呼吸器感染症や副鼻腔炎、中耳炎、髄膜炎(ずいまくえん)、敗血症などがあります。中でも肺炎球菌による肺炎は、成人の肺炎の25〜40%を占め、最も頻度が高いものです。肺炎は2013年の統計では日本人の死因の第3位であり、特に高齢者では重症化しやすく、生命を脅かす重篤な疾患です。
 肺炎球菌には約90種類の血清型がありますが、そのうちの23種類に対して予防効果を持つのが23価莢膜(きょうまく)多糖体型肺炎球菌ワクチン(PPV23)です。この23種類で肺炎球菌感染症の7〜8割をカバーできるといわれており、現在成人用ワクチンとして広く使用されています。

高齢者を対象とした肺炎球菌ワクチンの定期接種、ワクチンの副反応について教えてください。
 日本では1988年に65歳以上の高齢者を対象にPPV23が認可されましたが、国からの接種費用の補助がなく、患者負担が大きいことなどから、接種率は先進国中最低でした。そのような状況の中、2014年10月から65歳以上の高齢者を対象とする定期接種が開始され、当該年度に65歳から5歳間隔で100歳までと101歳以上の方は、接種料金の一部が公費で負担されるようになりました。また、60歳から65歳未満で心臓、腎臓、呼吸器疾患により、日常生活が極度に制限される方なども対象になりました。
 ワクチンの副反応として5%以上で注射部位の疼痛(とうつう)、腫れ、発赤などが発生しますが、通常は1〜3日で消失します。また、1%未満で倦怠感、発熱、筋肉痛、頭痛などが発生します。ワクチンの効果は5年ほどで下がるとされ、5年後以降に再接種が勧められます。実際に1回しか接種しなかった人に比べると、再接種した人ではその後に高い抗体価が維持されることが分かっています。日本では最近まで、このワクチンの再接種は禁忌とされてきました。それは再接種直後に疼痛などの局所反応が1回目より強く出るためでした。しかし、初回接種から5年以上経過していれば局所反応も1回目と同程度で済むことが分かり、2009年に厚労省はその条件での再接種を可能としました。現在では世界中どの国でも再接種が認められています。

2015年4月15日水曜日

最新の糖尿病治療


ゲスト/医療法人社団 青木内科クリニック 青木 伸 院長

最新の糖尿病治療薬について教えてください。 
糖尿病治療薬の最近の進歩は目覚ましいものがあります。飲み薬では、高血糖の時にだけすい臓からインスリンを分泌させ、正常血糖へ下げる「DPP-4阻害薬」があります。この薬は理論的には低血糖を起こさず治療できる新薬で、糖尿病の平均血糖の指標であるHbA1c値を1.0%前後下げます。この薬と同じ系統の注射薬も登場し、「GLP−1受容体作動薬」と呼ばれています。この注射薬はHbA1c値を1.6%前後下げます。1日1回の注射が必要ですが、現在は1週間に1回で済む注射薬も出ました。この系統の注射薬は、すい臓のインスリンを出す細胞を保護し、インスリンの分泌を弱らせない作用も持ち合わせているといわれています。従来まで体重を減少させる糖尿病薬がありませんでしたが、SGLT-2阻害薬が登場し、この薬剤は血糖を下げると同時に体重を減らします。
 一方、インスリン注射薬に目を向けると、「持効型インスリン(1回の注射で24時間効果を持続する長時間作用型インスリン)」があります。飲み薬の治療が効かなくなる症例でも、飲み薬をそのまま服用しながら、1日1回の持効型インスリンの注射を加えると血糖が改善する症例もあります。「混合型インスリン」は、持続型インスリンと超速攻型インスリンの合剤ですが、超速攻型インスリンの含有率が50〜70%の製剤が最近使用できるようになりました。食後血糖の高い症例を治療するのに便利なインスリンです。

糖尿病の治療について教えてください。
 糖尿病の治療が良好といえる目安はHbA1cが7.0%以下になっている場合です。糖尿病の患者さんの約半数が高血圧と脂質異常症(高脂血症)を合併しているといわれています。糖尿病を合併した高血圧の治療はとても重要で、血圧の治療目標値は125/75mmHg以下です。自宅測定の血圧を治療に役立てる方法もあります。この場合使用する測定器は、指先や手首に巻くタイプのものではなく、上腕に巻くタイプのものをお勧めします。脂質異常症の治療目標値は、LDL-コレステロール(悪玉コレステロール)が120mg/dl以下です。以上のようなさまざまな基準値を長期間保てば、眼底出血(失明)、腎臓の悪化(透析)、足の潰瘍・壊疽(えそ)による足の切断など糖尿病に由来する重症の合併症にならなくて済みます。それ以外にも脳梗塞、心筋梗塞などの予防にもつながります。

