2016年5月18日水曜日
社交不安障害
ゲスト/特定医療法人北仁会 いしばし病院 内田 啓仁 医師
社交不安障害とはどのような病気ですか。
近年、ストレス性のうつ病をはじめ、パニック障害などのストレス関連疾患が急増していますが、社交不安障害(SAD)もその一つです。
SADは、人前で話をするなど注目を浴びる行動に不安を感じ、顔が赤くほてる、脈が速くなる、息苦しくなるなどの症状が現れる病気です。人から注目を集める場合に不安を感じることは誰にでもあり、それを“あがり症”などと呼びますが、SADの人は常に「悪い評価をされるのではないか」「笑い者にされるのではないか」という不安感を覚え、そうした場面に遭遇することへの恐怖心を抱えています。SADのため、他人との関わりがつらくなり、不登校や出社拒否、自宅に引きこもるなど、社会生活に支障を来すケースも多いです。また、うつ病やパニック障害、アルコール依存症の併発などさらなる精神疾患の引き金となることもあります。
SADは実はとてもポピュラーな病気ですが、気持ちの問題か、心の病気か、一見しただけでは見分けがつかないのも特徴的な一面です。「内気な性格」「引っ込み思案」などと思い込み、診療の機会を失ったまま過ごしている人が多い病気でもあります。
治療について教えてください。
SADの治療法には大きく二つ、薬物療法と精神療法があります。薬物療法では、不安や恐怖を感じる原因とされる脳内物質のバランスを保つ薬・SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)を第一選択で用いるケースが多いです。そのほか、ベンゾジアゼピン系抗不安薬やβ遮断薬などを併用し、不安時の身体症状の緩和を図ります。精神療法では、物事の受け止め方のゆがみや偏りを気付かせ、修正していく「認知行動療法」や、不安が生まれる状況にあえて飛び込んで、段階的な目標に沿って徐々に身を慣らしていく「暴露療法」などが有効です。同時に適度な有酸素運動などの生活指導、呼吸法やリラックス法など不安状況への対処法の指導も行われます。
SADは次第に認知されてきましたが、まだ十分に知られていない病気です。何より重要なのは、SADは単なる性格の問題ではなく、治療可能な心の病気だと理解することです。「SADかな」と思い当たることがあれば、思い切って心療内科や精神科を受診して適切な治療を受けることをお勧めします。
2016年5月11日水曜日
子どもの歯科矯正治療
ゲスト/宇治矯正歯科クリニック 宇治 正光 院長
子どもの矯正治療について教えてください。
お子さんの歯並びに矯正が必要かどうか迷う人も多いのではないでしょうか。歯並びを確かめる方法の一つとして、お子さんの口元を顔の正面から観察してみてください。上下の前歯の真ん中の位置が一致していれば安心ですが、ずれている場合は、矯正の必要があると考えられます。出っ歯や受け口など、上下の顎が前後に大き過ぎたり小さ過ぎたりという骨格的な問題は、一般の方でも気付きやすいですが、左右のずれは発見しにくいものです。
前後あるいは左右にずれが認められる場合は、顎骨(がっこつ)の成長コントロールが可能な9〜11歳までに矯正治療を行うのが理想的です。就寝時にバイオネーターと呼ばれる機能的顎(がく)矯正装置を装着し、寝ている間にずれた顎の骨を中央に移動させます。子どもの成長の力を利用して、無理なく自然にバランスのよい骨格をつくれます。痛みはほとんどなく、日中は装着の必要がありません。ずれの程度にもよりますが、装着期間は半年〜1年が平均で、経過観察のための通院は、1〜3カ月に一度が目安となります。
ずれの原因はさまざまですが、歯そのものがずれているケースもあり、永久歯がはえそろってからでも治療は可能です。その場合、抜歯する可能性は高くなりますが、きれいに治療できるケースがほとんどです。矯正治療をいつ始めるべきかという判断は非常に難しいので、一度専門医にご相談ください。
家庭でチェックするための別の方法はありますか。
