2011年10月14日金曜日

帯状疱疹(ほうしん)

ゲスト/白石内科クリニック 干野 英明 医師

帯状疱疹とはどのような病気ですか。

 帯状疱疹は、子どものころにかかった水痘(水ぼうそう)のウイルスが体内に潜伏していて、何かのきっかけに再び活動することによって起こる皮膚の病気です。水痘にかかって治った後も、このウイルスは痛みや感覚などを伝える知覚神経節の中に隠れて何年も潜伏します。そして、免疫力が低下したときにウイルスが再活性化します。免疫力が低下する原因には、加齢、病気、疲労、ストレスなどがあります。免疫力の低下によって再活性化したウイルスは、神経に沿って増殖し、その先の皮膚に帯状の水ぶくれをつくります。
 日本では6人に1人がかかるといわれる身近な病気です。最近では若い年代にも増加しています。一度発症すると再発することはまれです。
 症状は、体の左右どちらか片側の皮膚にピリピリとした痛みが出現します。次に、痛みを感じた場所に赤い発疹ができ、神経の通り道に沿って線状、帯状に広がっていきます。発疹は水ぶくれとなって多くの場合激しい痛みを伴いますが、約2週間でかさぶたとなり、3週間ほどで治ります。
 痛みは水ぶくれが治るころに消えますが、長期間痛みが続く場合もあります。これは帯状疱疹後神経痛と呼ばれ、高齢者によく見られます。痛みは1〜3カ月ぐらいでなくなりますが、中には数年間にわたって続くこともあります。

帯状疱疹の治療について教えてください。

 帯状疱疹にかかったら、できるだけ安静を保ち、早期に治療を開始することが大切です。発疹が出て3日以内に治療を受ければ後遺症が残る確率は低くなり、皮膚の症状も軽くて済みます。発疹は全身どこにでも出る可能性がありますが、多いのは肋間(ろっかん)神経のある胸から背中にかけてです。顔や首、耳周辺に出た場合は、顔面神経麻痺(まひ)や難聴、味覚障害、失明に至るケースもあるので注意が必要です。
 治療薬には、抗ウイルス薬の軟こう、内服、点滴があります。補助的に非ステロイド系消炎鎮痛剤や抗うつ薬などが処方されることもあります。また、痛みが強い場合は、神経ブロックを行って痛みを止める方法があります。
 帯状疱疹にかからないようにするには、日ごろから栄養、睡眠などを十分に取り、適度に運動を行うなど、体力と免疫力を低下させないことが重要です。

加齢黄斑(おうはん)変性

ゲスト/大橋眼科 大橋 勉 院長

加齢黄斑変性とはどのような病気ですか。

 加齢黄斑変性は、加齢が原因で起こる眼疾患です。欧米では主要な失明原因の一つとして以前から知られていましたが、急激な高齢者人口の増加に伴い、日本でも患者数が増加しています。
 黄斑は、網膜の中でも視力をつかさどる重要な細胞が集中している部分で、物の形や大きさ、色、奥行き、距離などの情報の大半を識別しています。黄斑部が傷むと、見たい部分がゆがんで見える、ぼやけて見える、不鮮明になる、中心が暗く見えるなどの症状が現れます。
 加齢黄斑変性は、網膜に栄養や酸素を供給している脈絡膜から発生する新生血管の有無によって「滲出(しんしゅつ)型」と「萎縮型」とに分けられます。滲出型は、新生血管が発生し、出血など網膜の障害により起こるタイプで、進行が早く、急激に視力が低下していきます。萎縮型は、網膜の細胞が加齢により変性し、徐々に萎縮していきます。進行が緩やかなため、気付かない人もいます。しかし、時間の経過とともに滲出型に移行することもありますので、定期的に眼科医で検査を受ける必要があります。