2015年4月8日水曜日

統合失調症


ゲスト/医療法人五風会 さっぽろ香雪病院 宇佐見 誠 診療部長

統合失調症とはどのような病気ですか。
 統合失調症は、ないものをあるように感じたり、現実とは異なることを現実だと思い込んだりする幻覚や妄想などの「陽性症状」と、働く意欲が湧かない、他人と話をするのが苦手でおっくうになり、不登校・出社拒否、引きこもりなど自分の世界に閉じこもってしまう「陰性症状」が特徴的な病気です。「何かがおかしい」と不安を感じながらも、幻覚や幻聴、妄想などが病気のせいで起きていると自覚できず、本人が病気の治療をなかなか受け入れにくいことも厄介な点です。
 2011年の厚労省の推計では、全国の患者数は約70万人で、100人に1人の割合で発病するといわれています。10代後半から30代前半での発症が多く、発症しても診断を受けていない人も多数いるとみられます。脳内の神経伝達物質の一つであるドーパミンの過剰な分泌がさまざまな症状を引き起こすとされていますが、根本的な原因はいまだはっきりしていません。
 統合失調症は一進一退を繰り返しながら、多くは快方に向かいますが、中には再発を繰り返したりするなどの難治例もあります。近年は新薬開発や病気の研究が進み、早期に適切な治療とリハビリを行えば、永続的な回復や自立した社会生活も期待できるようになってきました。

統合失調症の治療について教えてください。
 現在の統合失調症の治療は、抗精神病薬による薬物療法が中心で、個々の患者さんに合った種類や量を選択します。いったん回復し安定しても、また症状が悪化したり再発したりするのを防ぐために、服薬をきちんと継続することが重要です。
 症状が安定したら、回復の程度に応じた精神療法やリハビリが行われます。病気に伴う無気力・無関心、対人コミュニケーションの低下などを改善していくため、同じ症状を抱える患者さんをはじめ、医師や看護師らとコミュニケーションを取りながら、あいさつや通常会話ができるといった社会適応能力や生活上起こるさまざまな問題を解決する能力の回復を目指します。入院中は作業療法士などによる作業療法やレクリエーション療法などを行い、外来ではデイケアに通所して、各種の行事や創作的・文化的活動の中で、体力や集中力、他人とのコミュニケーション能力を徐々に回復させます。
 もう一つ大切なのが、家族の支援です。患者さんにとっての最大の支援者は家族であり、適切な支援は本人への大きな力となります。病気について正しい知識を持ち、生活態度や言動に気を配り再発のサインを見逃さないよう心掛けてください。治療は長期間にわたるため、決してせき立てたり期待を掛け過ぎたりせず、途中でくじけないよう本人を勇気づけながら、根気強く接することが大事です。また支える家族も大きなストレスを抱えています。ぜひ同じ立場を経験した人が集う家族会に参加してみてください。同じ悩みを語り合い、互いに支え合うことで家族の気持ちも楽になると思います。

2015年3月25日水曜日

糖尿病とその合併症


ゲスト/札幌宮の沢脳神経外科病院 三島 慎也 医師

糖尿病とはどのような病気ですか。
 糖尿病は、膵臓(すいぞう)から分泌されるインスリンの働きの不足で、血中にブドウ糖が多い状態が慢性的に続く病気です。大きくはインスリンを作る細胞が破壊されて起こる「1型」と、インスリンが作用しなくなる「2型」などに分類されますが、国内の患者の95%以上は2型で、遺伝的な体質と過食や運動不足など生活習慣が原因とされます。
 糖尿病は、血糖値がかなり高くなるまで、喉が渇く、多尿といった症状が乏しいため、病気に気付かない人も少なくありません。しかし、高い血糖値を放置していると、全身の血管に障害が起き、さまざまな合併症が現れます。細い血管では、網膜症、腎症、神経障害の3大合併症が起き、失明や透析、下肢切断になる例もあります。また、太い血管では動脈硬化が進み、心筋梗塞や脳卒中を引き起こします。現在では、脳梗塞は糖尿病の「第4の合併症」といわれるほどになっています。糖尿病があると脳梗塞の発症リスクが約3倍に増加することが分かっています。
 合併症を発症すると、日常での生活の質を損なうだけでなく、時には生命の危険にさらされます。早期発見と適切な治療開始でいかに合併症を予防するか、進行させないかが、糖尿病治療の最大の目的になります。

