2010年12月22日水曜日

「前立腺肥大症」

ゲスト/ベテル泌尿器科クリニック 三熊 直人 院長

前立腺肥大症とはどのような病気ですか。
 前立腺肥大症は中高年男性でよくみられる前立腺の良性腫瘍(しゅよう)で、加齢とともに増加します。近年では前立腺肥大症の発症時期が若年齢化の傾向にあり、40代から悩みを抱える人もおられます。また、以前にはほとんど見ることのなかった、前立腺の推定重量が100〜200gにも及ぶケースも増えてきています。その原因は不明ですが、食生活の欧米化により、動物性タンパク質や脂肪を多く摂取するようになったことが要因の一つと考えられます。
 初期の自覚症状はおしっこが近い、夜中に何回もおしっこに起きるなどの頻尿です。肥大が進んでくると尿道が圧迫されて、尿の勢いが悪くなります。また、就寝後に2回以上おしっこに起きる夜間頻尿の患者さんでは、おしっこに起きた時に転倒して骨折したり、脳梗塞(こうそく)や心筋梗塞の発症により、死亡率が夜間頻尿のない場合の2~3倍になる事も知られています。

前立腺肥大症の治療について教えてください。
 症状が軽度であれば投薬による治療を行います。しかし、前立腺重量が35gを超えるようになると、薬によっては十分な症状の改善が得られず、外科的治療を考慮する必要があります。
 外科的治療には多くの方法がありますが、新しい治療法として注目されているのがホルミウムレーザーによる経尿道的前立腺核手術(HoLEP:ホーレップ)です。ホーレップでは尿道内から前立腺の肥大した部分のみをくり抜くように切除します。この方法では再発のリスクが低く、また、出血が少なく回復が早いため入院期間も短縮できます。当院では2005年1月5日から2010年12月6日までにホーレップの手術件数が1420件に上りますが、患者さんに最も喜ばれているのが術後の痛みがほとんど無いという事です。
 薬による治療で十分な患者さんも多くいらっしゃいます。しかし、手術以外に症状を改善できない状態でも、漫然と薬を飲み続けている患者さんも少なくありません。手術による痛み、出血そして再発などの問題を考慮するとHoLEPは、前立腺肥大症を抱えたすべての患者さんにとって良い知らせであると思います。

人気の投稿

このブログを検索