2015年10月7日水曜日
埋伏歯(まいふくし)
ゲスト/E-line矯正歯科 上野 拓郎 院長
埋伏歯とはどのような状態をいうのでしょうか。
生えずに埋まったままの歯を埋伏歯といいます。一般的に、12歳ごろまでには乳歯から永久歯に生え替わります。ただ、歯並びが悪かったり、顎が小さかったりすると、永久歯が生えてこない場合があります。乳歯がいつまでも抜けない、永久歯がなかなか生えてこないときは、埋伏歯である可能性が大きいです。
埋伏歯は、歯が骨の中に完全に埋まった状態のものや、歯の一部が見えているものがあります。放置しておくと、その歯が生えてこないという問題だけでなく、埋伏している歯がほかの健康な歯の根を吸収し、正常な歯の成長を妨げてしまったり、歯が生えてこない場所に両隣の歯が倒れ込むことや上下の歯の数が異なることで、将来の歯並びやかみ合わせを悪くする原因にもなります。
後になって生えてくる永久歯ほど生えるスペースが不足しがちになるため、埋伏歯は上下の親知らず(第三大臼歯)によくみられます。また、八重歯は遅くに生えてきた犬歯が、スペースがないため外側に飛び出してしまったものですが、そのスペースさえなくなり、犬歯が生えてこないケースも目立ちます。糸切り歯とも呼ばれる犬歯はもっとも長く丈夫で、かみ合わせのキーとなる重要な歯です。また、よく見える位置にあるため、埋伏していると審美的にも問題があります。
埋伏歯の治療について教えてください。
スペースが足りなくて歯が生えてこない場合は、乳歯を削ったり、矯正装置でスペースを広げたりすることで、歯が自然と生えてくるように誘導します。歯の生える位置や方向に問題がある場合は、埋伏歯に装置を付けて牽(けん)引するなどして、正常な位置・方向へ動かしていきます。すでに別の歯の根を吸収している場合など重症例は、抜歯が必要になるケースもあります。
歯並びやかみ合わせの良しあしは、本人の自覚もあり見た目で判断しやすいですが、埋伏歯は骨の中に“もぐっている”状態なので、顔全体のレントゲン写真を撮らないと発見・診断できません。子どもは成長過程にあるため矯正治療を始める適切な時期がありますが、永久歯が生える小学校入学時、大人の顔つきに変わる中学校入学時など、節目ごとに矯正専門医の診察を受け、歯並びやかみ合わせ、埋伏歯の点検をしてもらいたいと思います。
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