糖尿病治療の重要性について教えてください。
 厚生労働省の調査では、平成24年時点で糖尿病が強く疑われる人が約950万人に達し、その可能性がある予備軍を含めると約2050万人に上ると推計されています。一方で、健康診断などで「血糖値が高く、治療が必要」と言われながら、治療を受けていない人は約35%にも上ります。未治療の人が多い背景には、糖尿病はすぐに命に関わる病気ではないという誤解があります。
 繰り返しになりますが、糖尿病は細小血管ばかりでなく、太い動脈にも影響し、命を落とすことになりかねない怖い病気です。そして、合併症を防ぐには糖尿病の早期発見・治療が何より大切です。もっと多くの人に糖尿病についての正しい知識を身に付けてもらうとともに、一度も検査を受けていない人や、高血糖を放置している人に、健診の受診、通院の必要性を理解してもらうことが、まず大事です。

2015年3月18日水曜日

痔瘻(じろう)


ゲスト/札幌いしやまクリニック 石山 元太郎 理事長

痔瘻とはどのような病気ですか。
 肛門周囲に痔瘻管と呼ばれる細菌のトンネルができる痔瘻は、肛門疾患の中でも厄介な病気の一つです。痔核(いぼ痔)に次いで多い肛門疾患で、当院の外来患者の約15%を占めます。男性に多いのが特徴で、その割合は女性の5〜6倍といわれています。痔核や裂肛(切れ痔)は症状がかなり進行しない限り手術は行いませんが、痔瘻はいったんできてしまえば、ほとんどの場合手術しないと完治しません。
 肛門から約2センチ入った部位には、肛門小窩(しょうか)というくぼみがあり、肛門腺という分泌組織につながっています。下痢を繰り返したり、体調を崩して抵抗力が弱まったりすると、肛門小窩から入った便中の細菌が肛門腺で炎症を起こし、これが広がって肛門周囲に膿(うみ)のたまりをつくることがあります。これを肛門周囲膿瘍(のうよう)といいます。このような状態になると、肛門周囲が腫れて、熱をもって激しく痛みます。膿瘍が破れて膿が出ることもあります。
 放置すると、肛門小窩と膿の出口を結ぶトンネルが形成されます。この状態が痔瘻です。また、膿瘍を繰り返しているうちに、トンネルが枝分かれし、アリの巣のように深く、複雑な痔瘻へと進行していく場合もあります。
 頻度は少ないですが、痔瘻は完治させずに放置しておくと、痔瘻がんになるケースもあります。肛門部に違和感を感じたら、早めに専門医を受診することが重要です。

痔瘻の治療について教えてください。
 根本的に治すには手術が必要です。この際、不用意に肛門の筋肉を損傷すると、肛門の変形や機能低下を来す恐れがあります。そのため、痔瘻の手術は痔の手術の中で最も難しいとされ、特に深部の複雑な痔瘻は複数回の手術が必要になることもあります。
 長期の入院が難しい場合は、シートン法と呼ばれる治療法によって外来通院で治療することも可能です。シートン法は、麻酔下でゴムひもを痔瘻管に通し、生体の異物反応を利用することで、ゴムとともに痔瘻管を少しずつ体の外へ押し出していくという治療法です。肛門の変形・機能低下のリスクが低い、再発率が低いなどいろいろな長所がありますが、治癒まで数カ月を要するため、お尻にゴムひもを装着したまま生活しなければならないという短所もあります。

2015年3月11日水曜日

歯科医療とアンチエイジング


ゲスト/E-line矯正歯科 上野 拓郎 院長

歯科医療におけるアンチエイジングとはどのようなものですか。
 高齢化社会の進展に伴い、「アンチエイジング(抗加齢)」という言葉が浸透する中、歯科医療の分野は多くの関連要素があり、今まで歯科が行ってきたことをもう一歩進めた、健康と美容のための総合的な診療に注目が集まりつつあります。
 口の健康が損なわれると、食事や会話などの日常生活に支障を来し、全身の老化を早めることが最近の研究で明らかになっています。しっかりかめないと、食べ物をおいしく味わうことができなくなり、食生活の質が低下し、それが健康に悪影響を及ぼします。
 矯正歯科の分野でいえば、かみ合わせが悪い状態が続くと、顔の特定の筋肉が疲労し、顔のゆがみや表情の不自然さ、口元のしわやたるみの原因となります。また、首の筋肉や頭を支えるさまざまな筋肉にも負担が掛かるので、肩こりや腰痛、耳鳴り、片頭痛といった、歯とは関係のなさそうな症状を引き起こす場合もあります。また、歯並びなど見た目の問題も大きく、他人とのコミュニケーションに自信が持てなくなり、外に出るのがおっくうで内にこもりがちになり、それが「老い」にもつながります。
 歯が心と体の健康に及ぼす影響は非常に大きく、歯を含む口腔全体の健康がアンチエイジングの要になっているといっても過言ではありません。もっと健康で若々しく生きるために、そして、いつまでも心からの笑顔を保てるように、口元から積極的に老化防止を実践しようとするのが、アンチエイジングに基づく歯科医療の考え方です。

