2011年11月15日火曜日

関節リウマチ治療の現在

ゲスト/佐川昭リウマチクリニック 佐川 昭 院長

関節リウマチの新しい診断基準が提唱されたと聞きましたが、その内容について教えてください。
 関節リウマチは、免疫の異常による関節の炎症で、腫れや痛みが起こり、進行すると骨が破壊され、関節が変形してしまう病気です。治りにくい病気でしたが、治療の進歩で寛解(症状が落ち着き進行しない状態)も目指せるようになってきました。より効果的な早期治療を可能とする新しい診断基準も年内の導入に向けて日本リウマチ学会などで検討が進められています。
 これまでの診断基準では、ある程度症状が進行した患者さんのデータを基にしており、症状が目立たない早期の患者さんは診断しにくい状況でした。新基準の最大の特徴は、より早期の段階で診断が下せる点です。研究の進展で関節リウマチは発病から3〜4年以内に急速に骨の破壊が進むことが判明し、早期の治療開始が重要と分かってきました。また、新しい検査方法やより効果的な治療薬が登場し、一層、早期の診断と治療開始が求められるようになったのです。

関節リウマチの治療について教えてください。
 薬物療法が中心で、標準的な治療薬は免疫を抑えるメトトレキサートです。日本では使用量が低く抑えられてきましたが、今年2月から十分な量の処方が可能となりました。メトトレキサートで治まらない場合、遺伝子工学の技術で作られた生物学的製剤という新しい薬も併用されるようになりました。炎症を引き起こす「サイトカイン」というタンパク質の働きを抑えるタイプの4種類に加え、免疫をつかさどるT細胞の働きを抑えるタイプも登場し、選択肢が広がりました。効果が高く、寛解に導くことも夢ではなくなりました。これも早期の使用開始が効果的なため、早期診断が重要になります。
 生物学的製剤にはデメリットもあります。それぞれの薬の効果は患者さんによって異なります。効かなければ、違う薬を使うことになります。また、副作用の心配もあります。さらに、3割負担でも月額3〜4万円かかるなど費用が高額です。そのため、関節リウマチの最先端治療として、各患者さんの遺伝子解析(自由診療)により、生物学的製剤の有効性と副作用の出現を事前に判定できるシステムが開発されました。すでに一部では実用化が始まり、患者さん一人一人に最適な薬が使われるようになるなど、治療面での大きな前進となっています。

2011年11月2日水曜日

好酸球(こうさんきゅう)性食道炎

ゲスト/琴似駅前内科クリニック 高柳 典弘 院長

好酸球性食道炎とはどのような病気ですか。

 好酸球性食道炎は、アレルギーと関係の深い白血球の一種「好酸球」が食道の粘膜に浸潤して炎症を起こし、食道の機能障害や狭窄(きょうさく)などを引き起こす病気です。欧米を中心にここ10年くらいで知られるようになった疾患であり、日本では比較的まれですが、近年男性を中心として患者数が増加しています。原因は明らかではありませんが、一部の例では食物などに含まれる抗原に対するアレルギー反応が原因と考えられています。ぜん息やアトピー性皮膚炎などアレルギー性疾患を合併する頻度も高いです。
 症状は年齢により異なりますが、幼児期では哺乳障害、学童期では吐き気、学童期以降では腰痛、嚥下(えんげ)障害が主にみられます。胸焼けや胸痛を訴えるケースもあります。
 診断は、上記の症状に加えて、血液検査でアレルギー性疾患によくみられる好酸球やIgE(アレルギー反応に関係する抗体)の増加を調べます。また、内視鏡検査で食道の壁が厚くなり、縦方向のしまや白い斑点がみられるかどうか、環状に狭くなる部分があるかどうかを確認します。さらに食道粘膜などの組織検査を経て、確定診断が下されます。

好酸球性食道炎の治療について教えてください。

 治療は、原因と考えられる抗原の除去が基本となります。食事療法として、抗原と疑われる食品を検査して特定し、その食品を除いた食事を指導する方法、検査は行わず一般的に抗原となりやすい食品(乳製品、卵など)を除いた食事を指導する方法、アミノ酸成分栄養食を用いる方法の3種類があります。
 薬物療法として、好酸球による炎症を抑えることを目的に、副作用の少ない局所作用ステロイドが主に用いられます。また、食道の運動機能が低下して胃酸の逆流症状を併発する場合、酸の分泌を抑えるプロトンポンプ阻害薬を補助的に使用することもあります。食事療法、薬物療法で症状が改善しない場合や、食べ物のつかえや嚥下障害が強い場合は、狭くなった食道を拡げる手術が行われることもあります。
 好酸球性食道炎は、逆流性食道炎などの胃食道逆流症(GERD)と診断されやすく、その鑑別が非常に重要です。治療が奏功しないGERDでは、好酸球性食道炎の可能性も考えられますので、早めに専門医を受診することをお勧めします。

