2019年5月15日水曜日

かくれ脳梗塞(無症候性脳梗塞)

ゲスト/西さっぽろ脳神経外科クリニック 笹森 孝道 院長

かくれ脳梗塞とはどのような病気ですか。
 脳ドックを受けたり、けがで脳の検査をしたときに医師から、脳梗塞があると言われてドキっとした、というような経験をされた方も多いのではないでしょうか。俗に「かくれ脳梗塞」というように、自分には思い当たるような症状がないのにもかかわらず、検査時に偶然見つかる脳梗塞をそう呼びます(正しくは無症候性脳梗塞といいます)。
 脳梗塞と聞かされると、驚いてしまいますが、即、大きな発作につながることは少ないと考えられますので、必要以上に不安になる必要はありません。検査結果を伝える際に、医師の説明が十分でないために不安が増している場合も多く、われわれ医療従事者も気を付けなくてはならないところです。「隠れ脳梗塞がありますよ」と言われた場合には、ご自身の持病や生活習慣などを見直すきっかけにしていただくのが得策ではないでしょうか。こういった機会に禁煙を決断される方もいらっしゃいます。

かくれ脳梗塞が見つかった場合、どう対応すればいいのですか。
 無症候性脳梗塞と診断された場合、差し迫った危険はないとはいえ、何も手を打たずに放っておいていいわけではありません。無症候性脳梗塞の方は、健常者に比べると脳梗塞や脳出血、あるいは認知症になる危険がやや高いことが分かっています。また、非常にわずかながら脳にダメージを与えているのではないかとする説もあります。つまり、自分が他の人より脳梗塞など脳の病気を発症するリスクが高いことを自覚して、その予防に積極的に取り組むことが大切です。
 だからといって、慌ててすぐに脳梗塞再発予防の薬を飲む必要性はありません。まずやるべきことは、脳梗塞の危険因子のチェックです。脳梗塞の発症に一番関係が深いのが「高血圧」の存在です。高血圧があれば、その後しっかり血圧を管理していくことがとても大切です。そのほかの危険因子では喫煙や糖尿病、脂質異常症などがあります。それぞれ医師の指導のもと適切に管理していく必要があります。
 脳神経外科の専門医では、さらに頸(けい)動脈の動脈硬化や脳血管のチェックなどを行って、リスクの高い方には内服薬を処方する場合もありますし、再発予防のための手術を勧める場合もあります。

2019年5月8日水曜日

双極性障害(そううつ病

ゲスト/医療法人 耕仁会 札幌太田病院  太田 健介 院長

双極性障害とはどのような病気ですか。
 双極性障害は、気分が落ち込んで、気力が湧かず憂うつな「抑うつ状態」と、うつ状態とは逆に気分が高揚し、発言や行動が活発で抑制がきかなくなりがちな「そう状態」を繰り返す病気です。およそ100人に1〜1.5人の割合でかかる可能性があります。
 そう状態では、症状が軽い場合、睡眠時間が短く多弁となり、意欲が増し、アイデアが次々浮かんできたりすることから、本人は「調子が良い」と感じ、周囲も「やけに元気そうだな」と思う程度で見過ごされがちです。しかし、症状が重くなると、過大な消費を続けたり、攻撃的な言動で周囲の人とトラブルになったり誇大妄想に影響されて無謀な行動をしたり、興奮状態を呈する場合もあります。
 また、そう状態からうつ状態に転じます。うつ状態では、重症化すると自殺の危険性が高まり、一般の方と比べ、約15倍も自殺のリスクが高くなると指摘されています。
 お酒や薬物に依存する「物質使用障害」、パニック障害などの「不安障害」など、ほかの精神障害を併発するケースが多いのも特徴の一つです。

診断と治療について教えてください。
 双極性障害は、初めにうつ状態を呈することが多いです。双極性障害のうつ状態とうつ病は症状が似ているため、見分けがつきにくく、診断が難しいです。なかなか治らないうつ病と思っていたら、実は双極性障害だったというケースも少なくありません。双極性障害とうつ病は治療方針も治療に用いる薬も異なるため、この2つの病気をしっかりと鑑別することが重要です。
 治療は薬物療法が有効です。うつ病では主に抗うつ薬が処方されますが、双極性障害では気分安定薬を使い、うつ状態とそう状態の波を小さくすることが治療の目標となります。近年、双極性障害に効果の高い新しい薬も登場しており、治療の選択肢は広がっています。
 治療せず放置していると、重症化したり、再発を繰り返したりします。本人が気づきにくい病気なので、周囲が「今までと様子が違う」ことに気づいたら、いち早く医療機関につなげることが大切です。継続的な治療が必要な病気ですが、元気に回復した人や症状をコントロールしながら普通に日常生活を送っている人もたくさんいます。

