2013年6月18日火曜日

虫歯の予防法


ゲスト/内山デンタルクリニック 内山 孝英  院長

どうして虫歯になるのですか。
 「何度治しても虫歯になってしまう」「私は歯が弱いから…」と嘆く人は多いと思います。誰でも虫歯の治療は嫌なものでしょうが、治療を受けるだけでは、なりやすい人はまた虫歯になってしまいます。
 その理由は、虫歯という病気の特殊性にあります。虫歯は「虫歯菌(ミュータンス連鎖球菌)」が起こす細菌感染症なのです。口の中には400種類以上の細菌がすみついており、歯の表面にできる「歯垢(プラーク)」1㌘には、数億個の細菌が存在しています。虫歯になりやすい人の口の中には、そうでない人に比べて虫歯菌の数が桁違いに多く存在するのです。
 虫歯菌は、砂糖という餌から「グルカン」というネバネバした物質を作り出し、歯の表面にへばりつきます。これは水には溶けないので、うがいでは除去できません。次第に歯の表面に分厚い膜(バイオフィルム)が作られていきます。
 バイオフィルム中の虫歯菌は、私たちが飲食する砂糖の糖分を吸収してエネルギーを獲得し、乳酸などの強い「酸」を放出します。バイオフィルムが育ってくると、酸はバイオフィルムの中に残り、歯の表層のエナメル質を溶かし始めます(脱灰)。これが虫歯の始まりです。つまり砂糖を多く摂取すると、虫歯菌数が増えて、歯が溶けやすくなるのです。ブラッシングなどによって早期にバイオフィルムを除去できれば、唾液の力などでエナメル質を修復(再石灰化)できますが、酸性状態が続くと再石灰化が間に合わず、虫歯へと向かっていきます。また、内服薬の副作用などで唾液の分泌が少ない人は、極めて虫歯になりやすくなります。

虫歯を予防する方法はありますか。
 虫歯を予防するには、砂糖の摂取を控えること、ブラッシングなどで歯の表面のバイオフィルムを除去することが2大原則です。加えて、フッ素などにより歯質を強化し、糖分摂取の時間をコントロールすることで、ほぼ確実に予防することができます。虫歯は私たちの普段の生活習慣に深く関係がある病気なのです。
 また、「キシリトール」は優れた代用甘味料で、甘さは砂糖に匹敵しますが、摂取しても虫歯菌に酸を作らせません。キシリトールを習慣的に摂取することで、口の中の虫歯菌数を減少させることが知られています。

2013年6月12日水曜日

最新の糖尿病治療薬


ゲスト/医療法人社団 青木内科クリニック 青木 伸 院長

最新の糖尿病治療薬について教えてください。
 糖尿病治療薬の最近の進歩は目覚ましいものがあります。飲み薬では、高血糖の時にだけすい臓からインスリンを分泌させ、正常血糖へ下げる「DPP-4阻害薬」があります。この薬は理論的には低血糖を起こさず治療できる新薬で、糖尿病の平均血糖の指標であるHbA1c値を1.0%前後下げます。この薬と同じ系統の注射薬も登場し、「GLP−1受容体作動薬」と呼ばれています。この注射薬はHbA1c値を1.6%前後下げます。現在は1日1回の注射が必要ですが、将来的には1週間に1回で済む注射薬も出る予定です。この系統の注射薬は、すい臓のインスリンを出す細胞を保護し、インスリンの分泌を弱らせない作用も持ち合わせているといわれています。
 一方、インスリン注射薬に目を向けると、「持効型インスリン(1回の注射で24時間効果を持続する長時間作用型インスリン)」があります。飲み薬の治療が効かなくなる症例でも、飲み薬をそのまま服用しながら、1日1回の持効型インスリンの注射を加えると血糖が改善する症例もあります。「混合型インスリン」は、持続型インスリンと超速攻型インスリンの合剤ですが、超速攻型インスリンの含有率が50〜70%の製剤が最近使用できるようになりました。食後血糖の高い症例を治療するのに便利なインスリンです。

