2015年4月8日水曜日

統合失調症


ゲスト/医療法人五風会 さっぽろ香雪病院 宇佐見 誠 診療部長

統合失調症とはどのような病気ですか。
 統合失調症は、ないものをあるように感じたり、現実とは異なることを現実だと思い込んだりする幻覚や妄想などの「陽性症状」と、働く意欲が湧かない、他人と話をするのが苦手でおっくうになり、不登校・出社拒否、引きこもりなど自分の世界に閉じこもってしまう「陰性症状」が特徴的な病気です。「何かがおかしい」と不安を感じながらも、幻覚や幻聴、妄想などが病気のせいで起きていると自覚できず、本人が病気の治療をなかなか受け入れにくいことも厄介な点です。
 2011年の厚労省の推計では、全国の患者数は約70万人で、100人に1人の割合で発病するといわれています。10代後半から30代前半での発症が多く、発症しても診断を受けていない人も多数いるとみられます。脳内の神経伝達物質の一つであるドーパミンの過剰な分泌がさまざまな症状を引き起こすとされていますが、根本的な原因はいまだはっきりしていません。
 統合失調症は一進一退を繰り返しながら、多くは快方に向かいますが、中には再発を繰り返したりするなどの難治例もあります。近年は新薬開発や病気の研究が進み、早期に適切な治療とリハビリを行えば、永続的な回復や自立した社会生活も期待できるようになってきました。

統合失調症の治療について教えてください。
 現在の統合失調症の治療は、抗精神病薬による薬物療法が中心で、個々の患者さんに合った種類や量を選択します。いったん回復し安定しても、また症状が悪化したり再発したりするのを防ぐために、服薬をきちんと継続することが重要です。
 症状が安定したら、回復の程度に応じた精神療法やリハビリが行われます。病気に伴う無気力・無関心、対人コミュニケーションの低下などを改善していくため、同じ症状を抱える患者さんをはじめ、医師や看護師らとコミュニケーションを取りながら、あいさつや通常会話ができるといった社会適応能力や生活上起こるさまざまな問題を解決する能力の回復を目指します。入院中は作業療法士などによる作業療法やレクリエーション療法などを行い、外来ではデイケアに通所して、各種の行事や創作的・文化的活動の中で、体力や集中力、他人とのコミュニケーション能力を徐々に回復させます。
 もう一つ大切なのが、家族の支援です。患者さんにとっての最大の支援者は家族であり、適切な支援は本人への大きな力となります。病気について正しい知識を持ち、生活態度や言動に気を配り再発のサインを見逃さないよう心掛けてください。治療は長期間にわたるため、決してせき立てたり期待を掛け過ぎたりせず、途中でくじけないよう本人を勇気づけながら、根気強く接することが大事です。また支える家族も大きなストレスを抱えています。ぜひ同じ立場を経験した人が集う家族会に参加してみてください。同じ悩みを語り合い、互いに支え合うことで家族の気持ちも楽になると思います。

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