2019年4月10日水曜日

非アルコール性脂肪肝炎(NASH)

ゲスト/佐野内科医院 佐野 公昭 院長

非アルコール性脂肪肝炎とはどのような病気ですか。
 肝臓の細胞に脂肪が多くたまった状態が脂肪肝です。お酒の飲み過ぎによって引き起こされるアルコール性脂肪肝がよく知られていますが、お酒を飲まない場合でも脂肪肝になることがあり、これを非アルコール性脂肪性疾患(NAFLD=ナッフルディー)といいます。肥満や糖尿病、脂質異常症、高血圧症などの生活習慣病を伴うことが多く、メタボリックシンドロームの肝病変と考えられています。NAFLDにはほとんど病態が進行しない非アルコール性脂肪肝(NAFL=ナッフル)と、炎症や繊維化を伴い、肝炎から肝硬変、さらには肝がんに進行する危険性のある「非アルコール性脂肪肝炎(NASH=ナッシュ)」があります。飲酒歴がなくても脂肪肝の人で肝臓の病気が進行してしまうことがあるということです。
 肝臓は“沈黙の臓器”といわれるように、多少の負担がかかってもすぐには症状があらわれません。NASHになっていても、かなり病気が進行しない限りほとんど症状はありません。脂肪肝を治療せずに放っておくと、知らない間に肝硬変や肝がんまで進行してしまう場合があることを知っておいてほしいです。

診断と治療について教えてください。
 脂肪肝は自覚症状がほとんどないか、あっても倦怠感がある程度です。一般的な血液検査だけで診断することは難しく、超音波検査やCTによる検査で肝臓への脂肪沈着を確認します。NASHと診断するためには肝生検を行う必要がありますが、簡単に行える検査ではありませんし、多少のリスクもあります。そこで肝臓の線維化に着目して肝機能(GOT、GPT)や血小板数、年齢などから予測式(FIB-4 index)を用いて肝生検を行うべきかどうかの目安にします。電卓があればご自分でも計算できますが、データを入力すると結果を出してくれるホームページもあります。
 治療は、多くの場合肥満を伴っていますので、NAFLでは食事療法や運動療法など生活習慣の改善による減量が基本となります。NASHの場合も肥満のある場合は減量が大切で、糖尿病、脂質異常症、高血圧症がある場合にはそれらの治療も重要となります。こうした疾患に対する薬剤のなかにはNASHに対しても効果があると示唆されているものもあります。保険適用の問題はありますが、抗酸化作用があるビタミンEなども使われることがあります。肝障害の進行を防ぐため、初期の段階から積極的に治療を行なっていきます。
 特定健診など、健康診断で肥満と多少なりとも肝機能異常を認める場合には、症状がなくても専門医に相談してほしいと思います。

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