2006年4月12日水曜日

「新生活によって起こるストレス性疾患」について

ゲスト/円山リラクリニック 森田裕子 医師

春になると新生活によるストレス性疾患が増えると聞きますが。

 春は変化の季節です。若者は、進入学、就職などで、生活環境ががらりと変わります。サラリーマンも、転勤、配置転換などで職場や住居が変化する人も多いでしょう。また、主婦にとっても配偶者の転勤に伴う引っ越しや単身赴任、進学、就職による子どもたちの独立など、生活の変化が起こりやすい時期です。
新しい環境での生活は、肉体的にも精神的にも緊張を強いられます。当初は緊張が続き、また新しい環境に慣れることが精いっぱいの状態で毎日を過ごします。体調の変化は、このような状態が1カ月程度続き、5月の連休が終わったころに現われます。症状はさまざまですが、多いのは胃腸障害、睡眠障害、無気力感、だるさなどです。肩こりや腰痛、頭痛が現れる人もいます。これらは、いわゆる「五月病」と呼ばれるもので、環境の変化がストレスとなって、心や体の重荷になっている状態です。放っておくと、胃潰瘍(かいよう)になったり、出社や登校ができなくなって引きこもってしまったり、うつ状態まで進行してしまうこともあります。

具体的な治療法と、注意点について教えてください。

 胃腸障害や睡眠障害にはその対処薬、体の痛みについては神経ブロックやハリ治療などの麻酔科的治療、うつ状態であれば抗うつ剤と、症状によって必要な治療を行い改善を試みます。あらゆる疾患と同様に、適切な治療が早ければ早いほど短時間で回復します。
 環境の変化にストレスやプレッシャーを感じるのは、当然のことです。趣味や気分転換の方法を見つけて、上手にリラックスし、ストレスを解消するようにしましょう。連休や週末を不規則に過ごすと、なかなか元通りの生活に戻れなくなります。食事や睡眠などの生活リズムを崩さないよう、休み中も規則正しく過ごすよう心掛けてください。
 ストレス性疾患は、誰もがなる可能性があります。周囲の人も「怠けている」などと、しかったり、焦らせたりせず、心身の疲れを理解し、ゆったりと過ごせる環境を作ってあげてください。

2006年4月5日水曜日

「更年期障害の薬物療法」について

ゲスト/はしもとクリニック 橋本 昌樹 医師

更年期障害の薬物療法について教えてください。

 主にホルモン補充療法と漢方療法があります。ホルモン補充療法(HRT)は、飲み薬と張り薬を中心に、エストロゲンというホルモンを補っていく治療法です。
 ほてり、のぼせ、動悸(どうき)、冷え、不眠、耳鳴り、肩こり、イライラといった症状が現れたら、まず、婦人科の専門医を受診しましょう。更年期障害であれば、診察と問診でおおよその見当がつきます。治療を始めると、早ければ1、2週間から1カ月ほどで、症状が劇的に改善されることも少なくありません。エストロゲンには骨の形成を促す作用があり、特に閉経後は急速に骨量が減りますので、ホルモン補充療法をすることにより、骨粗しょう症の予防にも大きな効果が期待できます。
 一方で、ホルモン治療に対しては、がんの発症を心配する人も少なくありません。米国の大規模臨床試験でホルモン補充療法を長期間(5~10年以上)続けると、乳がんや心臓病のリスクが高くなるという報告があります。6カ月から1年に一度の血液検査、子宮がん検査(頚部=けいぶ=、体部)、乳がん検査などが必要です。ホルモン補充療法には更年期のつらい症状を改善したり、骨粗しょう症の予防、さらに皮膚の若さを保つなどの効果もあります。薬の種類や組み合わせ、使用する期間などを考慮することにより副作用の少ない治療が可能です。

ホルモン治療を避けたい人は、どうしたら良いでしょうか。

 漢方治療は、ホルモン治療を希望しない方や、加齢の流れの中でつらい症状を一つずつゆっくり取り除きながらホルモンの減少に体を慣らしていきたいという方に向いている治療法です。漢方薬は幾つかの生薬を組み合わせて用いられ、体調や体質に合わせて様々な種類があります。例えば当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、加味逍遙散(かみしょうようさん)にはセリ科のトウキの根が入っていて、のぼせや発汗、冷えなどを改善する作用があります。病院、クリニックで処方する漢方薬はエキス剤(製薬会社が生薬をせんじて乾燥)が主で、健康保険が適用されています。

2006年3月22日水曜日

「ピロリ菌」について

ゲスト/篠路病院 三浦 進 医師

ピロリ菌について教えてください。

 ピロリ菌は、1980年代に発見された比較的新しい細菌です。胃の粘膜を好んですみつき、胃酸から逃れるために粘液の下にもぐり込んでいます。日本人の場合、40歳未満でピロリ菌に感染している人は2~4割と少ないのですが、40歳以上になると 8割の人がピロリ菌に感染していると推計されています。これは戦後の衛生状態が悪かったことが原因として考えられています。
 国別では、北米・ヨーロッパに比べ、東南アジア・アフリカに多いのも衛生状態の地域的な違いによるもののようです。ピロリ菌陽性で萎縮(いしゅく)性胃炎のある人では、胃がんになる 確率が健康な人の約4倍といわれています。世界保健機構 (WHO)でも、ピロリ菌を発がん因子と規定しています。5年前にそのメカニズムが解明されましたが、ピロリ菌と胃がんの因果関係の高さは、タバコと肺がん、C型肝炎ウイルスと肝臓がんの関係と同程度のリスクになっています。さらにピロリ菌は悪性リンパ腫や狭心症・心筋梗塞(こうそく)の発症にも関与していると指摘されています。アメリカでは、潰瘍(かいよう)既往症の無い人でもピロリ菌に感染している人には、健康保険で除菌療法が行われていますが、日本でも胃・十二指腸潰瘍のある人の除菌治療には健康保険が適用されるようになりました。

