2006年12月13日水曜日

「冬期間の痛み」について

ゲスト/円山リラクリニック 森田 裕子 医師

冬期間に生じる「痛み」について教えてください。

 痛みの種類には、急性のものと、神経痛など慢性のものがありますが、どちらも冬期間は増える傾向にあります。まず急性の痛みの原因として多いのは、転倒による打撲やぎっくり腰などのほか、雪道を歩くことによって筋肉に緊張を強いられたり、滑って不自然な力が入るなどです。また、慢性的な痛みの原因としては、寒さによる冷えによって、もともと持っていた関節リウマチ、変形性関節症、神経痛、頭痛などの症状が悪くなることが考えられます。
 骨折などの外傷は整形外科の受診をお勧めしますが、筋肉の凝りやリンパ管や血行の不良、原因がはっきりしない痛みに関しては、「痛みの治療」をするペインクリニックを受診するか、かかりつけの医師に早めに相談することをお勧めします。早めに治療を始めることにより悪化を抑えることが重要です。

痛みの治療法について教えてください。

 神経ブロック治療や中国鍼(はり)を使用した鍼治療、鍼に低周波通電を行って刺激を与える鍼電極低周波治療、体の内部まで温めて血行を良くすることにより痛みを和らげる光線療法、漢方薬の処方などもあります。神経ブロックとは痛みの伝達に関係する知覚神経や交感神経の周辺に局所麻酔薬を注射する方法です。その注射により、痛みを一時的に遮断し、交感神経の緊張を緩めることで血流を改善し、局所にたまった老廃物の排せつを促して痛みを軽減させる治療法です。これらの治療を個々の症状や痛みの原因に合わせて行います。
 自身でできる痛みの緩和法としては、急性の痛みには冷やしたり湿布することなどがあり、慢性の痛みには蒸しタオルやカイロで温めることなどがあります。
 冬期間の外出では、滑らない靴をはく、つえを活用する、体を冷やさない服装をすることなども大切です。特に、冬に外出機会が減って筋力が低下してしまうと転倒することも多くなるので、軽いストレッチを行ったり、ショッピングモールなどの暖かい場所で多めに歩くなど、日常の中で適度に体を動かすことも効果的です。

2006年12月6日水曜日

「加齢黄斑(おうはん)変性症の光線力学療法」について

ゲスト/大橋眼科 大橋勉 医師

加齢黄斑変性症とはどんな病気ですか。

 視野の中央がよく見えない、暗く見える、ゆがむといった症状が現れたら、加齢黄斑変性症が疑われます。人間の眼(め)は、角膜、水晶体、硝子体(しょうしたい)を通って、網膜の上に像を結んで物を見ます。その中心部は黄斑部と呼ばれ、物を見るために最も重要な部分です。この黄斑部に異常な老化現象が起こり、視力が低下する病気が加齢黄斑変性症です。原因は、健康な状態では存在しない新しい異常血管が、黄斑部の脈絡膜(網膜より外側に位置し、血管が豊富な膜)から発生し、網膜側に伸びてきます。この新しい血管は新生血管と呼ばれ、血管壁が大変もろいため、血液や血液成分が黄斑組織内に滲出(しんしゅつ)し、黄斑機能を妨げます。出血や滲出物によって、視力の低下や、物がゆがんで見えるなどの症状が出現します。放っておくと高度の視力障害や、最悪の場合失明することもあります。

治療法について教えてください。

 治療の一つとして、最近注目されているのが光線力学療法(PDT)です。光に対する感受性を持つ光感受性物質(ベルテポルフィン)を、ヒジの静脈から注射し、それが新生血管に到達したとき、非熱性の半導体レーザーを当てて、その光感受性物質に化学反応を起こさせます。そうすることによって、強い毒性のある活性酸素が発生し、新生血管の血管内皮細胞が破壊され、血管が閉塞(へいそく)します。この治療で使用するレーザーは通常のものと異なり、新生血管周囲の組織への影響は少なく、視力への影響は軽度です。しかし、まれに網膜出血が増加することがあります。一度傷ついた網膜は元に戻りませんが、新生血管をつぶすことによって病気の進行を止めることができます。初回の治療には2泊程度の入院が必要で、状態に応じて数回の治療が必要な場合もあります。もちろん、治療は健康保険が適用になります。
 加齢性黄班変性症は、早期に治療するほど効果が期待できます。視力の異常を感じたら、すぐに専門医を受診してください。道内で光線力学療法を実施している施設は少ないので、主治医によく相談してください 。