2019年4月24日水曜日

子どもの歯科矯正治療

ゲスト/宇治矯正歯科クリニック 宇治 正光 院長

子どもの矯正治療について教えてください。
 お子さんの歯並びに矯正が必要かどうか迷う人も多いのではないでしょうか。歯並びを確かめる方法の一つとして、お子さんの口元を顔の正面から観察してみてください。上下の前歯の真ん中の位置が一致していれば安心ですが、ずれている場合は、矯正の必要があると考えられます。出っ歯や受け口など、上下の顎が前後に大き過ぎたり小さ過ぎたりという骨格的な問題は、一般の方でも気付きやすいですが、左右のずれは発見しにくいものです。
 前後あるいは左右にずれが認められる場合は、顎骨(がっこつ)の成長コントロールが可能な9〜11歳までに矯正治療を行うのが理想的です。就寝時にバイオネーターと呼ばれる機能的顎(がく)矯正装置を装着し、寝ている間にずれた顎の骨を中央に移動させます。子どもの成長の力を利用して、無理なく自然にバランスのよい骨格をつくれます。痛みはほとんどなく、日中は装着の必要がありません。ずれの程度にもよりますが、装着期間は半年〜1年が平均で、経過観察のための通院は、1〜3カ月に一度が目安となります。
 ずれの原因はさまざまですが、歯そのものがずれているケースもあり、永久歯がはえそろってからでも治療は可能です。その場合、抜歯する可能性は高くなりますが、きれいに治療できるケースがほとんどです。矯正治療をいつ始めるべきかという判断は非常に難しいので、一度歯科医にご相談ください。

家庭でチェックするための別の方法はありますか。
 頬づえやかみ癖、就寝時の姿勢が左右どちらかに大幅に偏っている場合などは、左右のずれを引き起こす原因になることがあります。上下の前歯の位置を確認したら、次は鼻の先端を基準に、鼻の中央に前歯の中心が沿っているかを見てください。ずれの原因は一見して分かるものではなく、万が一、骨格のずれを歯のずれと勘違いして放っておくと、矯正に最適な成長時期を逃してしまうので注意が必要です。
 子どものうちの悪い歯並びやかみ合わせを放置していると、成長に伴い虫歯や歯周病の原因となったり、顎関節にも悪影響を及ぼす恐れがあります。また、大人になってから心理的なストレスの原因となる場合もあります。少しでもおかしいと感じたら、早めに歯科医に相談することをお勧めします。

2019年4月17日水曜日

鼻から入れる内視鏡(経鼻内視鏡検査)

ゲスト/やまうち内科クリニック 山内 雅夫 院長

鼻から入れる内視鏡について教えてください。
 これまで、胃内視鏡検査は口から入れる経口内視鏡を用いるのが一般的でした。しかし、最近は「経鼻内視鏡検査」という鼻から挿入する方法で検査が行われることが増えてきました。経鼻内視鏡はかなり以前からあったのですが、近年は性能が良くなり、導入する医療機関が急増しています。
 経鼻内視鏡は弾力性のあるしなやかなチューブで、直径は5mm台と一般的な経口内視鏡に比べて細く、スムーズに挿入することができます。画像もクリアな高画質で、視野が広く、ごく小さな病変も発見することが可能です。
 経口内視鏡は挿入時、舌の付け根の舌根という部分に内視鏡が触れることで、検査の最中に吐き気をもよおすことがあるなど、患者さんの負担が大きかったのですが、経鼻内視鏡では、鼻から挿入した内視鏡は鼻腔(びくう)を通って食道に入るため、嘔吐感や痛みがほとんどありません。また、検査中に医師と会話できることも、患者さんと医師双方にとって大きなメリットになっています。

経鼻内視鏡検査の流れを教えてください。
 最初に鼻づまりがあるか、鼻血が出やすいかなど鼻の状態を確かめます。鼻の疾患がある場合などは、経鼻内視鏡が使えないこともあります。
 前処置として、鼻腔に「局所血管収縮剤」をスプレーし、鼻の通りを良くして出血をしにくくします。続いて、鼻腔に麻酔薬を注入してから、麻酔薬を塗った内視鏡と同じ太さの柔らかなチューブを挿入し、鼻腔の局所麻酔を行います。これによって、内視鏡が通過するときの痛みが抑えられます。局所麻酔なので、眠くなったりすることはありません。この後、内視鏡が鼻から挿入され、鼻腔、喉、食道、胃、十二指腸と順次観察がなされ、通常数分以内に終了します。
 がんや潰瘍など、食道や胃、十二指腸などの疾患は、早期発見・早期治療が完治への近道です。「検査が怖い」「以前すごくきつかった」など経口内視鏡を苦手とするあまりに受診が遅れ、症状が進行していることもあります。経鼻内視鏡は患者さんの体への負担が少ないので、内視鏡検査をちゅうちょしている人は1日も早く医師に相談してほしいと思います。

2019年4月10日水曜日

非アルコール性脂肪肝炎(NASH)