アンチエイジングに基づく矯正治療について教えてください。
 口の中の機能とバランスを追求していくと、歯は自然と美しく並ぶものです。さまざまな治療法により、見栄えばかりでなく、機能も同時に回復できるのが矯正治療です。「今からでは遅いのでは?」とおっしゃる方も多いですが、治療を始めるのに遅すぎることはありません。以前にも増して、成人の方やご年配の方が矯正を始められるケースが増えています。
 また、美容医学に基づく表情筋のトレーニング「フェイスニング」を用いて口腔周囲の筋肉を鍛え、バランスを整えることで、加齢による口元の衰えを防ぎ、美しい笑顔を作ることが期待できます。フェイスニングの実施については歯科に問い合わせてみましょう。

2015年3月4日水曜日

アルコール依存症


ゲスト/医療法人 耕仁会 札幌太田病院  太田 健介 院長

アルコール依存症について教えてください。
 飲酒のコントロールが効かなくなる病気です。健康を損ね、家庭生活や仕事に支障を来しても、お酒をやめることができません。国内にはアルコール依存症の疑いのある人が約440万人いると推計されています。
 アルコール依存症は薬物依存症の一種です。個人の人格や意志の弱さが原因ではありません。繰り返し飲酒することで、お酒に含まれるエチルアルコールという依存性の薬物に対して、脳の神経細胞に耐性が生じ、飲酒量をコントロールできなくなるのです。つまり、お酒を飲む人であれば誰でもかかる可能性のある病気です。
 依存症になると、飲酒を原因とする多種の合併症が生じます。例えば、高血圧、高脂血症、アルコール性肝障害、肝硬変、認知症などが挙げられます。アルコール依存症とうつ病の合併も頻度が高く、お酒に頼る生活が自殺のリスクを高めることも明らかになっています。
 依存症は中高年の男性に多い印象がありますが、若年層や女性の患者も増加しています。特に、未成年の飲酒は発達途上の脳への障害が大きく、ほんの数年で依存症になってしまう危険性があります。飲酒に対し規制が緩やかな日本社会では、中高生からの酒害教育を行っていく必要があるでしょう。

依存症の診断と治療、予防について教えてください。
 依存症の判断基準はいろいろありますが、代表的なものとして「価値観の逆転」があります。大切にしていた家族や仕事、自分の健康より飲酒を優先させる状態のことです。依存症になってしまったら、自分一人の力で抜け出すのは非常に困難で、適切な治療を受けない限り、徐々に悪化していくケースがほとんどです。
 治療には、断酒が必要です。節酒では駄目で、きっぱりやめるしかありません。薬物療法や認知行動療法、断酒会への参加により、断酒につなげていきます。ほかの病気と同じように、軽いうちに治療を始めれば、早期の回復が可能です。重要なのは、病気だと自覚し、正しい知識を得て、有効なやめ方を知ることです。
 依存症の一番の予防は、お酒と病気について正しく知ること。依存症は人生が破綻し、周囲を傷つける進行性の深刻な病気であると理解することが大切です。また、お酒の持つ負の側面を十分に認識し、お酒と安全に付き合っていくことが大切です。

2015年2月25日水曜日

歯科治療後の痛みについて


ゲスト/医療法人社団アスクトース 石丸歯科診療所 近藤 誉一郎院長

虫歯の治療後、しばらくの間、痛みが残ることはありますか。
 一般的な虫歯の治療は、虫歯部分を完全に取り除くことを基本としますが、神経のある歯を削っていくと、削った分だけ歯の中にある神経が近くなります。虫歯のタイプや進行具合によっては、やむを得ず神経に近いところまで削らなくてはならないこともあり、治療後に軽い痛みや染みる症状が残ることがあります。また、歯を削ったり、歯に詰め物をしたりという行為そのものの刺激により、術後痛が出る場合もあります。削った後、歯は神経を保護するように新しい層(第二象牙質)を作ります。第二象牙質が形成されると、刺激が神経に伝わりにくくなり、それらの症状も次第に治まっていくケースが多いです。
 症状が治まるまでの期間はさまざまで、1、2週間程度で落ち着く場合もあれば、1年以上かかることもあります。慎重に様子を見ながら対応していきますが、症状が軽減しない場合には、神経を取らなければならないこともあります。ただし、神経を取ってしまった歯は弱くなりますので、経過観察方法および治療などについて、かかりつけの歯科医とよく相談することが大切です。

