2022年12月15日木曜日

腸内細菌叢とアレルギー

琴似駅前内科クリニック 髙柳 典弘 院長


腸内細菌とアレルギーの関係について教えてください。


 腸は消化吸収を行うだけでなく、全身の機能に関与していて、そこには腸内細菌が大きく関係しています。腸内細菌にはさまざまな種類があり、腸の粘膜に隙間なくびっしりと張り付いていて「腸内細菌叢(そう)」と呼ばれます。最新の研究では、気管支ぜんそくや食物アレルギーなどの各種アレルギー疾患が、この腸内細菌叢の乱れに関係していることが分かってきています。

 腸は病原体にとっても体への入り口になります。これを防ぐために、腸管には免疫細胞や抗体が集中しています。この腸管免疫の働きを維持するのにも腸内細菌が欠かせないのですが、アレルギーのある患者さんは、腸内で「酪酸」という物質を作り出す「酪酸性生菌」の割合が少ないことが報告されています。

 酪酸は腸の粘膜を通過し、腸管内のリンパ組織に働き、「Foxp3」という遺伝子の発現を増加させます。その結果、過剰な免疫を抑える役割を持つ「Tレグ(制御性T細胞)」を増やすことが分かっています。言い換えれば、腸内の酪酸菌を増やし、Tレグを増加させることがアレルギー疾患・症状の抑制につながると推察されています。


腸内細菌叢に酪酸菌を増やすためにはどうすればいいですか?


 酪酸菌を含む食品は少なく、ぬか漬け、ナチュラルチーズ、納豆などに限定されてしまいますが、酪酸菌を腸内で育てることは食事内容を工夫すれば十分に可能です。酪酸菌の餌となる食物繊維を多く含む食品を積極的に摂取することで、腸内の酪酸菌の働きを活発にできます。食物繊維には水溶性と不溶性があります。腸内細菌の餌になりやすいのは水溶性の食物繊維で、わかめ、ひじき、ラッキョウ、キウイ、アボカドなどに多く含まれています。食物繊維は1日あたり成人男性でおよそ20g以上、成人女性で18g以上摂取することが目安とされています。また、酪酸菌入りのサプリメントで補うのも一手です。

 適度な運動習慣も腸の活動を活発にし、酪酸菌を増やします。週3~4回のペースで、1日30〜60分程度、息が少し上がる程度のウオーキングやランニング、サイクリングなどの有酸素運動がお勧めです。運動習慣が途絶えると逆に酪酸菌が減ってしまうという調査報告もありますので、酪酸菌を増やすためには、運動を継続して行うことが大切です。

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