2015年5月7日木曜日

ニキビと漢方治療


ゲスト/宮の森スキンケア診療室 上林 淑人 院長

ニキビについて教えてください。
 ニキビは毛穴に皮脂が詰まり、そこにアクネ菌という細菌が感染して起こります。皮脂の分泌が盛んな部分に発症しますが、その原因は体質や肌質、職場や家庭でのストレス、偏った食生活などいろいろです。男性に比べ、化粧をする女性のほうが悪化したり長引いたりしやすい傾向にあります。
 ニキビには「こうすれば必ず良くなる」という治療法はなく、その人に合った方法を見つけ、それを継続することが大切です。思春期のニキビは比較的治療効果が出やすく、塗り薬だけで改善されることが多いです。一方、20〜30代のニキビは、治療が困難な場合が多く、塗り薬以外にビタミン剤や抗生物質の服用が必要になることもあります。いずれの場合も頑固なニキビには、ニキビの出やすい体質の改善を図る目的で、漢方治療が非常に有効です。

ニキビの漢方治療について教えてください。
 問診で患者さんの体質を把握し、顔色の観察や舌診、脈診などを基に、漢方医学独特の病態診断基準である「証(しょう)」を定めます。証は病気の状態と体質を反映したもので、これに応じて治療の方向が決まり、それぞれに合った漢方薬が選択されます。
 漢方医学では、人間の体を構成する基本的な要素「気・血・水」のバランスが健康状態を左右すると考えます。例えば、「気」では元気がなくなり消化吸収が低下する「気虚」が、「血」では血液の循環不全から来る「血虚」、血が局所的に滞る「お血」が問題になることが多いです。
 患者さんの体のどの部分のバランスが崩れ、ニキビの原因となっているのかを見極め、全身の状態を改善しながらニキビを治していきます。例えばニキビの原因が気虚にあるなら六君子湯(りっくんしとう)、お血にあるなら桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)といった漢方薬が処方されます。また具体的な症状でいうと、赤いニキビができるときは清上防風湯(せいじょうぼうふうとう)、ニキビが化膿(かのう)しやすい人には荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)などが効果的です。漢方薬は患者さんの状態を示す証に合わせて処方されるため、同じ症状でも使う薬が違ったり、同じ薬を異なる症状に使ったりすることもあります。

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