加齢黄斑変性の治療について教えてください。

 病気の進行度や重症度、病型によって治療法は幾つかあります。
 滲出型の治療の中心的役割を果たしてきたのが「光線力学療法」です。眼の新生血管に集まる特殊な薬剤を注射し、そこに専用のレーザー光線を当てることにより、新生血管を閉塞させる方法です。1回の治療では効果が弱く、治療を複数回反復する必要があります。
 近年、滲出型の治療の主流になりつつあるのが「抗VEGF療法」という、新生血管の増殖や成長を抑える薬を、眼球の硝子体内に注射する方法です。導入期では、月1回の注射を3カ月間繰り返します。その後の維持期は、定期的に検査を行い、必要に応じて注射をします。視力維持のみならず視力改善の効果が期待できる治療法として注目されています。
 加齢黄斑変性から視力を守るには、早期発見が何よりも重要です。進行の早い滲出型でも早期に発見すれば、視力を維持・改善できる可能性が高くなります。物の見え方に異常を感じたら、すぐに眼科を受診してください。自覚症状がない人でも50歳を過ぎたら一度、眼底検査を受けられることをお勧めします。

2011年9月28日水曜日

生理痛の原因と子宮内膜症

札幌駅前アップルレディースクリニック 工藤 正史 院長

生理痛の原因について教えてください。

 生理痛の症状を訴える女性のうち、約5パーセントが日常生活を制限されるほどの生理痛を経験し、治療を必要とするといわれています。生理痛は、子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮内膜症や、クラミジアや淋菌(りんきん)感染などの後遺症による骨盤腹膜の癒着性病変など器質的疾患が認められる(病気が隠れている)場合と、原因となる病気のない機能的月経困難症とに分類されます。
 
最近、若い女性に増えている子宮内膜症とはどのような病気ですか。

 子宮内膜症は、子宮という名は付いていますが、子宮以外の部位に起こる病気です。卵巣、卵管、膀胱(ぼうこう)、腹膜、膣(ちつ)壁、直腸のほか、まれに肺に発症することもあります。
 子宮内膜とは、子宮の内側を覆っている粘膜です。妊娠が成立しないときは増殖した子宮内膜は不要となってはがれ落ち、血液などと一緒に体外へ排出されます。これが月経です。子宮内膜症は、本来であれば子宮の内側だけに存在するはずの子宮内膜組織が、子宮の内側以外のところで発生して増殖する病気です。子宮以外の場所には、不要となった子宮内膜が排出されるところがないため、出血した血液はその部分にたまってしまい、痛みを主に血尿などさまざまな症状を引き起こします。周囲の臓器と癒着して不妊症や子宮外妊娠の原因となるのも特徴です。
 治療は、対症療法と内分泌療法、外科療法になります。生理痛の痛みが強い女性は、子宮内膜からプロスタグランジンという物質が多く産生されており、これが痛みの原因となっています。プロスタグランジンの産生を阻害する薬を飲むことが対症療法で、出血が始まったらすぐに服用するのがコツです。鎮痛剤が効きにくい場合、低用量のピルを用いた内分泌療法を行います。ピルは経口避妊薬ですが、生理痛だけでなく、生理前の症状(イライラ・気分の落ち込みなど)や月経不順などの症状も改善します。また、鎮痛剤と異なり、子宮内膜症に対して治療的に働くなどのメリットもあります。薬やピルでは治療困難の場合には、外科療法が効果的で、現在は体にかかる負担の少ない腹腔(ふくくう)鏡で行う手術が主流です。
 痛みを我慢して過ごす時間は人生の大きな損失です。いたずらに怖がることなく、まずは専門医を受診することをお薦めします。

2011年9月26日月曜日

大腸がん

みどり内科クリニック 中里 友彦 院長

大腸がんについて教えてください。

 日本では今、大腸がんが増えてきています。その原因の一つとして、食生活の欧米化が挙げられます。また、大腸がんの一部は遺伝により発生するといわれています。身内に大腸がんの方がいる場合には、検査をお勧めします。
 年齢別にみた大腸がんの罹患(りかん)率は、40歳代から増加し始め、高齢になるほど高くなります。2005年の国立がん研究センターの統計では、日本人の男性で8〜9%、女性で6〜7%の方が大腸がんを発症しています。
 がんの治療では、早期発見・早期治療が何よりも重要です。特に大腸がんは初期に発見し、手術を受けることで完治も可能ながんといわれています。また、内視鏡治療のみで治癒することも多い病気です。
 早期の大腸がんでは、自覚症状がないのが大部分です。このため、がんの表面から微量の血液が便に混ざることから、これを検出することでがんを発見しようとするのが便潜血検査です。簡易な検査ですが、大腸がんでも検査異常が出てこないケースもあります。大腸がんの早期発見に比較的精度が高い検査は、現在のところ大腸内視鏡検査といえるでしょう。

