2015年2月11日水曜日
隠れ脳梗塞
ゲスト/西さっぽろ脳神経外科クリニック 笹森 孝道 医師
隠れ脳梗塞(無症候性脳梗塞)について教えてください。
脳ドックを受けたり、けがで脳の検査をしたときに医師から、脳梗塞があると言われてドキっとした、というような経験をされた方も多いのではないでしょうか。俗に「隠れ脳梗塞」というように、自分には思い当たるような症状がないのにもかかわらず、検査時に偶然見つかる脳梗塞をそう呼びます(正しくは無症候性脳梗塞と言います)。
脳梗塞と聞かされると、驚いてしまいますが、即、大きな発作につながることは少ないと考えられますので、必要以上に不安になる必要はありません。検査の際に、医師の説明が十分でないために不安が増している場合が多いので、われわれも気を付けなくてはいけません。「隠れ脳梗塞がありますよ」と言われた場合には、ご自身の持病や生活習慣などを見直すためのきっかけにしていただくのが得策ではないでしょうか。こういった機会に禁煙を決断される方もいらっしゃいます。
差し迫った危険はないのですが、そう言われて何も手を打たずに放っておいてもよいかというと、そういうわけではありません。無症候性脳梗塞の方は、健常者に比べると脳梗塞や脳出血、あるいは認知症になる危険がやや高いことが分かっています。また非常にわずかながら脳にダメージを与えているのではないかとする説もあります。つまり自分が他の人より脳梗塞を発症するリスクが高いことを自覚して、その予防に役立てることが大切です。
だからといって、慌ててすぐに脳梗塞再発予防の薬を飲む必要性はありません。まずやるべきことは、脳梗塞の危険因子のチェックが必要です。脳梗塞の発症に一番関係があるのが高血圧の存在です。高血圧があればその後しっかり血圧を管理していくことがとても大切です。そのほかの危険因子では喫煙や糖尿病、脂質異常症などがあります。それぞれ医師の指導のもと適切に管理していく必要があります。
脳神経外科の専門医では、さらに頸(けい)動脈の動脈硬化や脳血管のチェックなどを行って、リスクの高い方には内服薬を処方する場合もありますし、再発予防のための手術が行われる場合もあります。
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