(眼科PDT研究会http://www.pdti.jp/参照)

2006年11月22日水曜日

「インフルエンザ」について

ゲスト/秀愛会内科・消化器科クリニック 高梨 良秀 医師

インフルエンザと風邪の違いについて教えてください。

 風邪の場合は、のどの痛み、鼻汁、くしゃみや咳(せき)などが中心で、重症化することはめったにありません。インフルエンザの場合は、当然例外はありますが、代表的症状として38℃以上の発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛など全身に症状が現れ、さらにのどの痛み、鼻汁なども見られます。また、気管支炎、肺炎、熱性けいれんなどを併発し、重症化することがあるのも大きな特徴です。特に、乳幼児や高齢者など体力がない人、呼吸器や心臓などに慢性疾患を持つ人は重症化することが多いので、十分に注意する必要があります。
インフルエンザは流行性疾患で、例年11月~4月に流行しますが、昨年などは暖かくなってからも局地的に流行がありました。一度流行すると、健康な人から高齢者、乳幼児まで、瞬く間に感染が広まってしまうのも、インフルエンザの恐ろしいところです。

予防と治療について教えてください。

 インフルエンザ予防の基本は、流行前のワクチン接種です。特に、重症化しやすい高齢者や乳幼児、集団感染しやすい学生、休みづらい職場に勤務している人や受験生は、予防接種を受けておくといいでしょう。年末から1月~2月に流行することが多いので、年内に接種することをお勧めします。また、インフルエンザは、罹患(りかん)者の咳、くしゃみ、唾液(だえき)などの飛沫(ひまつ)とともに放出されたウイルスを、鼻腔(びくう)や気管など気道に吸入することによって感染します。インフルエンザの流行時には、高齢者や慢性疾患を持っている人は、混雑している所への外出を控えましょう。室内の空気を乾燥させないことも大切です。
 インフルエンザにかかったら、早めに医療機関を受診し、休養を充分とりましょう。インフルエンザウイルス治療薬の抗ウイルス薬は、症状が出はじめてからの時間や病状によって効果が異なりますので、医師の判断が必要です。発症から一般的に48時間以内に服用すると、通常、発熱期間は1~2日間に短縮され、ウイルス排せつ量も減少します。インフルエンザに罹患したら、家でゆっくり休むことが、周囲に感染を広めないためにも重要です。

2006年11月15日水曜日

「寝たきり防止は口腔(こうくう)機能向上で」について

ゲスト/石丸歯科 石丸 俊春 歯科医師

口腔機能と寝たきりの防止について教えてください。

 近ごろ、要介護になる原因として、「加齢に伴う生活機能の低下」が重要視されています。衰弱、転倒、骨折、認知症、関節疾患などの生活機能の低下を防ぐためには、「よくかめる歯や義歯を確保し、かむ筋肉を鍛える」「食べ物を好き嫌いなくバランス良く食べて体力を保つ」などの対策が必要です。今年の4月から65歳以上の高齢者を対象にした介護予防のサービスも受け付けられるようになりました。

生活機能改善策として、

1)運動器具による機能の向上
2)栄養改善
3)口腔機能改善
4)認知症、うつ、閉じこもり予防などが柱として挙げられています。
 ここでは、口腔機能改善について説明します。年齢にかかわらず、以下の点に心当たりのある人は注意が必要です。
1)最近硬いものが食べづらくなった。
2)お茶や汁物などでむせることがある。
3)口の渇きが気になる。
4)30秒間で唾液(だえき)を3回以上連続して飲み込めない(反復唾液嚥下(えんげ)テスト)。
5)急激な体重変動がある。

