2015年11月25日水曜日

薬物乱用・依存


ゲスト/特定医療法人北仁会  いしばし病院 白坂 知信 院長

薬物乱用・依存について教えてください。
 使用した人が交通事故や突然死するなどのトラブルを起こし、全国で社会問題化した危険ドラッグ。規制強化に伴い再び大麻事件の摘発者が急増しています。また、吸い込むと陶酔感が得られる医療用ガスが危険ドラッグの代用品として広まる兆しもあります。薬物乱用は、覚せい剤やシンナー、大麻、危険ドラッグなどの違法薬物だけではありません。家庭にあるような薬、例えば、風邪薬、鎮痛剤、せき止めなどの市販薬、精神科で処方される抗うつ剤、抗不安剤などの処方薬も乱用され、特に若い世代を中心に、薬物問題が深刻化しています。
 薬物乱用・依存者には、自己肯定感に乏しく自信がない、周囲に受け入れてもらえないという孤独感がある、などの特徴がよく見られます。心がこうした状態にあると、その辛さ、苦しさから逃れるために、自分がのめり込める対象である薬物に傾倒していきます。そして、いつしか薬物がなければ、平静でいられなくなってしまうのです。
 気持ちを落ち着かせるため、不安を鎮めるため、集中力を高めるため、ハイになるため…。薬物の幸福感、満足感は一過性なため、繰り返し求めたくなります。脳の中枢に心地よさの記憶が刷り込まれ、忘れられなくなるからです。そして、禁断(離脱)症状の不快感を消し去るため薬物を使い続け、意志の力ではどうすることもできない、精神的・肉体的な悪循環、薬物依存に陥るのです。薬物乱用・依存は、心身をむしばみ、人間関係を破壊します。やがて脳や神経、内臓などを侵され、時にはショックや窒息などで急死することもあります。

薬物依存の治療について教えてください。
 薬物依存は習慣ではなく、脳の病気です。強い依存の状態であれば、自分の力だけで克服するのは困難であり、医療機関での治療が必要です。治療の中心となるのは、認知行動療法です。薬物依存に陥る心理や背景を読み解き、考え方の癖や行動パターンを修正し、依存に歯止めをかけるというものです。
 薬物依存症の克服には、薬物の乱用をやめるだけではなく、薬物の使用をやめ続ける必要があります。そのためには、本人の治療だけでなく、家族への指導や助言も重要です。さらに、民間のリハビリ施設や、当事者らが集まる自助グループでの回復支援も欠かせません。

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