糖尿病の治療について教えてください。
 糖尿病の治療が良好といえる目安はHbA1cが6.9%以下になっている場合です。糖尿病の患者さんの約半数が高血圧と脂質異常症(高脂血症)を合併しているといわれています。糖尿病を合併した高血圧の治療はとても重要で、血圧の治療目標値は130/80mmHg以下です。自宅で簡易血圧測定器を使用して治療に役立てる方法もあります。この場合使用する測定器は、指先や手首に巻くタイプのものではなく、上腕に巻くタイプのものをお勧めします。脂質異常症の治療目標値は、LDL-コレステロール(悪玉コレステロール)が120mg/dl以下です。以上のようなさまざまな基準値を長期間保てば、眼底出血(失明)、腎臓の悪化(透析)、足の潰瘍・壊疽(えそ)による足の切断など糖尿病に由来する重症の合併症にならなくて済みます。それ以外にも脳梗塞(こうそく)、心筋梗塞などの予防にもつながります。

2013年6月5日水曜日

手のしびれ


ゲスト/札幌宮の沢脳神経外科病院 村上 友宏 医師

―手のしびれの原因にはどのようなものがありますか。
 しびれは、血液の流れが滞っていたり、神経がどこかで圧迫されていたり、神経自体が傷ついたりするときなどに起こります。その原因は大きく分けて二種類あります。
 一つは脊髄や神経根の障害です。代表的な病気として頸椎(けいつい)症や頸椎椎間板ヘルニアがあります。頸椎症は首の骨(頸椎)の一部に骨棘(こつきょく)と呼ばれる突起が生じ、頸椎椎間板ヘルニアは骨と骨の間にあるクッションのような柔らかい組織が飛び出し、それが脊髄や、手に分布する神経を圧迫するために手のしびれ、脱力が生じてきます。頭を前や後ろに反らすとしびれが強くなることがあります。
 もう一つは末梢(まっしょう)神経の異常で、その神経の支配している範囲がしびれます。代表的なのは、中年以降の女性に多い手根管症候群です。これは、正中(せいちゅう)神経が手首の関節の使い過ぎによる靭帯(じんたい)の肥厚や炎症により圧迫されておこります。
 このほか、脳梗塞などの脳の病変(特に、視床)や血流障害、糖尿病のような全身性の病気など、さまざまな原因で手がしびれます。

―頸椎症について詳しく教えてください。
 首は重い頭を支えており、動きもダイナミックです。そのため負担も大きく、これが骨棘(こつきょく)のできる原因であると考えられています。従って、高齢者に多いのが特徴で、ひどくなるとピリピリしたしびれからビリビリした痛みに変わったりします。進行すると、腕や指の動きも悪くなり、足がしびれたり歩きにくくなったりします。
 頸椎症は、頸部のエックス線で診断可能です。他にもコンピューター断層撮影(CT)、磁気共鳴画像装置(MRI)検査を行って脊髄や神経の圧迫の程度などを知ることができます。
 初期の治療は、神経やその周囲の炎症や痛みを抑える薬、筋肉を柔らかくする薬を服用して、症状を緩和します。首を固定するネックカラー(腰でいう、コルセット)をする場合もあります。腕の力がない、細かい指の動きができない、歩きにくい、排尿しにくいといった場合では、手術が必要になることがあります。
 頸椎症は、治療を行わなくても症状が軽減することもあり、「軽いしびれだから」と我慢している人も多いようですが、日常生活に不便を感じるようになったときはすぐに病院に相談してください。早期に治療すれば回復も早くなります。

2013年5月8日水曜日

ストレスと自律神経


ゲスト/つちだ消化器循環器内科 土田 敏之 院長

ストレスと自律神経の関係について教えてください。
 仕事や家事が立て込んで気分が重くなったり、地域や職場での人間関係に悩まされたり…。現代社会はストレス社会であり、私たちは、毎日いろいろなストレスを感じて暮らしています。育児や老後の不安、家計の心配、突然の離職や失業、家族や親しい人の死や病気など、身体的・精神的ストレスの原因は人によって千差万別です。一般的に自分を抑えがちな人、小さい事をいつまでも気にしてしまう人、短気で好戦的な人などは、ストレスをため込みやすいといわれています。
 ストレスが大きくなると自律神経がうまく働かなくなります。自律神経は交感神経と副交感神経という二種類の神経が、補い合いながら働いて、健康を保つのに必要な心臓や呼吸などの働きを調節する神経です。自律神経は体の隅々まで張り巡らされているので、何らかのストレスで自律神経のバランスが崩れると、心身に多様な異常をもたらします。ストレス太り、高血圧、不眠症、胃炎、食欲が出ない、疲れが抜けない、下痢や便秘、体のかゆみ、口が渇く、体調不良、肩凝り、口内炎、イライラする、胸が苦しい、発汗、手足がほてるまたは冷たくなるなど、症状は実にさまざまです。