頬づえやかみ癖、就寝時の姿勢が左右どちらかに大幅に偏っている場合などは、左右のずれを引き起こす原因になることがあります。上下の前歯の位置を確認したら、次は鼻の先端を基準に、鼻の中央に前歯の中心が沿っているかを見てください。ずれの原因は一見して分かるものではなく、万が一、骨格のずれを歯のずれと勘違いして放っておくと、矯正に最適な成長時期を逃してしまうので注意が必要です。
子どものうちの悪い歯並びやかみ合わせを放置していると、成長に伴い虫歯や歯周病の原因となったり、顎関節にも悪影響を及ぼす恐れがあります。また、大人になってから心理的なストレスの原因となる場合もあります。少しでもおかしいと感じたら、早めに専門医に相談することをお勧めします。
2016年5月6日金曜日
最新の糖尿病治療
ゲスト/医療法人社団 青木内科クリニック 青木 伸 院長
最新の糖尿病治療薬について教えてください。
糖尿病治療薬の最近の進歩は目覚ましいものがあります。飲み薬では、高血糖の時にだけ、すい臓からインスリンを分泌させ、正常血糖へ下げる「DPP-4阻害薬」があります。この薬は、理論的には低血糖を起こさず治療できる新薬で、糖尿病の平均血糖の指標であるHbA1c値を1.0%前後下げます。この薬と同じ系統の注射薬も登場し、「GLP-1受容体作動薬」と呼ばれています。この注射薬はHbA1c値を1.6%前後下げます。1日1回の注射が必要ですが、現在は1週間に1回で済む注射薬も出ました。この系統の注射薬は、すい臓のインスリンを出す細胞を保護し、インスリンの分泌を弱らせない作用も持ち合わせているといわれています。従来まで体重を減少させる糖尿病薬がありませんでしたが、「SGLT-2阻害薬」が登場し、この薬剤は血糖を下げると同時に体重を減らします。最近の研究データによる結果では、この種の薬剤は、心血管系の動脈硬化症の出現を抑える働きも持ち合わせていることが判明してきています。
一方、インスリン注射に目を向けると、「持効型インスリン(1回の注射で24時間効果を持続する長時間作用型インスリン)」があります。飲み薬の治療が効かなくなる症例でも、飲み薬をそのまま服用しながら、1日1回の持効型インスリンの注射を加えると血糖が改善する症例もあります。「混合型インスリン」は従来まで濁った製剤でしたが、透明な製剤が登場し、10回以上振って混合しなくても済むようになりました。
糖尿病の治療について教えてください。
糖尿病の治療状況が良好といえる目安は、HbA1cが7.0%以下になっている場合です。糖尿病の患者さんの約半数が、高血圧と脂質異常症(高脂血症)を合併しているといわれています。糖尿病を合併した高血圧の治療はとても重要で、血圧の治療目標値は125/75mmHg以下です。自宅で測定できる血圧針を治療に役立てる方法もあります。この場合使用する測定器は、指先や手首に巻くタイプのものではなく、上腕に巻くタイプのものをお勧めします。脂質異常症の治療目標値は、LDL-コレステロール(悪玉コレステロール)が120mg/dl以下です。以上のようなさまざまな基準値を長期間保てば、眼底出血(失明)、腎臓の悪化(透析)、足の潰瘍・壊疽(えそ)による足の切断など、糖尿病に由来する重症の合併症にならなくて済みます。それ以外にも脳梗塞、心筋梗塞などの予防にもつながります。
2016年4月27日水曜日
動脈硬化と油
ゲスト/社会医療法人 孝仁会 札幌西孝仁会クリニック 寺西 純一 医師
動脈硬化について教えてください。
動脈硬化とは、動脈壁の中に、プラークと呼ばれるLDLコレステロール(悪玉コレステロール)を主成分とした「油かす」がたまり、血管を狭窄させたり、血管を閉塞させる状態をいいます。心臓に栄養や酸素を送る血管である冠動脈に動脈硬化が起これば、狭心症や心筋梗塞の原因となります。1970年代アメリカで、コレステロールを始めとした油の摂りすぎが、動脈硬化の原因であるとの研究報告がなされ、以来日本でも、コレステロールの多い食品を摂りすぎないように指導され、コレステロール低下薬を使って、LDLコレステロールを下げる治療が盛んに行われるようになりました。