ゲスト/佐野内科医院 佐野 公昭 院長

非アルコール性脂肪肝炎とはどのような病気ですか。
 肝臓の細胞に脂肪が多くたまった状態が脂肪肝です。お酒の飲み過ぎによって引き起こされるアルコール性脂肪肝がよく知られていますが、お酒を飲まない場合でも脂肪肝になることがあり、これを非アルコール性脂肪性疾患(NAFLD=ナッフルディー)といいます。肥満や糖尿病、脂質異常症、高血圧症などの生活習慣病を伴うことが多く、メタボリックシンドロームの肝病変と考えられています。NAFLDにはほとんど病態が進行しない非アルコール性脂肪肝(NAFL=ナッフル)と、炎症や繊維化を伴い、肝炎から肝硬変、さらには肝がんに進行する危険性のある「非アルコール性脂肪肝炎(NASH=ナッシュ)」があります。飲酒歴がなくても脂肪肝の人で肝臓の病気が進行してしまうことがあるということです。
 肝臓は“沈黙の臓器”といわれるように、多少の負担がかかってもすぐには症状があらわれません。NASHになっていても、かなり病気が進行しない限りほとんど症状はありません。脂肪肝を治療せずに放っておくと、知らない間に肝硬変や肝がんまで進行してしまう場合があることを知っておいてほしいです。

診断と治療について教えてください。
 脂肪肝は自覚症状がほとんどないか、あっても倦怠感がある程度です。一般的な血液検査だけで診断することは難しく、超音波検査やCTによる検査で肝臓への脂肪沈着を確認します。NASHと診断するためには肝生検を行う必要がありますが、簡単に行える検査ではありませんし、多少のリスクもあります。そこで肝臓の線維化に着目して肝機能(GOT、GPT)や血小板数、年齢などから予測式(FIB-4 index)を用いて肝生検を行うべきかどうかの目安にします。電卓があればご自分でも計算できますが、データを入力すると結果を出してくれるホームページもあります。
 治療は、多くの場合肥満を伴っていますので、NAFLでは食事療法や運動療法など生活習慣の改善による減量が基本となります。NASHの場合も肥満のある場合は減量が大切で、糖尿病、脂質異常症、高血圧症がある場合にはそれらの治療も重要となります。こうした疾患に対する薬剤のなかにはNASHに対しても効果があると示唆されているものもあります。保険適用の問題はありますが、抗酸化作用があるビタミンEなども使われることがあります。肝障害の進行を防ぐため、初期の段階から積極的に治療を行なっていきます。
 特定健診など、健康診断で肥満と多少なりとも肝機能異常を認める場合には、症状がなくても専門医に相談してほしいと思います。

2019年4月3日水曜日

最新の糖尿病治療

ゲスト/医療法人社団 青木内科クリニック 青木 伸 院長

最新の糖尿病治療薬について教えてください。
 糖尿病治療薬の最近の進歩は目覚ましいものがあります。飲み薬では、高血糖の時にだけすい臓からインスリンを分泌させ、正常血糖値へ下げる「DPP-4阻害薬」があります。この薬は、理論的には低血糖を起こさず治療できる新薬で、糖尿病の平均血糖の指標であるHbA1c値を1.0%前後下げます。この薬と同じ系統の注射薬も登場し、「GLP-1受容体作動薬」と呼ばれています。この注射薬はHbA1c値を1.6%前後下げます。1日1回の注射が必要ですが、現在は1週間に1回で済む注射薬も出ました。この系統の注射薬は、すい臓のインスリンを出す細胞を保護し、インスリンの分泌を弱らせない作用も持ち合わせているといわれています。従来まで体重を減少させる糖尿病薬がありませんでしたが、「SGLT-2阻害薬」が登場し、この薬剤は血糖値を下げると同時に体重も減らします。最近の研究データ結果によると、この種の薬剤は、心血管系の心不全の出現を抑える働きと糖尿病性腎臓病を良くする働きを持ち合わせていることが判明してきています。
 一方、インスリン注射に目を向けると、「持効型インスリン(1回の注射で24時間効果を持続する長時間作用型インスリン)」があります。飲み薬の治療が効かなくなる症例でも、飲み薬をそのまま服用しながら、1日1回の持効型インスリンの注射を加えると血糖値が改善する症例もあります。「混合型インスリン」は従来まで濁った製剤でしたが、透明な製剤が登場し、10回以上振って混合しなくても済むようになりました。

糖尿病の治療について教えてください。
 糖尿病の治療状況が良好といえる目安は、HbA1cが7.0%以下になっている場合です。糖尿病の患者さんの約半数が、高血圧と脂質異常症(高脂血症)を合併しているといわれています。糖尿病を合併した高血圧の治療はとても重要で、血圧の治療目標値は125/75mmHg以下です。自宅で測定できる血圧計を治療に役立てる方法もあります。この場合使用する測定器は、指先や手首に巻くタイプのものではなく、上腕に巻くタイプのものをお勧めします。脂質異常症の治療目標値は、LDL-コレステロール(悪玉コレステロール)が120mg/dl以下です。糖尿病に重症の虚血性心疾患を合併している場合には、LDL-コレステロールは70mg/dl以下と治療の基準値が厳しくなりました。
 以上のようなさまざまな基準値を長期間保てると、眼底出血による失明、腎臓の悪化による透析、足の潰瘍・壊疽(えそ)による足の切断など、糖尿病に由来する重症の合併症にならなくて済みます。それ以外にも脳梗塞、心筋梗塞などの予防にもつながります。