問題があった場合はどうしたら良いでしょう。

 65歳以上で生活機能の低下を感じる場合は、「地域包括支援センター」か「介護予防センター」で、「基本健康診査」を受け、介護予防サービスを受けることをお勧めします。

日常生活では以下の実行を。

1)口腔内を清潔に保つこと。これは上気道感染、肺炎の予防につながります。
具体的には、
a)歯磨き、義歯の手入れ、舌のブラッシング
b)ブクブクうがい、ガラガラうがい
c)ほお内側の粘膜のマッサージ、唾液腺のマッサージ
d)舌を上顎(あご)につけて、ポンと音を鳴らす(舌の動きを良くする)などです。
2)よくかむことを心がける。摂食や嚥下機能向上、認知症防止につながります。
3)会話、歌、笑いの機会を多くする。表情筋、呼吸機能が鍛えられます。

 口腔機能というと口の中の問題と考えがちですが、運動機能、栄養摂取、会話などと深く関係する大切な機能です。「元気な口腔機能」は健康で幸せな人生の大切な条件です。

2006年11月8日水曜日

「長引く咳(せき)とマイコプラズマ肺炎」について

ゲスト/大道内科・呼吸器科クリニック 大道 光秀 医師

激しい咳が長引く疾患について教えてください。

 長引く咳の原因としては、結核や気管支喘息(ぜんそく)、アトピー咳嗽(がいそう)のほかに、百日咳、マイコプラズマ肺炎、クラミジア肺炎などが考えられます。夜中や朝方に咳が多いのは、咳喘息やアトピー咳嗽、百日咳である可能性が強く、マイコプラズマ肺炎、クラミジア肺炎の場合は、通常1日中咳が出ます。
 百日咳は、通常2歳以下の幼児に頻発する病気ですが、最近、大人での急性あるいは長引く咳の原因として注目を集めています。夜中に多く、発作性で激しい連続性の咳に引き続き、吸気時にヒューと音がしたり、嘔吐(おうと)したりします。大人から子どもへの感染も懸念されます。
 クラミジア肺炎は、微生物であるクラミジア・ニューモニアに感染することによって発症します。発熱後に激しい咳が3~4週間続きます。
 どちらもきちんと治療すれば、予後は良好ですが、治癒するまで数週間かかります。また、体力のないお年寄りや乳幼児は重症化することもあるので、入院治療が必要になる場合もあります。百日咳、クラミジア肺炎の流行性は、そう大きくありません。

マイコプラズマ肺炎はどうですか。

 最近になって、感染者が増えているのはマイコプラズマ肺炎です。微生物であるマイコプラズマ・ニューモニアに感染することによって発症します。かつては4年ごとのオリンピックの年に流行するといわれていましたが、最近では毎年のように流行しています。発熱後に激しい咳が長く持続します。
レントゲンで、陰影が出る場合は、マイコプラズマ肺炎を推定できますが、出ない場合はマイコプラズマ感染による咳と咳喘息やアトピー咳嗽との鑑別が必要となります。血液検査でマイコプラズマ抗体が陽性であれば診断できますが、抗体が陽性化するのに1~2週間かかりますので、初診時には推定のみとなります。一般的な細菌性肺炎は、体力のない高齢者や乳幼児がかかりやすいのですが、マイコプラズマ肺炎は、健康な大人でも罹患(りかん)します。多くの細菌に有効で、頻用されているセフェム系抗生剤が無効で、マクロライド系やテトラサイクリン系、ニューキノロン系抗菌剤が有効です。
家庭内で子どもと大人、職場などで大人と大人間の感染が見られますので、「子どもの病気」「大人はかからない」と思い込まず、乾いた咳が長く続く場合は専門医を受診してください。一度治癒しても、再感染することがありますから、流行期には、手洗い、うがいを徹底しましょう。

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