ゲスト/佐野内科医院 佐野 公昭 院長
お薬手帳の活用など医療記録の管理について教えてください。
旅先や外出先で体調を崩して、いつもと違う医療機関にかかった場合など、お薬手帳を持っていれば、普段服用している薬の情報が分かるので、適切な治療が受けやすくなります。
一般的な風邪薬にも、前立腺肥大や緑内障など持病がある場合、副作用が生じる可能性から服用できないものがあります。また、薬の飲み合わせによっては、薬の効果が予想以上に強く現れたり、逆に期待した効果が得られなくなったりする場合があります。病院や調剤薬局は、お薬手帳に書かれた情報から、以前に飲んだ薬で副作用が出たものはないか、他の医療機関で処方された薬との飲み合わせは大丈夫かを判断して、それらの危険を未然に防いでいます。服用している薬の情報に漏れがあると正しい処方ができないので、お薬手帳は病院や調剤薬局ごとに使い分けるのではなく、1冊にまとめておくことが大切です。
また、病院を受診する際は、診察時間を有効に活用するため聞きたいことを整理しておきましょう。症状や経過、これまでかかった病気などについてメモにまとめておけば、医師もすぐに症状を確認できますし、質問も要点を抑えたものとなるでしょう。
災害時の備えについて教えてください。
先日、新潟中越地震で被災した医療機関の先生からお話を伺う機会がありましたが、お薬手帳や自身の医療記録を持っていることが災害時に非常に有用であることを痛感しました。もしも自分が毎日飲んでいる薬の名前や量を知らないと、災害時に避難先で医師からいろいろな質問をされても、あいまいにしか答えられないでしょう。そうすると、医師は迅速に適切な対応を取るのが難しくなります。かかりつけの病院も被災して対応できないこともあり得るのです。人まかせにせず自分の身は自分で守るよう考えておくことが大切です。
いつどこで災害に遭遇するのか、誰にも分かりません。いろいろな災害ケースを想定して、自分のとるべき対策を考えておくことが、災害に対する心構えになります。例えば、数日から1週間分の薬は手元に常備しておくよう、ふだんから少し余裕を持って医療機関を受診するなどもその一つです。
最近では携帯電話のメモ機能などに医療記録を残している人も多いようですが、いざという時に電源が切れて使えないこともありますので、大事なことは「紙」に記録しておくことをお勧めします。