ピロリ菌の有無はどのようにして分かりますか。

 ピロリ菌がいるかどうかは、検査で容易に分かります。検査は食後でもかまいません。検査薬を飲み、その前後に「息」を試験管に吹き込むだけの簡単な検査で、結果は4~5日後に判明します。ピロリ菌がいることが分かった人は、除菌療法をします。治療は薬を1週間、服用します。さらに1カ月後に確実に除菌されたかどうかの判定検査を行います。約8~9割の人は長年住み着いたピロリ菌から解放されると報告されています。それにより、潰瘍再発の危険性が2~8割減少するだけでなく、前述のように胃がんなどの病気にもなりにくくなります。ピロリ菌に感染している可能性がある人は、早めに検査を受けることをお勧めします。

2006年3月15日水曜日

「社会不安障害」について

ゲスト/メンタルケアさっぽろ西口クリニック 鈴木将覚 医師

社会不安障害について教えてください。

 人前に出ると極度に緊張してしまい、顔が赤くなったり、声や手足が震えたりして、思うように話ができなくなる症状で、一般に赤面症、あがり症などと呼ばれることもあります。程度の差はありますが、日本人には比較的多く、推定で人口の約1割程度の人が発症しているといわれています。もともとその人が持っている気質に、ストレスなど何らかのきっかけがあって発症する場合も少なくありません。きっかけはさまざまで、人前で本人にとっては大きな失敗を犯し、それ以降、人前に出ることが苦痛になるような場合が多いようです。
 例えば、会社の朝礼でスピーチをしなくてはならなくなった時に、上手にしゃべることができず、それがきっかけで、朝礼がある日は遅刻をしたり、休んだりということを繰り返します。子どもの患者さんも多く、学校での発表などが苦痛で、症状が重くなると学校へ行くことができなくなったりします。また、初対面の人に対して極端に緊張したり、人前で字が書けなくなるなど、特定の状況で症状が出る場合もあります。重くなると、本人の苦痛も大きく、社会生活にも支障を来しますから、我慢せず、早い段階で受診することをお勧めします。

治療方法や注意点について教えてください。

 「あがり症」は大なり小なり誰にでも見られる症状であるため、ともすれば「慣れれば大丈夫」などと、無理強いするような場面が見られますが、これは本人にとって、苦痛が増すばかりでプラスに働くとは限りません。診察を受けて、必要であれば抗不安薬、抗鬱(うつ)剤などを服用することも、症状の軽減に役立ちます。日常生活では、「緊張して当たり前」「本人が気にするほど周りの人は気にしていない」ことを自覚することが大切です。また、家族など周囲の人が「気にするな」と励ましたりせず、「つらいよね」と共感することで、本人の気持ちが和らぎます。社会不安障害は、神経症圏の中では改善しやすい病気です。「自分も…」と思い当たったら、早めに専門医を訪ねてください。

2006年3月8日水曜日

「人工透析」について

ゲスト/桑園中央病院 松井 傑 院長

人工透析について教えてください。

 腎臓には、体内の老廃物や余分な水分を除去し、血圧の調整や赤血球の生産を促すなどの働きがあります。慢性糸球体腎炎や糖尿病性腎症などの疾患によって、腎臓が十分に機能しなくなると人工透析による治療が必要となります。人工透析は、血液を体外に取り出して透析器(ダイアライザー)を通すことによって、血液中の老廃物や不要な水分を取り除き、血液を浄化して再び体内に戻す治療のことです。最近の糖尿病患者の増加により、人工透析が必要な患者が増えています。それに伴い人工透析を行う病院も増えてきました。
人工透析は週に3日、1回4時間程度かけて行われます。一般の人は透析に、「通常の社会生活が難しくなる」、「透析が始まったら、病気は徐々に進行する」などのマイナスイメージを持っているのではないかと思います。しかし、最近では、働く人が治療を受けやすいよう午後7時からの夜間透析の実施。旅行先での透析治療をバックアップするなど、透析患者の生活の質を落とさないよう努力する病院も少なくありません。透析治療については、経験の多い日本透析医学会認定医へ相談することも一つの方法です。

オンラインHDFについて教えてください。

 従来の透析法には、十分に除去できないβ(ベータ)2MGを代表とする物質の蓄積によって、さまざまな透析の合併症を引き起こすことがあります。オンラインHDF(血液ろ過透析)は、これらの物質をより効率良く除去する治療方法です。フィルターを使い透析液を清浄化して置換液として使用します。骨・関節痛、食欲不振、腎性貧血などに改善効果があるという報告を得ています。この治療法は保健適用になります。くわしくは、かかりつけの医師にご相談ください。

人気の投稿

このブログを検索