ゲスト/医療法人 耕仁会 札幌太田病院 太田 健介 院長
双極性障害とはどのような病気ですか。
双極性障害は、気分が落ち込んで、気力が湧かず憂うつな「抑うつ状態」と、うつ状態とは逆に気分が高揚し、発言や行動が活発で抑制がきかなくなりがちな「そう状態」を繰り返す病気です。およそ100人に1〜1.5人の割合でかかる可能性があります。
そう状態では、症状が軽い場合、睡眠時間が短く多弁となり、意欲が増し、アイデアが次々浮かんできたりすることから、本人は「調子が良い」と感じ、周囲も「やけに元気そうだな」と思う程度で見過ごされがちです。しかし、症状が重くなると、過大な消費を続けたり、攻撃的な言動で周囲の人とトラブルになったり誇大妄想に影響されて無謀な行動をしたり、興奮状態を呈する場合もあります。
また、そう状態からうつ状態に転じます。うつ状態では、重症化すると自殺の危険性が高まり、一般の方と比べ、約15倍も自殺のリスクが高くなると指摘されています。
お酒や薬物に依存する「物質使用障害」、パニック障害などの「不安障害」など、ほかの精神障害を併発するケースが多いのも特徴の一つです。
診断と治療について教えてください。
双極性障害は、初めにうつ状態を呈することが多いです。双極性障害のうつ状態とうつ病は症状が似ているため、見分けがつきにくく、診断が難しいです。なかなか治らないうつ病と思っていたら、実は双極性障害だったというケースも少なくありません。双極性障害とうつ病は治療方針も治療に用いる薬も異なるため、この2つの病気をしっかりと鑑別することが重要です。
治療は薬物療法が有効です。うつ病では主に抗うつ薬が処方されますが、双極性障害では気分安定薬を使い、うつ状態とそう状態の波を小さくすることが治療の目標となります。近年、双極性障害に効果の高い新しい薬も登場しており、治療の選択肢は広がっています。
治療せず放置していると、重症化したり、再発を繰り返したりします。本人が気づきにくい病気なので、周囲が「今までと様子が違う」ことに気づいたら、いち早く医療機関につなげることが大切です。継続的な治療が必要な病気ですが、元気に回復した人や症状をコントロールしながら普通に日常生活を送っている人もたくさんいます。