ゲスト/はしもとクリニック 橋本昌樹 医師
子宮筋腫と妊娠について教えてください。
子宮筋腫は性成熟期の女性にとって、もっともポピュラーな良性腫瘍(しゅよう)で、30歳以上の女性の20%以上が罹患(りかん)しているといわれています。近年は女性の高齢出産の増加と、子宮筋腫発生の若年化により、子宮筋腫が妊娠に合併する症例が多く見られるようになりました。子宮筋腫と妊娠が合併することによって、妊娠中には切迫流産・早産、前期破水、分娩(ぶんべん)時には産道通過傷害、微弱陣痛、産褥(さんじょく)期には子宮復古不全などの異常が生じる可能性があります。最近はエコー(超音波断層法)の普及により、妊娠検診などの際に、比較的小さな筋腫でも発見されるようになりました。発見された場合は、切除することもありますが、特に症状が出ていないなら、そのまま経過観察をするのが一般的です。
妊娠・分娩の注意点について教えてください。
妊娠初期には、硬く大きかった筋腫も、後期には軟らかく扁平(へんぺい)となり、周囲との境界が不鮮明になり、経膣(ちつ)分娩が可能になります。また子宮が大きく伸びることによって、総体的に筋腫の位置が変化し、分娩傷害を起こさずに済む場合もあります。しかし、筋腫によって妊娠の継続が危うくなる、胎児発育障害が予測される、筋腫が原因で流・早産した経験がある、子宮収縮抑制剤などを使用しても筋腫による痛み、圧迫症状が取れない場合は、妊娠中に筋腫を取り除く手術が必要になります。分娩方法については、特に症状が無く経過した場合は経膣分娩が原則です。児頭より下方にあるダクラス窩(か)に落ち込んだ筋腫などでは産道の通過傷害が起きるため、帝王切開が必要になります。また、子宮筋腫を取り除く手術を行った後に経膣分娩を試みる場合は、子宮破裂、微弱陣痛、出血などに注意し、厳重な管理が必要になります。筋腫があった場所、個数、子宮内膜の損傷など考慮し、経膣分娩か帝王切開か判断します。このように筋腫の部位、大きさによって管理・分娩方法が変わるので、妊娠初期から定期的な検診を受け、十分な管理を受けることが大切です。