2015年10月14日水曜日
くも膜下出血
ゲスト/札幌宮の沢脳神経外科病院 古明地 孝宏 脳神経外科部長
くも膜下出血とはどのような病気ですか。
くも膜下出血は、脳を保護するくも膜の下にある血管から出血する脳卒中の一つです。症状はさまざまですが、突然起こる激しい頭痛が特徴で「今まで経験したことのないほどの痛み」などと表現されます。40〜50代の働き盛りの年齢層に発症することが多く、いったん出血を起こすと、約3割が死に至り、治療で一命を取り留めても、言語障害などの深刻な後遺症が残ることも多い恐ろしい病気です。
原因のほとんどは、脳動脈の壁の一部がこぶのように膨らむ脳動脈瘤(りゅう)の破裂によるものです。高血圧や動脈硬化などによって血管壁が弱くなるとできやすいといわれます。脳動脈瘤は破裂しなければ、無症状であることも珍しくありませんが、破裂の大部分は前触れもなく起きるので、早期発見が鍵を握ります。
くも膜下出血の治療と予防について教えてください。
くも膜下出血が起こってしまった場合、最も注意することは再出血です。再出血を防ぐ治療として、開頭手術と血管内治療があります。開頭手術は、頭蓋骨を開き、脳動脈瘤の根元をクリップで留めて止血したり、破裂を防いだりする頸(けい)部クリッピング術を行います。一方、血管内治療は、脚の付け根の血管からカテーテルを入れて脳の病変部まで通し、脳動脈瘤の内部に金属製のコイルを詰めるコイル塞栓(そくせん)術を行います。それぞれの治療法にはメリットとデメリットがありますから、どちらが良い治療法ということではなく、患者さんの状態を総合的に判断し、適切な治療を決定します。
予防は、まず生活習慣の改善から。特に、脳卒中を誘発する大きな要因となるのは高血圧です。普段の生活の中で血圧を自分でチェックし、血圧のコントロールに気を配りましょう。そのほか、喫煙、大量飲酒など血管に悪影響を与える因子は取り除いていくことが大切です。
くも膜下出血の多くは脳動脈瘤が原因となるため、脳ドックなどの検査で、脳動脈瘤の有無を確認することも重要です。現在ではMRIを用いて頭の血管を撮影(MRA)さえすれば、脳動脈瘤を破裂前に発見することが可能になっています。くも膜下出血は遺伝との関わりも深いので、家系にくも膜下出血を起こした方がいる場合、40歳を過ぎたら健康診断のつもりで一度検査を受けることをお勧めします。
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