2017年2月1日水曜日
関節リウマチの敵〜喫煙と歯周病〜
ゲスト/佐川昭リウマチクリニック 佐川 昭 院長
関節リウマチ治療中の生活で何か気を付けることはありますか。
関節リウマチは診断技術や治療法の進歩で「治る」時代に入りましたが、それでも一度発病したら、長く付き合っていかなければならない病気です。治療が順調で症状が軽くなっても、毎日の暮らしの中ではいくつかの注意が必要です。どういう生活を心掛ければよいのでしょうか。私が日々の診療から考える「関節リウマチの敵」は、正月やお盆などの行事やお客の接待、理解のない夫や孫の世話などの対人関係、庭仕事や冬囲いなどの家事や労働のほか、悪天候、ストレスなどさまざまです。ここでは、関節リウマチに大きく影響する環境因子(=関節リウマチの敵)として、喫煙と歯周病について触れます。
最近の研究では、特定の遺伝子を持つグループの人たちは、喫煙により免疫の異常が誘発され、関節リウマチをより高頻度に発症することが分かってきました。また、リウマチ発症後もたばこを吸っている人は吸っていない人に比べて、より関節の破壊が進行することや、喫煙によりメトトレキサートや生物学的製剤の効き目が弱くなることも報告されています。リウマチを予防し、また効果的に治療を行うためにも、禁煙をお勧めします。
関節リウマチと歯周病の関係について教えてください。
歯周病は、歯垢(プラーク)の中の細菌によって歯肉に炎症が起き、歯を支える歯茎や骨が壊されていく病気です。口の中には数百種類の細菌がおり、その中から10〜20種類の細菌が歯周病を引き起こすことが分かっています。それらは歯周病菌と呼ばれ、代表的なものがPg菌(ポルフィロモナス・ジンジバリス)です。Pg菌は、強い悪臭を放ち、歯肉のコラーゲン組織を分解したり、白血球が持つ殺菌作用を弱める酵素を持っています。また、歯を支える骨を溶かす毒素で、歯周病を重症化させます。近年、Pg菌が関節リウマチの発症にも関与していることが示されてきました。
関節リウマチと歯周病には密な関連があり、2つの病気をお互いに悪くする双方向性があります。双方向性とは、関節リウマチがあると歯周病がさらに進行し、逆に歯周病があると関節リウマチに影響するということです。一方、歯周病を治療すると、関節リウマチが改善することも報告されています。
関節リウマチを治すには、禁煙と歯周病の治療、口の中を清潔に保つケアも重要なポイントになります。
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