ゲスト/医療法人五風会 福住メンタルクリニック 木津 明彦 院長
うつ病と間違われやすい病気について教えてください。
「疲れやすい」「元気が出ない」「イライラする」など、うつ病と症状が似ているため、うつ病と間違われやすい病気があります。その一つが「非貧血性鉄欠乏症(潜在性鉄欠乏症)」です。
鉄分不足と聞くと、貧血(鉄欠乏性貧血)を思い浮かべる人も多いでしょう。「非貧血性鉄欠乏症」は、その一歩手前と考えてください。鉄は、赤血球の材料になるだけでなく、全身の細胞のエネルギー代謝に重要な働きをします。主に肝臓で蓄えられています。いわば鉄の貯金ですが、この貯金が枯渇すると貧血が起こります。そこまで至らなくてもほとんど底を尽きかけた状態、これを「非貧血性鉄欠乏症」というのです。月経のある女性に多く、のどの違和感、冷え性、肩こり、頭痛、爪のでこぼこを伴うこともあります。貯蔵鉄の量は「フェリチン」というタンパク質の血中濃度を測ることで推定できます。
食欲不振、味覚障害などの要因として注目されている「亜鉛欠乏症」も、うつ病と似た症状を現すことがあります。
ほかにはどんな病気がありますか。また、どのようなことに気を付ければいいですか。
「食後低血糖」も、うつ病のような症状を呈する病気です。糖尿病の初期に、血糖値が大きく変動し、低血糖症状がみられることがあります。体質的に糖質(炭水化物)を過剰に摂取すると、低血糖を起こしやすいケース(機能性食後低血糖症)もあります。脳へのブドウ糖供給不足による機能低下(注意力低下、眠気、倦怠(けんたい)感、目まい、頭痛など)と、これに対抗する自立神経反応(発汗、ふるえ、動悸(どうき)、不安、イライラ感など)が生じます。
これらの病気から身を守るためには、鉄分や亜鉛などのミネラル、ビタミン、タンパク質をしっかり取ること、糖質の取り過ぎに注意することが大切です。また、内科、婦人科、心療内科などで、必要に応じた検査・治療を受けることも重要です。今まで改善できなかった症状でも、詳細な検査などによって隠れた異常を発見し、栄養バランスを改善していくことで、さまざまな疾患が治癒したケースもあります。うつ病とうつ病に似た症状を現す病気は、本人や家族が見分けるのは困難です。自己判断せずに、専門医の診察を受け、経過を見ていくことをお勧めします。