2011年12月14日水曜日

くも膜下出血

ゲスト/西さっぽろ脳神経外科クリニック 笹森 孝道 医師

くも膜下出血とはどのような病気ですか。
 くも膜下出血は発症するとおよそ3分の1の方が亡くなり、3分の1の方が障害を残すといわれる重篤な病気ですが、残り3分の1の方は順調に経過して、元気に社会復帰することができます。
 くも膜下出血の原因は、脳動脈瘤(りゅう)と呼ばれる血管のこぶが破裂することによって起こるものがほとんど(約8〜9割)です。症状は頭痛が特徴的です。激しい頭痛と表現されることがありますが、ごく軽い頭痛で発症するケースもみられます。痛みの強さよりも、「突然」に発症した頭痛であることが診断のポイントとなります。出血した際に、頭の中の圧が高くなり、脳に血液が流れなくなることで意識障害を伴う場合もあります。
 脳動脈瘤は一度破裂すると、いったん出血は止まりますが、2回目、3回目の破裂による再出血で重篤な状態になる方も多く、治療の第一の目的は再出血の防止となります。一般的な治療は、脳動脈瘤のくびれた部分をクリップではさみ、出血しないようにする「ネッククリッピング」という手術です。最近では、「コイル塞栓(そくせん)術」というそのまま血管の中から治療する方法もあります。再出血の予防がうまくいったら、その後は脳血管れん縮や全身の合併症の治療を行います。

くも膜下出血の原因となる脳動脈瘤について教えてください。
 脳動脈瘤は破裂する前にその兆候が分かる場合もあります。「動眼神経麻痺(まひ)」という片方のまぶたが下がってきたり、物が二重に見えたりするなどの症状です。眼科を受診されるケースが多いのですが、これは大きくなった脳動脈瘤が動眼神経を圧迫していることから生じる症状なので、なるべく早く脳神経外科での検査・治療が必要になります。
 破裂していない脳動脈瘤は、脳ドックでの脳の血管を調べる検査で見つかることがあります。また、脳梗塞などほかの病気の検査で偶然に見つかることもあります。見つかった動脈瘤の大きさや形、患者さんの年齢や身体的な状況を考慮して、破裂する前に治療することをお勧めするケースもあります。通常、動脈瘤があるということだけでは、破裂の危険性が高いわけではないので、その判断は慎重に行う必要があります。複数の医師に相談し、ご自身でよく考えて十分に納得したうえで治療に臨むことが大切です。

2011年12月9日金曜日

医療記録の管理について

ゲスト/佐野内科医院 佐野 公昭 院長

お薬手帳の活用など医療記録の管理について教えてください。
 旅先や外出先で体調を崩して、いつもと違う医療機関にかかった場合など、お薬手帳を持っていれば、普段服用している薬の情報が分かるので、適切な治療が受けやすくなります。
 一般的な風邪薬にも、前立腺肥大や緑内障など持病がある場合、副作用が生じる可能性から服用できないものがあります。また、薬の飲み合わせによっては、薬の効果が予想以上に強く現れたり、逆に期待した効果が得られなくなったりする場合があります。病院や調剤薬局は、お薬手帳に書かれた情報から、以前に飲んだ薬で副作用が出たものはないか、他の医療機関で処方された薬との飲み合わせは大丈夫かを判断して、それらの危険を未然に防いでいます。服用している薬の情報に漏れがあると正しい処方ができないので、お薬手帳は病院や調剤薬局ごとに使い分けるのではなく、1冊にまとめておくことが大切です。
 また、病院を受診する際は、診察時間を有効に活用するため聞きたいことを整理しておきましょう。症状や経過、これまでかかった病気などについてメモにまとめておけば、医師もすぐに症状を確認できますし、質問も要点を抑えたものとなるでしょう。