歯の神経を取った後に、痛みが残ることはありますか。
 虫歯が歯の神経にまで及んでいる場合など、根管治療(歯の神経・根の治療)が必要になります。根管は部位によってそれぞれ異なる形状で、複雑に分岐・湾曲しているので、非常に難しい治療の一つといえます。
 治療時には、細い針のような器具を用いて、神経を取り除いていくのですが、その構造や形態によっては、完全に除去するのが難しいものもあります。歯根の奥に残った神経に炎症など問題があると、術後に痛みや不快症状が出る場合があります。特に奥歯の大臼歯では根管が3〜4本あり、複雑な形状のため、処置後も不快症状が残るケースが少なくないです。また、神経をきれいに取り除けたとしても、治療の刺激などにより、しばらく痛みが生じることもあります。
 根管治療後に不快感が残っている場合は、硬いものをかむのを控える、仮歯にして歯の負担を少なくするなどしながら、経過観察を行います。それでも治まらない時は、レントゲンやCTなどで精密検査をした後、もう一度歯の根の中を治療していきます。
 気になることや、調子が悪いと思われる部位があれば、適切な相談・治療を早期に受けることをお勧めします。

2015年2月18日水曜日

社交不安障害


ゲスト/医療法人社団 正心会 岡本病院 山中 啓義  副院長

社交不安障害とはどのような病気ですか。
 人前で話をしたり、人前で何か行動したりするような社会的状況において、「変に思われるのではないか」「恥をかくのではないか」と心配し、恐れる状態が持続する症状のことです。そのような状況にさらされると強い不安が生じ、不安に伴う顔面の紅潮、動悸(どうき)、震え、発汗、胃腸の不快感、下痢などの身体症状が現れることもあります。例えば、会議で指名されて意見を言う、ミーティングで報告する、公式な席であいさつをする、面接を受ける、よく知らない人に電話をかける、権威ある人と話をする、人に見られながら楽器を演奏する、外で他人と食事をする、人前で字を書くといった場面で症状が出ることが多いとされています。
 そういった症状が出るのではないかという不安から、学校や会社、会議などの社会的な活動・状況をなるべく避けようとしたり、やむを得ずそうした状況に入らなくてはならない時に強い苦痛を感じたりするようになります。このような「不安」「回避」の状態が6カ月以上持続している場合、社交不安障害の可能性があります。不安を感じるのが大勢の前で話をしたり、何か行動をしたりというケースに限られている場合は、社交不安障害のパフォーマンス限局型と診断されることもあります。
 これまで、これらの症状は「極度のあがり症」といった本人の性格の問題と誤解される傾向がありました。しかし、最近の研究によると、多くの人たちが社交不安障害の典型的な症状で悩み、社会生活に支障を来していることが分かってきました。ある研究では、一般人口における社交不安障害の出現率は5〜10%と報告されています。現在では、受診して治療を選択される方が増えています。

社交不安障害の治療について教えてください。
 現在、治療法はいくつかありますが、まずは薬物治療が有効とされています。SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)というカテゴリーの薬剤であるパロキセチン、フルボキサミンなどの有効性が報告されています。しかし、本人が効果を実感するには、少なくとも数週間が必要とされており、息の長い治療となることをよく理解しておく必要があります。軽症例では効果発現の早い抗不安薬やβ遮断薬を用いることもあります。
 薬物治療以外では、カウンセリングの一つである認知行動療法も有効とされています。認知行動療法は、社交不安障害以外にも、うつ病、不眠症、アルコール依存症、摂食障害、パニック障害など、幅広く扱われている治療法で、出来事の捉え方を変えることで、気分も変化させる手法です。しかしながら、受診時には発症からすでに数年が経過していることも珍しくないため、認知行動療法だけで数カ月で寛解(症状が落ち着き進行しない状態)に導くことは困難なケースもあります。
 社交不安障害は病気にかかる期間が比較的長いということが一つの特徴といえるでしょう。思い当たる症状があれば、まずは精神科、心療内科を受診して相談してみてください。

