2020年3月11日水曜日

白内障

ゲスト/月寒すがわら眼科 菅原 敦史 院長

―白内障について教えてください。
 白内障は、目の中でピントを合わせる機能を持ち、レンズのような働きをする水晶体が濁って見えにくくなる病気です。水晶体を通る光が妨げられて、視力が下がったり、物がかすんだり二重に見えたり、光をまぶしく感じたりします。症状が急に起こるのではなく徐々に進むので、進行するまで気付かない場合もあります。
 若い年代で発症する例もありますが、大半は加齢に伴うもので、80代ではほぼ100%が白内障になるといわれます。超高齢化社会を迎えたわが国では、白内障に罹患する人口が増加しており、白内障治療は眼科領域で非常に頻度の高い外科手術の一つになっています。

白内障の治療について教えてください。
 初期の白内障は点眼薬で進行を遅らせることができますが、濁った水晶体を元に戻すことはできません。進行した白内障には手術が行われます。
 手術では眼球に小さな穴を開け、超音波によって水晶体を細かく砕いて取り除きます。代わりに、人工の水晶体である「眼内レンズ」を挿入します。局所麻酔を使用するため手術中の痛みはほとんどありません。手術は10〜20分で終了し、日帰り手術も広く行われています。
 眼内レンズには、一定の距離のみにピントが合う単焦点レンズと、近くも遠くも対応可能な多焦点レンズがあります。白内障手術で長らく使われているのは、単焦点タイプの眼内レンズで、健康保険が適用されます。単焦点は比較的はっきり見えますが、ピントの合わない部分は眼鏡が必要になります。一方、自費診療となる多焦点は、眼鏡なしの生活が期待できますが、レンズの構造上、焦点を結ばない光があり、くっきり感は落ちます。夜間に街灯や車のライトがにじんだり、まぶしく感じたりすることもあります。単焦点にするか、多焦点にするかは、それぞれのメリット、デメリットについて医師の説明をよく聞き、価格面も含め自分のライフスタイルにどちらが合うか考慮して決めることをお勧めします。
 白内障のほか、緑内障や加齢黄斑変性など加齢に伴う目の病気は、放置していると生活の質を大きく低下させたり、最悪の場合、失明のリスクも考えられるため、早期発見・治療が何よりも大切です。自覚症状がない人でも40歳を過ぎたら一度は目の検査を受けてほしいと思います。

2020年3月4日水曜日

今、あらためて視力を大切に!

ゲスト/ふじた眼科クリニック 藤田 南都也 院長

学校などで行われる視力検査について教えてください。
 多くの学校では新学期が始まると間もなく健康診断が行われます。眼に関係したものには毎年全児童生徒に行う「視力検査」があります。視力に不安がないお子さんには「毎年、実施する必要があるのか」と思っている親御さんもおいででしょう。しかし実は、視力検査からはさまざまなことが分かるのです。
 例えば、小学校のお子さんの視力が0.8程度であると、「授業に支障がなければ問題ない」と考えがちですが、強い遠視や乱視のケースでは矯正レンズを当てても1.0以上の視力を得られないことがあります。これは「弱視」という病気です。放置すると、細かいものを見るための脳や神経の働きが十分に成長せず、視機能の発達が途中で止まってしまいます。将来、運転免許証を取ることが出来なく、就職活動に差し支える事もあります。早期に弱視を発見し、適切な治療を受ければ視力の改善が期待できますが、小学校半ば以降になると治療は難しくなります。
 弱視の有無や程度を調べるには、検査用点眼薬などを使った視力や屈析についての詳しい検査が必要です。これは医療機関でしかできません。学校健診などで視力の不良を指摘され、日常生活で不自由なく過ごしていても、片眼の弱視の場合もあり、眼科を受診し相談されることが大切です。

成人の場合は、定期的な視力検査を受けなくてもいいのですか。
 成人の場合も、視力検査が目に隠れているさまざまな病気の早期発見につながるケースは珍しくありません。特別な症状がなくても、定期的に眼科を受診するようにしましょう。例えば、ご年配の方の場合、白内障による視力低下と思い込んでいたのが、実は加齢黄斑変性症によるものだったという場合もあります。普段両目で見ていると片目に異常があってもなかなか気付きにくいものです。眼科で片目ずつ視力を測定して初めて見つかるケースも多いです。
 糖尿病と診断された方は、糖尿病網膜症の発症・進行を防ぐために、眼科医も必ず受診してください。この病気が厄介なのは、自覚症状が少なく、見えづらさなどの症状が出るころにはかなり進行し、失明の危険性がある場合も少なくないことです。失明を防ぎ、視力回復・改善を目指すには、早期発見・治療が原則。そのためにも、糖尿病と診断された時から定期的な眼底検査などのチェックが重要です。

