2014年5月7日水曜日
大人のADHD(多動性障害)
ゲスト/時計台メンタルクリニック 木津 明彦 院長
大人のADHD(多動性障害)について教えてください。
ADHDは、注意力の欠如や衝動的な行動、落ち着きのなさ(多動性)を特徴とする発達障害で、生活にさまざまな困難を来す状態をいいます。思い付きをすぐ言動に移す、気が散りやすい、忘れ物をしやすいなどが代表的な症状として挙げられます。脳内の神経伝達に何らかの不具合を生じ、情報のフィルターや行動のブレーキがかかりにくくなっていると考えられます。
ADHDは一般的に就学前に気づかれるものですが、成人後に「実はADHDだった」と分かるケースも増えてきました。そのような場合もADHDの症状に、子供のころからずっと悩まされています。多くの人は自分なりに努力していますが、なかなか状況が改善されません。そのため、自分自身を責めたり、本人が怠けている、親の育て方のせいといった非難や誤解にさらされたり、つらい状況に置かれがちです。ADHDが原因で周囲とのトラブルが起こり、抑うつ状態になってしまうこともあります。
しかし、ADHDは本人の努力不足や、家族のせいではありません。正しい診断を受け自分の特性を把握し、適切な対策を立てることで、生活を改善していくことができます。同時に、周囲の理解を得ることも重要です。
ADHDの診断と治療について教えてください。
子どものころの状態などを詳しく聞き取る問診のほか、アメリカでADHD研究に長年携わってきたコナーズ博士が開発した心理検査法などを用い、ADHDかどうかの判断を慎重に行います。
治療は、環境調整などの心理社会的治療から始めます。これは、自分の特性をあらかじめ周囲に伝えおく、社会に適応するための生活術を学ぶなど、家族や職場との協力体制を築き、環境の調整を行うものです。心理社会的治療の効果や、周囲との状況から判断し、必要であれば薬による治療を組み合わせていきます。
エジソンや坂本龍馬がADHDだったといわれていますが、彼らのように特性を自分の個性として強みにし、偉業を成し遂げた人もいます。ADHDだからこそ秀でている能力や才能、例えば、旺盛な好奇心や豊かな発想力を生かせる環境を探し、生かすことができればと思います。
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