災害時の備えについて教えてください。
 先日、新潟中越地震で被災した医療機関の先生からお話を伺う機会がありましたが、お薬手帳や自身の医療記録を持っていることが災害時に非常に有用であることを痛感しました。もしも自分が毎日飲んでいる薬の名前や量を知らないと、災害時に避難先で医師からいろいろな質問をされても、あいまいにしか答えられないでしょう。そうすると、医師は迅速に適切な対応を取るのが難しくなります。かかりつけの病院も被災して対応できないこともあり得るのです。人まかせにせず自分の身は自分で守るよう考えておくことが大切です。
 いつどこで災害に遭遇するのか、誰にも分かりません。いろいろな災害ケースを想定して、自分のとるべき対策を考えておくことが、災害に対する心構えになります。例えば、数日から1週間分の薬は手元に常備しておくよう、ふだんから少し余裕を持って医療機関を受診するなどもその一つです。
 最近では携帯電話のメモ機能などに医療記録を残している人も多いようですが、いざという時に電源が切れて使えないこともありますので、大事なことは「紙」に記録しておくことをお勧めします。

2011年11月23日水曜日

うつ病と似た症状の病気

ゲスト/医療法人五風会 福住メンタルクリニック 木津 明彦 院長

うつ病と間違われやすい病気について教えてください。
 「疲れやすい」「元気が出ない」「イライラする」など、うつ病と症状が似ているため、うつ病と間違われやすい病気があります。その一つが「非貧血性鉄欠乏症(潜在性鉄欠乏症)」です。
 鉄分不足と聞くと、貧血(鉄欠乏性貧血)を思い浮かべる人も多いでしょう。「非貧血性鉄欠乏症」は、その一歩手前と考えてください。鉄は、赤血球の材料になるだけでなく、全身の細胞のエネルギー代謝に重要な働きをします。主に肝臓で蓄えられています。いわば鉄の貯金ですが、この貯金が枯渇すると貧血が起こります。そこまで至らなくてもほとんど底を尽きかけた状態、これを「非貧血性鉄欠乏症」というのです。月経のある女性に多く、のどの違和感、冷え性、肩こり、頭痛、爪のでこぼこを伴うこともあります。貯蔵鉄の量は「フェリチン」というタンパク質の血中濃度を測ることで推定できます。
 食欲不振、味覚障害などの要因として注目されている「亜鉛欠乏症」も、うつ病と似た症状を現すことがあります。

ほかにはどんな病気がありますか。また、どのようなことに気を付ければいいですか
 「食後低血糖」も、うつ病のような症状を呈する病気です。糖尿病の初期に、血糖値が大きく変動し、低血糖症状がみられることがあります。体質的に糖質(炭水化物)を過剰に摂取すると、低血糖を起こしやすいケース(機能性食後低血糖症)もあります。脳へのブドウ糖供給不足による機能低下(注意力低下、眠気、倦怠(けんたい)感、目まい、頭痛など)と、これに対抗する自立神経反応(発汗、ふるえ、動悸(どうき)、不安、イライラ感など)が生じます。
 これらの病気から身を守るためには、鉄分や亜鉛などのミネラル、ビタミン、タンパク質をしっかり取ること、糖質の取り過ぎに注意することが大切です。また、内科、婦人科、心療内科などで、必要に応じた検査・治療を受けることも重要です。今まで改善できなかった症状でも、詳細な検査などによって隠れた異常を発見し、栄養バランスを改善していくことで、さまざまな疾患が治癒したケースもあります。うつ病とうつ病に似た症状を現す病気は、本人や家族が見分けるのは困難です。自己判断せずに、専門医の診察を受け、経過を見ていくことをお勧めします。

2011年11月16日水曜日

下肢のむくみ

ゲスト/北海道大野病院附属駅前クリニック 古口 健一 院長

下肢のむくみについて教えてください。
 私たちの体内では、血管の内外で水分の移動が行われ、正常な状態ではその水分量は一定に保たれるような仕組みになっています。しかし何らかの原因により、水分移動がうまくいかなくなり血管外の皮下組織に水分がたまってしまうことがあります。この状態が「むくみ」で、医学的には「浮腫」と言われます。向こうずねや足首周りを指で押した時にへこんだまま戻らないようなら、むくみと考えられます。
 立ち仕事の後などは、靴下の跡がなかなか消えないなど、下肢を中心にむくみを感じる場合が多いものです。足は筋肉の動きで、血液やリンパ液を心臓に送り返しています。静脈で吸収できなかった老廃物は、リンパ液を通すリンパ管に流れます。このリンパ管がスムーズに動かなくなり、水や老廃物が細胞の間にたまることで足にむくみが起こります。足は心臓から遠く、疲れなどで足の筋力が衰えると、血液やリンパ液をうまく循環させられなくなります。さらに、重力の力で水分は下肢へと下がります。このために、ふくらはぎや足首がむくみやすくなるのです。

