2003年2月5日水曜日

「PET(ペット)によるガン診断」について

ゲスト/札幌新世紀病院  阿部 信彦 理事長

PETについて教えてください。

 PETは陽電子放射断層撮影によるガン診断の一つです。ガン細胞は正常な細胞に比べ、ブドウ糖を3~8倍多く取り込む性質があります。これを利用し、ブドウ糖の薬(FDG)を静脈に注射し、ガン細胞に集まったFDGから放出されるガンマ線をPETカメラで撮影し、ガンのある個所を特定します。生体内変化を画像化して診断するPET検査は、病気の形だけを頼りに診てきた従来の診断(CT・MR)に比べ、診断能力が大幅にアップされ、どこにガンがあるか、どこに転移しているか、病巣の広がりはどの程度かまで評価することが可能です。さらに、今までの診断法では困難だった良・悪性の判別から数ミリのガンの発見・転移まで、ほぼ全身にわたって約20分で検査を終了でき、「ガン診断の切り札」といわれています。ガンと闘う上で最も重要なのは早期発見・早期治療です。ミリ単位のごく小さな段階でガンを見つけて治療に取りかかれば、治療成績は格段にアップします。

どのような人に向いていますか。

 もちろん、検診の一環として受けることもできますが、この場合は健康保険の適用外となります。日本では、昨年4月から一部条件付きで脳腫瘍(しゅよう)、頭頸(けい)部ガン、肺ガン、乳ガン、すい臓ガン、大腸ガン、転移性肝ガン、原発不明ガン、悪性リンパ腫などにおけるPET診断が、健康保険の適用となりました。すでにガンと診断された人、ガンの疑いがあると言われた人、ガンの再発に不安を抱いている人、またガン治療の効果を判定したい人にもお勧めします。ガン治療の先進国・アメリカでは、ガン診断・治療の医療訴訟において、PETの有用性を医師が患者に説明していない場合は、医師が不利になるほど、PETは浸透しています。ただし、PETによる診断が難しいガンもあります。厚生労働省の発表では、2001年のガンによる死亡数は、日本全体の死亡数の約3分の1を占める30万人に達しました。PETのある施設はまだ限られていますので、PETに関心のある人は、まず主治医に相談することをお勧めします。

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