2019年10月9日水曜日

社交不安症

ゲスト/医療法人 耕仁会 札幌太田病院  太田 健介 院長

社交不安症とはどのような病気ですか。
 人前で話をしたり、初対面の人と接したりするなど、他人から注目される場面や緊張を強いられる状況に対する不安を「社交不安」と呼びます。誰でも多かれ少なかれ経験があるものですが、この不安の程度が強く、日常生活にも深刻な影響が生じる状態が「社交不安症」です。
 苦手な状況や場面は人それぞれで異なりますが、人前で電話をかける、人前での食事、他人と視線を合わせることなども代表的なものです。「恥ずかしい思いをするのではないか」「失敗してしまうのではないか」という強い不安や恐怖を感じることで、手足や声の震えや動悸(どうき)、発汗、赤面、下痢などのさまざまな身体症状が表れます。このような堪え難い精神的・肉体的苦痛を味わうため、そうした状況を避けようとして登校・出社拒否など、毎日の生活や仕事に支障が生じるのです。
 発症年齢は10代半ばが多くみられます。はっきりとした原因は明らかになっていませんが、脳内の扁桃(へんとう)体やセロトニンの働きが関与しているのではと考えられています。
 社交不安症は、うつ病など他の精神疾患を併発するケースも多いです。パニック症や強迫症、全般不安症、アルコール依存症などが合併しやすいといわれています。

治療について教えてください。
 治療には大きく分けて、薬物療法と精神療法があります。症例によって、それぞれ単独、あるいは併用して治療を進めます。
 薬物療法では、抗うつ薬である「選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)」の有効性が認められています。精神療法では、認知行動療法の一種である「暴露反応妨害法」を用います。これは、まず社交不安症がどういう病気なのかを理解してもらう心理教育から始めます。次に、不安や恐怖を招くような場面で患者さんに避けないようにしていただき、段階的な目標に沿って徐々に身を慣らしてもらいます。最初のうち患者さんは強い不安を覚えますが、段階を踏んで行っていけば、不安や恐怖がなくなっていくことを実感できるようになります。
 この病気を持つ人は、不安や恐怖、心配を「内気」「あがり症」など自分の性格のせいだと考えて、医療機関を受診することが少ないようです。社交不安症は、きちんと治療すれば改善する可能性の高い病気です。早期受診・治療が改善への近道です。

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