2015年2月11日水曜日

隠れ脳梗塞


ゲスト/西さっぽろ脳神経外科クリニック 笹森 孝道 医師

隠れ脳梗塞(無症候性脳梗塞)について教えてください。
 脳ドックを受けたり、けがで脳の検査をしたときに医師から、脳梗塞があると言われてドキっとした、というような経験をされた方も多いのではないでしょうか。俗に「隠れ脳梗塞」というように、自分には思い当たるような症状がないのにもかかわらず、検査時に偶然見つかる脳梗塞をそう呼びます(正しくは無症候性脳梗塞と言います)。
 脳梗塞と聞かされると、驚いてしまいますが、即、大きな発作につながることは少ないと考えられますので、必要以上に不安になる必要はありません。検査の際に、医師の説明が十分でないために不安が増している場合が多いので、われわれも気を付けなくてはいけません。「隠れ脳梗塞がありますよ」と言われた場合には、ご自身の持病や生活習慣などを見直すためのきっかけにしていただくのが得策ではないでしょうか。こういった機会に禁煙を決断される方もいらっしゃいます。
 差し迫った危険はないのですが、そう言われて何も手を打たずに放っておいてもよいかというと、そういうわけではありません。無症候性脳梗塞の方は、健常者に比べると脳梗塞や脳出血、あるいは認知症になる危険がやや高いことが分かっています。また非常にわずかながら脳にダメージを与えているのではないかとする説もあります。つまり自分が他の人より脳梗塞を発症するリスクが高いことを自覚して、その予防に役立てることが大切です。
 だからといって、慌ててすぐに脳梗塞再発予防の薬を飲む必要性はありません。まずやるべきことは、脳梗塞の危険因子のチェックが必要です。脳梗塞の発症に一番関係があるのが高血圧の存在です。高血圧があればその後しっかり血圧を管理していくことがとても大切です。そのほかの危険因子では喫煙や糖尿病、脂質異常症などがあります。それぞれ医師の指導のもと適切に管理していく必要があります。
 脳神経外科の専門医では、さらに頸(けい)動脈の動脈硬化や脳血管のチェックなどを行って、リスクの高い方には内服薬を処方する場合もありますし、再発予防のための手術が行われる場合もあります。

2015年2月4日水曜日

関節リウマチの治療目標


ゲスト/佐川昭リウマチクリニック 佐川 昭 院長

関節リウマチの治療について教えてください。
 関節リウマチの治療は少し前まで痛みを抑えることが目標でした。しかし、生物学的製剤の登場など治療の進歩で、症状が落ち着き進行しない「寛解」も目指せるようになりました。現在の関節リウマチ治療は、単に痛みを取ることではなく、関節の炎症を抑え、関節の破壊と機能低下を防ぐこと、そして日常生活を支障なく過ごせることが目標となります。
 関節リウマチの新たな治療方針として注目されているのが、「T2T(Treat to Target)=目標を持った治療」です。目標を掲げて治療することは、はっきりした目標を持たないで治療するよりも、その後の効果に差があることが明らかになっています。

実際に治療を受けている患者さんの声を聞かせてください。
 日本リウマチ実地医会では、全国9487人の関節リウマチ患者に対し、治療への期待や不安について尋ねたアンケートの結果をヨーロッパリウマチ学会で報告しました。本調査の対象者のうち、3363人が生物学的製剤の投与(A群)を、4535人が抗リウマチ薬の投与(B群)を受けていました。
 結果、患者が薬物治療に期待するのは、両群とも「確実な効果」が最も多く、以下「関節破壊進行抑制」、「効果の持続」などが続きました。一方、「薬物療法に失望した経験がある」と答えた患者の割合は、A群がB群の約2倍も多く、「二次無効(半年を過ぎた頃から効果が低下する)」に失望したと回答した割合はB群の2倍以上でした。
 治療目標は、両群とも「痛みの緩和・消失」、「生活の質の改善」が共通していましたが、B群では「関節破壊進行抑制」や「手術回避」を目標とする割合がA群より低い結果になりました。
 生物学的製剤の優れた効果を経験した患者では、高い期待値に効果が見合わない場合に「失望」を味わうことが多くなる一方、関節破壊進行抑制や改善といったより高い治療目標を掲げている人が多いことが示されました。これに対し、生物学的製剤を使っていない患者にはこれらを現実的な目標と捉えている人が少ない傾向にありました。
 こうした意識の違いは、同じように「T2T」に基づく治療を行っても、効果に差を生む原因となる可能性が高く、今後は生物学的製剤を使っていない患者に向けた、情報提供など啓発活動をさらに充実させる必要があると思います。

2015年1月28日水曜日

緑内障と禁忌薬について


ゲスト/札幌エルプラザ 阿部眼科 阿部 法夫 院長

緑内障の禁忌薬について教えてください。
 目の奥の視神経が侵され、視野が欠損する緑内障。40歳で50人に1人、70歳以上では10人に1人がかかっているとされ、社会の高齢化に伴い、緑内障の患者数はますます増加することが予想されています。
 緑内障の治療中に患者さんからの問い合わせが多いのは、薬に付いてくる説明書き(医薬品添付文書)にある「禁忌」についてです。他医療機関で処方された薬などに付いてくる説明書きに、「緑内障患者は使用しないでください」と書いてあることがありますが、それを見て驚いて相談に来る人も多いです。
 緑内障は大きく分けて「原発開放隅角(ぐうかく)緑内障(正常眼圧緑内障を含む)」と「原発閉塞隅角緑内障」の二つのタイプがあります。前者が緑内障の約90%、後者が約10%を占めます。瞳を開く(散瞳・さんどう)作用のある抗コリン薬や交感神経刺激薬のほとんどは、緑内障に禁忌とされていますが、実は緑内障の中でも原発開放隅角緑内障の場合は服用しても特に問題ありません。つまり、緑内障の患者さんの約90%は、これらの薬に制限を受けないのです。
 ただし、緑内障治療を受けている患者さんが、ご自身の緑内障の区分を明確に認識しているケースは少ないので、薬のことで心配になったら、かかりつけの眼科医の指示を仰ぐようにすることが大切です。