2019年3月27日水曜日

胃がんの内視鏡治療

ゲスト/福住内科クリニック 佐藤 康裕 院長

胃がんの内視鏡による治療はどのように行われますか。
 口から挿入した内視鏡(胃カメラ)により、胃の内側からがんを切除します。胃がんは粘膜から発生し、次第に下層へ広がり、ある程度の深さに達すると胃の周囲のリンパ節に転移を起こし始めます。外科手術では周囲のリンパ節を含めて胃を切除しますが、内視鏡で切除できるのは胃の粘膜だけです。つまり、内視鏡治療で治る条件は、がんが胃の粘膜にとどまり、リンパ節への転移がないということになります。
 近年開発された「内視鏡的粘膜下層剥離術」によって、以前より多くの病変が切除可能になりました。治療中は鎮静剤などの注射により苦痛は少なく、入院は1〜2週間程度で済みます。外科手術では胃の下側の3分の2の切除や全摘などが行われ、患者さんによっては術後に体重が減少したり体力が低下したりします。一方、内視鏡治療であれば、術後も胃の大きさは変わりません。手術の傷痕も残らず、術前と同じような生活を望めます。

早期胃がんはどのように発見されますか。
 良い治療法であっても、がんを早期発見できなければ内視鏡治療を受けることはできません。自覚症状が出てから見つかったがんは進行がんで外科手術が必要です。症状のない早期がんの発見には「胃がん危険群」に対する定期検査が重要です。胃がんのほとんどは、現在または過去のピロリ菌感染者が発症し、ピロリ菌を持っている人は未感染者の150倍ほど胃がんになりやすいと推測されています。ピロリ菌は乳幼児期に感染し、持続的に胃の粘膜に住みつきます。大人に感染することはまれですので、できるだけ若いうちに検査を受けて除菌することが望まれます。
 2019年1月より札幌市では、指定医療機関においてがん検診の一つとしてピロリ菌検査を実施しています。満40歳・42歳・44歳・46歳・48歳の方を対象に、自己負担は千円で、血液検査のみで判定できます。除菌によって胃がんの発症は約3分の1に減少しますが、除菌時期が中年以降であれば未感染者と比べるとかなり高い発がんリスクがあります。ピロリ菌が胃がんの原因であることが広く知られ、除菌した患者さんも増えていますが、「除菌したので胃がんにはかからない」と誤解されている方もまだ多くいます。除菌後も定期的な内視鏡検査を受けることが重要であり、1年ごとの検査を目安にすれば、がんの早期発見が可能になります。

2019年3月20日水曜日

「眼瞼下垂症〜まぶたのたるみと老人性顔貌」

ゲスト/医療法人藻友会 いしやま形成外科クリニック 石山 誠一郎 院長


─眼瞼下垂症とはどのような病気ですか。
 眼瞼下垂症は、読んで字のごとく眼瞼(まぶた)が下垂する(垂れ下がる)ため、まぶたがうまくあげられなくなり、前方が見えにくくなる病気です。生まれつきの場合もありますが、多くが後天性です。最も多いのは、加齢や生活習慣に伴う腱膜性の眼瞼下垂です。コンタクトレンズを長年使用していたり、アトピー性皮膚炎や花粉症のかゆみでまぶたを強く擦(こす)ることが続いたり、スマホやパソコンなどによる眼の酷使、白内障の手術後、あるいは加齢に伴いまぶたを吊り上げる筋肉が、まぶたを支える瞼板(けんばん)から外れることが原因で起こります。
 老化が原因の場合は、まぶたの皮膚自体も垂れ下がることが少なくありません。「眠たそうな顔をしているといわれる」「若い頃より目が小さくなった感じがする」「実年齢より老けて見られる」など、整容的な問題を伴うことも多いです。また、眼瞼下垂症は視野が狭くなり、前が見えにくくなるため、おでこの筋肉を使って眉毛を強く上げたり、顎を突き上げたりして物を見るようになります。この結果、おでこや眉間に深いしわが寄るなど、老人に似た特有の顔つき(老人性顔貌)になりやすいです。近年では、眼瞼下垂症が頭痛や肩こりなどさまざまな不定愁訴を引き起こす要因となっていることも分かっています。

─治療について教えてください。
 薬では治すことができないため、手術が必要となります。腱膜性の眼瞼下垂の場合は、一般的にまぶたを吊り上げる筋肉を瞼板の正しい位置に再固定する手術が行われます。この際に余剰な皮膚も切除します。局所麻酔で行うので日帰り手術も可能です。手術後の腫れは1、2週間かけて引いていきます。眼が大きくなり、二重まぶたがくっきりするため、少し若返った印象になる方が多いです。傷跡は二重の線にかくれるので、ほとんど分かりません。眼瞼下垂症の治療は美容的な側面もありますが、視界の妨げや頭痛、肩こりなどの症状の改善が主体の場合は、健康保険が適応されます。
 「目は口ほどに物をいう」ということわざがある通り、眼の表情や視線は他人に与える印象を大きく左右します。私たち形成外科医は機能的な面のみならず、整容面も十分に考慮しながら手術を行います。眼瞼下垂症でお困りの方は、ぜひお近くの形成外科へご相談ください。

