2015年2月18日水曜日

社交不安障害


ゲスト/医療法人社団 正心会 岡本病院 山中 啓義  副院長

社交不安障害とはどのような病気ですか。
 人前で話をしたり、人前で何か行動したりするような社会的状況において、「変に思われるのではないか」「恥をかくのではないか」と心配し、恐れる状態が持続する症状のことです。そのような状況にさらされると強い不安が生じ、不安に伴う顔面の紅潮、動悸(どうき)、震え、発汗、胃腸の不快感、下痢などの身体症状が現れることもあります。例えば、会議で指名されて意見を言う、ミーティングで報告する、公式な席であいさつをする、面接を受ける、よく知らない人に電話をかける、権威ある人と話をする、人に見られながら楽器を演奏する、外で他人と食事をする、人前で字を書くといった場面で症状が出ることが多いとされています。
 そういった症状が出るのではないかという不安から、学校や会社、会議などの社会的な活動・状況をなるべく避けようとしたり、やむを得ずそうした状況に入らなくてはならない時に強い苦痛を感じたりするようになります。このような「不安」「回避」の状態が6カ月以上持続している場合、社交不安障害の可能性があります。不安を感じるのが大勢の前で話をしたり、何か行動をしたりというケースに限られている場合は、社交不安障害のパフォーマンス限局型と診断されることもあります。
 これまで、これらの症状は「極度のあがり症」といった本人の性格の問題と誤解される傾向がありました。しかし、最近の研究によると、多くの人たちが社交不安障害の典型的な症状で悩み、社会生活に支障を来していることが分かってきました。ある研究では、一般人口における社交不安障害の出現率は5〜10%と報告されています。現在では、受診して治療を選択される方が増えています。

社交不安障害の治療について教えてください。
 現在、治療法はいくつかありますが、まずは薬物治療が有効とされています。SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)というカテゴリーの薬剤であるパロキセチン、フルボキサミンなどの有効性が報告されています。しかし、本人が効果を実感するには、少なくとも数週間が必要とされており、息の長い治療となることをよく理解しておく必要があります。軽症例では効果発現の早い抗不安薬やβ遮断薬を用いることもあります。
 薬物治療以外では、カウンセリングの一つである認知行動療法も有効とされています。認知行動療法は、社交不安障害以外にも、うつ病、不眠症、アルコール依存症、摂食障害、パニック障害など、幅広く扱われている治療法で、出来事の捉え方を変えることで、気分も変化させる手法です。しかしながら、受診時には発症からすでに数年が経過していることも珍しくないため、認知行動療法だけで数カ月で寛解(症状が落ち着き進行しない状態)に導くことは困難なケースもあります。
 社交不安障害は病気にかかる期間が比較的長いということが一つの特徴といえるでしょう。思い当たる症状があれば、まずは精神科、心療内科を受診して相談してみてください。

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