2015年11月11日水曜日
白内障手術の合併症
ゲスト/大橋眼科 大橋 勉 院長
白内障の手術について教えてください。
白内障は、瞳の後ろにある水晶体が濁るために起きる視力障害です。治療には点眼薬が投与されますが、最終的には手術が必要です。一般的な手術法は、水晶体を包んでいる袋を残し、袋の中の濁りを超音波で細かくして取り除き、その袋の中に人工の眼内レンズを挿入するものです。従来、眼内レンズは1つの距離に焦点を合わせた単焦点眼内レンズが使われていましたが、最近では遠・近距離の複数に焦点が合う多焦点眼内レンズや、乱視矯正と多焦点が一体となったトーリック多焦点眼内レンズなど、眼内レンズの選択の幅も増えています。
白内障の手術で合併症など注意すべき点はありますか。
最も合併症が起きやすいのは、進行して褐色になった白内障です。濁りが固くなっているため取り除くのが難しく、また、水晶体の袋を支えるチン小帯が弱くなっているため、濁りが目の中に落下することもあります。
眼内レンズを支える膜が何らかの原因で手術中に破れることもあります。これを破嚢(はのう)といいます。大きな破嚢は、眼内レンズを挿入できないケースもあり、この場合には後日眼内レンズを目の中に縫い付ける方法で挿入します。
重度の合併症としては、約4000人に1人というごくまれな状態ですが、術後に眼内で細菌が繁殖し、網膜の障害で失明に至るケースがあります。直ちに硝子体手術を行えば、視力を維持できる可能性が高まります。
術後、数カ月から数年してまた物が見えにくくなってくることがあります。多くの場合、後発白内障によるものです。眼内レンズの入った、水晶体の袋が濁ってくるのが原因です。後発白内障は再手術の必要はなく、特殊なレーザーを使って簡単に濁りを除くことができます。外来でできる治療で、視力も翌日には回復します。
白内障手術では、術前にレンズの度数を計算し、移植するレンズの度数を決定しますが、時に誤差が大きく、不満を感じることがあり、その時にはレンズの入れ替えを行うことが可能です。また、多焦点眼内レンズ、トーリック多焦点眼内レンズは、遠方及び近方が見える分、ややくっきり感が落ち、まれにその見え方に慣れない場合は、単焦点眼内レンズに替えることがあります。
2015年11月4日水曜日
最新の糖尿病治療
ゲスト/医療法人社団 青木内科クリニック 青木 伸 院長
最新の糖尿病治療薬について教えてください。
糖尿病治療薬の最近の進歩は目覚ましいものがあります。飲み薬では、高血糖の時にだけすい臓からインスリンを分泌させ、正常血糖へ下げる「DPP-4阻害薬」があります。この薬は理論的には低血糖を起こさず治療できる新薬で、糖尿病の平均血糖の指標であるHbA1c値を1.0%前後下げます。この薬と同じ系統の注射薬も登場し、「GLP−1受容体作動薬」と呼ばれています。この注射薬はHbA1c値を1.6%前後下げます。1日1回の注射が必要ですが、現在は1週間に1回で済む注射薬も出ました。この系統の注射薬は、すい臓のインスリンを出す細胞を保護し、インスリンの分泌を弱らせない作用も持ち合わせているといわれています。従来まで体重を減少させる糖尿病薬がありませんでしたが、SGLT-2阻害薬が登場し、この薬剤は血糖を下げると同時に体重を減らします。
一方、インスリン注射薬に目を向けると、「持効型インスリン(1回の注射で24時間効果を持続する長時間作用型インスリン)」があります。飲み薬の治療が効かなくなる症例でも、飲み薬をそのまま服用しながら、1日1回の持効型インスリンの注射を加えると血糖が改善する症例もあります。「混合型インスリン」は、持続型インスリンと超速攻型インスリンの合剤ですが、超速攻型インスリンの含有率が50〜70%の製剤が最近使用できるようになりました。食後血糖の高い症例を治療するのに便利なインスリンです。
糖尿病の治療について教えてください。
