2017年2月16日木曜日

電気けいれん療法


ゲスト/医療法人五風会 さっぽろ香雪病院 小澤 剛久 診療部長

電気けいれん療法について教えてください。
 電気けいれん療法は、全身麻酔下で専用の医療機器を用いて、脳に電気的刺激を与える治療法です。うつ病、統合失調症、躁うつ病等が適応となる疾患で、薬物治療の効果が少ない患者さん、薬物治療や精神療法を行えない患者さん、精神的あるいは身体的観点から症状の改善が急がれる患者さんなどが対象となります。
 電気けいれん療法がどの様な機序で有効性を示すのかはまだ未解明な部分がありますが、電気刺激を与えて脳内の神経伝達物質を活性化させて脳神経回路を再構築する事で、症状の改善が得られると考えられています。イメージとしては人為的に脳に電流を流すことで、いったん脳の状態(機能)をリセットし、脳内のバランスを整えることで精神症状を緩和する治療法です。
 一般の方には聞き慣れない名称ですし、「電気けいれん」という言葉に不安を感じる方もいらっしゃるでしょう。確かに、聞こえはよくないのですが、症例によっては、これが劇的に効きます。薬物療法や精神療法と比べて治療効果が高く、即効性があるケースもあります。また、治療法としての歴史は長く、近年の治療技術の大幅な改善により、現在は麻酔科の協力を得て、痛みや苦しみのない安全性の高い治療法として確立しています。

治療の流れ、注意事項について教えてください。
 電気けいれん療法を安全に行うには全身麻酔をかけて行う必要があります。したがって実施可能な施設は限られています。当院では約1〜2カ月間入院していただき、基本的に週2回、合計12回の連続した治療を1コースとして行います。患者さんの状態によって異なりますが、平均4〜6回前後で治療効果が現れ始め、8〜10回で十分な効果を得られるケースが多いです。
 治療の流れは、大まかに次の通りです。①事前の検査/事前に数種類の検査を行い、全身状態をチェックします。治療前夜からは絶食となります。②全身麻酔/施術管理に必要なモニター(心電図や脳波)の準備をした後、麻酔科によって全身麻酔した上で、筋肉の緊張を起こしにくくする薬を使います。③治療/こめかみに付けた電極を通して、治療器から数秒間、電流を脳に流します。④自室で安静/治療に要する時間は約20分間です。施術後は病棟で安静にしていただき、状態を確認します。
 副作用として、一過性の筋肉痛や頭痛、吐き気などがあります。また、頻脈や血圧上昇、治療前後のことを思い出しにくくなる記憶障害が起こることがありますが、多くは自然に元に戻り、後遺症は残りません。
 電気けいれん療法に関心がある方はどなたでもお気軽にご相談ください。

人気の投稿

このブログを検索