胃粘膜下腫瘍とは胃の粘膜層よりも深い胃壁内(粘膜下層、筋層、漿膜下層など)に発生する病変で、大きくなるにつれて胃の内腔に突出し隆起を形成したり表面にくぼみや潰瘍を形成することもあります。多くは腫瘍性ですが、非腫瘍性の疾患も含まれています。また、病変は良悪性、いずれの場合もあります。
種類としてはGIST(消化管間質腫瘍の略で、消化管の壁にできる悪性腫瘍の一種です)、リンパ腫、平滑筋細胞由来の腫瘍、神経系腫瘍、脂肪細胞由来の腫瘍、血管内皮細胞由来の腫瘍、内分泌細胞由来の神経内分泌腫瘍などに加え、迷入膵、顆粒細胞腫などがあります。うち、GISTの一部、悪性リンパ腫、脂肪肉腫、血管肉腫、神経内分泌腫瘍の一部では転移をきたすこともあり、悪性度の高いものもあります。
症状は腫瘍が小さい場合は無症状で、胃の健診などで偶然発見されることもあります。時に腹痛や不快感を伴う場合がありますが、病変が原因とは限りません。しかし、悪性で腫瘍が大きくなってくると、腫瘍が崩れて出血し、吐血や下血を生じることがあります。さらに、転移をきたせば胃がん同様、様々な症状が認められ、全身衰弱にもなります。
診断は胃X線や内視鏡検査でなされます。病変の表面に潰瘍などを形成して病変が露出している場合には、病変の一部を採取して病理組織診断が可能ですが、病変が正常粘膜に覆われている場合が多いために胃がんのように容易に診断することが困難です。ときには、粘膜表面を焼灼し、露出してきた粘膜下組織を採取して診断する方法もありますが、必ずしもうまく採取できません。そこで、超音波内視鏡検査で病変の性状を調べることもあります。最近では超音波内視鏡を使って生検を行う方法も開発されています。そのほかには腹部超音波検査、CT検査、MRI検査などがありますが、画像だけでは正確な組織診断をすることは困難です。
治療は一般に、大きさが2cm以下の場合には年1回程度の内視鏡検査、超音波内視鏡検査などで定期的な観察を行い、2〜5cmの腫瘍には腹腔鏡補助下(腹部に小さな穴をあけて行う)に局所切除を行い、診断治療を行うことが推奨されています。さらに、大きさが5cm以上の腫瘍では悪性腫瘍である可能性が多いために手術を行うことが原則です。このような症例では、開腹して切除することが勧められています。小さい腫瘍でも経過観察中に大きさや形態に変化が認められた場合には手術の適応となります。病理組織検査で、c-kitやCD34などの遺伝子が陽性の場合にはGISTと診断されます。腫瘍の大きさや核分裂像により悪性度が判定されますが、それにしたがって、術後のフォローの間隔が異なり、悪性度が高い場合には4〜6ヶ月毎の画像検査、低い場合には6ヶ月から1年毎の検査が一般的です。さらに、転移再発をきたした場合には分子標的治療剤を内服し、治療を行います。