下肢がむくむ際にはどのような病気が考えられますか。
 下肢だけにむくみが現れる病気としては、下肢の静脈血の逆流による下肢静脈瘤(りゅう)や、リンパ管の閉塞(へいそく)によってリンパ液が停滞するリンパ浮腫などが考えられます。
 足のむくみのほかに、顔や手などにむくみが認められる場合は、全身的な病気を考える必要があります。具体的には心臓病、腎臓病、肝臓病、悪性腫瘍などによる血液中タンパク質の低下、内分泌ホルモン異常などが挙げられます。また、薬物によるアレルギーにも下肢のむくみを伴うものがあります。さらに、心臓や腎臓、肝臓に明らかな病変がなく、また低タンパク血症も存在しないのにむくみをきたすケースもあり、これを特発性浮腫といいます。
 一時的なむくみであれば、軽いストレッチやお風呂などで血行をよくする、就寝時に足を頭より高く上げるなどの方法で解消することができますが、問題は病気が原因の場合です。翌朝になってもむくみが消えない、これといった心当たりがないのに何日もむくみがとれない場合は要注意。重大な病気が隠れていることもあるので、放置せずに専門医に相談することをお勧めします。

2011年11月15日火曜日

関節リウマチ治療の現在

ゲスト/佐川昭リウマチクリニック 佐川 昭 院長

関節リウマチの新しい診断基準が提唱されたと聞きましたが、その内容について教えてください。
 関節リウマチは、免疫の異常による関節の炎症で、腫れや痛みが起こり、進行すると骨が破壊され、関節が変形してしまう病気です。治りにくい病気でしたが、治療の進歩で寛解(症状が落ち着き進行しない状態)も目指せるようになってきました。より効果的な早期治療を可能とする新しい診断基準も年内の導入に向けて日本リウマチ学会などで検討が進められています。
 これまでの診断基準では、ある程度症状が進行した患者さんのデータを基にしており、症状が目立たない早期の患者さんは診断しにくい状況でした。新基準の最大の特徴は、より早期の段階で診断が下せる点です。研究の進展で関節リウマチは発病から3〜4年以内に急速に骨の破壊が進むことが判明し、早期の治療開始が重要と分かってきました。また、新しい検査方法やより効果的な治療薬が登場し、一層、早期の診断と治療開始が求められるようになったのです。

関節リウマチの治療について教えてください。
 薬物療法が中心で、標準的な治療薬は免疫を抑えるメトトレキサートです。日本では使用量が低く抑えられてきましたが、今年2月から十分な量の処方が可能となりました。メトトレキサートで治まらない場合、遺伝子工学の技術で作られた生物学的製剤という新しい薬も併用されるようになりました。炎症を引き起こす「サイトカイン」というタンパク質の働きを抑えるタイプの4種類に加え、免疫をつかさどるT細胞の働きを抑えるタイプも登場し、選択肢が広がりました。効果が高く、寛解に導くことも夢ではなくなりました。これも早期の使用開始が効果的なため、早期診断が重要になります。
 生物学的製剤にはデメリットもあります。それぞれの薬の効果は患者さんによって異なります。効かなければ、違う薬を使うことになります。また、副作用の心配もあります。さらに、3割負担でも月額3〜4万円かかるなど費用が高額です。そのため、関節リウマチの最先端治療として、各患者さんの遺伝子解析(自由診療)により、生物学的製剤の有効性と副作用の出現を事前に判定できるシステムが開発されました。すでに一部では実用化が始まり、患者さん一人一人に最適な薬が使われるようになるなど、治療面での大きな前進となっています。

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