2020年2月26日水曜日

最新の糖尿病治療

ゲスト/医療法人社団 青木内科クリニック 青木 伸 院長

最新の糖尿病治療薬について教えてください。
 糖尿病治療薬の最近の進歩は目覚ましいものがあります。飲み薬では、高血糖の時にだけすい臓からインスリンを分泌させ、正常血糖値へ下げる「DPP-4阻害薬」があります。この薬は、理論的には低血糖を起こさず治療できる薬剤で、糖尿病の平均血糖の指標であるHbA1c値を1.0%前後下げます。この薬と同じ系統の注射薬も登場し、「GLP-1受容体作動薬」と呼ばれています。この注射薬はHbA1c値を1.6%前後下げます。1日1回の注射が必要ですが、現在は1週間に1回で済む注射薬も出ました。この系統の注射薬は、すい臓のインスリンを出す細胞を保護し、インスリンの分泌を弱らせない作用も持ち合わせているといわれています。従来まで体重を減少させる糖尿病薬がありませんでしたが、「SGLT-2阻害薬」が登場し、この薬剤は血糖値を下げると同時に体重も減らします。最近の研究データ結果によると、この種の薬剤は、心血管系の心不全の出現を抑える働きと糖尿病性腎臓病を良くする働きを持ち合わせていることが判明してきています。
 一方、インスリン注射に目を向けると、「持効型インスリン(1回の注射で24時間効果を持続する長時間作用型インスリン)」があります。飲み薬の治療が効かなくなる症例でも、飲み薬をそのまま服用しながら、1日1回の持効型インスリンの注射を加えると血糖値が改善する症例もあります。「混合型インスリン」は従来まで濁った製剤でしたが、透明な製剤が登場し、10回以上振って混合しなくても済むようになりました。

糖尿病の治療について教えてください。
 糖尿病の治療状況が良好といえる目安は、HbA1cが7.0%以下になっている場合です。糖尿病の患者さんの約半数が、高血圧と脂質異常症(高脂血症)を合併しているといわれています。糖尿病を合併した高血圧の治療はとても重要で、血圧の治療目標値は125/75mmHg以下です。自宅で測定できる血圧計を治療に役立てる方法もあります。この場合使用する測定器は、指先や手首に巻くタイプのものではなく、上腕に巻くタイプのものをお勧めします。脂質異常症の治療目標値は、LDL-コレステロール(悪玉コレステロール)が120mg/dl以下です。糖尿病に重症の虚血性心疾患、腎疾患、脳梗塞、下肢動脈閉塞、メタボを合併している場合には、LDL-コレステロールは70mg/dl以下と治療の基準値が厳しくなりました。
 以上のようなさまざまな基準値を長期間保てると、眼底出血による失明、腎臓の悪化による透析、足の潰瘍・壊疽(えそ)による足の切断など、糖尿病に由来する重症の合併症にならなくて済みます。それ以外にも脳梗塞、心筋梗塞などの予防にもつながります。