しかし、これらの指導や治療によっても、狭心症や心筋梗塞を発症する患者さんは思ったほど減りませんでした。そのため近年、LDLコレステロールの量よりも、その質が問題ではないかと考えられるようになり、LDLコレステロールの中でも粒の小さなもの(スモール・デンス・LDL/超悪玉コレステロール)が、プラークを作り出す“犯人”と分かってきました。スモール・デンス・LDLは、現在、一般の病院では検査できませんが、中性脂肪とLDLコレステロールを同時に調べることで推定できます。一般的には食後の中性脂肪が高いと、スモール・デンス・LDLも高いと予想されます。
動脈硬化の予防について教えてください。
動脈硬化の予防には、良質の油を摂ることが重要です。良質の油としては、血中の中性脂肪を下げ、体の中の炎症やアレルギーを抑える作用も持ったαリノレン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)などの「ω(オメガ)3系脂肪酸」があります。青魚、亜麻仁(あまに)、エゴマ、くるみなどに多く含まれています。また、オリーブ油に多く含まれるオレイン酸(ω9系脂肪酸)も動脈硬化を起こしにくい油です。さらに、糖分を摂りすぎないことも重要です。糖が体に吸収されると、膵臓からインスリンがでて、血糖を下げますが、同時にインスリンは中性脂肪を合成してしまう働きもあり、食後の中性脂肪を上昇させ、スモール・デンス・LDLも上昇させてしまうからです。
これらに注意しても、LDLコレステロールや中性脂肪が高い時は、動脈硬化のリスクを考えて薬物療法の併用を検討するのがいいでしょう。
2016年4月20日水曜日
白内障手術のリスク
ゲスト/大橋眼科 大橋 勉 院長
白内障手術について教えてください。
白内障は、瞳の後ろにある水晶体が濁るために起きる視力障害です。治療には点眼薬が投与されますが、最終的には手術が必要です。一般的な手術法は、水晶体を包んでいる袋を残し、袋の中の濁りを超音波で細かくして取り除き、その袋の中に人工の眼内レンズを挿入するものです。従来、眼内レンズは1つの距離に焦点を合わせた単焦点眼内レンズが使われていましたが、最近では遠・近距離の複数に焦点が合う多焦点眼内レンズや、乱視矯正と多焦点が一体となったトーリック多焦点眼内レンズなど、眼内レンズの選択の幅も増えています。
白内障手術の注意点、リスクについて教えてください。
白内障手術は、安全性の高い手術ですが、外科手術である以上、事前に予測が困難な事態が起こる可能性はゼロではありません。
例えば、白内障以外に緑内障や眼底出血などの眼の病気(網膜や視神経の病気、脳の病気など)があると、白内障手術が無事成功しても、本人が期待されている見え方まで回復しないケースがあります。術前に白内障以外の眼疾患についてさまざまな医療機器を用いて詳しく調べますが、白内障の濁りが強いなど、診断が難しい場合もあるからです。
また、合併症も起こり得ます。最も合併症が起きやすいのは、進行して茶褐色になった白内障です。濁りが固くなっているため取り除くのが難しく、水晶体の袋を支えるチン小体も弱くなっているため、濁りが目の中に落下することがあります。また、眼内レンズを支える膜が何らかの原因で手術中に破れることもあります。これを破嚢(はのう)といいます。重度の合併症としては、術後、角膜の内皮細胞の傷みが大きく、角膜が水ぶくれの状態となり視力が低下する水疱(すいほう)性角膜症などが挙げられます。4000人に1人というごくまれな状態ですが、術後に眼内で細菌が繁殖し、網膜の障害で失明に至るケースもあります。
術後、数カ月から数年して、またものが見にくくなってくることがあります。多くの場合、後発白内障によるものです。眼内レンズの入った、水晶体の袋の後ろ側が濁ってくるのが原因です。後発白内障は再手術の必要はなく、特殊なレーザーを使って簡単に濁りを取ることができます。外来でできる治療で、視力もすぐ回復します。
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