2011年10月31日月曜日

顎(がく)関節症の矯正治療

ゲスト/つちだ矯正歯科クリニック 土田 康人 院長

顎関節症とはどのような病気ですか。

 顎関節症とは、口を十分に大きく開閉できなくなったり、口を開閉する時にカクカク(またはシャリシャリ)と音がしたり、下顎が左右にずれてガクガクしたりする状態をいいます。顎の関節は、耳の穴の前方1㌢くらいのところにあり、顎を開けたり閉めたりする役割を持っています。この関節がずれると、顎を開閉した時に関節が炎症を起こして痛んだり、関節が引っ掛かる感じになったり、口の開閉に不自由を来すようになります。
 顎関節症の原因は、まだはっきりとしない部分もあります。精神的ストレスや歯ぎしり、歯をかみしめる癖などさまざまで、それらが積み重なって許容限度を超えたときに起こると考えられています。反対咬(こう)合(受け口)、上顎前突(出っ歯)、開咬(奥歯はかんでいるが前歯は開いている状態)など、かみ合わせの悪さ(不正咬合)も顎関節症になりやすい要因の一つです。当然ながらそれがすべての原因ではありませんが、顎関節症になる人はかみ合わせが悪いことが多いのは事実として挙げられています。

顎関節症の矯正治療について教えてください。

 症状の程度によって異なりますが、スプリントと呼ばれるマウスピースのようなものを歯にかぶせる治療が一般的です。スプリントを使い、下顎を適切な位置(やや下顎を前方に出した位置)で安定させ、その位置できれいなかみ合わせをつくります。続いて、矯正治療をスタートさせます。歯並びを矯正したり、かみ合わせや顎のずれを修復したり、場合によっては、口腔内の金属冠を作り替えたりし、かみ合わせが安定するようにします。矯正治療によりかみ合わせを安定させておかないと、スプリントをはずした時に、下顎が元の悪い位置に戻ってしまう可能性があるからです。
 顎関節症は中・高校生〜成人にみられることが多く、小学生以下の子どもに発症するケースは少ないです。しかし、子どものうちの悪い歯並びやかみ合わせを放置してしまうと、大人になってから顎関節への悪影響が出る危険性があります。小児期に歯並び、かみ合わせの治療を行うことでこれらの心配を予防することができますので、少しでも不安を感じたら、早めに専門医にご相談ください。

ストレスの対処法

ゲスト/五稜会病院 千丈 雅徳 院長

ストレスについて教えてください。

 外部からのさまざまな刺激(ストレッサー)によって心や体に負担がかかり、心身にゆがみが生じることをストレスといいます。ストレスは、不眠やうつ、胃痛や頭痛、さらには胃・十二指腸潰瘍など、心と体に不調を引き起こします。仕事が忙し過ぎたり、合わなかったりするとストレスが生じますが、逆に暇すぎてもストレスが生じることもあります。職場やプライベートな場でも、人間関係によるストレスは大きなダメージを与えます。職場で感じるストレスの原因の第一位に人間関係が挙げられているほどです。また、本当は強いストレスが掛かっているにもかかわらず、本人は「ストレスがない」と感じていることがあります。心のストレスといえば、いやな出来事や哀しいことによって起こると思いがちですが、結婚、昇進など本人にとってはうれしい出来事でもストレスが生じることも少なくありません。こうしたストレスは、気づくのが遅れがちです。「何となく調子が悪い」といった心身の不調のシグナルを見逃さないようにしましょう。
 しかし、ストレスがまったく無く、平穏で退屈な生活では、挑戦する意欲や困難を乗り切る充実感を感じることはできません。人間は適度なストレスと向き合うことによって刺激や緊張が生じ、張り合いや生きがいを持って毎日を過ごすことができるのです。大切なのはストレスといかに上手に付き合うかということです。

