2016年4月20日水曜日
白内障手術のリスク
ゲスト/大橋眼科 大橋 勉 院長
白内障手術について教えてください。
白内障は、瞳の後ろにある水晶体が濁るために起きる視力障害です。治療には点眼薬が投与されますが、最終的には手術が必要です。一般的な手術法は、水晶体を包んでいる袋を残し、袋の中の濁りを超音波で細かくして取り除き、その袋の中に人工の眼内レンズを挿入するものです。従来、眼内レンズは1つの距離に焦点を合わせた単焦点眼内レンズが使われていましたが、最近では遠・近距離の複数に焦点が合う多焦点眼内レンズや、乱視矯正と多焦点が一体となったトーリック多焦点眼内レンズなど、眼内レンズの選択の幅も増えています。
白内障手術の注意点、リスクについて教えてください。
白内障手術は、安全性の高い手術ですが、外科手術である以上、事前に予測が困難な事態が起こる可能性はゼロではありません。
例えば、白内障以外に緑内障や眼底出血などの眼の病気(網膜や視神経の病気、脳の病気など)があると、白内障手術が無事成功しても、本人が期待されている見え方まで回復しないケースがあります。術前に白内障以外の眼疾患についてさまざまな医療機器を用いて詳しく調べますが、白内障の濁りが強いなど、診断が難しい場合もあるからです。
また、合併症も起こり得ます。最も合併症が起きやすいのは、進行して茶褐色になった白内障です。濁りが固くなっているため取り除くのが難しく、水晶体の袋を支えるチン小体も弱くなっているため、濁りが目の中に落下することがあります。また、眼内レンズを支える膜が何らかの原因で手術中に破れることもあります。これを破嚢(はのう)といいます。重度の合併症としては、術後、角膜の内皮細胞の傷みが大きく、角膜が水ぶくれの状態となり視力が低下する水疱(すいほう)性角膜症などが挙げられます。4000人に1人というごくまれな状態ですが、術後に眼内で細菌が繁殖し、網膜の障害で失明に至るケースもあります。
術後、数カ月から数年して、またものが見にくくなってくることがあります。多くの場合、後発白内障によるものです。眼内レンズの入った、水晶体の袋の後ろ側が濁ってくるのが原因です。後発白内障は再手術の必要はなく、特殊なレーザーを使って簡単に濁りを取ることができます。外来でできる治療で、視力もすぐ回復します。
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