急性緑内障とはどのような病気ですか。
 原発閉塞隅角緑内障の場合、時として一気に眼圧が上昇し、放置すれば短時間で失明に至る急性緑内障を起こすことがあります。自覚症状としては視力低下、目のかすみ、眼痛、頭痛、嘔吐(おうと)などです。早急な治療が必要ですが、脳神経や胃腸の病気などと見誤られることも少なくなく、脳外科や内科を受診し、治療が遅れるケースも目立ちます。
 加齢による水晶体厚の増大が原因の一つと考えられていますが、薬物摂取、多量の飲水、長時間のうつ伏せ姿勢、精神的動揺などによる散瞳で誘発されることもあります。遠視で小柄な中高年の女性に発生頻度が高いとされています。
 治療は、急激に高くなった眼圧を下げるために、レーザーで虹彩の周りに穴を開けたり、人工水晶体を移植したり、狭くなった隅角を広げる虹彩手術などが行われます。

2015年1月21日水曜日

ストレス社会と女性の健康


ゲスト/医療法人社団五稜会病院 千丈 雅徳 院長

ストレス社会に生きる女性にアドバイスをお願いします。
 現代社会はストレス社会ともいわれるように、男女を問わず多くの方がさまざまなストレスを感じて生活していますが、特に社会で活躍している女性の皆さんは、身体的にも精神的にも、今までに直面していなかったようなつらさと向き合っているケースも多いようです。女性閣僚の積極的な登用など、女性の活躍が当たり前として受け入れられるよう社会の価値観は変わってきましたが、長い歴史の男性社会の中で、女性が強く生き抜いていくためには多大なストレスと付き合っていくことになります。適度なストレスはやる気を促進しますが、余計なストレスは不安や緊張を高め、抑うつ状態を引き起こすきっかけにもなります。では、毎日のストレスをため込まないようにするには、どうすればいいのでしょうか。
 まず、何が原因なのかを問題視すること、己の現実を知ることです。そのためには、どんな事で悩んでいるのか、感じた事を書き留めてみることをお勧めします。これは病院でも広く行われている方法で、「認知行動療法」と呼ばれる心理療法の一つです。イヤな気分を感じた時の状況、その時に自分はどんな気分になったか、その時に自分はどうすればいいと思うか、なぜ思い通りに物事が進まなかったと思うかなどを書き出し、その結果、自分の気持ちがどう変わったのかも書き表します。書くことで自分を客観的に見つめ直し、不安や緊張、抑うつ的なマイナス思考からギアチェンジして、プラス思考へと変わっていくことが期待できます。

不安やストレスをため込まない方法は他にもありますか。
 書くことが苦手な方は、自分に合った解決法を見つけなければいけません。広く実践されているのは、音楽で気分転換することです。心地よい音楽は、ストレスを和らげる効果があります。
 人間関係においては、嫌いな相手ほど笑顔で接することです。嫌いな人を好きになるのは難しいですが、笑顔で接していれば不思議と今以上に嫌いになることはありません。簡単にできることなので、やってみる価値はあります。また、家庭や職場、友人といる時は、他人の悪口や愚痴などに付き合わない方がいいでしょう。陰口を聞いているうちに、言っている人のイヤな感情まで自分が引き受けてしまうことになるからです。仕事上の問題を分かち合うチームプレーや、何でも言い合える友情は大切ですが、悪口や陰口は禁物です。このあたりは、微妙なバランス感覚が求められます。
 気分の切り替えも大事です。仕事中にイライラしたら、ロッカールームやトイレなどで一人になって深呼吸すると心をリセットできます。休日ほどイライラが募るという人も多いですが、何か無我夢中になれる趣味があると助けになります。園芸、手芸、俳句、スポーツジムなどいろいろありますが、たくさんは必要ないので、まず一つをゆっくりと見つけていきましょう。
 病気にならないためにも、ストレスをしなやかにかわせる柔軟さを身に付けた女性になっていただきたいです。

