2017年1月4日水曜日
喫煙と口腔の健康
ゲスト/医療法人社団アスクトース 石丸歯科診療所 近藤 誉一郎院長
喫煙習慣は、口腔の健康にも悪影響を及ぼしますか。
喫煙は、各種がんや循環器・呼吸器疾患、妊娠・出産異常などさまざまな健康被害に関連していることが明らかになっていますが、当然ながら口腔の健康にも大きく影響します。
まず煙に含まれる発がん性物質に口が直接さらされ、口腔がんを発生する危険性があります。また、タバコを吸うことで歯周組織の免疫機能が弱められるため、歯周病が発症しやすくなります。そのほか、虫歯の進行、歯の黄ばみ・歯肉の黒ずみ、味覚障害、口臭の発生などが挙げられます。また、喫煙者は歯周病や虫歯の治療を始めても、たばこを吸わない人よりも治療の経過がよくない(治りにくい)ことが分かっています。たばこを吸う人は、吸わない人に比べ、歯周病に約5倍かかりやすく、歯の寿命は約10年短くなるという統計データも報告されています。
他の人のつけたたばこの先から出る副流煙にも有害物質が含まれています。他人の副流煙を吸わされてしまう受動喫煙も問題です。世界保健機関(WHO)の専門組織、国際がん研究機関(IARC)は、受動喫煙もがんの危険性を高めることが確実だとしています。よく「子どもの周りでたばこを吸わないで」といいますが、受動喫煙によって、乳幼児突然死症候群や子どもの歯周病、虫歯などが発症するリスクを高めるという調査結果もあります。
意思が強くないと、禁煙は無理ですか。
以前は、タバコは嗜好(しこう)品で、喫煙は本人の意思の問題であるとみなされていました。しかし、現在では、喫煙者の多くは「ニコチン依存症」という病気であることが認識されています。禁煙治療に保険が適用される条件は、1日の喫煙本数と喫煙年数を掛け合わせた指数が200以上などと決まっていますが、医療機関での禁煙治療への関心は、今後ますます高まっていくでしょう。
ご存知の方も多いと思いますが、5月31日は世界禁煙デーです。しかし、1年に1回の特別な日だけでなく、もう少し身近に喫煙の害と禁煙の大切さを考える機会として、毎月22日が「禁煙の日」に制定されています。22を2羽の白鳥(スワン)が寄り添う姿に見立て、スワンスワン(吸わん吸わん)で、禁煙の日というわけです。自分、そして大切な家族のために、禁煙を始めてみませんか。
人気の投稿
-
<不登校について教えてください> 不登校の小中学生が2023年度、過去最多の約29万人に上りました。当院の思春期外来でも、受診理由で一番多いのは不登校です。 不登校は大きくは、「行きたくないので、行かない」と「行きたいけど、行けない」の2つのタイプに分かれます。
-
<パーソナリティ症について教えてください> パーソナリティ症については診断基準がいくつかあります。まずは米国精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM-5)に基づいて概説します。そもそもパーソナリティー(性格、人格)の定義は難しいのです。しかし、定義して分類しなければ...
-
<骨粗しょう症について教えてください> 骨の組織では、古い骨を壊して吸収する働きと、吸収された場所に新しい骨を形成する働きが繰り返される「骨代謝」が行われています。骨粗しょう症は、骨代謝のバランスが崩れて骨がもろくなる病気です。