2020年2月19日水曜日

認知症患者に対する心身両面の治療・ケアの重要性

ゲスト/医療法人社団 図南会 あしりべつ病院 石田 祐生子 診療部長

認知症に伴う身体合併症について教えてください。また、認知症には、どうして心身両面の治療・ケアが大切なのですか。
 もの忘れや周囲の状況が理解できなくなり、日常生活に支障をきたす認知症。5年後の2025年には700万人を超えると予想されており、高齢者の5人に1人が認知症という時代が目前に迫っています。
 高齢者の多くは高血圧、糖尿病、脂質代謝異常症などの生活習慣病を持っています。こうした高齢の方が認知症にかかってしまった場合、認知症の治療に加えて、生活習慣病の管理などの内科的治療が必要になります。
 生活習慣病の合併を見過ごしたまま、認知症の治療だけを続けていると、動脈硬化の進行を食い止められず、脳梗塞や心筋梗塞、腎不全につながってしまうリスクが高いです。また、認知症になると身体的な不具合があっても、患者さんはそれを適切に表現する能力が低下していたり、痛みを感じる機能自体が鈍くなったりしていて、痛みや不調を訴えることができないまま、肺炎や腸閉塞といった内科的な身体合併症を引き起こしてしまうケースも少なくありません。
 認知症の患者さんは、認知症による記憶障害や見当識障害、失語、失認などに加え、加齢現象や合併するほかの疾患による影響が複雑に絡み合って、生活上の支障が生じています。ですから、認知症に精通する精神科医や心療内科医と、認知症に伴うさまざまな内科的疾患に精通する内科医が密接に連携し、患者さんやご家族の声にしっかり耳を傾け、言葉以外の表情や動作からも患者さんの心身の変化や不調のサインを見落とさないよう注意しながら診療にあたることが重要といえます。
 また、医師同士の連携だけでなく、看護部や作業療法科、栄養科、薬局など院内の各部署が職種の壁を超えたチームを作り、個々の患者さんのQOL(生活の質)を大切にしながら、その後の人生を充実させていく治療とケア、援助、支援をしていくことも重要です。
 内科合併症があるために精神科病院への入院が断られてしまう認知症の患者さん、また、認知症の精神症状があるために内科病院への入院が断られてしまう内科合併症を持つ患者さん。こうしたケースが見受けられるように、残念ながら、さまざまな疾病を合併した高齢者の認知症患者さんへの対応環境は、いまだ十分とはいえません。今後、ますます増えていく認知症対策の一つとして、内科的治療が行える診療体制を敷く精神科病院や、内科医が常駐する精神科病院が増えることが望まれます。

2020年2月12日水曜日

矯正歯科におけるデジタル化技術の進展

ゲスト/E-line矯正歯科 上野 拓郎 院長

近年、矯正歯科分野でもデジタル化が進んでいると聞きますが、どのようなものがありますか。
 ここ数年、矯正歯科治療はデジタル技術によって急速に進化しています。
 一つは、被ばく量が少なく、より鮮明な画像が得られる「デジタルレントゲン」の普及と、口腔内を立体(3D)画像で診断できる「歯科用CT」の登場です。歯科用CTを用いた検査では、歯やあごの骨の位置だけでなく、厚さや密度、かみ合わせのほか、目には見えない歯根や埋伏歯の位置なども詳細に把握できるようになりました。
 もう一つは「口腔内3Dスキャナー」です。治療に必要な歯型を取る際、従来はガムのように軟らかく口の中で固まる<印象材>を使いますが、その味やにおいに不快感を持つ患者さんも少なくありません。また、口を一定の時間開け続けなければならず、吐き気をもよおす患者さんもいます。そのようなストレスや苦痛、負担を感じることなく、簡単に歯型を取れる最新機器が口腔内3Dスキャナーです。スティック状の装置を口に入れ、歯を2、3周なぞるだけで、口腔内を精確に撮影・計測し、時間にして数分で歯型の精細なデータを取ることができます。装置は光学カメラのため被ばくの心配がなく、撮影された画像はデジタルデータとしてモニターに再現されます。
 歯科用CTや口腔内3Dスキャナーで得た画像は、それぞれのデータをリンクさせることで、一人一人の歯並びをさまざまな側面から診断できるので、より患者さんの口腔状態に適した理想的な治療計画を立てられます。効率的な歯の動かし方を計画できるので、ワイヤーを使った矯正方法でも、マウスピースを使った矯正方法でも、結果として、少ない通院回数、短い施術期間で、歯に必要以上の負担をかけない安全に配慮した治療が可能になりました。
 画像データのデジタル化により、口腔外科や歯科技工所と必要なデータを共有できることも大きなメリットです。治療の連携がスムーズに行えますし、取得した歯型のデータなどをそのまま歯科技工所で利用するため、手作業の誤差を排し、技工物の精度にも貢献しています。
 「3Dプリンター」を使って矯正治療に必要な器具を成形する取り組みも始まっています。今後、矯正歯科治療のIT化、デジタル化はさらに発展していくはずです。最新のデジタル技術で得られる情報を読み解き、的確に治療に結び付けられるよう知識と技術の研さんを続け、より高品質で患者さんの満足度の高い矯正治療の提供を目指すべきです。

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