ゲスト/大橋眼科 大橋 勉 院長
加齢黄斑変性とはどのような病気ですか。
加齢黄斑変性は、加齢が原因で起こる眼疾患です。欧米では主要な失明原因の一つとして以前から知られていましたが、急激な高齢者人口の増加に伴い、日本でも患者数が増加しています。
黄斑は、網膜の中でも視力をつかさどる重要な細胞が集中している部分で、物の形や大きさ、色、奥行き、距離などの情報の大半を識別しています。黄斑部が傷むと、見たい部分がゆがんで見える、ぼやけて見える、不鮮明になる、中心が暗く見えるなどの症状が現れます。
加齢黄斑変性は、網膜に栄養や酸素を供給している脈絡膜から発生する新生血管の有無によって「滲出(しんしゅつ)型」と「萎縮型」とに分けられます。滲出型は、新生血管が発生し、出血など網膜の障害により起こるタイプで、進行が早く、急激に視力が低下していきます。萎縮型は、網膜の細胞が加齢により変性し、徐々に萎縮していきます。進行が緩やかなため、気付かない人もいます。しかし、時間の経過とともに滲出型に移行することもありますので、定期的に眼科医で検査を受ける必要があります。
加齢黄斑変性の治療について教えてください。
病気の進行度や重症度、病型によって治療法は幾つかあります。
滲出型の治療の中心的役割を果たしてきたのが「光線力学療法」です。眼の新生血管に集まる特殊な薬剤を注射し、そこに専用のレーザー光線を当てることにより、新生血管を閉塞させる方法です。1回の治療では効果が弱く、治療を複数回反復する必要があります。
近年、滲出型の治療の主流になりつつあるのが「抗VEGF療法」という、新生血管の増殖や成長を抑える薬を、眼球の硝子体内に注射する方法です。導入期では、月1回の注射を3カ月間繰り返します。その後の維持期は、定期的に検査を行い、必要に応じて注射をします。視力維持のみならず視力改善の効果が期待できる治療法として注目されています。
加齢黄斑変性から視力を守るには、早期発見が何よりも重要です。進行の早い滲出型でも早期に発見すれば、視力を維持・改善できる可能性が高くなります。物の見え方に異常を感じたら、すぐに眼科を受診してください。自覚症状がない人でも50歳を過ぎたら一度、眼底検査を受けられることをお勧めします。