2015年1月14日水曜日

子どもの歯科矯正治療


ゲスト/宇治矯正歯科クリニック 宇治 正光 院長

子どもの矯正治療について教えてください。
 お子さんの歯並びに矯正が必要かどうか迷う人も多いのではないでしょうか。歯並びを確かめる方法の一つとして、お子さんの口元を顔の正面から観察してみてください。上下の前歯の真ん中の位置が一致していれば安心ですが、ずれている場合は、矯正の必要があると考えられます。出っ歯や受け口など、上下の顎が前後に大き過ぎたり小さ過ぎたりという骨格的な問題は、一般の方でも気付きやすいですが、左右のずれは発見しにくいものです。
 前後あるいは左右にずれが認められる場合は、顎骨(がっこつ)の成長コントロールが可能な9〜11歳までに矯正治療を行うのが理想的です。就寝時にバイオネーターと呼ばれる機能的顎(がく)矯正装置を装着し、寝ている間にずれた顎の骨を中央に移動させます。子どもの成長の力を利用して、無理なく自然にバランスのよい骨格をつくれます。痛みはほとんどなく、日中は装着の必要がありません。ずれの程度にもよりますが、装着期間は半年〜1年が平均で、経過観察のための通院は、1〜3カ月に一度が目安となります。
 ずれの原因はさまざまですが、歯そのものがずれているケースもあり、永久歯がはえそろってからでも治療は可能です。その場合、抜歯する可能性は高くなりますが、きれいに治療できるケースがほとんどです。矯正治療をいつ始めるべきかという判断は非常に難しいので、一度専門医にご相談ください。

家庭でチェックするための別の方法はありますか。
 頬づえやかみ癖、就寝時の姿勢が左右どちらかに大幅に偏っている場合などは、左右のずれを引き起こす原因になることがあります。上下の前歯の位置を確認したら、次は鼻の先端を基準に、鼻の中央に前歯の中心が沿っているかを見てください。ずれの原因は一見して分かるものではなく、万が一、骨格のずれを歯のずれと勘違いして放っておくと、矯正に最適な成長時期を逃してしまうので注意が必要です。
 子どものうちの悪い歯並びやかみ合わせを放置していると、成長に伴い虫歯や歯周病の原因となったり、顎関節にも悪影響を及ぼす恐れがあります。また、大人になってから心理的なストレスの原因となる場合もあります。少しでもおかしいと感じたら、早めに専門医に相談することをお勧めします。

2015年1月7日水曜日

「脳梗塞(こうそく)」について


ゲスト/コスモ脳神経外科 小林 康雄 院長

脳梗塞について教えてください。
 脳梗塞は虚血性の脳卒中で、脳の血管が血栓などによって詰まったり、動脈硬化によって血管が狭くなるなどして起こる疾患です。その背景となるのは基本的には、メタボリック症候群です。内臓脂肪が過剰になると、糖尿病や高血圧症、高脂血症といった生活習慣病を併発しやすく、動脈硬化が急速に進行します。
 脳梗塞の症状としては、半身不随、半身麻痺、しびれ、感覚の低下、手足の運動障害、意識障害、言語障害、昏睡などが挙げられます。突然起こる場合が多いのですが、場合によっては予兆となる症状があります。半身のしびれ、口のもつれなどで、このような症状が表れた場合は、迅速にかかりつけ医の指示をあおぐか、脳神経外科へ直行することをお薦めします。発症後3時間以内であれば、血栓や塞栓(そくせん)を溶かす薬を使って治療します。効果があれば、比較的後遺症が軽くすみます。投薬治療ができない場合は手術となりますが、この場合も治療までに要する時間が短いほど、後遺症を軽くすることができます。いかに迅速に治療を始めるかが、予後に大いに関係してきます。
 
脳梗塞を予防するにはどうすればいいですか。
 30代、40代で動脈硬化が始まりますから、会社などの健康診断でメタボリックシンドロームの兆候があれば、普段の生活習慣を見直しましょう。食事は塩分を控え日本食中心にし、適度な運動、禁煙、節酒を心掛ける。ストレスや寝不足などで疲労が蓄積しないように規則正しい生活を目指しましょう。
 また、健康診断で不安要素があったり、動脈硬化症の近親者がいる場合は、一度「脳ドック」を受けることをお薦めします。レントゲン検査で頭と首の健康状態を調べ、MRI(磁気共鳴画像装置)で脳の断層写真を撮り、MRA(磁気共鳴血管造影)で血管の狭窄(きょうさく)や閉塞(へいそく)部分・脳動脈瘤(りゅう)の発見、動脈硬化の程度などを調べます。健康保険の適用外になりますが、1~2時間程度で受けられます。脳梗塞は一度発症すると命にかかわり、後遺症の影響も大きい疾患です。自分の健康・生活を守るためにも、予防を心掛けましょう。