2015年6月17日水曜日
アレルギー性鼻炎・慢性副鼻腔炎による咳(せき)
ゲスト/医療法人社団 大道内科・呼吸器科クリニック 大道 光秀 院長
―花粉症の季節の頑固な咳について教えてください。
北海道の花粉症は4月下旬から5月下旬までがピークです。道内の花粉症の原因として、シラカバ、ハンノキによるものが多く、花をつける4月下旬から始まります。さらに、カモガヤなどのイネ科の牧草やヨモギによる花粉症が9月頃まで続きます。花粉症では鼻や眼の症状が良くなった後でも,気管支の粘膜が過敏な状態になっているので、感冒をきっかけとしてひどい咳になることがあります。シラカバ花粉症の時期に咳がひどい場合、花粉症による咳か、鼻水が喉(のど)に落ちてきたための咳かを区別して治療しなければなりません。もちろんこの時期でも肺炎やぜんそく,肺結核の場合もありますので、その区別も必要で、胸部写真や肺機能検査を受けて適した治療を受けることが大切です。
鼻水が鼻の後を通って喉に流れ落ちる状態を、後鼻漏(こうびろう)といいます。落ちた鼻水が喉を刺激することで、痰(たん)のからんだひどい咳や喉のイガイガ感を引き起こします。後鼻漏の原因としては、アレルギー性鼻炎や慢性副鼻腔(びくう)炎(蓄膿症)が挙げられます。副鼻腔炎は鼻の周辺の骨の中にある副鼻腔と呼ばれる空洞に炎症が起きる病気で、炎症の原因はアレルギーによる場合と、細菌やウイルスの感染によるものがあります。
―具体的な治療について教えてください。
副鼻腔炎は急性と慢性とに分けられますが、急性副鼻腔炎の多くは感染性で抗生物質の使用で速やかに治ります。慢性副鼻腔炎はアレルギー性鼻炎に伴う場合と感染によるものがあり、アレルギー性の場合は、抗ヒスタミン薬や抗ロイコトリエン拮抗薬であるモンテルカスト、プランルカスト、ステロイドの点鼻などが使用されます。慢性副鼻腔炎に伴う症状の中でも、後鼻漏が引き起こす咳や痰は非常に厄介なもので、鼻炎の症状(鼻みず、鼻づまり)がなく、喉のイガイガ感や咳,痰だけのこともあり診断が難しく、治療も数回の外来で治すことは困難です。感染による場合はマクロライド系の抗生物質を少量、長期間投与する治療法(マクロライド少量長期療法)が選択されます。抗生物質は長くても2週間以内の投与というのが一般的ですが、この場合通常の内服量の半分の量を最低4カ月間以上、毎日服用します。少量のマクロライドは本来の抗菌作用を期待するのではなく、抗炎症作用や免疫系への作用などを期待して投与されます。この治療法で約7割は改善しますが、約3割の患者さんには効かず、治療に難渋する場合も多いです。
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