2015年7月8日水曜日
消化性潰瘍
ゲスト/佐野内科医院 佐野 公昭 院長
消化性潰瘍とはどのような病気ですか。
消化性潰瘍とは、主に胃や十二指腸の粘膜に深い傷ができた状態を指します(胃潰瘍、十二指腸潰瘍)。かつては死亡する人も多かった厄介な病気で、かの文豪・夏目漱石も胃潰瘍に終生悩まされました。現在はヘリコバクター・ピロリ菌が潰瘍の発症と関係していることが明らかになり、また2013年からピロリ菌感染による慢性胃炎にも保険が適用され、除菌治療をする人が増えたため、患者数は大幅に減少しています。
その一方で、ピロリ菌感染が原因でない消化性潰瘍が増えてきています。その一つが薬物性潰瘍と呼ばれるもので、代表的なのは主に鎮痛薬として広く処方される非ステロイド性抗炎症薬NSAIDs(エヌセイズ)により潰瘍になるケースです。脳梗塞や心疾患で使われる低用量のアスピリンによる潰瘍もこの中に含まれます。これらの薬は、体内で炎症や痛みを引き起こす働きを抑える半面、胃や十二指腸の粘膜を守る物質の働きも抑制してしまうため、長期間にわたって服用していると、粘膜の荒れや潰瘍をつくりやすくなります。薬物性の潰瘍は胃痛などの自覚症状があまりなく、時に消化管出血を起こす場合もあるなど、重症化することが多いため注意が必要です。潰瘍治療中はNSAIDsやアスピリン薬の減量や中止を考慮しますが、元の病気の状態を悪化させないよう、慎重な対処が求められます。薬を飲んで胃などの不調を感じたら、早めにかかりつけ医に相談してください。
処方薬の服用の際、気を付けることはありますか。
特に高齢者は内科や整形外科など複数の病院にかかることが多く、それぞれの病院から同じような薬を処方されるケースも出てきます。中でも、胃の病気以外でも胃薬はよく重複して処方されます。例えば、腰痛がひどくて整形外科から鎮痛薬を処方される場合、胃を荒らさないために胃薬も出されます。脳梗塞後遺症のため内科からは低用量アスピリンと胃薬を処方されます。一見胃薬が重複して処方されているように思えますが、こうした時は、自己判断でこれらの胃薬を加減したりどちらか、あるいは両方の薬を休んだりはしないでください。同じような薬にみえても、違う成分・効能の薬はたくさんあります。効果がないばかりか健康被害にもつながります。複数の薬を併用している時は必ず医師や薬剤師に報告、相談し、指示された用法や用量を守って正しく服用しましょう。くすり手帳を利用するのも役に立ちます。
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