2020年7月15日水曜日

性依存症

ゲスト/医療法人北仁会 いしばし病院 白坂 知信 院長

性依存症とはどのような病気ですか。
 性的な衝動をどうしても抑えることができず、性的に不適切な行為に及ぶなど、問題行動を繰り返す状態を指します。「やめたくても、やめられない」と自己嫌悪に陥り、社会から阻害される人も少なくないです。
 趣味嗜好(しこう)の問題、規範意識の問題ととらえられがちですが、アルコール依存症や薬物依存症、ギャンブル依存症などと同じく、意志の力だけでは制御不能な精神疾患である依存症の一つで、治療が必要な病気です。
 性依存症の人には、生育歴に虐待や性被害などのトラウマ(心的外傷)を抱えているケースが少なくありません。性衝動の根幹には、怒りや恐怖、自己否定といった感じがあり、性的な行為を通じてしか自分の存在価値を感じられなかったり、周囲との関係を築けなかったりすることが多いです。
 性依存症の認知度はまだ低く、診断・治療を受けていない人も多いことが問題です。残念ながら、専門的な治療を行える医療機関がまだ少ないという現状もあります。

治療について教えてください。
 治療は、カウンセリングなどの精神療法が柱となります。物事の受け止め方のゆがみや偏りを修正していく「認知行動療法」を主軸に、性依存から抜け出すために取り入れたい行動や考え方を分析していきます。例えば、性衝動が起こりやすい時間や状況などのパターンから、満員電車を避けたり、携帯電話のカメラを使えなくしたりするといった工夫や対処法を学んでもらう治療法もあります。
 アルコールや薬物などの依存症と同様に、当事者同士がつながり、支え合いながら回復を目指す自助グループへの参加も非常に有効です。自分の体験を語ることで、自分の気持ちを人に明かす能力や、他者の体験を聞くことで共感や理解をする能力など、社会的な機能を取り戻し、育みます。性衝動に身を任せていない、性的にしらふな状態を長期間保っている仲間にアドバイスをもらいながら、回復のための計画を立てていくのが一般的です。
 性依存が病気であることを自認することが治療への第一歩です。性依存症は、適切なプログラムによる治療を続ければ、改善されることが確認されています。性依存症は回復可能な病気であることを多くの人に知ってもらいたいです。

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