2017年1月25日水曜日
思春期の子どもの心と不登校
ゲスト/医療法人社団五稜会病院 中島 公博 理事長
思春期の子どもの心理について教えてください。
いわゆる思春期とは、個人差もありますが小学校高学年(12〜13歳)から高校生(17〜18歳)ぐらいまでの期間を指します。思春期にある子どもは心身とも変化が著しく、非常に多感で繊細です。それらの変化をうまくコントロールすることができず、漠然とした不安感やイライラ感が現れたり、親からの自立と依存という背反するテーマをめぐって葛藤したりする時期であり、こうした気持ちが高まると、不登校や問題行動が生じることもあります。また、学校生活で嫌な思いをしていたり、家族関係がよくなかったり、子どもが自らを取り巻く環境に苦しさを抱えていることもあります。さらに、朝食抜きや夜更かしなど不規則な生活習慣が続いたりし、強いストレスがかかっている場合も多いです。
ご両親がしっかりお子さんに向き合い、子どもたちの悩みや不安を受け止めてあげることが何よりも大切です。
不登校について教えてください。
全国の不登校は毎年10万人を超えています。不登校の理由は百人百様です。まずは、ご両親がお子さんの気持ちを知ることが重要です。学校生活で何か問題があったのか、どんな心境の変化があったのか、お子さん自身が話してくれるのが一番ですが、口を閉ざしているようなら担任やクラスメートから情報を集め、現状について話し合うべきです。理由や原因が分かれば、対処法も見えてきます。
もし学校でいじめにあっていたり、授業についていけなくなっていたりするのなら、無理に学校に行かせようとすることは、お子さんを追いつめることになってしまいます。また、単なる不登校ではなく、うつ病や発達障害といった病気を発症している場合は、早めに精神科・心療内科を受診する必要があります。
札幌市では、心の悩みを抱える子どもに対する支援を強化しようと「さっぽろ子どもの心の診療ネットワーク事業」の運用を始めています。これは、当院を含む「コンシェルジュ」役の医療機関が、子どもの症状に応じて、適切な治療を受けられる専門の医療機関を案内するものです。また、治療を終えた子どもを一般の小児科や福祉・教育機関につなぐこともできます。不登校などさまざまな子どもの心の問題で、どのような相談先を選べばよいのか迷った時には、ぜひご活用ください。
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