2015年5月27日水曜日

恐怖症性不安障害


ゲスト/時計台メンタルクリニック 木津 明彦  院長

恐怖症性不安障害とはどのような病気ですか。
 恐怖症性不安障害は、通常は危険ではないさまざまな対象や状況に対して強い恐怖や不安を感じる病気です。恐怖・不安感とともに「気がおかしくなってしまうのではないか」「体が壊れてしまうのではないか」と考えたり、そのような対象や状況をなんとか避けようとするなどの回避反応がみられます。また、心拍数や血圧の上昇、発汗などの身体反応も伴います。
 恐怖を感じる対象はさまざまで、対人恐怖、動物恐怖、乗り物恐怖、雷恐怖など数多くの種類があります。例えば、対人恐怖は他者と接することや人から注目を集めるような状況に置かれることに恐怖を感じ、学校や会社に行けなくなったり、うつ状態を併発して社会的機能が著しく低下したりするケースもあります。
 ヒトを含めた動物は、危険な体験をした際に恐怖を感じ、その時の状況を脳内に記憶します。恐怖の記憶は、一度の恐怖体験で形成され、それが長期間にわたって保持されます。そして、再び同じような状況が訪れた際に、危険を防御・回避するための行動を取ります。これには、側頭葉内の扁桃体(へんとうたい)という部位が大きく関係しています。扁桃体は、簡単にいえば恐怖や嫌悪感を感じるための器官です。突然、強烈な恐怖に襲われ、自分をコントロールできなくなるのは、扁桃体にそのような恐怖の回路ができてしまったわけです。

恐怖性不安障害の治療について教えてください。
 治療では、薬物療法として抗不安薬や抗うつ薬を用いると同時に、精神療法の一つである認知行動療法を行う方法などがあります。
 例として、恐怖を引き起こす場所や場面に段階的に直面することで、恐怖感や不安感に徐々に慣れていきます。まず、不安を感じる場面をリストアップし、それらの場面を不安度が小さいものから大きいものへと順番に並び替えて整理します。これを不安階層表と呼びます。不安度が小さい場面から練習し、徐々に不安度が高い場面へチャレンジしていきます。最初は不安を感じた場面も、慣れにより次回からは恐怖感や不安感が軽減し、少しずつ自信が付いてきます。
 ただし、一人一人が抱えている背景によって治療や生活指導は異なります。精神科・心療内科による専門的な治療の中で、時間をかけて向き合っていく必要があります。

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