2019年3月13日水曜日

うつ病の受診のポイント

ゲスト/医療法人五風会 さっぽろ香雪病院 響 徹 診療部長

うつ病について教えてください。
 うつ病は、気分が強く落ち込み憂うつになる、やる気が出ない、集中できないなどの精神的な症状のほか、眠れない、疲れやすい、体がだるいといった身体的な症状が現れることのある病気です。長引く不調や、他の診療科を受診しても症状が良くならない場合も、うつ病が原因の可能性があります。ストレス社会で生きる私たちにとって、うつ病はいつ、だれが発症してもおかしくない、非常に身近な病気です。
 日常生活の中で憂うつになったり、気分が落ち込んだりといった感情の変化はだれもが経験しますが、うつ病の場合には時間がたっても気分が晴れず、喜びや好奇心をなくした状態が長期間続きます。そのため、仕事や学校に行けなかったり、体を動かすことができなかったり、社会生活に大きな支障をきたします。
 残念なことに、症状が悪化するとうつ病のために自殺をしてしまう方も少なくありません。「心のかぜ」といわれることのあるうつ病ですが、実際は「かぜ」よりもっと恐ろしい病気なのです。症状の悪化を避けるためには、早期発見・早期治療が肝心です。
 うつ病の治療には、休養、薬物療法、精神療法などがあります。治療の経過は人によりさまざま。良くなった状態が続いても、自己判断で治療をやめると再発することもあるので、あせらずに取り組むことが大切です。

受診のポイントについて教えてください。
 うつ病の多くは、ストレスが持続的にかかった結果です。ストレスによって心身が疲れきり、さまざまな症状が出ているのです。一般的に「疲労」は「休め」のサインです。うつ病にならないためにも十分な休養を取る必要があります。危険なのは、普段であれば疲れを感じてもおかしくない状態なのに、身体感覚が鈍って疲労を感じなくなっている場合です。うつ病になっている可能性が高く、一刻も早い受診が必要です。
 本人がうつ病による不調を自覚していなくても、周囲の人が「以前と様子が違う」「どこか変だ」と感じることがあります。なるべく早い段階で周囲がこれらのサインをキャッチし、うつ病に気づいてあげることが重要です。うつ病は、医師や専門家による適切な治療はもちろんですが、周囲の人が病気への理解を示し、共感してあげること、そして、受診につなげてあげることがとても重要です。

2019年3月6日水曜日

多焦点眼内レンズによる白内障治療

ゲスト/大橋眼科 大橋 勉 院長

白内障の治療について教えてください。
 白内障は、瞳の後ろにある水晶体が濁るために起きる視力障害です。治療には点眼薬が投与されますが、最終的には手術が必要です。日本白内障学会などによると、白内障手術は全国で年間140万件以上行われており、最も実施件数の多い外科手術の一つです。
 一般的な手術法は、水晶体を包んでいる袋を残し、袋の中の濁りを超音波で細かくして取り除き、代わりに人工の眼内レンズを挿入するものです。それぞれの目によって症状、程度、状況が異なるため、同じ白内障の手術でも難易度に差があります。
 通常、眼内レンズは1つの距離に焦点を合わせた「単焦点眼内レンズ」が使われていますが、近年では遠距離と近距離の2点に焦点が合うように設計された「多焦点眼内レンズ」も一般的になってきました。

多焦点眼内レンズによる白内障手術について教えてください。
 自由にピントを変えられるような見え方とは異なり、遠くにも近くにもメガネなしで焦点が合いやすくなります。場合によってはメガネを必要とするケースもありますが、頻繁に掛け外しをする煩わしさからは解放されます。乱視の治療も同時に行うことができますが、比較的治療の難易度が高く、多焦点眼内レンズを挿入後に乱視矯正の追加の治療が必要な場合もあります。
 夜間の光をまぶしく感じたり、暗い場所ではくっきり感が落ちたりするなどの弱点もあるので、どちらのレンズにするかは医師と話し合い、ライフスタイルを考慮して選択することをお勧めします。
 多焦点眼内レンズは2007年に厚労省に認可され、08年に先進医療として承認されました。先進医療とは、厚生労働大臣が保険適用外の先端的な医療技術と保険診療との併用を、一定条件を満たした施設のみに認める医療制度です。先進医療施設に認定された医療機関で、多焦点眼内レンズによる白内障治療を受ける場合、術前術後の診察などに保険が適用となります。また、民間の生命保険の先進医療特約の対象ともなり、先進医療に係る費用が全額給付されるケースもあります。
 保険外診療となりますが、遠近に加えて中間距離にも焦点の合う「三焦点眼内レンズ」も登場しています。眼内レンズの進化に伴い、白内障手術も見え方の質をより一層重視する時代に入ってきました。