糖尿病の治療が良好といえる目安はHbA1cが7.0%以下になっている場合です。糖尿病の患者さんの約半数が高血圧と脂質異常症(高脂血症)を合併しているといわれています。糖尿病を合併した高血圧の治療はとても重要で、血圧の治療目標値は125/75mmHg以下です。自宅測定の血圧を治療に役立てる方法もあります。この場合使用する測定器は、指先や手首に巻くタイプのものではなく、上腕に巻くタイプのものをお勧めします。脂質異常症の治療目標値は、LDL-コレステロール(悪玉コレステロール)が120mg/dl以下です。以上のようなさまざまな基準値を長期間保てば、眼底出血(失明)、腎臓の悪化(透析)、足の潰瘍・壊疽(えそ)による足の切断など糖尿病に由来する重症の合併症にならなくて済みます。それ以外にも脳梗塞、心筋梗塞などの予防にもつながります。
2015年10月28日水曜日
C型肝炎
ゲスト/福住内科クリニック 佐藤 康裕 副院長
C型肝炎とはどのような病気ですか。
C型肝炎ウイルスの感染によって肝臓が障害される病気です。血液を介して感染しますが、自覚症状は少なく、気が付かないうちに持続感染し病気が進行します。70%が慢性肝炎となり、20〜30年後に肝硬変へ進展し、肝がんを発症する人もいます。肝がんは日本のがん死亡数第4位で毎年約3万人が亡くなりますが、その70%はC型肝炎が原因となっています。
C型肝炎ウイルスが発見され、献血の際に感染対策が取られたのは1990年代の初めからでした。このため、これ以前に輸血や血液製剤の投与を受けた人は感染の可能性があります。また、消毒が不十分な器具を用いた入れ墨や薬物乱用にも感染の危険があります。日本における感染者数は約200万人と推測されていますが、症状がなく、感染の機会がないと思っているために検査を受けていない感染者もたくさんいます。札幌市では肝炎ウイルス検査を実施しており、当院を含めた指定医療機関において無料で検査を受けることができます。
治療法について教えて下さい。
昨年以降C型肝炎に対する新たな治療薬が次々と発売され、治療戦略が大きく変わろうとしています。C型肝炎ウイルスを排除するための治療は、これまでインターフェロンが中心でした。インターフェロンは体内の免疫力を高めてウイルスの活動を鎮静化させる注射剤です。しかし、発熱や倦怠感などの副作用が多く、途中で治療を断念する患者さんもいました。
これに対して新薬はインターフェロンを使わず飲み薬のみで治療が可能であり、副作用は大きく軽減されます。これらの新薬は、ウイルスを増殖させる酵素の働きを抑える薬で、すでに数種類発売されており、さらに今後も発売が予定されています。治療効果についても、臨床試験では極めて高い治療成績が示され、日本の患者さんの7割を占める1型に対する第一選択薬では、12週間の治療で100%近いウイルス消失が期待できます。短い治療期間で効果が高く副作用も軽微ですが、極めて高価なことが欠点です。しかし申請により医療助成が受けられ、患者さんの負担は軽減されます。
このようなC型肝炎治療の飛躍的な進歩は、肝がん撲滅に向けた大きな一歩になると期待されています。
2015年10月21日水曜日
認知症
ゲスト/医療法人五風会 さっぽろ香雪病院 本谷 宣彦 診療部長
認知症について教えてください。
認知症とは「生後いったん正常に発達したさまざまの精神機能が慢性的に減退・消失することで日常生活・社会生活を営めない状態」をいいます。ついさっきした行動を覚えていない、時間や場所が分からなくなる、簡単な計算ができなくなるといった認知機能の低下は認知症の<中核症状>と呼ばれ、ほとんどの人に初期からみられます。そして、中核症状によって生活が不自由になったり、不安感が募ったりするために、妄想や徘徊(はいかい)、暴力・暴言などの<行動・心理症状(BPSD)>が現れるようになります。
認知症は原因別にいくつかの種類に分類され、日本では「アルツハイマー型認知症」「血管性認知症」「レビー小体型認知症」が三大認知症といわれています。脳出血や脳梗塞による脳血管性のものなど、ごく一部ですが<治る認知症>もありますが、大部分を占めるアルツハイマー型とレビー小体型は、根本的な治療法が見つかっていません。しかし、認知症は早期に発見・診断されることで、適切な治療が受けられる病気です。治療可能な認知症であれば、症状の改善につながり、アルツハイマー型認知症であれば、症状の進行を遅らせることができます。また、早い段階から適切なアドバイスを受け、介護・福祉サービスなどを活用することで、介護負担を減らすことも可能です。今までとは違う症状や行動に気づいたら、本人のプライドを傷つけない配慮をしつつ、できるだけ早めに医療機関の受診を促すことをお勧めします。
