2017年1月11日水曜日
機能性ディスペプシア
ゲスト/琴似駅前内科クリニック 高柳 典弘 院長
機能性ディスペプシアとはどのような病気ですか。
機能性ディスペプシア(FD)とは、胃の機能(動き)が悪くなることで不快な症状が生じる病気です。FDの患者さんの数は極めて多いと推定されており、健診受診者の約15%、上腹部症状で医療機関を受診した患者さんの約50%、全国民の10~20%であるといわれています。男性より女性に多く、高齢者より若い人に多い傾向があります。世界的な診断基準(Roma Ⅲ)では、辛いと感じる食後のもたれ感、早期の膨満感、心窩(か)部(みぞおちのあたり)の痛み・灼熱感(焼けるような感覚)の症状のうち1つ以上があり、上部内視鏡検査(胃カメラ)などで器質的疾患が確認されない、また6カ月以上前から症状があり3カ月以上続いている、という基準を満たしていることが条件になっています。2016年に改定された新たな診断基準(Roma Ⅳ)では、生活の質が低下するほど辛いと感じる“厄介な症状”であることが、FDと診断されるための必要条件となりました。
機能性ディスペプシアの症状、原因について教えてください。
FDは症状の起こり方により、「食後愁訴症候群」と「心窩部痛症候群」の2つに分かれます。前者は、週に数回以上普通の量の食事でも辛いと感じるもたれ感や、早期満腹感のため食べられなくなるという症状が主体です。上腹部の張った感じ、食後のむかつきなどを伴います。後者は、みぞおちのあたりに痛みや焼ける感じが週に1回以上起こります。一定の間隔をおいて症状が起こったりやんだりし、排便や放屁により軽快しないのが特徴です。これらは、症状が重なって起こったり、日によって感じる症状が変わったりすることもあります。また、FDの合併症として慢性便秘が約15%、胃食道逆流症が約25%、過敏性腸症候群が約50%存在するとされています。
FDは、胃の運動機能障害、消化管の知覚過敏や生活上のストレスなど心理的・社会的要因が原因で症状が起こると考えられています。そのほかアルコール、喫煙、不眠、食生活の乱れとの関係も指摘されています。また、ピロリ菌に感染しているFDの患者さんに除菌療法を行うと、FDの症状が改善するという研究報告があり、「ピロリ菌関連ディスペプシア」という独立した疾患概念も新たな診断基準で認められるようになりました。
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