2019年2月20日水曜日

社交不安症

ゲスト/医療法人北仁会  いしばし病院 内田 啓仁 医師

社交不安症とはどのような病気ですか。
 社交不安症(SAD)は、人前で話をするなど注目を浴びる行動に不安を感じ、顔が赤くほてる、脈が速くなる、息苦しくなる、おなかが痛くなるなどの症状が現れる病気です。例えば、公式な席であいさつをする、会議で指名され意見を言う、よく知らない人に電話をかける、外で他人と食事するといった状況で症状が出ることが多いです。その不安が、公衆の面前での行動に限定されている場合を「パフォーマンス限局型」と呼びます。
 恥ずかしいと思う場面でも、多くの人は徐々に慣れてきて平常心で振る舞えるようになりますが、SADの人は「恥をかいたらどうしよう」「変に思われるかもしれない」という不安感を覚え、そうした場面に遭遇することへの恐怖心を抱えています。SADのため、他人との関わりが辛くなり、不登校や引きこもりなど社会生活に支障を来すケースも少なくありません。
 SADは10〜20歳代に発症することが多く、症状が慢性化してくると、うつ病やアルコール依存症など別の精神疾患の合併が問題となります。心の病気か、性格の特性か、一見しただけでは見分けがつかないのもSADの特徴的な一面で、「内気」「人見知り」「引っ込み思案」などと思い込み、診療の機会を失ったまま過ごしている人も多いです。

治療について教えてください。
 SADの治療法には大きく2つ、薬物療法と精神療法があります。薬物療法では、不安や恐怖を感じる原因とされる脳内物質のバランスを保つ薬・SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)を用います。抗不安薬やβ遮断薬などを併用し、不安時の身体症状の緩和を図る場合もあります。
 精神療法では、物事の受け止め方のゆがみや偏りを修正していく「認知行動療法」や、不安が生まれる状況にあえて飛び込んで段階的に身を慣らしていく「暴露療法」などが有効です。同時に、適度な有酸素運動などの生活指導や呼吸法、リラックス法など不安状況への対処法の指導も行われます。
 SADは治療のできる病気です。治療によって長年の苦痛から解放され、人生が大きく変わる患者さんもたくさんいます。不安の頻度が多かったり、社会生活への影響が大きい場合は、思い切って専門医を受診し、適切な治療を受けることをお勧めします。

2019年2月13日水曜日

肺年齢とCOPD(慢性閉塞性肺疾患)

ゲスト/医療法人社団 大道内科・呼吸器科クリニック 大道 光秀 院長

肺年齢について教えてください。
 胸部X線検査は、肺の異常所見を見つけるものですが、呼吸器疾患の早期発見は難しいとされています。早期発見のためには、肺活量のようにどのくらいの量の空気を吸い込んだり吐き出したりできるか、またどれくらいの速さでたくさん吐き出すことができるかを調べる「スパイロメトリー」という呼吸機能検査が必要です。しかし、従来のスパイロメトリーによる検査値の判定(表示)は、患者さんにとって理解しにくいものでした。そこで、日本呼吸器学会が呼吸機能検査の結果をもとに、呼吸機能を年齢という身近な指標に置き換え、肺の健康状態を知る目安として考案したのが「肺年齢」です。例えば、59歳の患者さんが「肺年齢は93歳。実年齢よりも34歳高いです」と指摘されたら、日常生活に苦痛や不便を感じていなくても、少なからず危機感を覚えるはずです。実年齢との差を自覚することで、呼吸機能の健康への関心と早期治療への意識が高まることが期待されています。
 肺年齢は、大きく息を吸ったのち一秒間にいっきに吐ける息の量(一秒量)を測ることで、自分の肺の機能が実際は何歳ごろの肺の状態に相当しているのかをみる一つの目安です。一秒量の標準値は性別、年齢、身長によって異なり、20歳代をピークに加齢とともに減少します。測定後、患者さんの肺年齢と評価コメントが表示され、「異常なし」から「境界領域(現時点では異常なし)」、「肺疾患の疑い(要精検)」、「COPDの疑い(要経過観察・生活改善)」、「COPDの疑い(要医療・精検)」まで5つのグループに分類されます。「肺疾患の疑い」となった場合は、専門医による精査が必要と判断されます。また、「COPDの疑い」がある場合には、専門医の診断後、禁煙指導や気管支拡張薬、吸入ステロイド薬などによる治療が開始されます。
 肺年齢を老化させる病気の代表がCOPDです。喫煙が主な原因とされ、肺への空気の通りが慢性的に悪くなり、ゆっくりと進行していきます。これまで肺気腫や慢性気管支炎と呼ばれていたもののほとんどが含まれます。せき、たん、息切れが主な症状ですが、進行すると呼吸困難で日常生活に支障をきたし、呼吸不全で死に至るケースもあります。
 COPDは初期の段階では症状を自覚しにくいので、早期発見に呼吸機能検査は不可欠です。まずは自分の肺年齢を知ること。そして、定期的な肺年齢の測定を心掛け、COPDをはじめとする呼吸器疾患の予防と早期発見につなげることが大切です。