認知症の治療について教えてください。
認知症の治療薬には、主に中核症状の進行を遅らせる薬と、BPSDを抑える薬があります。薬物治療は、決められた量、治療に有効な量をきちんと飲み続けることが大切です。高齢者は腎・肝機能の低下により、薬物の血中濃度が上がって副作用などが起こりやすいので、必要最小限の量から始めることも重要です。また、胃薬や抗潰瘍薬など、比較的広く処方されている薬、いつも使っている薬の中にも認知症を招くものがあるので注意が必要です。患者さんが若い頃から長期間にわたり同じ処方を続けている薬を減量や中止するだけで、症状が改善したケースも少なくありません。
薬を使わない非薬物治療には、元気だった若い頃の記憶を思い出し、気分を安定させ、脳を活性化させる「回想療法」、懐かしい歌を歌ったり、クラシック音楽などを聴いたりすることで脳を刺激する「音楽療法」などがあります。
認知症の治療は長期にわたり、家族内だけで問題を解決していくのは難しいです。介護する家族に心のゆとりがあり、笑顔で生活できることが、患者さんの安心にもつながります。一人で抱え込まず、介護サービスや、医療・福祉機関などの専門家、家族会など、認知症についての相談窓口を利用しましょう。
2015年10月14日水曜日
くも膜下出血
ゲスト/札幌宮の沢脳神経外科病院 古明地 孝宏 脳神経外科部長
くも膜下出血とはどのような病気ですか。
くも膜下出血は、脳を保護するくも膜の下にある血管から出血する脳卒中の一つです。症状はさまざまですが、突然起こる激しい頭痛が特徴で「今まで経験したことのないほどの痛み」などと表現されます。40〜50代の働き盛りの年齢層に発症することが多く、いったん出血を起こすと、約3割が死に至り、治療で一命を取り留めても、言語障害などの深刻な後遺症が残ることも多い恐ろしい病気です。
原因のほとんどは、脳動脈の壁の一部がこぶのように膨らむ脳動脈瘤(りゅう)の破裂によるものです。高血圧や動脈硬化などによって血管壁が弱くなるとできやすいといわれます。脳動脈瘤は破裂しなければ、無症状であることも珍しくありませんが、破裂の大部分は前触れもなく起きるので、早期発見が鍵を握ります。
くも膜下出血の治療と予防について教えてください。
くも膜下出血が起こってしまった場合、最も注意することは再出血です。再出血を防ぐ治療として、開頭手術と血管内治療があります。開頭手術は、頭蓋骨を開き、脳動脈瘤の根元をクリップで留めて止血したり、破裂を防いだりする頸(けい)部クリッピング術を行います。一方、血管内治療は、脚の付け根の血管からカテーテルを入れて脳の病変部まで通し、脳動脈瘤の内部に金属製のコイルを詰めるコイル塞栓(そくせん)術を行います。それぞれの治療法にはメリットとデメリットがありますから、どちらが良い治療法ということではなく、患者さんの状態を総合的に判断し、適切な治療を決定します。
予防は、まず生活習慣の改善から。特に、脳卒中を誘発する大きな要因となるのは高血圧です。普段の生活の中で血圧を自分でチェックし、血圧のコントロールに気を配りましょう。そのほか、喫煙、大量飲酒など血管に悪影響を与える因子は取り除いていくことが大切です。
くも膜下出血の多くは脳動脈瘤が原因となるため、脳ドックなどの検査で、脳動脈瘤の有無を確認することも重要です。現在ではMRIを用いて頭の血管を撮影(MRA)さえすれば、脳動脈瘤を破裂前に発見することが可能になっています。くも膜下出血は遺伝との関わりも深いので、家系にくも膜下出血を起こした方がいる場合、40歳を過ぎたら健康診断のつもりで一度検査を受けることをお勧めします。
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