ストレスを解消するにはどうすればいいですか。
 ストレスを発散し、ため込まない工夫としては、例えば、ゴルフやテニスなどの運動で汗を流す、ショッピングやドライブ、料理、習い事などの趣味を楽しむ、自宅ではラフな格好に着替え、靴下をぬぎ、入浴はぬるいお湯にゆっくりと漬かる、就寝前に適量のお酒を飲むなどが推奨されます。クラシックやバラードなど“癒やし系”の音楽を聞いたり、友人と長電話でおしゃべりをしたりするのもいい気分転換になりそうです。旅行の計画を立てる、趣味のサークルに参加し交流を楽しむ、お笑い番組を見て思いっ切り笑うなど、自分流のストレス対処法を見つけることも大切です。
 それでも体調が回復しない場合は、病院の受診を考える必要があります。重症化すると、うつ病や社会不安障害、周囲とうまく交われない適応障害、体に症状が出る心身症、突然動悸(どうき)や息苦しさに襲われるパニック障害といった別の病気へと進行し、社会生活に支障を来してしまう可能性もあるので、早めに適切な治療を受けることが大事です。

2013年5月1日水曜日

歯科でのマウスピース治療


ゲスト/医療法人社団アスクトース 石丸歯科診療所 近藤 誉一郎院長

歯科でのマウスピースによる治療にはどのようなものがありますか。
 歯科医が作るマウスピースには、歯ぎしりの強い人に使用するナイトガードや顎(がく)関節症の治療で用いられるスプリント、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治療で使われるスリープスプリントなどがあります。
 夜眠っている間に歯をギシギシとこすり合わせたり、ギュウギュウとかみしめたり、カチカチとかみ合わせたりする歯ぎしり。自覚がないことが多く、歯のすり減り方が極端に激しいなど、歯科医から指摘を受けて発覚するケースが目立ちます。
 歯ぎしりは、周りで寝ている人に迷惑なだけでなく、歯のかむ面がすり減ってしまうため、冷たい物が歯にしみたり、顎の関節に痛みが出たり、頭痛を引き起こしたりするなど、いろいろな症状の原因となります。また、歯ぎしりしているときは強い力が働き、歯を支える骨などにダメージを与えるため、虫歯や歯周病の進行を速めます。
 夜間、かみ合わせのバランスを整えたナイトガードで歯全体を覆うことで、歯や歯周組織、顎の関節などを歯ぎしりの強い力から守ります。

スプリント、スリープスプリントを使った治療について教えてください。
 顎関節症は、口を大きく開けられない、顎を動かしたときに音が鳴る、顎の関節や筋肉が痛いなどの症状が出る病気です。何らかの原因で、顎関節や周囲の靭帯(じんたい)、筋肉に過剰な負担が掛かって起こります。顎関節症に対するスプリント治療は、マウスピースを歯の上にかぶせることで顎の関節や筋肉の負担を軽減します。
 SASは、睡眠中に何度も呼吸が止まることで、日常生活にさまざまな問題を引き起こす病気。眠っているときに空気の通り道が狭くなり、いびきや無呼吸が起きます。日中の眠気やだるさ、集中力の低下などの症状があるなら要注意。一度詳しく検査することをお勧めします。治療はスリープスプリントを使って下顎を前方に数ミリ程度突き出させて、睡眠中に気道が狭まったり、ふさがったりするのを防ぎます。ただし、スリープスプリントを製作するには睡眠専門外来の医師による診断書が必要となります。
 虫歯が多い、重度の歯周病にかかっている、総入れ歯を使っている人などはマウスピースの製作が困難な場合もありますので、日々の歯のメンテナンスをきちんと行うことが何よりも大切です。

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