2019年2月6日水曜日

おしり(肛門)の痛み

ゲスト/札幌いしやま病院 碓井 麻美 医師 

おしりに痛みがあるとき、どんな病気が考えられますか。
 おしりの痛みといえば、痔を思い浮かべる人が多いと思います。痔とは肛門に起こる良性の病気の総称です。その中で頻度が高いのが、痔核(いぼ痔)・裂肛(きれ痔)、痔瘻(あな痔)の3大疾患です。
 痔核と裂肛は、排便時と排便後しばらくの間痛みがある、おしりから出血するなどはっきりとした自覚症状があるケースが多いです。また、痔瘻は皮膚に孔(あな)を形成することが多く、痛みや発熱が生じるのが一般的です。ただ、痔瘻の中でも特殊なタイプであり、皮膚から深い位置の膿瘍が原因の痔瘻(深部痔瘻、複雑痔瘻)は、頻度が少なく自覚症状も軽いケースが多いため、比較的診断が難しいです。おしりを専門的に診る肛門外科以外の診療科では、しばしば見逃されることが多い病気です。
 同じ痔核でも、肛門の内側の粘膜にできる内痔核と肛門の皮膚部分にできる外痔核とでは、痛みの種類や症状は異なります。また、痔以外にも肛門周囲膿瘍、肛門周囲炎、おしりの奥の筋肉のコリなど、おしりや肛門周囲に痛みや違和感を感じる病気がたくさんあります。
 重要なのは早期に受診して、痛みの原因と現在の病状を正確に把握することです。専門医による的確な診断の後に、治療方法、タイミングなど患者さんのライフスタイルに合わせた治療を行います。

「おしりの病院」を受診するコツを教えてください。
 肛門外科など「おしりの病院」に行くのをためらう理由は、「おしりを見せるのが恥ずかしい」「手術をしなければならないのが嫌」などが多いように思います。知ってもらいたいのは、おしりの病気の多くが薬による治療が可能です。当然ですが、来院される患者さんすべてに手術を勧めるわけではありませんので、安心して受診してください。ですが、おしりの痛みを放っておいて悪化した後では、本当に手術しなければならなくなることもあります。症状が軽いうちに受診することが大切です。
 おしりの病気に限りませんが、今抱えている痛みについて、医師や看護師にできるだけ具体的に伝えることが、適切な診断・治療につながります。病院に行く前に「いつから、どのぐらいの時間痛むのか」、また、「どこが、どんなときに、どんなふうに痛くなるのか」をメモに控えておき、診察時に伝えるのも上手な受診の仕方です。

2019年1月30日水曜日

歯性上顎洞炎

ゲスト/医療法人社団アスクトース 石丸歯科診療所 近藤 誉一郎院長

歯性上顎洞炎とはどのような病気ですか。
 「上顎洞(じょうがくどう)」とは聞き慣れない言葉ですが、頬骨の内側にある空洞のことです。鼻腔周囲の骨中の空洞を「副鼻腔(ふくびくう)」といい、上顎洞はその一つです。副鼻腔の中は、粘膜で覆われており、粘膜の表面には線毛と呼ばれる細い毛が生えています。線毛は、外から入ってきたホコリや細菌、ウイルスなどの異物を、粘液と一緒に空洞の外へ送り出す働きを持っています。
 副鼻腔がかぜやインフルエンザなどの感染から炎症を起こし、不快な症状を引き起こす病気が「副鼻腔炎」です。膿が副鼻腔にたまることが多く、「蓄膿症」とも呼ばれます。上顎のむし歯や歯周炎が主な原因となり、蓄膿症同様、上顎洞に膿がたまる病気を「歯性上顎洞炎」といいます。
 上顎の奥歯の歯根の先は、上顎洞に近接しており、歯によっては歯根が上顎洞内に入り込んでいます。そのため、深いむし歯で奥歯の根っこが炎症や壊死を起こしていたり、歯周病で歯根のまわりに膿がたまったりしているのを放置すると、細菌が上顎洞に侵入し始めます。歯性上顎洞炎にかかると、鼻から膿が出てくる、息をしたときに臭い、かむと痛い、頬が重苦しいなどの症状があります。第二大臼歯が最も原因になりやすいとされ、左右いずれか、片側のみに起こりやすいのも特徴です。

診断と治療、予防について教えてください。
 症例によっては、診断や原因歯の特定が難しいケースもありますが、近年では「歯科用コーンビームCT」を用いた低被ばくのCT検査により、より精度の高い診断ができるようになりました。
 治療は耳鼻咽喉科と歯科を受診し、上顎洞炎の治療とその原因となっている口腔内の治療をいっしょに行う必要があります。歯科では原因歯を特定し、抜歯や根の治療、歯周病や歯槽膿漏の治療を行います。歯性上顎洞炎は長引くと手術が必要となる場合も多く、上顎の歯の違和感と副鼻腔炎の症状が伴う場合は、早めの受診をお勧めします。
 予防は、上顎の歯の近くには上顎洞があることを意識して、日ごろから歯みがきなどのケアを怠らないこと。また、一見正常に見える詰め物治療後の奥歯が、実はその下で炎症を起こしているケースがあるので、定期的に歯科検診を受け、歯の根の治療は根気よく、丁寧に処置してもらうことが大切です。

