2016年4月27日水曜日
動脈硬化と油
ゲスト/社会医療法人 孝仁会 札幌西孝仁会クリニック 寺西 純一 医師
動脈硬化について教えてください。
動脈硬化とは、動脈壁の中に、プラークと呼ばれるLDLコレステロール(悪玉コレステロール)を主成分とした「油かす」がたまり、血管を狭窄させたり、血管を閉塞させる状態をいいます。心臓に栄養や酸素を送る血管である冠動脈に動脈硬化が起これば、狭心症や心筋梗塞の原因となります。1970年代アメリカで、コレステロールを始めとした油の摂りすぎが、動脈硬化の原因であるとの研究報告がなされ、以来日本でも、コレステロールの多い食品を摂りすぎないように指導され、コレステロール低下薬を使って、LDLコレステロールを下げる治療が盛んに行われるようになりました。しかし、これらの指導や治療によっても、狭心症や心筋梗塞を発症する患者さんは思ったほど減りませんでした。そのため近年、LDLコレステロールの量よりも、その質が問題ではないかと考えられるようになり、LDLコレステロールの中でも粒の小さなもの(スモール・デンス・LDL/超悪玉コレステロール)が、プラークを作り出す“犯人”と分かってきました。スモール・デンス・LDLは、現在、一般の病院では検査できませんが、中性脂肪とLDLコレステロールを同時に調べることで推定できます。一般的には食後の中性脂肪が高いと、スモール・デンス・LDLも高いと予想されます。
動脈硬化の予防について教えてください。
動脈硬化の予防には、良質の油を摂ることが重要です。良質の油としては、血中の中性脂肪を下げ、体の中の炎症やアレルギーを抑える作用も持ったαリノレン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)などの「ω(オメガ)3系脂肪酸」があります。青魚、亜麻仁(あまに)、エゴマ、くるみなどに多く含まれています。また、オリーブ油に多く含まれるオレイン酸(ω9系脂肪酸)も動脈硬化を起こしにくい油です。さらに、糖分を摂りすぎないことも重要です。糖が体に吸収されると、膵臓からインスリンがでて、血糖を下げますが、同時にインスリンは中性脂肪を合成してしまう働きもあり、食後の中性脂肪を上昇させ、スモール・デンス・LDLも上昇させてしまうからです。
これらに注意しても、LDLコレステロールや中性脂肪が高い時は、動脈硬化のリスクを考えて薬物療法の併用を検討するのがいいでしょう。
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