どう対処すればいいですか。

 ストレス発散に効果的なのはRest(休養)、Recreation(気分転換)、Relax(くつろぎ)の3つのRと言われます。睡眠によって心身を休め、ストレスを癒やすことができます。しかし、何かのきっかけで睡眠不足が続くと、それ自体が大きなストレスになり、今度は不眠を引き起こすという悪循環に陥ることがあります。スポーツや趣味に没頭するなど、実生活とかけ離れた行為に集中したり、普段の生活圏を離れ自然の中で森林浴をするなど、心身のリフレッシュを図りストレスを改善することで、普段の状態を取り戻すことができます。しかし、思い通りにいかないとがっかりしてかえって大きなストレスを抱えることにもなります。
 一人で悩んでいると不安の種は大きくなります。誰かにストレスの原因を話すことでストレスを軽減させることができます。自分を理解し精神的に支えてくれる人を持っておくことが大切です。また、目の前のことだけに集中する、気掛かりなことは紙に書いて頭に残さない、休日は仕事を忘れて過ごす、悩みがあったら親しい人に早めに相談するなど、自分なりの対処法を身に付けて、ストレスがたまらないうちに解決するようにしましょう。
 ストレスに負けない心をつくるには、自分と向き合うことが大切です。ストレスの原因がどこにあるかなど現状の問題点を冷静に洗い出してみましょう。一つのことに集中して全力を注ぐ、プラス思考を心掛けてネガティブなことを言わない、成功した自分を繰り返しイメージするといった方法も効果的です。急に考え方を変えるのは難しいものなので、無理をせず、少しずつ始めると良いでしょう。
 身近に相談する相手がいなかったり、ストレスによる気分の大きな落ち込みを経験された場合は、心療内科や精神科を受診しましょう。しっかり話を聞いてくれる医師や臨床心理士を選ぶと良いでしょう。

2011年10月14日金曜日

帯状疱疹(ほうしん)

ゲスト/白石内科クリニック 干野 英明 医師

帯状疱疹とはどのような病気ですか。

 帯状疱疹は、子どものころにかかった水痘(水ぼうそう)のウイルスが体内に潜伏していて、何かのきっかけに再び活動することによって起こる皮膚の病気です。水痘にかかって治った後も、このウイルスは痛みや感覚などを伝える知覚神経節の中に隠れて何年も潜伏します。そして、免疫力が低下したときにウイルスが再活性化します。免疫力が低下する原因には、加齢、病気、疲労、ストレスなどがあります。免疫力の低下によって再活性化したウイルスは、神経に沿って増殖し、その先の皮膚に帯状の水ぶくれをつくります。
 日本では6人に1人がかかるといわれる身近な病気です。最近では若い年代にも増加しています。一度発症すると再発することはまれです。
 症状は、体の左右どちらか片側の皮膚にピリピリとした痛みが出現します。次に、痛みを感じた場所に赤い発疹ができ、神経の通り道に沿って線状、帯状に広がっていきます。発疹は水ぶくれとなって多くの場合激しい痛みを伴いますが、約2週間でかさぶたとなり、3週間ほどで治ります。
 痛みは水ぶくれが治るころに消えますが、長期間痛みが続く場合もあります。これは帯状疱疹後神経痛と呼ばれ、高齢者によく見られます。痛みは1〜3カ月ぐらいでなくなりますが、中には数年間にわたって続くこともあります。

帯状疱疹の治療について教えてください。

 帯状疱疹にかかったら、できるだけ安静を保ち、早期に治療を開始することが大切です。発疹が出て3日以内に治療を受ければ後遺症が残る確率は低くなり、皮膚の症状も軽くて済みます。発疹は全身どこにでも出る可能性がありますが、多いのは肋間(ろっかん)神経のある胸から背中にかけてです。顔や首、耳周辺に出た場合は、顔面神経麻痺(まひ)や難聴、味覚障害、失明に至るケースもあるので注意が必要です。
 治療薬には、抗ウイルス薬の軟こう、内服、点滴があります。補助的に非ステロイド系消炎鎮痛剤や抗うつ薬などが処方されることもあります。また、痛みが強い場合は、神経ブロックを行って痛みを止める方法があります。
 帯状疱疹にかからないようにするには、日ごろから栄養、睡眠などを十分に取り、適度に運動を行うなど、体力と免疫力を低下させないことが重要です。

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