2019年1月16日水曜日

リウマチ患者の災害への備え

ゲスト/佐川昭リウマチクリニック 佐川 昭 院長

─リウマチ患者の災害への備えについて教えてください。
 日本は世界の中でも災害の多い国です。昨年9月の北海道胆振東部地震、道内全域、約295万戸が停電する国内初のブラックアウトという未曾有の事態に都市機能はまひし、市民生活に大きな支障をきたしました。地下鉄や路線バスをはじめ、道内の交通機関は全面的にストップ、新千歳空港も閉鎖されました。また、家庭では冷蔵庫など保冷設備も通電せず、停電で店舗も閉まり、物資確保に困窮する人が続出しました。
 われわれ医療機関にも深刻な打撃を与えました。医療技術の進展で電力依存度が高まる中、電源喪失により外来診療を取りやめざるを得ない病院・クリニックも多かったです。当院もビルのエレベーターが止まり、電話が止まり、その日受診予定だった患者さんの対応に苦慮しましたが、万一の場合にと、紙カルテに電子カルテの処方箋の写しを残していたため、薬の処方という点では混乱なく対応することができました。近くの医療機関と普段から連携を進めるなど、災害に強いクリニックづくりを進めていかなければとあらためて強く思いました。
 安全確保のため、自宅を出て避難しなければならないような緊急時、関節リウマチの患者さんは、手足に症状が出て移動が困難になったり、薬による治療の中断を余儀なくされ症状が悪化したりすることが考えられます。自分が受けている医療を、避難先でも継続できるよう特段の準備をしておくことが重要です。
 災害時には、かかりつけの医療機関を受診できなくなる可能性も高いです。主治医以外の医師の診察も受けられるよう、自身の病状を把握しておく必要があります。服用している薬の説明に役立つのが「お薬手帳」。アレルギーや合併症の有無などを記録できるうえ、調剤を受けるたびに処方される医薬品の内容が更新されるので、緊急時に医療者が患者の病状を知る大きな手がかりになります。お薬手帳は分かりやすい場所に保管し、避難するときに忘れず持ち出せるよう普段から準備しておくことです。避難が必要になった時でも、財布と携帯電話やスマートフォンは持参している場合が多いので、薬のメモを財布に入れておいたり、薬の情報や写真を携帯電話に記録したり(撮ったり)しておくのも一案です。
 いつも飲んでいる薬は、非常用に3日分くらいを袋に入れて、決まった場所に保管しておきましょう。薬は、飲み切ってから処方が原則ですが、リウマチなど慢性疾患では、かかりつけ医と相談して完全に薬がなくなる前に受診し、常に数日〜1週間分ぐらい余裕があるようにしておくのも大切な備えです。

2019年1月9日水曜日

不登校

ゲスト/医療法人五風会 さっぽろ香雪病院 江川 浩司 副院長

不登校について教えてください。
 文部科学省は、1年間の欠席日数が病気などを除いて30日以上になることと定義しています。文科省が2018年2月に公表した「児童生徒の問題行動・不登校等調査」によると、年間30日以上欠席した不登校の子どもは、全国の小中学生合わせて前年度比6.1%増の13万3683人に上り、4年連続で増加しています。うち小学生は同10.4%増の3万448人、中学生は4.9%増の10万3235人。小学生では全児童の1%、中学生では全生徒の4.1%が不登校となっています。
 不登校の子どもへの支援を考えるとき、不登校の状態や継続している原因などを事例ごとに詳しく分析し、個別的にアプローチしていく必要があります。文科省の同調査(2014)によると、不登校になったきっかけと考えられる状況として、①学校生活によるトラブル(いじめ、集団生活が苦手、教師と合わないなど) ②学業不振 ③非行や遊び ④家庭環境(家庭内不和、金銭的問題など) ⑤無気力(登校しないことへの罪悪感が少ないなど) ⑥不安など情緒混乱(漠然とした不安や身体の不調を訴えるなど)の六つの要因が挙げられています。小中高生いずれも「不安など情緒的混乱」と「無気力」が例年、最も大きなウエイトを占めています。

子どもが不登校になったとき、どのように対応すればいいですか。
 不登校になったきっかけと考えられる原因を取り除いたり、環境・状況を調整したりすることも大事ですが、その裏に「本当の原因」「潜在的な要因」として、うつ病、双極性障害(躁うつ病)、統合失調症、パニック障害、自閉症スペクトラム障害、ADHD(注意欠陥・多動性障害)などの精神疾患が隠れているケースも多いです。また、メンタルヘルスの問題以外の契機で不登校となっていても二次的にこれらの精神疾患を発症することもあります。
 うつ状態は自殺につながるリスクがあり、軽症であっても放置することは危険です。うつ病に限らず、心の病気は早期発見・治療が、病気からの回復・予後の改善に何よりも重要です。
 病院での適切な治療を経て、不登校が解消された例はたくさんあります。1〜2週間の欠席が続き、その原因がはっきりしない場合や、病気やけがが見つからないのに頭痛や腹痛などを訴え、欠席が続く場合などは、精神疾患が隠れている可能性があるので、「少しあやしいな」という時は迷わずに心療内科・精神科を受診してもらいたいと思います。