大腸内視鏡検査について教えてください。

 大腸内視鏡検査は肛門から内視鏡を挿入し、大腸内部を直接観察する検査です。検査前に約2リットルの下剤を服用し、大腸内の便をなくすための処置が必要です。検査時間は10分程度ですが、大腸が長い方、過去の手術で腸に癒着のある方、大腸憩室症(大腸の壁が弱く、大腸に小さなへこみができた状態)で大腸が硬くなっている方などは、30分〜1時間かかるケースもあります。
 大腸内視鏡というと、どうしてもつらく苦しい検査を想像してしまう方が多いと思いますが、技術の進歩により、従来に比べて検査は楽になっています。また、施設によっては鎮痛・鎮静剤を用いた、より苦痛の少ない検査を実施しているところもあります。
 これまで“つらそう”“痛そう”とためらっていた皆さんも、ぜひ大腸内視鏡検査で自分の腸の状態をしっかり調べてみてください。検査の間隔はポリープの有無などによって異なりますが、基本的には40歳代では「まずは一度」、50歳代以降では1年〜数年ごとに検査されることをお勧めします。

インプラント治療

ゲスト/医療法人社団アスクトース 石丸歯科診療所 近藤 誉一郎院長

インプラント治療とはどういうものですか。

 虫歯や歯周病で歯を失ってしまった場合、ブリッジや入れ歯のどちらかの方法で義歯を装着するのが一般的ですが、失った歯の両隣の歯を削ったり、残った歯にバネを架けたりするなど、健康な歯に負担を掛けることもある治療といえます。また、審美性に問題が出る場合もあります。
 インプラント治療は、失ってしまった歯の根が本来あった場所にチタン製の土台を埋め込み、その上に人工的な歯を固定させる方法です。天然の歯に近い審美性と、自分の歯のように噛(か)めるという機能性が回復します。
 インプラントの治療は顎の骨に穴を開け、人口歯根を埋め込むため、顎の骨の量がとても重要です。骨の量が少ないとインプラントを固定できません。近年は、骨造成(骨を増加させる手術)などの治療を併せて行うことで、あごの骨の量が少ない人でもインプラント治療が行えるようになってきました。
 専門医の正確な診断のもと、きちんとした治療とメンテナンスを行えば、インプラントは20年以上良好に機能するといわれています。

インプラント治療を受けるに当たっての注意点を教えてください。

 インプラント治療は保険が適用されない自由診療のため、費用が高額になる場合もあります。また、インプラントを埋め込んだ後は、なかなかやり直しが利かない治療法ですので、治療を希望される人は、事前に専門医の詳細な説明を受けて、インプラントについて正しく理解し、十分に納得した上で治療に臨むことが何よりも大切です。
 インプラント治療を行う前には、必ず術前検査を行います。まず血液検査でインプラント治療が可能な健康状態であるかを調べます。糖尿病や心臓疾患の既往症がある場合、内科医との連携が必要になるケースもあります。続いて、口腔(こうくう)内検査、レントゲン検査、CT検査などで、顎の骨や歯茎の状態を確認します。すべての検査の結果を踏まえて、インプラントが良好に長く機能する治療計画を立てていきます。
 インプラントを長期にわたって快適に使うためには、メンテナンスが欠かせません。メンテナンスを怠ってしまうと、歯周病に似た「インプラント周囲炎」になってしまうことがあります。丁寧な自宅でのケアに加えて、専門医での定期的な検診の受診が必要となります。

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